カプコン初のKinect専用タイトル『重鉄騎』
カプコンのXbox 360・Kinect(キネクト)専用タイトル『重鉄騎』が、2012年6月21日に発売となった。超巨大な専用コントローラが話題を呼んだ初代Xboxの『鉄騎』から10年、ついに登場したシリーズ最新作では、Kinectによって鉄騎のコクピットを体感することになる。また、ハイクオリティーな映像表現とサウンド、そしてこだわり抜いた演出は、プレイヤーに“戦場”の恐ろしさも感じさせることになるだろう。そこで今回は、ファミ通.comで本作の特集ページを担当しているキモ次郎によるプレイインプレッションをお届けする。
どうにかしなければいけないのはわかっているが
どうすればいいのかがわからない初プレイ
『バイオハザード』の第1作目を初めて遊んだとき、あの有名なゾンビが振り返るシーンに遭遇した瞬間、リセットボタンを押してしまった。『メタルギア ソリッド』を初めて遊んだとき、敵兵に見つかるか見つからないかのギリギリのところで、リセットボタンを押してしまった。前者はあまりの恐怖に、後者はあまりの緊張感にすっかりヤラれてしまい、それ以上遊び続けるのがツラくなってしまったのだ。誤解がないように言っておくが、遊び続けるのがツライというのは、そのゲームがダメだということではない。むしろその逆で、そこまでゲームの世界にプレイヤーを引き込んでしまう圧倒的な演出力を賞賛する、(個人的には)最高の褒め言葉なのである。そして今回紹介する『重鉄騎』は、その感覚を久々に思い出させてくれるタイトルだった。
『重鉄騎』の舞台は、通称“シリコンカビ”と呼ばれるものが引き起こした厄災によって、近代技術が失われた近未来の世界。この時代、戦場の主力となっているのが前近代的な機構で動く二足歩行型兵器の“鉄騎”だ。プレイヤーはアメリカ軍に所属する鉄騎のパイロットとなり、混乱に乗じて勢力を伸ばす“アジア大国”率いる国連軍の侵略へ抵抗していくことになる。『重鉄騎』最大の特徴は、Kinect(キネクト)による体感的なコクピット操作だ。実際に自分の体を動かして、コクピット内の各種スイッチやレバーを操作するという感覚は、ほかのゲームでは決して味わえないもの。しかし、そのあたりに関してはすでに散々語られているわけで、改めて解説する必要はないように思う。気になる人は、ファミ通.comで展開している特設サイトの開発者インタビューなどをチェックしたほうが早いだろう。個人的にぜひ語りたいのは、冒頭で挙げた“遊び続けるのがツラくなる”ような『重鉄騎』の戦場体験だ。
初めて『重鉄騎』に触れたのは、記事の打ち合わせでカプコンさんを訪れたとき。それ以前にもイベント取材などでゲーム映像やプレイデモは観ていたが、実際にプレイをするのはその日が初めてだった。チュートリアルを終え、いざ初めての戦場へ。海岸から上陸して、トーチカまでの進軍ルートを切り拓く作戦だ。プレイヤーは、この時代の主力兵器である“鉄騎”に搭乗している。鉄騎の厚い装甲の前では、敵軍の攻撃も窓を叩く雨音程度の感覚に違いない。そんな楽観的な気分で、戦場への第一歩を踏み出した。
すぐにゲームを続けるのがツラくなった。そのときの感情は『バイオハザード』の恐怖と『メタルギア ソリッド』の緊張が入り交じったような‥…つまりはとんでもなく混乱していた。歩兵たちは上陸したそばから敵軍の銃弾に倒れ、仲間の鉄騎は地雷原にはまって集中砲火に晒されている。自身の鉄騎も当然すさまじい攻撃を受けることになり、装甲を叩くのは雨音なんて生温いものじゃなく、落石に巻き込まれたようなすさまじさ。気がつけばコクピット正面にあるスリット(外を見るための覗き窓のようなもの)のガラスは割れ、無防備な状態になっている。非常に危険な状態なわけで、どうにかしなければいけないのはわかっているが、どうすればいいのかがわからない。とにかく、攻撃を避けようと移動したところ、鉄騎をともに駆る隊員(鉄騎は4人乗リ)のひとりがハッチを開けて逃げ出そうとするではないか。いったいこの混沌はなんだ!? あまりのことに頭が混乱してしまい「一旦休憩させて!」と思ったところで、幸い(?)にも戦死することができた。ちなみに、『重鉄騎』では戦死理由が表示されるのだが、今回の理由は、むき出しになったスリット部分から被弾というもの。戦場をテーマにしたゲームは数あれど、こんな死にかたが用意されているのは本作くらいだろう。こうして、ファーストプレイは何が起きているのかもよくわからないままに終わったが、とんでもない経験をしたことだけはわかった。
