2023年8月18日からの劇場先行上映を経て、10月8日よりテレビアニメとしてスタートした『アイドルマスター ミリオンライブ!』。現在、第5話までが放送されており、物語も中盤に差し掛かっている。

 そこでファミ通.comでは、本作を手掛ける監督の綿田慎也氏と、シリーズ構成・脚本を担当する加藤陽一氏にインタビューを実施。本作に携わることになった経緯や、制作過程でのエピソード、今後の見どころなどを語ってもらった。

 なお、ファミ通.comでは、アニメ全話放送終了後にネタバレありのインタビューも実施予定。そこで制作スタッフに聞いてみたいことを大募集。応募フォームなどは記事の最後に掲載しているので、ぜひそちらもチェックしてほしい。

綿田慎也氏(わただしんや)

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』監督。
1979年生まれ、宮崎県出身。サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)入社後、数多くの作品に演出として参加。監督としての代表作は、『劇場版アイカツスターズ!』、『ガンダムビルドダイバーズ』、『ガンダムビルドダイバーズ Re:rise』など。
文中は綿田。

加藤陽一氏(かとうよういち)

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』シリーズ構成・脚本。
1979年生まれ、東京都出身。脚本家として、『アイカツ!』、『妖怪ウォッチ』、『宇宙兄弟』、『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』などに携わる。2023年10月27日より劇場先行上映が開始されたアニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(テレビ放送は2024年春予定)のシリーズ構成・脚本も務めている。
文中は加藤。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

――まずは、劇場先行上映の全3幕が終了し、テレビでの放送がスタートしたということでいまの率直な気持ちを聞かせてください。

※インタビューは第1話放送後に実施しました。

加藤僕は劇場先行上映第3幕の舞台挨拶で綿田さんがものすごい声援を受けていたのを見て、我がことのようにうれしかったです。

綿田僕としては、何かむず痒いような変な感じでしたよ(笑)。ただ、まずはホッとしたというのが素直な気持ちです。劇場先行上映の完走とテレビ放送スタートという、ふたつのポイントで最初の山は越えたかなと。

――まさに、皆さんの素晴らしい仕事に対する賞賛が、舞台挨拶の声援に繋がっていたと思います。あの温かい声がプロデューサー(※『アイドルマスター』シリーズのファンのこと)さんたちが作品から受けられた印象だったのかなと。

綿田そうですね。最初に見てくれるお客さんに喜んでもらえたので、本当にいちスタッフとしてよかったなというところです。

――プロジェクトの始まりの部分に話を戻させていただきまして、そもそもおふたりは、この仕事に関わる前から『アイドルマスター』シリーズはご存じでしたか?

加藤綿田さんがおそらく長く語ってくれると思うので、まずは僕から(笑)。僕は『アイカツ!』という、アイドルアニメのシリーズ構成をしていたので、『アイドルマスター』はアイドルコンテンツの大先輩で中心的存在だと捉えていました。なので、まさか自分が携わるとも思っておらず、お話をいただいた時はとてもうれしかったですね。

綿田僕はゲームセンターで稼動していた時から知っていましたが、プレイしたことはありませんでした。本格的に知るようになったのは、やっぱりアニメ『アイドルマスター』ですね。仕事柄、いろいろなアニメを見ているなかで、当時としてもかなり豪華なスタッフが丁寧に作っているアニメで、印象に残っていたんです。

 その後で、アイドルアニメの仕事もするようになって、参考に深堀していきました。そして、“ニコニコ動画”を見たり、楽曲を聞いたりしているうちに「これはおもしろいな」となりましたね。

 ゲームで初めてプレイしたのは『アイドルマスター シャイニーフェスタ』で、ライブの初参加は“THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!! 2014”だったかな。そのころには、ソーシャルゲーム版『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリマス』)もリリースされていたので、プレイしていました。

――そういえば、加藤さんがX(旧Twitter)で綿田監督がガチのプロデューサーとポストされていましたよね。

加藤ポストした後に、そういえばパンフレットとかで明確には触れていなかったから言わないほうがよかったかなと思ったけど……皆さん完全に気づきましたよね(笑)。

――作品を観た方であればある程度想像はできていたかなと思います(笑)。

綿田それと伝わるように1幕から3幕のパンフレットも構成していましたから(笑)。

加藤アニメ業界でそれを知っている人は本当に少ないというお話でしたよね。2~3人ぐらい?

