目指すは『FF』のテーマパーク

 スクウェア・エニックスとグリーが共同で制作し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)GREEにおいて、2012年配信が予定されているフィーチャーフォン、スマートフォン向けソーシャルゲーム『ファイナルファンタジー × GREE(仮題)』。

 本作は、1987年の第1作目発売以来、パッケージソフト累計出荷本数が全世界で1億本を超える『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターが多数登場し、シリーズならではの要素を持つ新作ソーシャルゲーム。『ファイナルファンタジー』の歴代キャラクターが夢の競演を果たし、召喚獣やモンスター、おなじみの武器や防具、アクセサリも登場する。また、過去作の名シーンを彷彿とさせるイベントなども楽しめる。

 ここでは、本作のプロデューサーを務める間一朗氏とディレクター板倉裕一氏に本作のコンセプトや制作へのこだわりなどをうかがった。

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プロデューサー:間一朗氏(右)、ディレクター:板倉裕一氏(左)
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『FF』らしいソーシャルゲーム

――まずは、どういった経緯で、グリーとの開発をスタートしたのでしょうか?

間一朗氏(以下、) 「何かいっしょにやりたいですね」というお話は、だいぶ前からしていたんです。その際、グリーさんから、オール『FF』……これまでにリリースされた、すべての『FF』を使ったゲームにしたいという要望がありまして、それに応える形で開発をスタートしました。

――派生作品も含めた、多くの『FF』作品のキャラクターを登場させるのは、たいへんだったのではないですか?

 すべての『FF』を扱ってひとつの作品にするには、それをまとめる理由が必要です。たとえば、『ディシディア FF』では、新たにオリジナルの世界と物語を作って、そこに各キャラクターを集結させました。今回は、さらに広範囲の『FF』作品群からキャラクターを登場させることになります。それを考えたとき、キャラクターやモンスター、召喚獣を当時の素材のまま、カードという形で登場させることで統一を図ろう、ということになりました。

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――なるほど。では、本作のコンセプトをお聞かせください。

板倉裕一氏(以下、板倉) 大きなコンセプトは2点あります。ひとつは“グラフィック”。歴代の『FF』キャラが、主役から脇役、召喚獣、モンスターまで総出演します。『FFタクティクス』や『クライシス コア -FFVII-』などの派生作からもキャラクターが登場して、ある種お祭り的なタイトルになっているんです。当時のグラフィックを使用しているので、ユーザーの皆さんの思い出が蘇るものになっていますよ。ソーシャルゲームの楽しみのひとつである、“集める”ことが楽しいタイトルとも言えます。

――もうひとつのコンセプトとは?

板倉 “ゲーム性”です。本作は、「ソーシャルゲームの集大成にしたい」と思っていまして。グリーさんが蓄積されてきた知識をもとに、ソーシャルゲームというものを仕上げ、究極の形にすることが目標です。すべてを盛り込んで複雑にするのではなく、いままでの経験から、いい仕様だけを取り入れ、洗練されたゲームにしています。ソーシャルゲームが好きなユーザーの方は、遊びやすさにご納得いただけると思いますし、未経験な方も、敷居は低くしてありますので、気軽に楽しんでいただけます。さらに、『FF』というRPGのノウハウを注ぎ込んで、磨き上げているということもポイントです。

――きちんと『FF』らしさを感じられる作品ということですか?

板倉 そうです。ATBのシステムやアビリティ、歴代の武器防具など、『FF』の要素は何でもアリ、という作品にしたいんです。そこは、グリーさんも熱意を持ってやってくださっている部分ですね。

 グリーさん側も、『FF』をすごく好きな方が担当で、板倉とは兄弟のように親密なやり取りをしてもらっています。社内の開発だけでやっているのとは違う雰囲気ですね。

板倉 はい。『FF』について朝まで語り合ったりしています(笑)。

――アツいですね(笑)。今回の開発の体制は、どのような形を取っているのでしょうか。

板倉 僕がスクウェア・エニックス側で監修するディレクターで、開発を担当するグリーさんにもディレクターが立っています。

 そう言いながら、どう見ても監修だけではないんですよ。最初は監修だけのつもりだったんですが、板倉はまったく手加減できないクリエイターなので、いまはどっぷりと開発に踏み込んでいます(笑)。

大きなテーマパークを目指して

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――『FF』のソーシャルゲームを制作するにあたり、どういった魅力を出したいとお考えですか?

