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『魔法少女ノ魔女裁判』レビュー。13人のうち誰かを指名して処刑しなければ全員処刑の魔女裁判で、少女たちの罪を暴くミステリーアドベンチャー

byありみち

『魔法少女ノ魔女裁判』レビュー。13人のうち誰かを指名して処刑しなければ全員処刑の魔女裁判で、少女たちの罪を暴くミステリーアドベンチャー
 2025年7月18日にPC(Steam)にて配信開始となった『魔法少女ノ魔女裁判』。後日、Nintendo Switchでも配信予定となっている本作(配信日未定)は、魔法が使える少女たちにまつわる殺人事件を紐解くミステリーアドベンチャーです。

 本作のキャラクターデザインは、イラストレーター・梅まろ(
@umeboshimaro)氏が担当。愛らしくも、どこか陰のある雰囲気が特徴的で、それぞれ個性が際立っています。

 拉致同然に連れてこられた少女たち、自身のなかで開花していく才能と衝動、“魔法”という人知を超えた異能、閉ざされた空間で起こる殺人事件。精神がすり減っていく極限状態のなか、判決“処刑”が確実の魔女裁判が開廷されます。ここではそんな本作の模様をレビューしていきます。
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※本稿で使用されている画像は、すべて開発段階のものです。 ※ネタバレ防止のため、画像の一部にモザイク処理を施しています。

災厄をもたらす存在として孤島へ閉じ込められた13人の魔女候補たち

 高校入学を直前に控えたある日、いじめられていた中学時代の悪夢から目を覚ました桜羽エマは、自分が見知らぬ牢屋敷へ閉じ込められていることに気づきます。
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凄惨ないじめを受けていた過去をもつエマ。
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身に覚えのない服を着て、身に覚えのない場所で目覚めたエマ。

 その牢屋敷には、エマと同じ15歳の少女が集められていました。その数、エマを含めて13人。

 不気味なフクロウ・ゴクチョーによれば、彼女たちは“魔女になる因子”をもった存在であり、ストレスがかかると魔女化が進行、すると“なれはて”と呼ばれる異形になってしまうというのです。
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ゴクチョーの背後にいるのが、魔女となった“なれはて”。

 扱える超常的な力“魔法”の種類は魔女によってさまざま。魔女は災厄をもたらす存在とされており、危険因子である少女たちを監視・管理するのがこの牢屋敷の役目だとか。

 集められた少女のなかにはこの牢屋敷の存在を知っており、魔法が使えることを隠して生きてきた者もいます。ちなみに、エマは自分が魔女になる可能性を秘めていることも、どんな魔法が使えるのかも知りませんでした。

 しかし厄介なのが、魔女化が進めば魔法の力が強まるのと同時に、殺人衝動が抑えられなくなってくる、という魔女の性分です。そのため、過去にこの牢屋敷へ集められた少女たちは殺人事件を頻発させ、“なれはて”となる者が続出したといいます。

 ストレスを与えてはいけないのに、日常から無理矢理引き剥がされ、脱出不可能な孤島に軟禁され、ルールに従わない者は懲罰房行き or 処刑という恐怖政治が敷かれ、デスゲームさながらの生活を強いられている。これってなんだか矛盾していますよね。魔女候補を集めて負荷テストのようなものを行っているのは、保護や管理といったものとは別の意図があるように思えてなりません。

 果たして、この殺伐とした生活の末に待ち受けるものとは、なんなのでしょうか。

魔女裁判で少女たちの隠された“闇”を暴く

 上記でも触れた通り、魔女化が進むと殺人衝動が抑えられなくなり、簡単なキッカケで殺人事件が発生してしまいます。

 牢屋敷内で殺人事件が発生した場合、開かれるのが“魔女裁判”。生存者が1時間掛けて「誰が犯人か?」を議論し、処刑される人物を投票で選ぶという裁判です。しかも、犯人を特定できなかったり票が割れてしまった場合は、全員即処刑というペナルティーつき。この牢獄での生活、ハードモードすぎる。(噂によると、食事もまずいらしい)。
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魔女裁判が行われる場所。ふだんは施錠されて入れない。

