美しき滅びの世界が問いかける、一人称視点の哲学パズル
哲学とパズルは似ている。知識を前提としたクイズとは異なり、どちらも必要なのは論理的思考と真理への欲求だ。では、哲学を問うのが人間の本性ならば、パズルを解くロボットもまた人間ではないか。
いきなり妄想全開で紹介する今回の作品は、まさにロボットが主人公のパズルゲームだ。開発は、コメディタッチのFPS(一人称視点シューティング)、『シリアスサム』で有名なCroteamだが、笑いの要素は一切なく、哲学をテーマとしている。
ゲームの目的は、ブロック状の“印章”を集めること。ステージ奥にある印章は、開閉式の扉や攻撃型ドローンなどに守られている。それらの障害物を、さまざまな道具と知恵を駆使して突破していくのだ。パズルの傾向や雰囲気は、一人称視点パズルの傑作『Portal』から強く影響を受けている。だが本作は、ゆっくり考えながらプレイできるのが特徴だ。ジャンプやダッシュといった動作はあるが、難しい操作は要求されない。また、詰まったパズルは後回しにして、どんどん先に進めるのもポイント。後から詰まったパズルに挑戦してクリアーすると、なぜこんな問題が解けなかったのだろうかと、不思議に思える。そんな、自分の成長が楽しくなる難度なのだ。
●広大な世界と膨大な謎
ゲームの舞台は美しい廃墟の世界。最初に探索できる世界は限られているが、一定数の印章を入手すると少しずつ世界が広がっていく。舞台も古代ギリシア、古代エジプト、中世ヨーロッパと大きく変化して飽きさせない。パズルに詰まったときは、気分転換に歩き回るのもオススメ。
●人間であるとはどのようなことか
本作は、物語もパズルのよう。語りかける謎の声“エロヒム”、コンピューターで閲覧できる資料、世界に散らばるボイスメッセージとQRコード。これらの断片的情報をもとに、物語を読み解いていく。通底するテーマは人間とロボット、心と機械の違い。難解だがシンプル、まさに哲学。