墓地を歩く“だけ” 老婆の心象を体験する異色作
インディーゲームの魅力のひとつが、およそビッグセールスからはかけ離れたような作品でもリリースされる点。一度きりの人生で、あなたが手に取ることができるゲームには、残念ながら限りがあります。だからこそ、できるだけ多様性を持った作品に触れることで、メディアとしてのゲームが持つ、表現と可能性に対する視野を広げたいもの……。と、小難しい前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する作品は、まさしくインディーゲームならでは、と思える、なんと“歩くだけ”のゲームです。
内容をそのまま説明するならば、“老婆を操作して墓地を歩く”だけ。しかしながら本作の魅力は、この歩くという行為が、プレイヤーの脳裏に焼き付かせる心象にほかなりません。あなたは、老婆となって墓地を歩いていくことで……人生の黄昏を迎えたひとりの老婆の心象を、名優の演技を見ているかのように“体験”することになるでしょう。本作は、ゲームが持つ“表現”の可能性を追求した実験的な作品でもあり、同時にゲームというメディアで詠われる生と死についての、ひとつの詩なのです。
●主人公は老婆
あなたが操作するのは、お婆さん。もちろん杖で攻撃したり、軽快に走ったりすることなどはできない。積年ゆえの重い足取りで、ゆっくり一歩ずつ歩いていく。
●教会を目指し、墓地を歩いてゆく!?
歩くこと以外にできる唯一の行動は、“座る”ことのみ。じつは、墓地の奥に建つ一軒の教会の前にはベンチがあり、そこにお婆さんを腰掛けさせることができる。きっとここまで歩いてきたあなたは、このベンチに「座って休みたい……」と、強く感じることになるだろう。
<注目>
リアリティーを生むお婆さんの動き
手触りの心地よさなどとは一線を画す、お婆さんの操作感。思い通りに歩かせることすら困難であり、少し歩くだけで苦しそうに喘ぎ、杖にすがる。操作しているうちにプレイヤーは「なんだかかわいそう」と感じ、思わず立ち止まって休ませてあげたくなるだろう。しかし、この操作がプレイヤーの脳裏に喚起させるのは、リアルな老人の気持ちそのものにほかならない。
<R.I.P.>
人生を回想する最後の日が訪れる……
ベンチに腰を掛けてしばらくすると……不思議な歌声とともに、お婆さんが物思いにふけるようになる。この歌の歌詞は非常に寂しいものであり、お婆さんの暮れゆく人生を暗示するかのようだ。この歌を聴きながら、プレイヤーであるあなたは、何を感じるのだろうか。
the Graveyard.
The Graveyard.
メーカー | TALE OF TALES |
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対応機種 | iOSiPhone/iPod touch / PCWindows / AndroidAndroid |
発売日 | 配信中 |
価格 | 120円[税込] |
ジャンル | シミュレーター |
備考 | ※『The Graveyard.Lite』(無料版)も配信中 |