スムーズ&必要最低限なKinect操作で
兵士としての成長を“体感”する
後日、会社にサンプルロムが届き再き、『重鉄騎』をしっかりとプレイする機会を得る。戦場は相変わらず混乱しており、最初のころはやはり遊び続けるのがツラく、15分遊んでは休憩を挟むような状態だった。しかし慣れとは恐ろしいもので、ガタガタと揺れ、つねに敵の攻撃が装甲を叩くような混沌としたコクピットの中でも、徐々に冷静な判断が行えるようになってくる。たとえば、初回プレイ時の戦死につながったスリットの破損は、シャッターを下ろせば回避できることを学んだ。仲間の鉄騎がハマっていた地雷原も、コクピット内に響く地雷探知機の音に注意しておけばまず間違いなく回避が可能だ。また逃げ出す隊員は、外へ出る前にとっつかまえて鉄拳制裁してやればいい。それ以前に、コクピットが混乱することを事前に回避する、戦場での立ち回りってやつもわかってきた。作戦指示に従い、迂闊な単独行動は控え、攻撃は敵が動く前に終わらせるのが理想だ。
状況判断力の向上は、プレイヤーの動きの向上にもつながる。『重鉄騎』ではマイクロソフトからの技術協力も行われたとのことで、Kinectセンサーの感度はかなり高い。また、関節の位置などから動きを予想するという独自技術も搭載されているため、コツをつかめば小さな動作でも、しっかりと操縦を行うことができる。状況判断ができなかったゲーム開始当初は、本当に我ながら“ドタバタ”という効果音がふさわしい動きだったが、現在はその筋の達人のような、最小限かつ無駄のない動作で鉄騎を駆れていると思う。
慣れてくるほど、無駄な動きがなくなるというのは、どんなゲームでも言えることだが、『重鉄騎』の場合はKinect操作を採用しているため、それがプレイヤー動きとして現れる。つまり、腕前の向上を実感ではなく体感することができるのだ。これが本作の描く戦場と舞台と相まって、なんだか実際に兵士として成長した気分になってしまう。
すべての行動には結果が伴う
当たり前だけどきびしい現実
そのほか『重鉄騎』の戦場を語るうえで特筆しておきたいことは、すべての行動に結果が伴う点だ。たとえば、前述したコクピットから脱走する隊員を引き止めずにそのまま放おっておくと、当然戦死してしまう。そして作戦終了後に死亡通知が届き、以後彼、あるいは彼女の姿をゲーム内で見ることはなくなる。また、ふだんから隊員に対して素っ気ない対応などをしていると、コクピット内の雰囲気も険悪に。もしかすると、肝心なところで言うことを聞かなくなってしまうかもしれない。隊員たちとの仲違いは、戦場において死をぐっと近づける愚かな行為だ。
また、ミッションの進行もプレイヤーの判断によってはグッと楽になることもあるし、その逆もある。ミッション中は基本的に作戦指示に従って動けばいいのだが、ときどきあえてそこから逸れてみると、思わぬ展開が待っていたりするのだ。たとえば、とあるミッションで予定されていたルートから大きく外れて敵陣に迫ったところ、図らずも奇襲を仕掛けることになった。敵としてもまさかそんなところから来るとは思ってもいなかったのだろう。相手の鉄騎はパイロットすら搭乗していない状態で、思う存分に敵部隊を蹂躙することができた。とはいえ、こういったことは恐らくあまりない。むしろほとんどの場合は悪い結果(遠くにいっているあいだに仲間部隊が全滅とか)を招くので、道を外れるのはほどほどにしておこう。
戦場、ロボットあるいは戦車、修羅場
この言葉にピンと来る人にはオススメ
なんだか長々と話してきたが、『重鉄騎』がどんな人にオススメか? という点に関する筆者の結論は意外とシンプルだ。戦場、ロボットあるいは戦車、修羅場――このキーワードのどれからひとつにピンと来た人は遊んで損はないだろう。……あ、あと大事なキーワードをひとつ忘れていた。“最近おもしろいゲームに出会っていない”。そんな人にも強くオススメします。
■著者紹介 キモ次郎
ふだんは週刊ファミ通およびファミ通.comでニュース記者などを担当。『重鉄騎』の特設ページもぜひご覧ください。