試遊できた人もそうでない人も、必見!
2012年9月20日~23日に開催された東京ゲームショウ2012(以下、TGS)にて、人気アクションゲームの最新作『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム3』がプレイアブル出展された。いよいよ期待が高まる中、本作の制作総指揮を執る、サイバーコネクトツー・松山洋氏にお話をうかがった。
TGSで体験できた人はそれを思い出しながら、体験できていない人は、公式サイト(【コチラ】)で新たに公開されたTGSトレーラーと、ファミ通.comのプレイリポート(【コチラ】)を見ながら、じっくり読んでほしい。
『3』は“より長く遊べるナルティメット”に
――今回は、かなりバトルシステムが変わるそうですね。
松山洋氏(以下、松山) 前作の『ジェネレーション』で少しシステムを変えたのですが、すごく評判がよくて、おかげさまでワールドワイドで100万本を達成することができました。そこで『3』では、バトルシステムを、もっと、完全に変えようとしています。
――TGSで体験できた新しい“覚醒”システムは、そのひとつというわけですね。
松山 はい。いままでのシリーズ作品では、ダメージを受けて、ピンチになると覚醒して状態変化、という形でしたよね。でも原作を見ている方はおわかりだと思いますが、たとえばナルトの“尾獣チャクラモード”は、修行をして、自分の意志でこの状態になれるんですよね。そこで、覚醒を、いきなりゲームスタートと同時にできるようにしたんです。
――なるほど。原作の展開に合わせてシステムも変えたわけですね。
松山 ただし、全キャラクターが最初から覚醒ができるわけではなく、スタートと同時に覚醒できるのは、一部の、イメージに合ったキャラクターのみです。
――試遊した限りでは、かなり強力なように思いました。
松山 でも、強く、便利になるばかりではありません。忍術にはつねにリスクがともなうので、いきなり覚醒しちゃうと、“何か”が減ってしまうんですよ。それで、後で困ったことになったり、必ずリスクはあります。TGSバージョンでは、原作のシーンを再現したバトルなので、減る要素については出していませんが。
――対戦などでは、好き放題に覚醒できるというわけではないのですね。
松山 ええ。いつ覚醒スティックを使うかは、プレイヤーの戦略に委ねるというシステムになっています。
――なるほど。その駆け引きはアツそうです。
松山 バトルシステムの新要素は、それ以外にもいっぱいありますよ。今回は、『ジェネレーション』の72人を上回って、プレイアブルキャラクターが間違いなく過去最多になります。そしてバトルシステムを一新して、それに乗っ取って調整を加えるので、いままでのキャラクターも、触り心地が全部変わると思います。
――新しいバトルシステムは、どんなコンセプトのもとに制作されているのでしょうか?
松山 “長く遊べるナルティメット”です。いままでは、ストーリーをクリアーした後は、ぼちぼちオンラインで遊ぶ……という感じだったと思います。でも今回は、オンラインバトルで、クリアー後も長く楽しめる、そういう駆け引きがちゃんと生まれるものにします。そして勝ちかたに、プレイヤーがこだわりたくなるようなシステムをちゃんと入れています。
――“勝ちかたにこだわりたくなる”というのは、いままでのシリーズ作品でも同様だったように思いますが……?
松山 でも、それはプレイヤーの美学の部分ですよね。“最後は奥義でトドメを差す”とか。でも、うまい人になればなるほど、奥義を使わなくなって、通常攻撃を突き詰めた地味な攻防になりがちなんですよね。今回はそうならならいように、新しいシステムを入れていますので、けっこう燃えると思いますよ。
――『3』では上級者どうしが戦っても、派手な試合になる、と?
松山 ええ。ゲーム的に、そういう勝ちかたをするといいことが起きるシステムにしているんです。ですから、上手な人でも勝ちかたにこだわるようになると思います。また、そうなると、そこに隙が生まれるので、上手な人と下手な人が戦っても、そこそこ勝負になるようになると思います。
――システム的に、カッコイイ勝ちかたをすることにメリットがある仕組み、ということでしょうか?
松山 はい、いいことがあります。じつはそういうシステムにしようと考えたのは、『ジェネレーション』の発売後に行ったアンケートで、要望が多かったからでもあるんです。これはサイバーコネクトツーのWebサイトでフォームを用意して、世界中から意見を募集したのですが、1ヵ月で17000件以上もの意見が寄せられて。
――それはすごい!
