ロックスター・ゲームスより2018年10月26日に発売される、プレイステーション4、Xbox One用ソフト『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、『RDR2』)。前編に引き続き、国内メディアでは唯一となる、ロックスター・ノースの共同代表であるロブ・ネルソン氏へのインタビュー後編をお届けする。さらに踏み込んだ質問により、少しでもロックスター・ゲームス(以下、R★)が総力を注ぎ込んで開発した最新タイトルの魅力が伝われば幸いだ。

主人公アーサーと仲間の関係が物語を築く! 『レッド・デッド・リデンプション2』国内独占インタビュー【後編】_01

マップ環境について

 R★のオープンワールドといえば、その広大かつ作り込まれたマップ環境であろう。今回も、マップが相当に広いことは明白だ。しかし、重要なのは広さではなく、細部ではないだろうか? とくに、環境表現は今回のデモプレイにおいても際立った表現を垣間見ることができた。時間経過によって変化する風景、山と渓谷、市街地や集落、河川や森林などなど、確認できたのはほんの一部に過ぎないが、それでもそのディテールには圧倒された。この世界で何ができるのか? 否が応にも、期待は高まるばかりである。

主人公アーサーと仲間の関係が物語を築く! 『レッド・デッド・リデンプション2』国内独占インタビュー【後編】_02

――続いては、マップに関してお聞きします。昼夜で風景が変わりますが、とくに夜の風景は印象深いものでした。すべてを手作りで構築したうえでさらに進化させたそうですが、主人公アーサーが馬に乗って丘を下ると、足もとに小石が転がっていくのを見ました。そこまで細かい環境を作るために注力したことは?

ロブ すべてのコアとなるアイデア、没入感、その場にいるという感覚をもたらす環境を、これまで以上に推し進めました。現行ハードで開発できたことが、あらゆる面での推進を実現可能にしたのです。没入感を達成することは重要です。私たちはつねにプレイヤーにはゲームに没頭してほしい、あるいはゲームの中に入り込んでいるように感じてほしいと思っています。町、森林、山岳地帯、大平原……いずれも美しく正確で、変化に富んだものにするだけでなく、プレイヤーがそこにつながっていると感じてもらえるようにしています。深い泥や雪がある場所では、それらをかき分けて歩くように、動きが変化します。木の葉や水も人物の動きに反応し、坂道で滑れば馬も道の上にある物もいっしょに滑ります。すべてが本物に感じられれば、プレイヤーはこの世界とつながっていると感じるでしょう。

――約120年前のアメリカの風景は本作の見所のひとつですが、この再現度は、現行ハードでなくては実現できなかったことがよくわかります。転がる小石ひとつ描くのも、地味にメモリを食いますからね(笑)。デモプレイではあまり見られませんでしたが、川の流れの表現も細かくてすばらしいと感じました。

ロブ 水の流れを段階的に表現しているんです。ひとりのアーティストが、川の流れを専門に作って管理しています。川を渡ると、流れに当たった体の部分に合わせて、水が左右に分かれて流れるようにもなっています。

――川の描写もすごいのですが、個人的にデモで印象に残ったのは、夜にキャンプへ近づいていくときの雰囲気です。

ロブ 火が灯っていて、音楽が流れていて、本当にキャンプを張っているように感じますよね。皆さんにもそのように感じていただけるとうれしいです。

キャラクター表現について

 リアルで魅力的なキャラクターの表現は、R★が誇る独自のスタイルである。単に人間ソックリというものではなく、映画でもコミックでもない、ゲームならではの表現を模索しているのではないかと感じていたが、『RDR2』では人間らしさの表現が突出した完成度に到達している。オープンワールドに作り上げられたもうひとつの世界と、そこに生きる人々の姿についても話を聞いた。

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――『RDR2』では、すべてのキャラクターが興味深い表情を見せていました。前作のインタビューでダン・ハウザー氏は、「汚れた歯で、時代背景も含めてキャラクターを表現した」とおっしゃっていましたが、本作にもそういった特徴はあるのですか?

