『Atomic Heart』は、ロボット技術などの最先端技術が発展した架空の1955年のソ連を舞台に、人間に反旗を翻したロボットや科学技術の研究などの影響で誕生したミュータントと戦いながら潜入捜査を行う物語が楽しめる、SF好きにはたまらないアクションRPGだ。

 Beep Japanと4Divinityより、2023年にリリースされた本作は、その深みのある世界観を補完すべく、最低4つのダウンロードコンテンツ(DLC)を配信することを明らかにしている。第1弾“Annihilation Instinct”が2023年8月2日に配信。そして、第2弾“Trapped in Limbo”が2024年2月7日にリリースされた。

 ここでは、第2弾“Trapped in Limbo”の配信に合わせて『Atomic Heart』の開発を手掛けるMundfishスタジオのアート・ディレクターであるアルテム・ガレーエフ氏にメールインタビューを実施。最新DLCに関して聞いてみた。

『Atomic Heart』第2弾のヒミツを開発者に直撃。「誰もが見慣れているFPSのシステムから意図的に離れて、あえて実験的な試みを行った」

アルテム・ガレーエフ氏

Mundfishスタジオ アート・ディレクター

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コントラストが大きなテーマ

――DLC第2弾“Trapped in Limbo”の舞台・リンボでは、お菓子をモチーフとした建物や敵キャラクター、武器などが登場する、カラフルでメルヘンチックな世界となっています。この世界設定に至った経緯や、デザインする上で大切にした点を教えてください。

アルテムリンボの世界には、さまざまな分野の科学者のアイデアが結集しています。それらを誰もが異なる捉えかたをし、リンボでアイデアが具現化されます。実際、これは私が新しいステージ、クリーチャー、キャラクターなどのビジョンを思いつくのと同じ方法なのです。私は、さまざまな時代の科学者たちの科学的なアイデアが絡み合う、私のリンボを旅しています。そして私の目標は、これらのアイデアを現実世界に移植することです。つまり、奇妙に聞こえるかもしれないですが、リンボの世界のアイデアは、私が一般的にどのようにアイデアを処理するかを分析する過程で生まれたものなのです。

 リンボの世界をデザインする過程では、そこに多くの国、文化、都市、キャラクターが絡み合っていることを念頭に置く必要があります。それらはすべて現実世界の投影として存在しています。私たちにとっては、リンボの世界のすべてが不条理に見えるかもしれないし、リンボの住人にとっては、私たちの現実世界も不条理に見えるでしょう。現代風に言えば、この世界はGPTネットワークに似ています。現実の世界とリンボの世界は相互につながっているのです。2本の線が橋でつながったDNAらせんのようなものだとしましょう。

 したがって、両世界が互いにくり返し、絶えず解読し合い、暗号化し合っていることを常に覚えておくことが重要です。

――ちなみに、どのような思いを込めて本編の複数あるエンディングのうちのひとつの続編に設定したのですか?

アルテム私たちはストーリーの進行の違いを探究することに非常に興味を持っていました。異なるストーリールートでは、同じキャラクターが異なる状況にあるにも関わらず、彼らは依然として自分自身です。そして、さまざまな状況が登場人物たちをどこに導くのか、そしてそのポイントが互いにどれだけ異なるのかを見るのは興味深いです。キャラクターに対する出来事、出来事に対するキャラクター、どちらの影響が強いのか? 次回のDLCでより多くのことが明らかになると思いますので、皆さんも私たちと同じように興味を持っていただければと思います。

『Atomic Heart』第2弾のヒミツを開発者に直撃。「誰もが見慣れているFPSのシステムから意図的に離れて、あえて実験的な試みを行った」

――DLC第2弾内では、ランアクションやクライミングアクションを遊ぶことができます。この2点のアクションを取り入れるに至った経緯や、実装するにあたってこだわった点を教えてください。

アルテムこのDLCでは、FPSで誰もが見慣れている通常のシステムから意図的に離れることにし、あえて実験的な試みを行いました。リンボの世界は現実世界とは大きく異なるので、ゲームプレイや全体的な雰囲気も異なるはずだと考えているからです。