綿田そうですね、サンライズのときに親しくさせてもらっていた一部の人ぐらいですかね。

加藤僕はその数少ないうちのひとりで、今回のアニメは僕のほうが先に企画に入っていて、「監督は誰にする?」という話になったときに、「それは綿田さんしかいないでしょ」と迷うこともなく、お声がけしてみることにしました。

――綿田さんは『ミリマス』を遊ばれていたということでしたが、けっこうプレイされていたんですか?

綿田ガチとまで言えるかはわからないですが、イベントもそれなりに走っていましたね。

加藤X(旧Twitter)で「当時、自分たちは綿田さんのプロデューサーネームを見ていたんじゃないか」と盛り上がっている人たちもいましたね。

綿田初期の頃は、上位ラウンジとマッチングしてたりもしていたので、“アイドルマスターズカップ(エボリューション)”でごいっしょした方もいるかもしれません。

――そんな中でアニメの監督というお話がきたときは、どういう心境だったんですか?

綿田相談されたときは「どうしようかな」と……。いちプロデューサーでいられなくなってしまうというような葛藤もありました。

加藤いっしょに仕事をすることが決まってから全国にライブを観に行ったのですが、関係者席から一般席に行きたそうにうずうずしていたもんね(笑)。あのときに申し訳ないことをしちゃったかな~……と思いましたよ。

綿田けっきょく、また自分でチケットを取るようになりましたからね(笑)。

加藤ある面ではいちプロデューサーに戻ったのかな。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

――そうなんですね。ここから具体的な制作についてお聞きできればと思いますが、どのようにアニメ化プロジェクトを進めていったのでしょうか?

加藤最初は本当にまっさらな状態で、「『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリオンライブ!』)をアニメにするにはどうするのがベストなんだろう?」という話し合いから始まりました。物語のベースになるものが、『ミリオンライブ!』なのか、それとも『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(以下、『ミリシタ』)なのかというようなところも決まっていなかったです。

 それと同時に映像表現をどうするのか決めていく中で、綿田さんにも合流してもらって、試作映像を制作したり、39人に765PRO ALLSTARSの13人と合わせて52人をどう扱うかなどを議論していたのですが、その期間がかなり長かったですね。

綿田まだ、白組さんが入る前ですよね。やっぱり、指針をどうするのかというところでかなり難航しました。

加藤なにをよしとするか、なにを目指すか。なるべく多くの方に喜んでいただきながら、新規の方にも楽しんでいただくために、限られた尺の中で、なにをして、なにをしないか。ホワイトボードに手作りのアイドルたちのマグネットを貼って、関係性やどういう動きをするのか議論を重ねましたね。

綿田そのときにチーム分けなども考えていたりして、その名残が本編に入っていたりもします。

――ちなみに、バンダイナムコエンターテインメントのほうからは、何かオーダーなどがあったのでしょうか。

加藤現場ではゼロベースで議論を重ねていましたが、坂上さん(2023年3月まで『アイドルマスター』シリーズ総合プロデューサーを務めていたガミPこと、坂上陽三氏)にお会いしたときに、「学園モノ的なワチャワチャ感」、「プロデューサーの立ち位置と描きかた」を大切にしてほしいと言われました。

綿田今回のアニメでメインになっているのが14歳の3人というやや年齢が若めなところで、アイドルたちを学校のひとつのクラスのように捉えて、そこから“箱推し”というコンセプトに繋がっていきました。

――ある程度コンセプトが決まって、本格的な制作に入られていったと思いますが、その際、坂上さんから言われたふたつのポイント以外に、このルールだけは絶対に守ると決めたものなどはありますか?

加藤いっぱいありますが、いちばん大きなところはやはり全員を登場させるっていうこと。それは最初の段階から決まっていました。

綿田箱推しのアニメですからね。ただ、じつはプロデューサーを出すか出さないかみたいな議論をしたこともありました。

――そうだったんですね。

加藤当時の企画書を見てみると、新規の視聴者の入り口になってほしい、『ミリオンライブ!』のみんなでがんばるっていうよさをしっかり出そうみたいな話もしましたね。

綿田新規の方も意識するというのは大切にしたポイントですね。先行上映におけるプロデューサーの皆さんの支持もすごくうれしかったですが、何もネタがわからない人たちにも、ちゃんとエンタメとして成立させようと。そういったバランスというのは気を付けていました。