捜査パート

 殺人事件が起こってしまったら、牢屋敷内を見て回り証言や証拠を集めるパートに入ります。

 少女たちには機能が限定されたスマートフォンが支給されており、このなかに“魔女図鑑”というアプリが入っています。魔女図鑑にはキャラクターのプロフィールや集めた証拠品、マップなどが入っていて、新しい情報が入ればアップデートされていく仕組みです。
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 魔女図鑑のなかには、この牢屋敷で過ごすうえで守らなければならないルールも記載されています。これがかなり長い。そして細かい。

 しかし、このルールが犯人特定のキッカケになったり、アリバイを証明するのに役立ったり、ということもあるので、わずらわしくても目を通しておくことをオススメします。
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どことなく、生徒手帳に小さい文字で記載されていた校則を思い出す。
 また、ストーリーの途中で選択肢が出ることがあります。選んだもの次第では即ゲームオーバーになるので慎重に選びましょう。不安な方は設定画面でヒント表示をONにすると、ゲームオーバーに繋がる選択肢がどれかマークで表示されます。
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ゲームオーバーの選択肢にはドクロマークが出る。
 誤った選択肢でゲームオーバーになった場合でも安心。直前の選択肢からやり直すコマンドが出るので、気軽に挑戦するのもアリです。ただ、後述する魔女裁判パートではタイムオーバーの救済措置がないので、こまめなセーブも推奨します。

裁判パート

 魔女裁判が開かれると、少女たちによる討論が始まります。
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 証言には時間制限が設けられており、画面右上の数字がゼロになってしまうと失敗。全員処刑ルートへまっしぐらです。

 証言はくり返し聞くことも可能ですが、そのぶん時間も経過します。あまりゆっくりしていられないのも、“魔女裁判は1時間で行う”というストーリー上のルールがしっかりゲームシステムに反映されている感じがして、リアルですね。

 プレイヤーは、エマといっしょに“証言におかしなところがないか”を探し、指摘して、その根拠を示す必要があります。
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引っかかる証言を見つけたら選択して……。
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そう思った根拠を選択、場合によっては証拠品も提示する。
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正しい選択をするとエフェクトが出る。このエマはちょっと自信なさげ。
 こうして証言の正確性を詰めていくことで新しい情報が浮かび上がったり、真相へどんどん近づいていきます。

 そして1時間経過すると、投票の場面に。ここで誰を処刑するのか選ばなければなりません。死刑執行のボタンを押すようなもので、これだけでも相当な精神的苦痛を味わう気がします。

個性的すぎる13人の少女たち

 ストーリーを読み始めた当初は、「こんなに一気にキャラクターが出てきて、覚えられるだろうか……」と不安だったのですが、杞憂に終わりました。13人の少女たちはそれぞれかなり個性が際立っていて、すぐに覚えてしまったからです。顔と名前が一致するまで時間がかかるプレイヤーもいるかもしれませんが、「あぁ、あの黒髪の子ね」とか、ちょっと話を聞くだけで誰のことを話しているのかわかるようになるはずです。

桜羽エマ

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 一人称が“ボク”の女の子。プレイヤーの分身とも言える存在で、そのぶん彼女がどんなことを考えているのか、プレイヤーには手に取るようにわかります。

 しかし、魔法を使える自覚がなくどんな能力を持っているかわからないため、ミスリードされている可能性があるという懸念点や、過去に受けたいじめのキッカケがなかなか開示されないということもあり、“シロ”であるという確証もありません。

 性格としては、さびしがりやで不器用。諦めない我慢強い精神の持ち主でもあり、高校進学を機にいじめから抜けだそうともがいていた点も考えると、まだ完全に心は折れていないようです。

二階堂ヒロ

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 成績優秀、スポーツ万能、家柄よし、と非の打ち所がない優等生。エマの旧友であり、エマがいじめを受けるキッカケになった人物でもあるとか。