ロブ 今回も歯は汚れていますが(笑)、キャラクターはそれぞれが違う歯を持っています。キャラクターにフィットしていれば汚れた歯を採用しましたし、すべてにおいて、表現を推し進めています。時間の経過とともに何かが汚れて、それをきれいにしてもまた汚れます。伸びた髪やヒゲを切っても、時間が経てばまた伸びますよ。

――これも気になっていたのですが、衣装や髪形はカスタマイズできるのですか?

ロブ もちろん、衣装も髪形も変えられます。細かい部分にまでこだわっているので、ほかのゲームではパッと変わるだけだった髪形やヒゲも、今回は伸びます。カットはできるのですが、現実と同じように、下手に切ってしまうと、伸びるまで待たなくてはいけません。失敗すればそのツケが回ってくるのも、現実と同じです(笑)。

――前作と比較すると、衣服の質感が非常に細かくなっているのがわかりました。サスペンダーのデザインから、ベルトひとつとってもそのディテールがすごく作り込まれている。

ロブ 可能な限り、本物らしくすることにこだわりました。ギャングの衣装も多数あり、個々のスタイルや特徴がわかるようになっています。キャラクターによって衣装を何着も持っている人もいれば、そうでない人もいます。ダッチはよく着替えるのですが、ビルはあまり着替えないので、いつも服が汚れています。ユニオン・スーツ(うしろが開くようになっている下着)を着ている人も見られます。衣装のディテールで、キャラクターの特徴をさらに明確にしているのです。だらしなくてうす汚い人はそれらしく見えますし、服に気を遣うおしゃれな人はそれなりの立場に見えますから。

――ダッチの着ているスーツの生地は、すごく上等ですよね。そのおかげで、彼がどのような人なのかがわかる。

ロブ その通り、彼はボスですからね。そこも、ギャングと生活するというアイデアを実現するために実装したもののひとつです。いっしょに生活していれば、彼らの関係がよくわかるだけでなく、肌で感じられるようになります。アンクルが下着姿で酔っ払って寝ていて、何もしない様を見たと思いますが、私たちと同じように、皆それぞれに1日のスケジュールがあります。誰もが、キャンプで1日中鍋をかき回しているわけにはいきません。私は誰が何をしているのか気になるタイプなのですが、同じようなプレイヤーがキャラクターたちの行動を追っていったとき、そこで見たものがどこまで本物に感じられるかは大事ですよね。ここもきちんと表現しなくてはいけないと、すぐに気づきました。経験者ならわかると思いますが、キャンプではやることがたくさんあります。キャンプでは食事が重要です。誰が料理をして、誰がそのサポートをするのか、誰が薪を割って、誰が火の番をするのか、誰が後片付けや掃除をするのか。すべてを分担して行動しなければなりません。何もしない人は当然、皆から責められます。キャンプの様子を表現するには、彼らがどのように生活しているのか、そこまで考えなくてはいけない。プレイヤーが彼らの様子に気づかず、通り過ぎてしまっても構いません。誰と誰がいい関係を築いていて、誰と誰がいがみ合っているのか、これまでの作品では深い部分まで突っ込んで描けませんでしたが、今回はよりキャラクターの多彩な特徴を引き出すことができました。

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――短いデモプレイでも、キャンプにおける人間関係が見えました。

ロブ キャンプだけを専門に作るチームがあります。ストーリーやナラティブによって、仲間の誰かと何かをしたことがあったのに、初めて会ったような行動を取るのはおかしい。たとえば、ある人物がマップのどこかにいて、プレイヤーに会うことになっているとしましょう。それなのに、いるべきでない場所で遭遇したら変ですよね。なので、どのタイミングでどこにキャラクターがいるのか、すべてを正確に把握している必要があります。これはたいへんな作業になるのですが、プレイヤーが信じられる場所を作るというのは大きなチャレンジであり、とても楽しいものです。いまも、磨きをかけて調整を続けています。

――NPCとすれ違うだけで、その人が友好的かどうかもわかりました。返答をひとつ取っても、AIが進化していると思いました。それに、同じセリフをくり返して返答したりしませんよね?