加藤最初のころに考えた指針は、『ミリオンライブ!』のよさである振り幅の広さを視聴者に思いっきり楽しんでもらうということですね。

綿田本当に最初期に考えたコンセプトですよね。作品の雰囲気からわかる通り、湿っぽい話にはあんまりならないだろうという共通認識はありました。

加藤たとえば、何か落ち込むようなエピソードがあったとしても、そのエピソードのうちに基本的には解決まで持っていくように最初からこだわっていました。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

――新規獲得という意味で言うと、これまでの『アイドルマスター』シリーズのアニメとは異なり、朝の時間帯に放送することも大きなポイントかと思いますが、そのことについてはどういった印象を受けましたか。

加藤放送時間についてはシナリオが完成した後に決まったことなので、時間帯を考慮して書いたということはないですが、日曜日の朝にもピッタリな内容になっているとは思います。

綿田とはいえ、最初の段階からゴリゴリの深夜アニメにするぞという感じではなかったです。

加藤そうでしたね。新規の方にも楽しんでもらえるように間口を広く取ることをイメージしていましたから。

――脚本や方向性が固まって、そこからブラッシュアップなどを行っていったかと思いますが、バンダイナムコエンターテインメントとして、印象はいかがでしたか?

武井由香氏(バンダイナムコエンターテインメント・プロデューサー) 構成としては、「とにかく密度が濃い!」と思いました。すごくたくさんの情報量を詰め込んでいただいて、観てくださった方は実感いただいていると思うのですが、本当に無駄がないんです。それでいて、新規の方にもすごくわかりやすく、説明くさくもない、素晴らしいバランスに仕上げていただけたなと思っています。

 また、絵が上がってきたときの感想になりますが、アイドルたちが「しっかり動いて、存在している!」と感動しました。それこそ、第1話から765PRO ALLSTRASのライブシーンがガッツリ入っていて圧倒されました。CGだからこそできる表現というものがあって、いちばん驚いたのは引きの絵になってもまったく崩れないんですよね。ほかの関係者も「すごい」と盛り上がって、この先の期待感が膨らむ内容でした。

 ちなみに、先ほど加藤さんから放送時間はシナリオ完成後に決まったと言っていただきましたが、朝の時間帯に放送することが決まったのは、じつは本編がほぼ完成してからのタイミングでして、社内の関係者の間でも、「この内容は深夜じゃなくて朝に見てほしいよね」というのを話していたところに縁があり、日曜朝の時間帯で放送できることになったという経緯があります。

――そういう経緯があったんですね。ここから改めて第5話までの内容について聞かせてください。先ほど、坂上さんから「プロデューサーの立ち位置と描きかたを大切してほしい」と言われたというお話がありましたが、本作には中村源太さん演じる新人プロデューサーと、アニメ『アイドルマスター』にも登場した赤羽根健治さん演じるプロデューサーがチーフになって登場します。この部分は作品にとってもかなり大きな選択だったと思いますが、どのように決めていったのでしょうか?

綿田先ほども少しお話ししましたが、アニメとしてのプロデューサーを出さないという選択肢もありました。でも、やっぱり、アニメーションシリーズとして、ガイド役になるキャラクターは必要かなというところで、登場させることになりましたね。それに付随して、“赤羽根P”をどうしようかという点はいろいろと議論しました。

加藤でも、いるのが自然だろうというのは大きかったですよね。

綿田そうですね。アニメ『アイドルマスター』との繋がりをどうするのかは、企画を進めていく初期段階で議論の対象でした。そこで、やっぱりアニメとしての『ミリオンライブ!』を制作するうえで、昔のアニメを見たことがある視聴者の方にも楽しんでほしいということになりました。

 劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』でも『ミリオンライブ!』のメンバーがゲスト出演していたこともあり、なんとか盛り込みたかったんです。そこは僕のほうから強くアプローチをかけて、チーフプロデューサーを出すという大きい枠組みにさせてもらいました。

――赤羽根さん演じるプロデューサーが頼もしくなっていて感動しました。新人プロデューサーのイメージ像は最初から変わっていない感じですか?

