ひとりぼっちクマの復讐劇、ふたたび開幕クマ!
2012年10月、『Happy Wars』や『NiGHTS into dreams...』などで盛り上がるXbox LIVE アーケードだが、ひっそりと配信されたゲームもあった。それこそが『ノーティ・ベア パニック・イン・パラダイス』(以下、ノーティ・ベア PiP)。嫌われ者のクマのぬいぐるみが旅行にハブられたので、またもや復讐を行うアクションゲームだ。
“またもや”だって……? そう、じつは本作は続編となるタイトル。おまけに未ローカライズ、要するに全編英語で、「日本では間違って配信されちゃったのかな? この慌てん坊め!」なんて思わなくもない。505 Games(発売元の海外メーカー)の中の人、聞こえますかー!
というわけで、まずは前作をサラッとおさらい。前作『Naughty Bear』は、海外で2010年8月に発売されたアクションゲーム。クマのぬいぐるみであるノーティベアは、日ごろのイタズラがたたって、仲間の誕生会に呼ばれなかった。「この恨みはらさでおくべきか!」というワケで、ほかのクマたちをフルボッコにしていくのだ。誕生日プレゼントをかっぱらって燃やしたり、オノやバットでクマをメッタメタにするなど、いろいろとひどい行為を行えるのが最大の特徴。でも登場キャラはぬいぐるみなので流血表現はなく(血の代わりに綿が飛ぶ)、ギリで笑える範囲に収まっている。
……と、こう紹介すると一見楽しそうに見えるが、ゲームとしてはいろいろと残念な部分が多く、まあ、そんな作品だったわけだ。あ、逆に大満足できる人もいると思います。
ターゲットを1体ずつ血祭りにするクマー!
さて、本題の『ノーティ・ベア PiP』はというと……、今度は旅行にハブられたノーティベアが、こっそりバスにしがみついて後をつける。旅行先でひとクマずつ処刑していくという、前作とほぼ変わらないわかりやすい内容だ。
本作の目的は、狙うべきターゲット(=ステージ)を選択し、指定された方法でターゲットのクマを処刑してから、出口から脱出すること。ただし、ステージにはターゲット以外のクマも多数存在している。またクマはこちらを発見するとアグレッシブに攻撃してくるため、こっそりとターゲットを始末していく、ステルスゲームのような楽しさを味わえる。
ターゲットは直接攻撃してもいいが、背後でAボタンを押すと首をつかむことができる。その状態でLトリガーを押すと驚かし、Rトリガーを押せば手にした武器で処刑できる。処刑は、通常攻撃でクマを弱らせたあとに行うこともできる。
本作の魅力は、多彩な武器が登場することだ。マップにはバットや鉈、ドライバー、ビン、熊手など、ホームセンターに売っているような日用品が武器として登場し、それぞれで異なる処刑シーンを楽しめる。
また、周囲のオブジェクトを使った殺害も可能。たとえば、サボテンの周囲で処刑コマンドを行うと、クマをサボテンに貼り付けて倒すことができる。巨大なパックンフラワーのような植物に食べさせたり、肉を焼くコンロに押しつけて焼死させるなど、これまたバラエティー豊かな処刑を楽しめるというワケだ。
スムーズにターゲットの背後を取ることが可能であればいいのだが、たいていはほかのウロウロしているクマに発見されてしまう。奴らは非常にアグレッシブで、こちらを発見するやいなや、そのままファイティングポーズを取って殴ってきたり、はたまた武器を調達してきたり、電話で外部に救援を要請したりと、全力でこちらを殺しにかかってくる。また、敵は攻撃力が非常に高いため、正面から殴り合うのはかなり不利。そんな時に役立つのが草むらだ。
草むらに入れば敵はノーティベアを見失ってしまうため、安全に逃げることができる。たとえ敵の目の前で草むらに入ったとしても、相手はこちらにまったく気がつかないという、ゲーム史上でも類を見ないほどの完璧な安全地帯になっている。クマを捕まえて草むらに連れ込めば、クマを倒しつつ衣服を奪い、変装することも可能だ。このようにノーティベア自体は非力だが、隠れる手段が非常に強力なため、ステルスアクションとしてはかなり簡単なゲームバランスになっている。
奴らに恐怖を味あわせて自殺に追い込むクマー!
