人間vs自然。ゾンビも邪魔する他のプレイヤーもいない孤独な戦いが始まる
Hinterlandの一人称視点サバイバルゲーム『The Long Dark』を紹介する。プラットフォームはPCで、現在は早期アクセスとして1980円で販売中。対応言語は英語のみ。
『The Long Dark』の舞台は極北の辺境の地。何らかの原因により突如電子機器が使えなくなり、プレイヤーは自らの力でサバイバルし、生還を目指さなくてはならない。要するに『DayZ』以降流行しているサバイバルゲームの一種なのだが、『DayZ』や『Rust』などのタイトルと異なるのは、あえてシングルプレイに特化してること。狩猟用の小屋が点在する程度の、人里離れた僻地での孤独なサバイバルを描く。
製品版でのゲームモードは、僻地で郵便物や荷物を運ぶブッシュパイロットのウィル・マッケンジーを主人公とするストーリーモードと、とにかく長い生存を目指すサンドボックスモードを予定しており、現在はサンドボックスモードの一部コンテンツのみが利用可能だ。本稿ではサンドボックスモードのプレイリポートをお届けする。
極寒の諸行無常。
サンドボックスモードをスタートすると、フレア(発煙筒)などの僅かばかりの装備を手に、いきなり大自然に放り出される。マップもないので、とにかく食料や水、暖を取れる場所を探して闇雲に歩くしかない(ちなみにマップは製品版までに視認した分だけ記録される簡素なものが実装される予定)。
だが、無暗に駆け回ればそれだけカロリー消費が進む。「こっちじゃないか」と歩き続けて何もなかった時や、吹雪はじめて目標となるものを見失い、気がついたら以前通った場所にいた時のがっかり感と言ったら! でも気を取り直して歩くしかないのだ。夜になったら気温は下がり、見通しは悪く、さらに状況が悪くなるだけだから……。
しかし死がゆっくりと迫っている中でも、トゥーン調で描かれる景色は美しい。だが絶景を共有する相手はおらず、聞こえるのは風の音と自分の呼吸、死んだ鹿でも探しているだろうカラスたち、そしてかすかに響いてくる狼の遠吠えだけ。悟りを開けそうな感じだ。
飢えや渇き、そして寒さと疲労との戦い
プレイヤーのコンディション(0%になったら死亡)を決定する基本ステータスは、FATIGUE(疲労)、COLD(寒さ)、HUNGER(飢え)、THIRST(渇き)の4種類。少々ゲージが上がった程度では命の危険はないが、致命的な事態に陥る前に対処が必要。
サンドボックスモードでは、コンディションを許容範囲内にとどめるよう、歩き回って物資を集め、防寒性の高い服を着込み、水と食料を必要なだけ消費し、夜の寒さと吹雪を避けて過ごすのが基本だ。
・起きて活動してするだけで上昇していく。
・睡眠することで下げられる。睡眠は建物のベッドだけでなく、寝袋を敷くことでも可能。
・なお睡眠時もカロリーと水分を消費する。
・疲労が貯まり過ぎるとスキルに影響が出る。
COLD(寒さ)
・体感温度が低いと上昇。スキルの成功や疲労に影響し、ひどい場合は低体温症を起こす。
・体感温度は外気温をベースに、風や衣服によるボーナスを考慮して決定される。
・衣服には体感温度のボーナスと風に対してのボーナスを持つ。
・気温は地形の影響を受ける。
HUNGER(飢え)
・飢餓状態を示し、時間経過で上昇。食料を食べることで回復する。
・食料にはコンディションがあり、悪くなったものを食べると食中毒を起こすことがある。
・カロリーゲージが別にあり、激しい運動をすると消費速度が上がる。
THIRST(渇き)
・時間経過や睡眠で上昇し、飲み物を飲むと回復する。
・ストーブで雪を溶かして水にするといったこともできる。
・ただし煮沸しない場合や、コンディションの悪い飲み物は腹を壊す可能性がある。
ちなみに食料に「腹にたまるが塩味なので喉が渇く」といった厄介なものがあったり、食料にも飲み物にもコンディションがあって、腐りかけを摂取すると腹を壊したりもする。こうした食中毒や、足の捻挫などの怪我も当然サバイバルに影響してくるので、治療しなくてはならない。
バール、バール、バール! 我々には鋭い爪も牙もないが、道具がある
こうした探索過程で必要になってくるのがツール類だ。適切なツールがあれば、鍵のかかったロッカーをこじ開けたり、缶詰を中身をこぼさずに開けたり、もちろん武器の類で自衛したり狩りをすることもできる。
もちろん物を持ち歩ける重量には限界があるのだが、だからってせっかく発見した物資をいつも諦める必要はない。服をバラして布を手に入れたり、ブーツをバラして皮にして素材にしておけば、裁縫セットなどのツールを使って修繕することもできるのだ。
マルチプレイがないことで逆に研ぎ澄まされたもの
『The Long Dark』はシングルプレイに特化していることで、他のプレイヤーを襲って横取りしたり銃をつきつけられたり、徒党を組んだりといった、マルチプレイがもたらす魔法がない。
しかし「ないことがある」というか、自然の脅威がクローズアップされているおかげで、気軽に走り回ることすらできない、狼一匹を恐れなければいけない、明日はどうなるかわからないサバイバルの冷徹な側面がむき出しになっている。人は水がないだけで死ねるのだ。
銃を持っていても自然に殺される、というのはなかなか痺れる。ある時、うまいこと複数の建物を回ることに成功し、ダウンジャケットを着込み、ライフルを装備してなかなかいい感じになったのだが、食料と水がどうにも足りなくなってきたので、新たな物資調達を目指すことに。
最初は鹿を狩って生肉をたんまり剥ぎ取り、あとは飲料か、せめて雪を大量に溶かして水にするためのストーブの燃料でも見つかれば上々といったところ。焼き肉ができるだけの燃料が見つかれば最高だが、多くは望まない。しかしすでに歩いた場所に行ってしまい引き返したりしている内に、次第に天候が悪化し、しまいには吹雪に。
風も強く、あっという間に体感気温はマイナス18度へ。視界も悪く、すぐ先に建物があっても気付かないだろうホワイトアウト状態で、完全に進退窮まってしまう。仮に戻ったところで、寒さはしのげるものの、すぐに渇きに悩まされるのは明白で、そもそも戻れるかも怪しい。
鹿の生肉を食べて飢えをしのぎ、意を決して歩き始めたのだが、結局新たな建物にも辿りつけず、天候も回復せず、線路を歩きながら銃を抱えて凍死という最後に。ああ諸行無常。
開発中ということもあって、まだコンテンツが限定的でバグも多いが(いわゆる「世界の裏側」にも行けてしまう)、美しく怖い局地の自然を体感するという本作の狙いは、現時点でも十分に達成されていると思う。
1980円という値段に見合っているかは人によると思うが、グラフィックとコンセプトにグッと来る人にはオススメできるし、製品版ではさらなるエリアやコンテンツ、そしてもちろん、キツいシナリオがついたストーリーモードが予定。『ザ・エルダースクロールズ』シリーズにも関わったベテランゲームデザイナーのケン・ロルストン氏もチームに加わったそうなので、“先行買い”をしてみるのもアリではないだろうか。