 “正しくあること”に執着ともいえるほどこだわる人物です。“正しくないこと”に一切の容赦はしないようで、その片鱗はストーリー序盤から見られます。

夏目アンアン

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 あまり声を発することはなく、基本的な会話はスケッチブックの文字で行う小柄な少女。スケッチブック上の一人称が“わがはい”で、名前とあいまって某文豪を彷彿とさせます。

 引きこもりがちで、ゲーム好き。自分を褒めるハードルが異常に低く、歯を磨けただけで自分を褒めるほど。努力が苦手という一面もあります。

城ヶ崎ノア

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 世界的に知られる正体不明のストリートアーティスト、そのご本人さま。スプレー缶で描かれた絵は、世界中で人気を博しています。

 マイペースで気の向くまま、ふわふわした喋り方をする女の子で、独自の世界観をもっている様子。なお、いままでたくさんの絵を描いてきたものの、自分が納得する絵が描けたことはないそうです。

蓮見レイア

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 劇団で舞台に立ち、テレビ出演もこなす芸能人。リーダーシップあふれる人物で、「自分が中心に立ってみんなを守らなければ」という考えの持ち主です。

 中性的な容姿で、口調はつねに芝居がかっており、レイアと話しているとなんだかドキドキしてしまう、という少女が多いとか。

佐伯ミリア

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 見た目はイケイケなギャル。ですが、一人称が“おじさん”な上、性格はおどおどしていて後ろ向き。

 人とのコミュニケーションが苦手、というわけではなく、自分の話をするのが苦手なようです。

宝生マーゴ

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 弱冠15歳ならぬ大人びた発言で、詐欺師としての顔も持つ少女。

 好意的に人と接するものの、心の底では誰も信用・信頼しておらず、この世の何も信じないと決めているようです。

黒部ナノカ

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 口数が少なく、瞳に暗い陰りが見える少女。牢屋敷内でなぜか銃を所持しています。

 ほかにも牢屋敷のルールをよく知っていたり、「どうせみんな死ぬんだから」と意味深な発言をしたりと、なにかと物知り顔です。

紫藤アリサ

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 口が悪く、喧嘩っ早い家出少女。

 他人を突っぱねているのは自己防衛とも言える行動であり、優しくされると動揺するという一面も持ち合わせています。

橘シェリー

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 自称・探偵の少女。気になるものはとことん追究しなければおさまらない性格です。

 笑顔を絶やさず楽しいことに飛びつくシェリーですが、デリカシーが著しく欠如しているため、場の空気を壊すこともしばしば。

遠野ハンナ

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 お嬢さま口調でしゃべる愛らしい少女。ですが、その口調はときどき粗が出ており、彼女の素ではない様子。

 名家の令嬢然としているものの、実家は貧乏だとか、そうでないとか。

沢渡ココ

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 ストリーマーの少女。気分の上下が激しく、配信外ではかなりの毒舌です。

 また、「世界は自分と推しだけいればいいから他人はみんな死ね」とことあるごとに発言しています。推しへの愛はかなり重め。

氷上メルル

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 かなりの臆病者で、心配性な少女。人の心の機微に敏感で、傷ついた人は放っておけない性格……というより、気になった人はつけ回してしまうストーカー体質。

 どこからか視線を感じたら、それはメルルのものかも?

少女たちの“原罪”を暴くのは罪悪感もあるが、気持ちがいい

 公式サイトのキャラクタープロフィールに記載されているのですが、登場人物たちにはそれぞれ“原罪”という、その人物を表すキーワードのようなものが設定されています。たとえば、主人公格のエマの原罪は“忌み嫌われるもの”。その旧友であるヒロの原罪は“正義の執行者”、といった感じです。

 ストーリーを読み進めていくとこの意味がわかるのですが、これがまぁ、人間の汚い部分、本性のようなものを表現していて、「エグいなぁ」と思う反面、見ていて気分がいいのも確かなのです。「あぁ、だから壊れてしまったんだな」と納得できるといいますか。

 ミステリー小説を読んで、犯人がわかる過程だけでなく犯人の動機も納得できるように説明してくれ、と思うタイプの読者諸君にはカタルシスを得られる作品ではないでしょうか。
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集計期間: 2025年07月20日13時〜2025年07月20日14時

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