綿田そうですね。プロデューサーをどうするかといろいろと議論をしましたが、チーフプロデューサーに続く新人というイメージは最初からありました。年齢感も、新卒の22~23くらいで、(馬場)このみさんよりは下だけど、(百瀬)莉緒、(桜守)歌織さんと同年代みたいな感じでした。あとは「同じ歩幅でいてくれる」人ですね。

加藤打ち合わせの段階では、べつの会社の内定を蹴ってこの業界に入ってきたみたいな設定もありました。

綿田社長に直接スカウトされたり、ほかにもいろいろな設定案がありましたね(笑)。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

――新人として入ってきて、いきなり39人のアイドルのプロデューサーを任されるということはかなりいろいろありそうですね(笑)。アイドルたち以外でいうと、アイドルの家族やカメラマンの早坂そらが登場するのもすごく印象的でした。

加藤家族については話を進めるうえで自然に出てくるだろうと。出さないほうがいいみたいな意見はなかったです。(春日)未来の両親は彼女の性格からもわかるようにすごくおおらかで自由な感じ。とくにお母さんは、未来のアイドルとしての素質みたいなものに無意識的に気付いているのだろうと個人的には思っています。

 ですので、あまり心配していないような素振りでどっしりした感じをイメージしました。また、(最上)静香の家族については、話のポイントとしては絶対に出したほうがいいだろうと。そらさんを推したのは綿田さんですよね。

綿田僕が「出したい」と言ったら、わりとみんな「えっ、出すの?」みたいな反応されて、逆にビックリしました(笑)。やっぱり、『ミリシタ』で登場するキャラクターは、ちゃんと登場させたいという想いがありまして。

 というのも、アニメを観てから『ミリシタ』をプレイした人が「このキャラ、あそこで出てた」という喜びがあるかなと思ったので。それこそ、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』とコラボしたときにレイジー・レイジー(一ノ瀬志希、宮本フレデリカ)のふたりのカードも実装されているので登場させたいと思ったんですけど、当然そこまで話を広げる余裕はなく断念しました(笑)。

 それと、765プロに関連したところでは、高木社長と善澤記者の話もあります。アニメの企画がスタートしたタイミングでは、すでに『朝焼けは黄金色 THE IDOLM@STER』(※一迅社より発売されているアニメ『アイドルマスター』のコミカライズ作品。高校生時代にアイドルを目指していた音無小鳥の物語が描かれている)の連載も始まっていたので、そこをどう踏まえるかというのも考えました。

 たとえば、『朝焼けは黄金色』で既に高木社長の顔は出ているので「出してもいいのでは?」とも思いましたが、そこはアニメ『アイドルマスター』に合わせて出さない方向に決めました。

加藤黒井社長の話も検討しましたよね。

綿田そうですね。もし黒井社長が出てくるとなったら、アニメ『アイドルマスター』準拠にするよりは、『朝焼けは黄金色』の裏付けがある状態で出さなければいけないだろうというような検討はしていました。その上で、『ミリオンライブ!』として彼をどう海に投げ込むか……。

 このように『ミリオンライブ!』のコンテンツに関わるキャラクターはできるだけ触れていきたいとずっと考えていました。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

――続いてアイドルたちについて聞かせてください。舞台挨拶で綿田監督の担当アイドルは秘密と語られていたり、立場的にお答えいただくのは難しいかもしれませんが、おふたりがアニメを制作していく中で、新しい発見があったり、とくに印象に残ったアイドルはいましたか?

加藤全員に発見はありましたが、やはり未来ですかね。

綿田いちばん大きいのはそうでしょうね。

加藤やっぱり39人のセンターになる子ということを考えると、みんなに出会って変化していく部分は当然あるのですが、そもそもなんらかの素質も持っているんだろうと個人的には考えまして。そういうところから、人物像を構築していきました。

 もともと未来は人に喜んでもらうことが好きなんですよね。第1話で部活の助っ人をいくつも掛け持ちしているのも、そういう気持ちの表れです。

 それにともなって、基本的には周りの人のことをちゃんと見ている。だから、同じく第1話の段階でステージのアイドルだけではなく、お客さんの反応も見ているんですよね。つまり、周りの人のことをちゃんと見て、笑顔になってほしいと思える素質を持っている。これが元々、彼女が持っているアイドルとしての素質なのかなと思いながら作っていきました。マイペースな面もありながら、未来の人を見る目はあたたかいんです。

綿田アニメでの未来はゲームと少し違って、ストーリー上で、センターである意味、役割、立場をどう構築していくかということを見出さないといけませんでした。その理由がどこかにあるはずだということを考えながらキャラクター作りをして、自然にセンターであることを、改めて正確に表現できたと思います。

 あと、(伊吹)翼は賢い子になりましたね(笑)。やっぱり物語の中心となる3人の対比を改めて作って、抱えている問題などを浮き彫りにしていく中で、少しだけゲームの最初の印象からは変わっていって、でも、それがしっくり来たというのはありますね。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

将来、「アニメからの古参プロデューサーです」と言ってもらえるような作品づくりを

――テレビでは第5話まで放送されていますが、これまでの中でお気に入りのシーンや、印象に残ったシーンはありましたか?