じつは本作には、ターゲットの始末に加えてサブ目標が3つ用意されている。サブ目標は「合計でXX枚コインを稼ぐ」、「クマをXX体倒す」、「クマをXX体自殺させる」など数種類存在し、プレイするたびに変化する仕組みだ。
ここで注目したいのが、クマを自殺させること。クマにほかのクマの死体を発見させたり、こちらがクマを殺害する場面を見せたりすると恐怖し、ガマンの限界を超えると頭上に泡のマークが現れて逃走し出す。この状態のクマを捕まえて脅かせば、クマは自殺してしまうというワケだ。
クマを自殺させるのは非常にスコアが高いので、ハイスコアを狙い始めるとゲーム性が一変。「できるだけ見つからないようにターゲットを始末する」というステルスアクションから、「危険を冒して殺害現場を見せつけることをくり返す」という、真逆のゲーム展開となる。当然、難度はこちらのほうが高く、一気に熱いゲームへと様変わりするのだ。
このような戦いかたで役立つのが、“脅かし”と“トラバサミ”だ。通常はクマに恐怖を植え付けるために利用する“脅かし”だが、離れた場所で使用すれば、遠くのクマをおびき寄せるのに役立つ。そのようにして近づいてきたクマを“トラバサミ”にハメて、移動させなくする。あとは煮るなり焼くなりご自由に、という感じだ。
多彩なコスチュームを集めるクマ!
武器やコスチュームの種類も非常に豊富だ。本作では、処刑に使用した武器がショップでアンロックされ、購入可能になる。同様に、衣装は敵から奪うことでアンロックされる。武器や衣装はそれぞれ性能が異なり、装備するものによって、主人公の体力やスタミナが上昇する。よりよい性能の衣装を見つけ出したり、コンプリートを目指す楽しさもあるわけだ。もちろん装備によって外観が変化するため、コーディネートを楽しむこともできる。
また、経験値の概念も存在する。衣装を身につけてプレイすることで、その衣装の経験値が増加。一定以上溜まるとノーティベアのレベルが上がって、基本能力が強化されていく。装備を通じてキャラクターを育成する魅力も味わえるのだ。
おバカなゲームが好きなら試してみるクマ!
“ぬいぐるみのクマが残虐行為を行う”というミスマッチの魅力はあったものの、それ以外がてんでお話にならない感じで、トータルとしては残念すぎる出来だった前作『Naughty Bear』。だが、本作は一転してゲームとして楽しめる作品に仕上がっており、さらに前作の個性も引き継いでいるため、意外なほど満足できた。とくに多彩な衣装や武器を集めるシステムは収集意欲をそそり、ついついプレイしてしまうことうけあいだ。
Xbox LIVE アーケードには、『Trials Evolution』や『Fez』をはじめ、大ボリュームかつ完成度が高い作品も多いが、本作はそれらと肩を並べるほどのゲームではない。だが“ぬいぐるみのクマが残虐行為を行う”という、本作独自の魅力をしっかりと楽しめるレベルには仕上がっているため、この手のゲームが好きな人は満足できるだろう。
ただし、ゲーム内容がすべて英語ということや、価格が1200MSPと若干お高いこと、ゲーム自体が多少不安定というデメリットもある。「そんなことは気にならねぇぜ!」という勇者のみ遊ぶことを許されたタイトルなのだ。
■著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当していたフリーライター。この手のゲームは割と好物なので個人的には楽しめたが、万人に受けるかと言われると非常にビミョー。そんなゲームでした。
ノーティ・ベア パニック・イン・パラダイス(英語版)
メーカー | 505 Games |
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対応機種 | X360Xbox 360 |
発売日 | 2012年10月10日(Xbox LIVE マーケットプレースにてダウンロード配信) |
価格 | 1200マイクロソフトポイント |
ジャンル | アクション |