松山 もう、区分けするだけでも超タイヘンでした(笑)。いちばん多かったのは、やはり「あいつを出して!」とか、「最新キャラを使えるようにして!」といった意見だったのですが、「変わり身システムはこうしてほしい」などシステムに関する要望も多かったんですよ。
――熱いファンが多いんことがよくわかりますね。
松山 つい先日も、『3』発表のタイミングで、また同様に意見を募ったところ、今度は2週間くらいで30000件以上の意見が(笑)。
――さらに増えた!(笑)
松山 ただ、日本、アジア、ヨーロッパ、北米エリアの4つに分けて入力できるようにしたのですが、ちょっと内訳は酷いんですよ(笑)。全体の60%くらいがアメリカで、30%くらいがヨーロッパ、残りの10%くらいが、そのほかの地域。日本に限ると、170件くらいでした。
――たしかに欧米でとくに強いタイトルではありますが、国内の販売本数と比べても、かなりアンバランスですね。
松山 日本人って奥ゆかしいんですかね(苦笑)。累計100万本のうち、全体の10%は日本で売れているわけですから、30000件の意見があれば、日本が3000件くらいを占めていてもおかしくないはずなんですが。ともあれ、いろいろな意見がもらえましたので、「これはお客様の傾向やから、ちゃんと健闘していこうよ」と、日々話し合っています。
――ちなみに、TGSバージョンで体験できたバトルは、完成度としてはどれくらいなのでしょうか?
松山 まだぜんぜんですよ。見えている範囲だと、20%くらいしか見えていないくらいです。遊んだときの感覚は、かなり変わると思います。
ボスバトルもさらにパワーアップ!
――バトル以外の要素についても教えてください。
松山 『ジェネレーション』は対戦特化型の『ナルティメットストーム』ということで、皆さんに喜んでもらえて、100万本を達成することもできました。でもやっぱり、世界中の人たちから言われたのが「ボスバトルはどうしたんだ、なんでないんだ?」と。
――『1』、『2』のボスバトルは凄かったので、そこは期待してしまいますよね。
松山 とはいえ現行作品が題材のゲームですから、毎年作っていると、原作に追いついてしまうんですよ。ある程度期間を空けないと、ボリューム的に物足りないものになってしまう。『ジェネレーション』を作ったのは、そういう理由もあるんです。
――なるほど。対戦特化という別軸の作品を出すことで、コンスタントに新しいものをリリースすることが可能になった、というわけですね。
松山 でもやっぱり、みんなから「ボスバトル! ボスバトル!」って言われて。わかってますがなと(笑)。ということで、今回、またパワーアップした形で、いろいろなボスバトルを入れて、アドベンチャーモードで、しっかりストーリー、ドラマを体験できるように作っています。TGSで体験できた“16年前の九尾事件”から始まり、五影会談、いまの忍界大戦の最新エピソードまで描く予定です。
――またすごいボリュームになりそうですね。ボスバトルのパワーアップについては、具体的にはどんなふうになるのでしょうか?
松山 今回のボスバトルでは、開始前やバトル中などに、プレイヤーに選択がつきつけられるんです。いまは仮に“ナルティメットディシジョン”と呼んでいますが、“究極の選択”といったものですね。じつはTGSのバージョンでは、“究極の選択”の部分は外してあるんですが、本編では選択を迫られます。
――その“選択”とは、具体的にはどのような?
松山 ふたつのルートが提示されて、プレイヤーが戦いかたを決められるんです。いまのところ“英雄ルート”と“豪傑ルート”と呼んでいますが、“英雄ルート”はスタンダードで、多くの人はこちらを選ぶだろうと思います。“豪傑ルート”は、とくに欧米のユーザーに多いのですが、より歯応えのあるバトルを求める人のために用意したルートです。
――難度の違いということですか?
松山 難度も極端に違いますし、プレイの内容も違うんですよ。たとえばTGSバージョンでは、九尾が里を襲ってきて、仮面の男も現れて……となりますよね。ここでは四代目火影が主人公ですが、四代目が先に仮面の男を倒すべきだと考えるのか、それとも九尾をなんとかして里を救うのが先だと思うのか。どちらを気にするかによって、戦う順番が変わるんです。
――戦う順番によって、どんな変化が起きるのでしょうか?
松山 先に九尾と戦った場合、まず九尾戦をプレイした後で、“一方そのころ四代目は?”とシーンが移り、すでに戦闘中の状態から、四代目vs仮面の男のバトルが始まります。ですから、お互いにある程度ダメージを負った状況からのスタートとなるわけです。
――なるほど。そこで難度に大きな違いが生じるわけですね。
松山 ほかに、たとえば物語の中盤で、ナルトが九尾の力をコントロールするために、精神世界の中に入って、九尾と戦うシーンがあります。ここでの究極の選択では、いまの師匠であるキラービーと協力して戦うか、それともナルトひとりで戦うかを選ぶことができます。当然、ひとりで戦うほうが、難しい“豪傑ルート”です。
――“英雄ルート”を選ぶ人が多そうですが、両方やってみたくなりますね。
松山 もちろん、両方やってみたいという人のために、クリアー後にちゃんと体験できるようにしてありますよ。「もう一回最初からやってね」なんてことはしません。サイバーコネクトツーはユーザーにやさしい会社ですから(笑)。
――そのほか、現時点で明かせる新要素がありましたら、教えてください。
松山 “シークレットファクター”といって、バトル中にある行動をすると、原作再現の特別な演出が流れるという要素があります。ヒントはゲームの中にありまして、たとえば、サスケがエラく長い待機モーションで千鳥を溜めていたりする。これはひょっとして……ということでナルトが螺旋丸を作ってやると、シーンが切り替わって……という感じですね。ある程度ライフを減らして、物語が盛り上がってくると、フラグが立って、シークレットファクターの受付フラグが立ったことがわかる仕組みになります。
――TGSバージョンでも、四代目火影vs仮面の男戦でシークレットファクターがありましたね。画面に“チャクラダッシュ”を出すように指示が出ていて、指示通り“チャクラダッシュ”を出すと、特別なシーンが流れました。
松山 TGSバージョンでは、完全に答えを教えてしまっていますが、実際には、「原作を思い起こすと、たぶんこういうことじゃないかな……」と探っていくことになります。じつは『2』でも、サスケvsイタチ戦に、原作再現の隠しコマンドが仕込んであったんですよ。
――そうだったんですか!?
