PCのキーボードを打つ感覚で入力できます
2012年9月20日~23日の期間、千葉県・幕張メッセで開催されている東京ゲームショウ2012(20日、21日はビジネスデー、22日、23日は一般公開デー)。取材の合間に会場内をぶらぶらしていたところ、とあるブースの前で“あまりにも不可解な文言”が目に映り、記者は足を止めた。
ゲームデバイスコーナーにあるエヌケー貿易ブースに貼られた一枚の紙。そこには、“レバーレスコントローラ”という文字が書かれていた。「レバーレス? ラバーレスとか、カバーレスじゃなくて、レバーレス?」と、思わず二度見。ブースのスタッフは挙動不審な記者に若干警戒しながらチラシを渡してくれた。そこには“Hit BOX(ヒットボックス)”という商品名とともに、いままでに見たこともない独特の操作解説が記されている。
記者は寡聞にして存じあげていなかったのだが、この“Hit BOX”という“レバーレス”コントローラは、北米から上陸した話題のゲーム周辺機器であった。エヌケー貿易はその輸入代理を務めており、日本国内ではネット通販および秋葉原のメッセサンオー カオス館、ゲームハリウッドなどで販売をしている。ちなみに、この記事を書くにあたって“Hit BOX”のことをサラッとネットで調べてみたところ……やだ、某大手ゲームメディアさんがかなり昔に報じている。「い、いまさら得意顔で記事を書くのはすごく恥ずかしい!」と正直掲載を躊躇したが、「興味深いコンテンツを紹介するのは決して悪いことではない」と自分に言い聞かせて続けることにする。
“Hit BOX”を開発したのはアメリカ・ネバタ州在住のダスティン・ハファー、ショーン・ハファーのハファー兄弟。両氏はふだんから対戦格闘ゲームを好んでプレイしていたが、つねづねレバー入力に難しさを感じていたという。そこで一念発起して、自分たちに合うコントローラを製作。こうしてできあがったのが、苦手としていたレバーを排除した特徴的なコントローラだった。
前置きが長くなったが、Hit BOXの“レバーレスで操作”という最大の謎について語ろう。その正体は、レバー部分をボタンに置き換えたものなのである! 「なのである!」なんて大げさに言ってみたが、恐らくほとんどの読者様はとっくのとうに察していただろう。というわけで、さっさとプレイリポートに行くことにする。
ボタンがズラリと並んだHit BOXのパネルは、初見だと少しギョッとしてしまうが、実際は非常に理に適った作りだ。パネル左側にアーチ状に並んだ3つのボタンは左からレバー左方向、下方向、右方向と振り分けられており、いちばん下にあるボタンは上方向となっている。それ以外はすべて、通常ボタンという配置。方向ボタンに対する指の置きかたは、左手の薬指を左方向に、中指を下方向、人差し指を右方向、親指を上方向ボタン、というのが推奨されている。右手は通常のコントローラと同じで問題ない。記者も推奨されたスタイルで指を置いてみたが、これがなかなかどうしてシックリと来る。いや、シックリというよりも、なんだか以前から知っているような……そう、PCのキーボードを打つときの形と非常に似ているのだ。
今回は『スーパーストリートファイターIV アーケードエディション』のプラクティスモードをHit BOXでプレイさせてもらったが、指の置きかたに覚えがあることもあってか、ものの数分で独特の操作に適応することができた。そのまましばらく遊ばせてもらったが、必殺技やコンボも違和感なく出せる。波動拳コマンドなら横方向→下+右方向→横方向+パンチボタンを“パパパン”とタイピングするように押せばいいわけで、むしろレバーのときと比べて入力ミスが減った印象もあるほどだ。しかし、これはあくまで相手が動かないプラクティスモードでの話。ショーン氏と対戦をしてみたところ、スピーディーな展開になるとどうしても頭が追いつかず、ガードはおろか斜め方向のジャンプもできないほどに頭が混乱してしまった。一方ショーン氏の動きはというと、コンボはバシバシ決めてくるわ、スーパーコンボキャンセルを出すわ、ガードも抜かりないわで、動きにまったく無駄がない。というか、すげえウマイ。ふだんから『スパIV AE』をプレイし、そこそこ実力にも覚えのある記者だが、恐らくふつうにレバー付きコントローラで対戦しても負けていただろう。
見た目は正直イロモノ系なHit BOXだが、ショーン氏のプレイからわかる通り実際は十分に実用的だ。「でもそれって、ハファー兄弟だからじゃないの?」と思う人もいるだろうが、そんなことはない。世界最大規模の対戦格闘ゲーム大会“EVO”の出場選手の中にも、Hit BOXを使用している人はいるのだ。
もし読者の中に、ハファー兄弟同様「レバー入力って難しいなぁ」と感じている人がいれば、ためしにHit BOXを手に取ってみてはいかがだろうか。ひょっとすると、新たな世界が開けるかもしれない。ちなみに、Hit BOXの生産ペースは月約20台程度とのこと。日本ではかなりのレアアイテムかもしれないのでご注意を。