『VALORANT』の招待制国際大会“Red Bull Home Ground”が、相撲の聖地こと両国国技館で2023年11月3日(金・祝)~5日(日)に開催された。

 令和の時代突入とコロナ禍を経て、eスポーツの観戦スタイルに変化が見られている。会場の特殊性もあってか、本大会の盛り上がりはとくに大きいように感じた。選手はもちろん、ファンも昔と比較して劇的に進化しているのである。

 それはいったいどういうことか。筆者の主観を交えて解説していきたい。

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『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化

控えめな姿勢だった過去のオフラインeスポーツ観戦

 日本におけるオフラインeスポーツ観戦は、観客がとにかく大人しい印象だ。少なくとも2010年代頃までは、固唾を飲んで試合展開を見守るような姿勢が中心だったように思う。

 対して海外は観客が熱狂的。オフライン大会の写真や映像を見るたびに「海外の大会は盛り上がりのレベルが違う」、「うらやましい」とため息を漏らす。そんなeスポーツ関係者は少なくなかった。

『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
みんな大人しく観戦していた『League of Legends』日本プロリーグ決勝戦“LJL 2017 Spring Split Final”の様子。

 以下はブラジルで行なわれた『CS: GO』世界大会“Intel Extreme Masters Rio Major 2022”の様子。配信越しでも感じるすさまじい熱狂に驚かされる。

 もちろん、静かに試合に見ることが悪いわけではない。ただ、たとえばプロ野球や大相撲観戦に見られる熱狂がeスポーツにもあっていいのではないか。個人的にもやもやを抱えていたのは事実である。

 そんな状況が一変し、日本のオフラインeスポーツ大会は海外ファンがうらやむ存在になってきた。おもてなし精神と"推し"文化が組み合わさったスタイルが観戦客に浸透。出場する全選手やチームをリスペクトして歓声が飛び交う様子にはどこか温もりが感じられ、試合展開のみならずファンの姿勢すら多くの人の心を打つ。

 断言したい。日本のeスポーツ観戦体験は、この数年で劇的に向上している。

『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化

攻めの姿勢で楽しむ観戦スタイルが大会のクオリティをアップ

 近年のeスポーツファンのオフライン観戦スタイルは、過去の大人しい様子とは対象的で、とにかくその場を楽しもうという攻めの姿勢を感じる。

 観戦時の定番となっているのが推しチームや選手の名前が入った応援ボードだ。アイドルコンサートの名前入りうちわを思い浮かべてもらうとわかりやすい。

 これは各種のスポーツ観戦でも見られる応援スタイル。推し選手の名前、愛称、名言などを愛あるデザインで表現し、選手達が登場するやいなやボードを掲げて熱狂的に応援する姿は、席に座ってじっとしながら観戦していた過去とは対照的だ(熱烈に応援する人は昔からいたが、数が少なかった)。

『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
ぜえたでいびじよん(ZETA DIVSION)。

 今回観戦したRed Bull Home Groundでは、応援団長の出で立ちで推しチームの応援コールを先導し、会場を大いに沸かせる観客もいた。

応援の様子はこちら(Twitch配信クリップ)

 にぎやかなシーンはほかにも見られる。たとえば、FnaticのキャプテンBoaster選手はお尻をフリフリするなどさまざまパフォーマンスで人気の選手。対戦相手Cloud9のファンはラウンドを取った際にこのパフォーマンスを逆手にとって喜びを表現し、会場が笑いに包まれるような展開もあった。

喜びの模様はこちら(Twitch配信クリップ)

 観客のアクションをピックアップする大会運営側の判断は、観戦体験の向上にもつながる。活躍した選手の名前入り応援ボードを持ったファンやキャラクターのコスプレイヤーをカメラで抜くことは、昨今の大会配信の定番演出だ。

 せっかく応援ボードを作ったのだから、推し選手はもちろん配信を通していろいろな人に見てもらいたいというのもファン心理だろう。猛烈にカメラアピールする姿も目立つようになった。過去大会の観客はとにかく目立たないようにとカメラを避ける人も多かったことを思うと、これも対照的である。

『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
実況・解説陣のテンションの高さも盛り上げにひと役買っている。

 現在のコアな観戦者層は若い世代だ。動画配信サイト・SNS・スマホでのセルフィー撮影などと共に育ってきた彼らは撮影されることに慣れている。そういった時代性もアクティブな観戦スタイルにつながっているのではないかと思う。

 会場中の観客がスマートフォンライトを点灯させて雰囲気作りをするシーンを目にしたときは、何だか感動してしまった。きっとこれが現代eスポーツ観戦の楽しみ方なのだ。

『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化
会場を照らすスマートフォンライト。

いまこそ足を運んでみてほしい、オフラインeスポーツ観戦

 2020年以降、コロナ禍となったことでオフライン大会やイベントの開催が難しくなり、eスポーツの主戦場はオンラインへと移行した。これにより配信や動画を視聴する層が劇的に増えたのはeスポーツにとってプラスと言えるが、一方で「オフラインeスポーツ観戦を体験したことがない」という人が激増したのは懸念点だった。

 難局を乗り越え、2023年に入ってからはイベントの入場者数や声出しの制限が緩和。オフラインイベントの開催も以前と同じような状況に戻ってきた中、一変していたものがある。それこそがファンの姿勢だった。

『VALORANT』観客の熱狂が国技館を揺らす。“Red Bull Home Ground”に見るeスポーツ観戦の今とファンの進化

 Red Bull Home Groundでは、ゲームで何かアクションが起きるたびに歓声が上がった。自分も含めて周囲が盛り上がれば、自然と没入感が引き上げられる。極上の観戦環境を作り出したのは、ほかならぬ観客自身だったのである。

 SNSでは「大観衆の中で歓声に包まれて観戦するのを体験してしまったら、これまでのようにパソコンやスマホの前で1人オンライン視聴するスタイルには戻れない」などの意見も散見された。

 以下は、Red Bull Home GroundでプロeスポーツチームFnaticの優勝が決定する瞬間を記録したもの。動画から歓声などの盛り上がりが伝わってくると思う。

 しかし、まさに自分がそうなのだが、これを現地観戦した人が見た場合、迫力の半分も伝わらないものだと感じてしまうだろう。

 動画で刺激されるのは視覚と聴覚のみ。対して、現地観戦では歓声の只中にいるような感覚が身体を覆い、会場の空気振動を皮膚が感じるようなプラス要素がある。迫力は段違いだ。残念ながら、この違いについては現地で体験してもらう以外に伝える術がない。

 近年は定期的に大型イベントが開催されているほか、ライブビューイングなどの形でもオフライン観戦の機会が増えている。ライブビューイングは、自分の推し選手がいるチームのものがおすすめだ。本稿で少しでも興味が沸いた方は、ぜひオフラインeスポーツ観戦に挑戦してみてほしい。

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