加藤正直、大事なシーンがいっぱいありすぎて絞れないというところはあります。

綿田第2話のオーディションシーンだったり、第3話で(七尾)百合子が先輩と呼ばれてからの変化だったり、第4話のシリアスな雰囲気など、挙げ出すとキリがないです。本当にすべてがお気に入りですが、その中でも第5話は初めてのお披露目イベントで、“このアニメは箱推しである”という我々の意思表明を込められたので印象深いです。

――確かに第1話~第4話も含めて、“箱推し”ということは強く感じました。

綿田多少、情報過多になってもやろうと。覚えてくれなくてもいいから、見てくださいというメッセージを込めました。ですので、加藤さんには、全員をどう出して、どう認識してもらうかというための段取りにめちゃくちゃ尽力してもらいました。

加藤とくに第3話からはその流れでしたね。

――限られた時間の中で、アイドルたちみんなが強烈なインパクトを残していくのがすごいなと思いました。ところで、作中にかなりネタを仕込まれていると思いますが、第5話までで、まだプロデューサーの皆さんが気付いていないのではないかというものはあったりしますか?

綿田基本的には、わかってもらわないと意味がないので、あえてわかるようにしているつもりです。しいて言えば2話のオーデション会場の受付が階段の上にあるのは、1stライブの時の受付の位置に合わせてですね。あとは『We Have A Dream』の振りの見せかたには、一部だけ『アイドルマスター ワンフォーオール』や『アイドルマスター ステラステージ』 のニュアンスを入れたりしています。

――ちょうどいま楽曲のお話が出たので『ToP!!!!!!!!!!!!!』、『Thank You!』など、ほかの楽曲の選曲理由についても教えていただけますか?

綿田シナリオの段階では765PRO ALLSTARSの楽曲を何か歌うということで、第1話と第5話でそれぞれいくつか候補を出していました。

加藤それで脚本が決定稿になるころには決めこむという感じでしたね。

綿田最初はいわゆる代表曲みたいなのをピックアップして、シナリオができてきたときにハマる楽曲がはっきりしてくるみたいな進めかたでした。

――ハマるというのは歌詞なども含めてということですかね?

綿田第1話については、(天海)春香のセリフに合わせて観客席の未来にカメラが迫る演出プランを先にたてました。そこで曲の構成として1回ブレイクを作って、また戻ってくるという流れが必要だったので、『ToP!!!!!!!!!!!!!』がハマるかなと考えました。

 実際に試してみたところピッタリハマって、歌詞もそこからストーリーとうまく繋がって広がる形になったので「この曲でいこう」と決めました。

――カメラ演出まで考慮されて選ばれていたんですね。

綿田曲決めのところで言うと、企画を進めているとき、『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4』シリーズも並行し始めていたころだったので、かなり選択肢はありました。そんな中で、まだ未来がライブを見るという設定もない本当に最初期の段階から、とりあえず第1話でライブシーンは作ろうと考えていました。

 それこそ765PRO ALLSTARSの全員が出るライブかも決めていなくて、「もう少し人数減らしたほうがいいのかな?」みたいなことも思ったりしていました。ですので、その時には、春香と(如月)千早のふたりによる『CRIMSON LOVERS』など、人数が少なめの曲も候補に挙げていた記憶がありますね。

 確か(星井)美希も加えたいわゆる信号機の曲も選択肢として考えていたのですが、意外と3人のユニット曲が少ないので、けっきょく全体曲の中からピックアップしていきましたね。ただ、白組の皆さんががんばってくださって、13人でのライブを実現することができました。

――本当に皆さんのがんばりがあって、第1話の765PRO ALLSTARS全員でのライブシーンはかなりインパクトがありました。ちなみに、その会場のモチーフを幕張イベントホールにしたのは、特別な理由があったりするんですか。

綿田構成の面で言いますと、劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』からの地続き感は出しつつも、実際には地続きではないようにするというのが今回のポイントだったので、同じライブ会場にはしないという意図はありました。

 制作の面ですと、箱の大きさが極端に違いすぎると、後で流用が利かなくなってしまうんですよね。シナリオ上、大型アリーナやドームクラスのライブシーンを作る予定がなさそうだったので、未来たちが憧れるサイズ感を意識しつつ、この後のお話で出てくるであろう別の会場とのすり合わせの結果ですね。

