グラビティゲームアライズより、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)向けに発売予定の『神箱 KAMiBAKO - Mythology of Cube -』(以下、『神箱』)。マップクラフト、パズル、バトル、RPGといった複数のゲームジャンルが組み合わさったファンタジー世界を舞台に、かつてない冒険が楽しめる作品だ。そんな本作は、2023年7月14日(金)~16日(日)に京都府京都市勧業館みやこめっせで開催される国内最大のインディーゲームイベント“BitSummit Let’s Go!!”(以下、“BitSummit”)に出展される。
今回、“BitSummit”のグラビティゲームアライズブースに出展される試遊版を先行体験する機会を得たので、プレイして感じた魅力を紹介するとともに、プロデューサーの神崎喜多氏とメインプランナーを務める石井政仁氏へのインタビューをお届けする。2Dから3Dへの移行などといったブラッシュアップが行われているので、過去の試遊出展でプレイした人も必見だ。
“修復者”となって土地の分断を修復する冒険へ!
本作は世界観を大事にしているとのことなので、まずはあらすじを簡単に説明していく。
舞台となるのは、天界に女神、地上に人間、深淵(アビス)に悪魔が住むファンタジー世界。地上で暮らす人間は5つの国を築き上げ、それぞれ繁栄していたが、あるとき“大分断”によって、つながっていた大陸は各国が孤立するように分断されてしまう。さらに、各地で土地に大きな立方体の穴が開く現象“断片化”が発生。その影響で開いた穴は深淵につながっており、そこから出現するモンスターたちによって、世界は混沌の渦に飲まれていってしまった。
そんな世界を救うため、女神は土地を修復する能力を持つ“修復者”を各地に派遣し、“断片化”の収束を図る。プレイヤーは、“修復者”のひとりとして選ばれた主人公となって、世界の分断を修復する旅に出ることになる……というのがおもなあらすじだ。
冒険が始まると、地図のように描かれたマス目状のフィールドに降り立つ。一見、平らで何もない世界が広がっているだけのように見えるが、マスに足を踏み入れることで草原や森、山などが出現する。
言葉だけだとシンプルなシステムに思うかもしれない。しかし、この要素があることによって、未開の地を自分の足で切り開いているような感覚と、つぎのマスではどんな地形が現れるのかというわくわく感が味わえるので、少し歩くだけで大冒険をしているように感じる。
開始早々、歩き回っていろいろなところを探索しに行きたくなるが、試遊時間が限られているため、グッとこらえてとなりのマスに出ている吹き出しマークを目指すことに。そこで馬車が壊れてしまい、困っている男と遭遇。北にある木こりの小屋に行って、修理に必要な木材をもらってきてほしいという初ミッションを受けることになった。
小屋に行くと西にある山に咲く白い花を取ってきてほしいという別の依頼が発生。この時点で方向音痴であり、さらに記憶力もあまりない筆者は、無事にクリアーできるか少し不安になった。だが心配無用だった。なぜなら、本作ではいまやるべきことが画面右上に表示されるだけでなく、その目的地と方角を教えてくれるナビも付いているという完璧仕様だからだ。本当にありがたい……。
ということで、今後もたくさんのミッションがつながったものを受けるときがあるのかもしれないと考えつつ、無事にふたつのミッションをクリアーし、最初の街である“ザンクトアリウム”へと向かった。
街では、メインストーリーの進行や食料の調達などができるほか、NPCから冒険に役立つ情報を得たり、より世界観について知ることができるサブミッションを受けることもできる。サブミッションは、300種類ほどあるとのこと。道中で仲間になるキャラクターは10人いるのだが、各キャラクターのストーリーが描かれたミッションがそれぞれ20種類(全120種)ほどあるらしいので、これらをすべてクリアーすることがひとつのやり込み要素になりそうだ。
食料は冒険をするうえでの必須アイテムで、街の外にいるあいだはつねに消費し続ける。食料がなくなると、冒険ができなくなってしまうので、外に出るときは忘れずに購入する必要がある。
シンプルで爽快なパズルを解いて、“断片化”した土地を修復しよう!