 まず、ソーシャルゲームの集大成を目指してベースを構築したいと考えています。そのうえで、“『FF』らしい”魅力的なコンテツをご用意したいと思います。

板倉 僕がディレクターとして開発に携わるにあたって、最初に間に伝えたのは、「『FF』を使った、ただのソーシャルゲームにはしたくない」ということでした。『FF』って、たとえば『VII』なら、ゴールドソーサーやチョコボ育成などのように、本編に付随する遊びがたくさんあるものだと思うんです。今回も、カードゲームバトル以外の部分で、たとえばメダルを集めてミニゲームを遊んだら、その結果得られたものを本編に還元できたり、ナビゲーターのモーグリの日記を読めたりと、いろいろな要素を散りばめています。

――それは『FF』っぽいですね!

板倉 ソーシャルゲームのサイクルって、ポイントを消費してクエストを進めて、そのポイントを時間経過や有料のアイテムで回復するわけですが、本作では回復を待つあいだ、サブコンテンツで遊べるようにしています。朝までずっと遊べます(笑)。

 でも、そういったサブコンテンツを最初から開放してしまうと、せっかくのフリー・トゥー・プレイの手軽さをなくしてしまいかねません。最初は基本的なシステムだけを投入して、ある程度慣れていただき、ユーザーさんが違う遊びが欲しくなったときには新しいコンテンツをご用意できている、という流れが理想ですね。

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――飽きさせないだけの、豊富なコンテンツを用意していくと。

 板倉がやってくれます(笑)。

板倉 グリーさんにがんばってもらいます(笑)。

 この記事を見て、「そんなに膨大なのか」と、グリーさんが驚く予定です(笑)。

――(笑)。

板倉 言うなれば、ジェットコースターだけを作るのではなくて、総合的なテーマパークを作りたいんです。もちろん、すべてを遊ぶ必要はありませんし、どれを楽しむかはユーザーさん次第です。

 ソーシャルゲームを作るにあたって、こういったやりかたが正解かどうかはわかりません。ですが、うちらしいとは思うんです。いくらベースはオーソドックスなゲームシステムだといっても、ほかのメーカーが作っているものと近くてはダメだと思っています。

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――では、“新しさ”ということについては、どういった考えをお持ちですか?

板倉 僕がいちばん注意したのは、クエストです。ポチポチとボタンを押してるだけ、というのが現在の主流ですが、ここにもう少し、熱中できる要素を入れたくて。クエストを進めると徐々に溜まっていくゲージがあって、これが最大まで溜まると“バーストモード”に入ります。バーストモード中は、進むごとにお宝がザクザクと(笑)。こういったシステムを入れて、ボタンを押しているだけにはならないようにしていますね。また、ザコ戦はサクサクと進められますが、ボス戦ではATBを用いたバトルがくり広げられ、アビリティが発動したりと『FF』らしいものになっています。リアルタイムでアビリティが発動しながらバトルが進むのは、いままでのソーシャルゲームにはなかったと思うので、新鮮に感じていただけるのではないでしょうか。

――確かに、それは目新しい要素です。

板倉 そういった要素を盛り込むことで、ソーシャルゲームで不満とされている部分は、なるべく解消しています。かといって、手軽さがなくなってしまってはいけないので、そのバランスが難しいところですね。

――ほかに、難しい部分、苦労している部分はありますか?

板倉 僕はいままで家庭用ゲームを作っていて、ソーシャルゲームはこれが初めてなので、その違いには苦労しました。ソーシャルゲームの主流とされている要素として、たとえば、盛り込み過ぎてはいけないし、ノールックプレイ……画面を見ないでも遊べたり、片手間にでも遊ぶことができる、という部分では苦労が多かったです。

――制作について、間さんからは、板倉さんにどんなオーダーをしましたか?

 自分からは、お客さんに触れていただいたときに、「難しい」、「何をやっていいのかわからない」と敬遠されるようなものにはしたくない、という話だけしました。お客さんにストレスを与えて、それを解消させるのにお金を使わせる、というやりかたをしているゲームもありますが、家庭用ゲームを作っている人は、いかにお客さんに快適に遊んでいただくか、ということを考えてやってきているんです。そのマインドを持ったまま、ソーシャルゲームを作ってもらうのがいいんじゃないかと思っています。

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サービスイン時の要素は構想のほんの一部

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――ここからは、ゲームの細部についてうかがっていきます。デッキは、何枚で構築するのでしょうか?

板倉 まず、ザコ戦を除くと、バトルは3種類あります。クエストを進めると発生するボス戦、仲間と挑む強大な“手配書エネミー”戦、そして対人戦です。ボス戦は最大5枚、手配書エネミー戦と対人戦は最大11枚のカードで、デッキを組んで戦います。

――ほかのプレイヤーとは、どういった関わりかたをするのでしょうか?