ロブ これまでのすべてのゲームを進化させ、できる限り進化を進めるという姿勢のひとつです。これまで達成できなかったレベルで、とても美しい世界に溶け込み、身体がそこにつながっているように感じられ、人々ともインタラクトできるようになっています。建物に入って引き出しを開けて物を取り出すだけではなく、世界で出会う人すべてと話せるのです。キャンプでは濃いコミュニケーションが可能でも、キャンプの外ではインタラクションに限界があるのではなく、知らない人に出会って会話をするような感じで、あらゆる人とコミュニケーションできます。私たちがやるべきことを実現できたら、ゲーム内のあるいろいろなアイデアがお互いを強化してくれるはずです。キャンプにいる仲間とそれ以外の人たちとのインタラクションで違和感があると、世界とのインタラクションそのものが崩れてしまいます。そのために、プレイヤーにオプションや選択肢を提供し、容易に人々と話ができるシステムが必要となりました。ここで、コントローラの左トリガーを使ったアイデアが生まれました。

――左トリガーでガンアクションと言えば、だいたいは撃つ動作につながりますよね。

ロブ 本作では、銃をホルスターに入れているか、手に持っているか、その違いで行動が変わります。銃がホルスターに入っている状態なら、左トリガーを押せば相手にロックオンはしますが、エイミングせず、相手に言う言葉を選択できます。通り過ぎる際に左トリガーを引くと、会話の選択肢が出るのです。そこで「こんにちは」とあいさつするだけで、停止することなくそのまま歩き続けるという、自然なインタラクションができます。デモプレイでも、馬に乗りながら挨拶していたシーンがあったと思いますが、ここで右のトリガーを引けば銃を撃ちます。すでに銃を手に持った状態なら、そのまま銃を撃つという、一般的な行動を選べます。これまでは二者一択だったアクションでも、多くのオプションを提供することができるようになりました。

――とても西部劇らしいシーンだと思います。

ロブ このシステムは、ほかのアイデアにうまくつながっています。たとえば、“名誉”というシステムがあります。土地の権利書を手に入れたいとき、持ち主に200ドルを払うのか、殺してしまうのかという選択肢があったとしたら、選んだ結果で世界は変わります。そういった流れをゲームに取り入れました。いっさい殴ったりもせず、非暴力的な方法でも奪えます。いわば、プレイヤーはどのような無法者になるかを選ぶことができるというわけです。

――ロールプレイがさらに深くなりますね。そこもリアリティーのひとつだと。

ロブ そうです。リアリティーという面で言えば、本作では馬を見失った場合、前作のようにどこからか魔法のように戻ってきてはくれません。馬とどれだけ親密な関係を築いているか、どれだけ長くいっしょにいるか、どんな種類の馬なのか、さまざまな点に影響されます。馬を見失って戻ってこなければ、ひとりで荒野を歩かなくてはいけません。でも、誰かが馬で通りかかれば、その馬が欲しくなりますよね。前作では、馬を手に入れたいときは徒歩で追いつけないので、乗っている人を倒さなくてはなりませんでした。馬が逃げたら、必死に追いかけなくてはならなかったでしょう。今回は、馬だけを手に入れたいなら、先ほど説明したシステムを使います。適度な距離であれば、「ちょっと待ってください」と声をかけるオプションが表示されます。止まってくれない場合もありますが、止まってくれれば、そこまで向かって馬を手に入れられます。馬車であれば、乗せて行ってもらえるように頼めます。

――前作では、ひとりでいると襲われることが多かったですよね。襲われている女性を助けようとしたら、3人くらいの男が出てきてやられてしまうこともありました。今回は、逆に仕掛けられるわけですね。

ロブ そうです(笑)。今回は現役の無法者を演じるのですが、アーサーは仲間の面倒を見る責任を果たすために、一定のことはしなくてはなりません。ギャングが生存するにはお金が必要で、お金は仕事をして稼ぐことになります。お金を稼ぐ方法はたくさんあります。狩りの獲物を売ったり、他人から非暴力的に金品を奪うこともできます。ワールドを探索して、いろいろな方法でお金を稼げますし、どこまで力を使うかもプレイヤー次第です。しかし、世界は安全な場所ではなく、さまざまなトラブルが待ち受けており、襲われることは十分に予測できます。プレイヤーのグループは、ほかのギャングや野生動物から身を守るため、ともに暮らしているのです。

主人公アーサー・モーガンについて

 前作より過去の世界が舞台となる、『RDR2』。ティーザー映像では、まだその人物像の多くが不明であった新しい主人公のアーサー・モーガンとは、いかなる人物なのか?