ここからは本作で楽しめる要素をひとつずつ解説していく。
まずはパズルについて。パズルは、マップ上の渦のようなマークのところにある“断片化”した土地を修復するときに行う。決められた手数の中でひとつのピースを動かし、同じ色のピースをふたつ以上並べて消していき、指定された色を一定数消すことでクリアー。土地の修復が完了する。
また、バトルで重要な“マナ”を集める“マナ採取パズル”でもパズルを行う。こちらでは、制限時間以内に消したピースの数に応じて“マナ”を獲得できる。どちらもルールは簡単でありながらも、一度にたくさんのピースを消したときは爽快で楽しい。
一風変わったターン制バトルは緊張感が高まる!
シンボルエンカウントの敵との接触で戦闘が始まる。バトルはターン制なのだが、従来のRPGのように1ターンに1回ずつ攻撃をして終えるのではなく、キャラクターステータスの素早さにより攻撃回数が変わるという少し変わった仕様になっている。修復者は攻撃できないため、修復者フェーズで仲間がスキルを使用するのに必要な“マナ”を与えることになる。
戦闘フェーズに入ると、お互いに攻撃開始。こちらは基本的に仲間が自動で攻撃してくれるが、マナが溜まっていればプレイヤーの好きなタイミングでスキルを使用することも可能だ。戦況に応じて必要なマナを配ったり、スキルのタイミングを見極めることが戦略のカギになるだろう。マナが枯渇しているときや強敵との戦闘前に“マナ採取パズル”を行うのが戦闘の基本になりそうだ。
土地の発展は冒険に必要不可欠
街のクラフトは民家を建てるところから始まり、そこからさまざまな施設が建てられるようになる。柵や壁、門で囲われたエリアの中に一定数の施設を作ることで村や町へと発展。近くの村や町と道がつながり、資源などが店で売られるようになったり、名前を付けられるようになるほか、交易を発展させていくことで、買える商品が増えたり、マップ移動が楽になる。
そのほかにも、木こり小屋を建てると定期的に資材が手に入ったり、鍛冶屋を建てると武器を購入できるようになるため、村や町をたくさん発展させていくと、フィールドが賑やかになるだけでなく、冒険の幅も広がっていく。
また、上記で紹介してきたものに加えて、ダンジョンの探索や今後実装予定の天候と季節によって出現する場所があったりなどの要素もあるそうだ。
マップクラフト、パズル、バトル、RPGといった複数のゲームジャンルが1本に凝縮されている本作。ひとつひとつの要素はシンプルでわかりすいものになっているため、いずれかのジャンルをプレイしたことがないという人でも楽しく遊ぶことができるだろう。
そして筆者がとくに魅力を感じたのは、やり込み要素の多さと世界観を重要視している点だ。ひとつのタイトルを長く遊びたい人、細かい設定を知るのが好きな人にとって、『神箱』はうってつけの作品と言える。
【インタビュー】ユーザーのフィードバックを受けて2Dから3Dに
試遊後には、本作のプロデューサーである神崎喜多氏と開発進行を務める石井政仁氏へインタビューを実施。『神箱』の開発経緯や“BitSummit” 、“東京ゲームショウ”後の改善点などを伺った。
神崎喜多氏(写真右)
グラビティゲームアライズ 『神箱 KAMiBAKO - Mythology of Cube -』プロデューサー
石井政仁氏(写真左)
グラビティゲームアライズ 『神箱 KAMiBAKO - Mythology of Cube -』メインプランナー
ユーザーからさまざまな意見をもらえたからこそ、いまの『神箱』が成り立っている
――『神箱』はマップクラフトやパズル、RPGなど、さまざまなゲームジャンルが組み合わさっていますが、これらの要素を取り入れることになった経緯を教えてください。
神崎『神箱』の開発は、「立方体のゲームを作りなさい」という会社からのオーダーが始まりでした。そこから、立方体のゲームと言えばパズルということで、パズルRPGというジャンルで作り始めることになり、そこから壊れた世界を直していくものにしました。
当初はパズルRPGで組み立てていく中で、「修復するだけでいいのではないか」ということで進めていたのですが、「でもRPGだったらやっぱり戦いたいよね」という話になり、そこから“直していく人が戦う”という点に違和感を覚え、いまのバトルシステムになりました。つぎに、「土地を直すだけで本当にいいのか? それ以外にも何か作れたほうがいいのではないか?」ということになり、クラフト要素ができて、いまのトータルジャンルに辿り着きました。
――「立方体のゲームを作る」というところから出発して出てきた案を採用していった結果、いまのゲームシステムになったのですね。
神崎そうですね。物足りないと感じたところに要素を取り入れていって、いまの“ワールドクラフトRPG”というジャンルになりました。
――複数のジャンルを取り入れた本作に手応えを感じたのはどれくらいの段階だったのですか?