板倉 対人戦のほかには、バトルのときにカードを借りたり、コメントすることでカード召喚用のポイントを得られるといった関わりかたです。ランキング要素があるので、スコアを競い合うこともできます。人とどっぷりと絡むのではなく、基本的には個人で遊ぶ形を目指していますね。『FF』らしい“まったりプレイ”ができるようになっているんです。

――なるほど。バトルでは、おなじみの召喚獣を呼ぶことはできるのでしょうか?

板倉 先の話になりますが、手配書エネミー戦では、召喚獣を発動できるようにします。発動時には、『FF』のおなじみの召喚獣が登場する、Flashムービーが見られますよ。

――アビリティの発動について教えていただけますか?

板倉 各カードに設定されているアビリティは、ランダムで発動するものなのですが、バトルで大ダメージを与えられるものだけではなく、クエスト探索でギル入手率が上がるなど、バトル外で作用するものもあります。やはりそういうものが、『FF』としては必要かなと。バトルで発動するアビリティは、おもに“キャラクターカード”が持っていて、黒魔道士ならファイア、クラウドなら凶斬り、といった具合です。

――キャラクターカードというのは、『FF』キャラや召喚獣、モンスターが描かれたカードのことですね。

板倉 そうです。それらがメインのカードとなります。それとは別に、“そうびカード”というものがあり、HPが上がるなどのサポート的なアビリティは、そういったそうびカードが持っています。

――キャラクターカードとそうびカードは、それぞれアビリティの傾向が異なると。

板倉 ちなみに、アビリティは、たとえばファイアを強化していくと、ファイラ、ファイガと進化して強力になっていくんですよ。カードのステータスだけではなく、アビリティの成長要素もあるので、より極め甲斐があると思います。合成では、キャラクターカードを素材にするとカードのパラメーターが上がり、そうびカードを素材にすると、アビリティが成長します。

――便利なアビリティを探すのも楽しそうです。

板倉 ほかの作品だと、ボスバトルなどのときに、HPが減ったら有料の回復薬を使ったりして回復すると思うんですが、ケアルを持っているキャラクターがいれば、回復してくれることがあります。無課金ユーザーにもやさしいです(笑)。

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――無課金でも、十分楽しめるようにしてある?

板倉 ええ、スタッフの中にも無課金ユーザーはいますし!

 各所から怒られるなコレは(笑)。でも、確かに、無課金でも楽しめないと、いいゲームとは言えないですからね。

――一方で、課金については、どんなシステムを導入しているのでしょうか?

板倉 本作では、カードを引くことを“召喚”と言っていて、無課金のものをノーマル召喚、有料のものをクリスタル召喚と呼んでいます。がんばれば、必ず強いカードが入手できる特殊な召喚も導入します。既存の仕組みとは少し違った、工夫を凝らした形にしてありますよ。どんなものか、楽しみにお待ちいただければと思います。

――召喚で得られるカードは何種類ぐらいあるんですか?

板倉 サービスイン時で200種類ほどです。『FF』キャラとしては少ないのですが、これからどんどん増えていきますので。DGソルジャーのようなマイナーなキャラなど、コアなファン向けのカードもあります(笑)。必ずお気に入りのカードが見つかるはずです。

 どのキャラを出そう、と選んでいるのではなく、ほぼほぼ全部出ちゃいますから(笑)。CGあり、イラストあり、頭身もいろいろで、にぎやかですよ。

――キャラクターのレア度を決める際は、迷ったりしたのでは?

 そうですね。やはり、主役級のキャラクターは、レア度が高めになります。ただ、レア度が低くてもアビリティが便利なものだったり、アビリティの成長要素もあるので、一概にレア度が高ければ強い、というわけではありません。

板倉 また、ビックスとウェッジがいっしょのデッキにいたら強くなるとか、そういった要素も入っています。カード単体の性能だけが重視されるようなシステムにはしたくないですね。

――限界突破の要素などは?

板倉 敷居が高くなるのでいまの段階ではないんですが、いずれやるかもしれません。

――今後に注目ですね! では、最後にユーザーへコメントをいただければと思います。

板倉 サービスインしたときに遊べるものは、全体のほんの一部にすぎません。大きなテーマパークを作っていくので、楽しみにしていてください。

 この作品では、『FF』という大きなIPの魅力を、いままでにないやりかたで、お客様に提供していきます。皆さんの好きな『FF』の要素が詰まっていますし、基本無料で、誰もが持っている携帯電話というデバイスで遊べますので、ぜひ一度遊んでみてください。

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