 今回は、カラフルでおとぎ話のような世界と、チープで挑戦的なメカニクス、そして『Atomic Heart』のシリアスなテーマとそのキャラクターを引き継ぐ物語を組み合わせています。

 私たちはつねにコントラストを生み出すよう努力しています。ゲーム本編と同じように、コントラストが大きなテーマでした。光と闇、明るいオープンスペースと暗い地下研究所、おもしろいシチュエーションとシリアスな緊張感のあるストーリーなどです。したがって、新DLCは基本的に実験的なものであり、これらのメカニクスは万人向けではないかもしれないですが、私たちはこれが新しく素晴らしいものを生み出す唯一の方法だと信じており、もっとも忘れがたい印象を残すのは感情のコントラストだと考えています。

――DLC第2弾で手に入る武器のスキンは、本編でも使用可能となっています。今後登場するDLC第3弾、第4弾でも、DLC内で開放した武器のスキンは、本編で使用可能となりますか?

アルテム私たちは、プレイヤーに“リンボ”の世界の一部を現実のゲームの世界に持ち帰る機会を提供したかったので、ゲーム内でおもしろい方法で獲得してもらうことにしました。リンボの世界では、あらゆるものが驚くほど姿を変えるという今回のケースはユニークなので、今後のDLCで同様の機会が提供されるかどうかはまだわかりません。しかし、プレイヤーの意見を聞き、このようなシステムが好きなようであれば、将来的にもそのような可能性を検討するつもりです。

――DLC第2弾を遊ぶユーザーに向けて、とくに注目してほしい点などがあれば教えてください。

アルテムこのDLCでは、新しいゲームプレイを最大限に楽しんでいただくために、皆さんには本当に柔軟な気持ちでプレイいただきたいと思います。これまでゲームシステムとは意図的に異なるので、P-3自身のように、周りで起こっているすべての奇妙さを体験してほしいです。そうすることで、プレイヤーはP-3といっしょにあらゆる困難を乗り越えていくことになり、ステージをクリアーするたびに楽しさと満足感を味わうことができると考えています。

『Atomic Heart』第2弾のヒミツを開発者に直撃。「誰もが見慣れているFPSのシステムから意図的に離れて、あえて実験的な試みを行った」

――お答えいただける範囲で、DLC第3弾で描かれる物語や体験できるゲームプレイについて教えてください。

アルテムもちろん、これはいまのところまだ秘密ですが、明らかに今回のDLCと結びつきがあるということをお話しできます。

 それは、P-3が自分の過去を理解し、どんな未来を望んでいるのかを理解したいという願望です。ここでは、プレイヤーの期待感とP-3の気持ちのあいだに共通点を見ることができます。皆さんの前に未知の世界が横たわっており、それは明らかに多くの驚きをもたらすでしょう。

――DLC第3弾、第4弾と、『Atomic Heart』のさらなる物語を期待しているファンの方にメッセージをお願いします。

アルテムもちろん、まずはファンの皆さんの絶え間ないサポートに感謝の意を表したいと思います。皆さんの意見やフィードバックはすべて拝見しています! 今後の『Atomic Heart』の展開が、ファンの皆さんを驚かせ、さらに好きにさせることを確信しています! それまでは、最新DLC第2弾“Trapped in Limbo”に飛び込んで、ストーリーのさまざまな秘密を探してみることを強くお勧めします。

――DLCとは関係のない話題ですが、『Atomic Heart』は、Steamコミュニティの投票によって決定するアワード“Steamアワード2023”にて、優れたビジュアルスタイル賞を受賞しました。受賞を受けてのお気持ちをお聞かせください。

アルテム信じられないほど嬉しいです! 何と言っても、この賞は私たちの愛するプレイヤーとファンからのものです! このようなクールでリアルな報酬という形で、彼らの評価を得ることほど素晴らしいことはありません。私たちは本当に感謝していますし、今後もプレイヤーの皆さんを驚かせ続け、このような賞に値するよう、新しいものを作り続けるモチベーションを高めてくれます。

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