松山 ええ。プレイヤーのサスケがチャクラ手裏剣を打つと、それに合わせてCPUのイタチもチャクラ手裏剣を撃ってくる。すると、手裏剣どうしの相殺が発生して、原作再現の、手裏剣を何百個と撃ち合うシーンが流れるんです。これに気付いた人からは、「まるで自分が物語に関わっているかのような感覚になれてよかった」と感想をいただけたんですね。それじゃあ、今回は、そういう原作再現のシークレットファクターを、バトルの中にいっぱい入れていこうと。そこで、大きいボスバトルでは、すべてシークレットファクターを入れてあります。
――最後に、読者にメッセージをお願いします。
松山 まずはバトルの部分と、ストーリーモードが、今回はかなり変わっています、ということをお伝えしたいですね。あとは、『ナルティメットシリーズ』が、累計が980万本を越えたところなんです。もうちょいで、『ナルティメット』だけで1000万本。おそらく年内で達成できると思います。
――途方もない数字ですね! それでは、記念企画なども……?
松山 当然、バンダイナムコゲームスさんが、いっぱいお金をかけてプロモーションをしてくれると思います(笑)。まず10月13日からニューヨークコミコンに出展しますので、そこで、『3』に関する大きな発表をしようと思っています。ですので、10月13日から15日の3日間のどこかで、発表があると思いますので、そこも楽しみにしていてください。
インタビュー番外編:『ジョジョ』の話も聞かせてください!
――『ナルティメットストーム3』のインタビューなのに恐縮ですが、サイバーコネクトツーさん&バンダイナムコゲームスさんと言えば、『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』もTGSで出展されましたよね。こちらについても、お話を聞かせていただけますか?
松山 TGSバージョンではCPU戦を入れずに、スタッフのレクチャーとともに対戦を楽しんでもらう形になりました。ただ、教えてもらわなくても、遊べるようになっています。ファミ通でも紹介しましたが、ゲージさえ溜まっていれば、□ボタン連打だけで、必殺技、ハートヒートアタックまで出る“イージーチェーン”のシステムがあるので、ワムウなら“神砂嵐”、承太郎なら“オラオラオラオラッ!”まで簡単につながりますから。
――アクションが多彩なのもうれしいです。
松山 通常の格闘ゲームの2倍くらいのコマンドを入れているので、アクションはメチャメチャ多いですね。ただ格闘ツールを作っているつもりはなくて、あくまで、“究極のジョジョゲー”です。
――コマンド表を見ると、かなり格闘ゲームライクになっているようにも見えますが……?
松山 スタイルは格闘ゲームスタイルですが、触ってみると全然違うと思います。超ジョジョゲーになっていますよ(笑)。
――TGSで試遊できた人は、きっとそのあたりが実感できているでしょうね。試遊してきた人に、何かお伝えしておくべきことはありますか?
松山 じつは、あまり間をあけずにやろうと思っているのですが、触った方の意見を募集しようと考えています。後日、『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』の公式サイトにフォームを設けますので、ぜひ意見を聞かせてください。これは最初から言っていることですが、我々は、ファンの代表だと思って作っていますので、お客様といっしょに作っていきたいと思っているんです。今回、TGSで、「これが我々の答えです」というものを提示させていただきましたが、何せ25年も続いている作品ですから、皆さんそれぞれに、ああしてほしい、こうしてほしい、というのが絶対あると思います。むしろ私が逆の立場だったら、絶対に「話を聞いてくれ」と言いたくなります(笑)。
――それだけ熱いファンの多い作品ですよね。制作チームも、かなりの『JOJO』好きばかりだとか?
松山 異常ですよ、あいつらは(笑)。先日、仙台でジョジョ展が開催されましたが、あれにも、みんな自腹で飛行機に乗って行きましたからね。しかしまあ、本当に作っていて楽しいですね。たまらないです(笑)。
――完成が楽しみです。では、『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』についても、楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
松山 公式サイトでは、TGSで発表した新しいトレーラーも公開していますので、そちらもぜひご覧ください。じつは『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』についても、バトルシステムも全部見せていなくて、まだヒミツにしている部分もあるんですよ。これからは定期的に情報を出していきますので、楽しみにしていてください。