神崎2022年のBitSummitと東京ゲームショウに出展したときの、プレイしてくださった方たちの反応に接してからですね。それまで僕たちはこの作品を受け入れてくれるかどうか不安でしたが、お客さんから「おもしろい! 新感覚だ!」という声や「もっとこうしたい。ああしたい」というフィードバックを受けたときに手応えを感じました。さまざまなご意見をいただけたからこそ、いまの『神箱』が成り立っているのです。
石井お客さんの反応がいちばんよかったのは、閉じられたマップを解放していく楽しみや、解放されたマップの中で独自の街を形成していくことによって、どんどん探索範囲が広がっていくという、本作のコンセプトでした。
――ユーザーからのフィードバックを受けて、取り入れた要素とは何でしょうか?
神崎マップの見えかたや移動速度といった操作性、バトルシステムなど、いろいろあります。たとえば、修復者しか必要ない場面でも、会話パートのときにはほかのキャラクターを出したりして、ちゃんとそこに仲間がいるという表現をするなどですね。お客さんからの「もっとこうしてほしい」という意見を取り入れたのが、いまの『神箱』になっています。
石井グラフィックに関しても、当初は2Dだったのですが、「せっかく自分でマップを広げていって街も作れるのなら、街作りも豪華にしたいです」という要望をいただき、3Dになりました。
――ユーザーからのフィードバックを受けて、ゲーム性を広げるために2Dから3Dへ移行するという大きな決断をしたのですね。
神崎見た目の問題やゲーム性をよくするためには、3Dしか選択肢がありませんでした。
――決断をしたのはいつですか?
石井去年の12月ですね。
――最近じゃないですか!?
神崎そうなんです。ですので、無茶苦茶な開発スピードでやっているというのがおわかりいただけると思います。僕らはもう2、3年開発している気分ですが、実際はまだ作り始めて1年半ぐらいですね。
石井僕が一昨年の6月ぐらいにジョインして、開発管理と一部機能の仕様書などを作っていました。
神崎それまでは僕がひとりでやっていましたね(笑)。石井には、いまはディレクション的なところとゲームバランスとメインプランナーをやってもらっています。ちなみに、ポスターデザインとかは僕が作っています。基本は自分たちでやるので、この開発速度ということはあるかもしれません(笑)。
主人公が冒険者なのは、「誰もが特別なものを持っていなくても役割がある」というメッセージ
――先ほどの試遊で、「移動はできるだけフィールドを見せるように意識している」とおっしゃっていましたが、そのほかのこだわりはありますか?
神崎『神箱』は “冒険させたい”というのがテーマなのですが、石井さんが「間に合わないですけど、マップを3倍に広げます」って言ったんですよね。
石井はい。冒険感がないと思ったので、マップを広げることを提案させていただきました。
神崎そう、冒険感がない。つまり、マップが狭いと遠くの街に出かけたという実感がないということなので、しんどいですけど遠いところまで行けるような大規模なマップにしました。冒険感を出すために、そこはこだわりましたね。
石井冒険をしながら街を作っていくことによって、そこを拠点にどんどん探索範囲を広げていくという遊びかたが『神箱』のひとつのカギだと思っているのですが、それを活かすためにはやはり狭いマップだと表現しきれないと思ったのです。ですので、開発が遅れてしまいますが、広げさせていただきました。
あと、冒険していく過程でエンディングにつながるシナリオはあるのですが、それを探してもらうために、メインシナリオというものを置いていないですね。勇者だと魔王を倒さなければいけないなどの目標がありますが、冒険者なので、自分が切り開いたところからストーリーを見つけて、自分なりの終わらせかたをしてもらいたいです。
神崎“冒険感”というテーマは、キービジュアルにも現れています。我々は勇者を作りたいわけではないので、キービジュアルのこだわりとして、冒険者という意味であえてゴーグルを見えやすい首にかけています。
――勇者と冒険者の違いはこのゲームにどう活かされているのですか?