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――アーサーは、前作の主人公であるジョン・マーストンとはまったく違うタイプのキャラクターに見受けられました。

ロブ アーサーはジョンとは違い、人生において異なるステージにいます。前作では、ジョンは半分更生していて、まじめな人間になろうとしていました。本作では、アーサーの視点から、前作と比べてジョンの異なる面を見ることができます。

――アーサーというキャラクターのコンセプトは?

ロブ 本作でギャングのことを考えたとき、アーサーは完全に形成されたキャラクターとして出てきました。ダン・ハウザーが作り出したダッチという人物は、メシアのようなギャングのリーダーで、自分を器以上の人間であると思い込み、大きな野望を持っていました。彼の周囲にいるのは、どんな人物か? ジョンは、ギャングにいるひとりのメンバーにすぎませんでした。ダッチなら、誰を自分のそばに置くか? アーサーはダッチが見つけて育てたので、小さいころからいっしょにいました。なので、ふたりは親子のような関係にあり、アーサーはダッチに忠実です。そのようなキャラクターは魅力的で、プレイヤーがさまざまな経験をしていくうえでもふさわしく、すばらしいキャラクターだと思いました。プレイヤーはアーサーと体験を共有していくのですが、彼がどのように変化していくかは予測できないのです。

――このような主人公がロックスター・ゲームスの作品で主役になることは、いままでにもありませんでした。これまでは、もともと犯罪者だったり、何らかの事情を抱えている人が多かったと思いますが、今回のアーサーは違っているように思います。

ロブ 私たちはつねに新しいこと、新しいキャラクターに挑みたいと思っていますが、アーサーの旅がどこへ向かっていくのかはわかりません。人生の真ん中にいる人物を取り上げたので、そこからどこへ行くのかは予測がつきませんが、それを見届けるのは興味深いと思います。残念ながら、今回のデモでは彼の一面しかお見せできませんでしたが、ゲームプレイを通して、彼を理解できるようになるでしょう。アーサーは、プレイヤーが好きに動かせるただのアバターではなく、その体験を共有する一個の人間なのです。プレイヤーは、アーサーという人物の設定の範囲内で、彼のアクションに影響を与えることができます。彼は変化する能力をどれくらい持っているのか? それも、プレイする中で見つけることができます。

――前作より時代を過去の物語に設定した理由もお聞かせください。続編というのは通常、前作の続きとなる場合が大半なのですが、 まさかの巻き戻しに驚きました!

ロブ ダッチのヴァンダリン・ギャングのストーリーを語りたいと思ったからです。そのために、時間を巻き戻す必要がありました。このストーリーを紐解き、皆さん自身で経験してほしかった。時間を戻すことで、前作で触れた要素をさらに推し進められるようになりました。急速に近代化する社会、産業化、都市の始まり、西部の荒野が人の手に渡って閉鎖され、法に支配されていく様子など、この時代のコンセプトは魅力に溢れていておもしろい。ぜひ、これを取り上げてみたかったのです。

『RDR2』が実現する新たな体験

 インタビューの最後に、ロブ・ネルソン氏には『RDR2』で体験してもらいたいポイントについて語ってもらった。革命とも言えるゲームデザインが、我々に何を与えてくれるのか? 長時間に及んだインタビューの総括で、本稿の締めに代えさせていただこう。

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――日本のプレイヤーも『RDR2』には、おおいに期待していますが、現時点では何ができるのかはまったくわかっていません。本作でユーザーに体験してほしいポイントは何でしょうか?

ロブ 前作で感じたセンセーションやフィーリングを体験してほしいですね。プレイしているキャラクターとのつながり、違うワールドに入り込んでいるという感覚、いまとは違う時代で生きている感覚を味わっていただきたいです。これは、私たちが作るすべてのゲームから感じてほしいことです。前作で感じたものを再び感じてもらえるよう作ってきましたが、それがさらに深まって、世界のすべてとしっかりつながり、没入感の強いものになっていて、すべてがしっくりくる、腑に落ちると感じていただければ、とてもうれしいです。

――すばらしい体験に期待します。ありがとうございました。

ロブ こちらこそ、ありがとうございました。