 『アイドルマスター』ブランドのリアルライブが行われた大きな会場はいくつもありますけど、やっぱり広いところが多くて。その中で、幕張イベントホールはプロデューサーの皆さんにとっても、『ミリオンライブ!』というコンテンツとしても馴染み深い会場であるのが幕張になった最終的な理由ですね。あとはスタッフもみんな知っていると思うので調べに行かなくても、会場までの道中なども含めて記憶だけでも作れるかなと(笑)。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る
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アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

――(笑)。でも、会場内含めて再現度がすごくて「そのまんまだ!」と感動しました。テレビ放送では、次回が第6話ということで中盤に入ってきますが、今後の見どころを、まだ見てない方にアピールしていただければと思います。

綿田やっぱりアニメオリジナルのチームが編成されて、新曲がいっぱい出てくるところですかね。

加藤いい曲しかないですからね。

綿田そうですね(笑)。第6話~第8話は、未来、静香、翼の3人から少し離れて、ほかのアイドルたちがフォーカスされるので、その辺りも見どころですね。そこでいろいろなアイドルたちのエピソードを楽しんで、気になる子がいたら、『ミリシタ』をプレイしていただけるといいかなと。

 そして、また第9話以降がちょっと真面目な雰囲気に戻ってきて、そこからかなり大切なストーリーが続いていきます。ライブシーンもかなり増えてきますね。

加藤ネタバレなしで言うとなると、これぐらいですかね。

綿田新規獲得を意識しているところもあったので、第6話以降は基本的に全員が初めて聞く曲だったり、展開を盛り込んでいます。将来的に、「『ミリオンライブ!』のアニメからの古参プロデューサーです」と言ってもらえるような作品にしたいと思って作りましたので、初めての方も、長く応援してもらっている方にもいっしょになって楽しんでもらえるとありがたいですね。

――ありがとうございます。本編から話がそれてしまいますが、先ほどおふたりでライブを観に行かれたというエピソードがありました。せっかくの機会ですので、とくに思い入れのあるライブなどがあれば教えてください。

綿田関係者としてご招待いただくようになったのは、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!”でしたよね。

加藤全国の4会場を回りました。

綿田僕は仙台公演だけ行けなかったんですよね。SSAは自分でチケットを取ってみました。そこから“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!! Reburn”は行けなくて、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 8thLIVE Twelw@ve”も配信で観て、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 9thLIVE ChoruSp@rkle!!”の1日目に久し振りに現地に行きました。

加藤日本武道館ね。

綿田そうです。そして、9thの2日目、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR”はAct-1、Act-2両方とも現地でした。じつは、先ほどもお話ししたように途中から、また自分でチケット取るようにしています。

――つまり、横に綿田監督がいていっしょに盛り上がっていたプロデューサーさんもいたってことですよね。

綿田そうですね(笑)。

加藤そして、つぎはAct-3と……。

――Act-3はアニメがコンセプトですが、もしかしたら、その監督がプロデューサーといっしょに客席にいるかもしれないと……。

加藤いやぁ、どうするのか楽しみですね(笑)。

一同 (笑)。

――最後に改めて、プロデューサーの皆さんにメッセージをお願いします。

加藤昔から好きでいてくださる方も、新しく観てくださっている方もSNSなどを見るとかなり盛り上がってくれていて、すごくうれしいです。そして、劇場先行上映からテレビ放送まで含めると、かなり長くお付き合いいただいて、本当にありがとうございます。これからBlu-rayも含めて、末永く楽しんでいただければと思います。

綿田10周年というタイミングで公開されることになって、その重みを踏まえた上でのアニメとして楽しんでもらいたいと思いますし、それを踏まえた上で、ここから改めて新しい1年目というか、新しい1歩を踏み出せるコンテンツとして進んで行きたいという想いもあるので、ぜひ重みと同じくらい軽やかな気持ちで楽しんで観ていただければありがたいです。 

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏インタビュー。プロデューサーを出さないという案もあった!? アニメ化始動から第5話までを振り返る

制作陣に聞いてみたいことを大募集

 記事の冒頭でも触れた通り、ファミ通.comではアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』の全話放送終了後にもインタビューを実施予定。そこで制作スタッフに聞いてみたいことを大募集。質問は現在(2023年11月5日時点)テレビでは未放送の第6話以降に関することでもオーケーです。締切は、2023年11月18日(土)23時59分まで。ぜひ、ご協力ください。

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