神崎それはもう明確で、勇者というのは唯一無二の存在なのですが、修復者はじつはこの世界で複数人いるんです。つまり、一般の人々がなれる役職なのです。そこが大きな違いですね。じつはアルクやミナスなどがこの世界の主人公で、アルクは聖騎士という特別な役割を持っていますし、ミナスは僧侶という癒しの力を持っています。修復者というのは、あくまで女神から与えられた修復の能力を使って、崩壊した土地を直すサポートをする役というのを描きたかったので、勇者=俺ではないというテーマ性があります。
石井大陸で出会う仲間たちがほぼ主人公みたいな立ち位置ですね。基本的にプレイヤーは、その旅に同行している修復者という形になっています。
――それはプレイヤーに向けて何かのメッセージでもあるのですか?
神崎そうです。誰もが特別なものを持っていなくても役割があるというメッセージが込められています。
――まさに勇者ではないということですね。ところで、試遊時にマップ移動は端から端へ行くのに6時間ほどかかってしまうというお話がありましたが、移動時間を短縮できる要素は実装されるのでしょうか?
石井街を作っていくことで、街どうしがつながって交易ができるようになり、街道を通ることで移動速度が上がります。いままで街を作るために必要だった素材も集めやすくなるので、街作りをすることで移動が楽になりますね。
神崎あと、移動手段として船と馬車もありますし、ワープポイントもあるので、移動に関してはそこで短縮できます。街を大きくしつつ、バランスよく資材を集めていくことで、世界を広げていくことができるようになっています。
――立方体でゲームを作るというオーダーから始まり、パズルRPGとして開発を進め、最終的に街作りがこのゲームのベースになったということですね。
神崎ひと言で言うとそうなりますね。ワールドをクラフトするゲームという謳いかたをしているので、冒険をしながら四角いパズルを解いて世界を作っていくというのが、本作の基本的な遊びかたかなと思っています。
続編の構想はある。夏配信の体験版にも期待してほしい
――気の早いお話ですが、発売後の追加コンテンツなどは現時点で考えていたりするのでしょうか?
神崎本作が売れるかどうかで決まりますが、続編の構想はあります。
――続編があるのですか?
神崎もともとこの世界の大陸は5大陸あるのですが、今回作っているのは2大陸だけなんです。本作では、 “ザンクトアリウム”というところから北のほうの物語を描いているのですが、南、西、東の話もすでにあります。元から5大陸分の物語を作る想定だったのです。
――最初から5大陸を想定していて、今回は1大陸のみ作ることになったということでしょうか?
神崎そうですね。
石井各国の設定が膨大にありまして、それを5大陸分語っていたら、いつ開発が終わるのかわからなくなるレベルになってしまうので……。
――本作には、サブクエストも含めると300を超えるクエストがあるとのことなので、5大陸分やってしまったらたいへんなことになってしまいますよね(笑)。
石井おっしゃる通りです(笑)。
神崎残りの大陸のストーリーも考えていますが、それがDLCになるのか続編になるのかは決まっていません。『神箱』はあと3大陸で完結する予定です。
――完結するためにも、『神箱』がユーザーに楽しまれてほしいですね。最後にBitSummitでの試遊を楽しみにしている読者に向けてメッセージをお願いします。
神崎BitSummitで、3Dになった『神箱』を楽しんでみて、ぜひご意見を聞かせてください。また、2023年夏には体験版の配信も予定しておりますので、こちらも楽しみにしていてください。
石井Twitterでは、去年の11月ぐらいから告知をさせていただいていたのですが、2Dから3Dに差し変わったことによって、体験版のリリースなどが大幅にズレてしまいました。今回のBitSummitでようやく3D版をプレイできるので、ぜひ現地で3Dになった『神箱』を遊んでいただければと思います。