またソウルライク? と言うなかれ。本作の魅力はそこじゃない
ダークファンタジー風の世界を、邪悪な魔術師に呪いをかけられた騎士が冒険するアクションゲーム『Castle of Heart』。本作は、ポーランドのデベロッパー7Levelsによる2Dアクションだ。日本では、レイニーフロッグより、2018年11月29日にNintendo Switch向けにリリースされた。
まず甲冑を纏った騎士のビジュアルを見て、「なんか『DARK SOULS』っぽいな」と思った方もいることだろう。しかし、本作は見た目こそ似ているものの、いわゆる“ソウルライク(※)”と呼ばれる類のゲームではない。
この記事では、『Castle of Heart』について、過去のアクションゲームと比較しながらゲームの概要を紹介する。
ソウルライク…フロム・ソフトウェアより発売された名作アクションRPG『DARK SOULS』シリーズにインスパイアされたゲームの総称。難易度が高く、ゲームオーバーを繰り返しながら上達していく“死に”ゲーであることが最大の特徴。
ダメージを受けてものけぞらない“石の騎士”
『Castle of Heart』の主人公は、邪悪な魔術師から愛する人を守ろうとした結果、呪いで石に変えられてしまった。しかし彼は愛する女性の一粒の涙で、石化した体のまま再び動き出す。
石になった騎士の体は動けば動くほどひび割れて崩れていく。体の崩壊でゆるやかに減り続ける体力を回復するには、敵や木箱から入手できる体力ジェムが必要だ。
また、体が石になっているだけあって、騎士はどれだけ攻撃を受けてもほとんど怯まない(もちろん体力は減るが)。ステージのあちこちに仕掛けられたトゲ床や落石のトラップも、体力が減ってもいいのなら無理矢理スルーして突破できる。
続いて、ファンタジーには欠かせない武器の話をしよう。騎士は常に左手に剣を持っているが、このデフォルト武器ははっきり言って弱い。ゲームを有利に進めるには、落ちている武器を“サブ武器”として装備するのがおすすめだ。サブ武器は「いったい、これのどこが“サブ”武器なの?」と言いたくなるほど強い。攻撃力の高い武器が落ちていないか、つねに目を光らせておきたい。
ただし、体力が一定を下回ると騎士の右腕は崩れ落ちて、サブ武器を持てなくなる。サブ武器なしの状態で戦うのは時間がかかるうえ、すでに説明した通り体力は徐々に減り続ける。右腕が崩れたときは即座に回復してリカバーするか、素直に諦めてリトライするのが得策だ。なんたってコンティニューはペナルティーなく何度でもできるのだから。
“ソウルライク”なのはアートワークのみ
ダークファンタジー風の世界観で、全身を甲冑で被った騎士が活躍するアクションゲームという点のみにおいては、本作は“ソウルライク”であると言えるかもしれない。
しかし『Castle of Heart』と『DARK SOULS』では、単に2Dか3Dかという差異だけでなく、アクションゲームとしてまったく異なっている。理由を簡単に説明しよう。
『DARK SOULS』はガードやパリィ・ローリングなど防御行動の性能が高いアクションゲームだった。雑魚敵は攻撃をガードすればよろけて隙ができるし、相手がボスでもタイミングよくガードすればパリィで大ダメージを与えられる。『DARK SOULS』のアクションの核となっているのは、ガードと回避だと言っていい。
対する『Castle of Heart』は、ガードとローリング自体は存在しているものの、『DARK SOULS』ほど信頼できる技ではない。本作ではタイミングよくガードしてもパリィは発生しないし、ローリングには無敵時間もなければ敵の通り抜けもできない。『Castle of Heart』は、防御行動でそこまで強くはないアクションゲームなのだ。
また、ガード成功時や回避後に敵が大きな隙をさらすこともないため、本作ではある程度ダメージを受けるのを前提に戦わなければならない(ただ真正面から殴り合っていては体力がいくらあっても足りないので、ガードや回避は必須)。
もちろんダメージを受けやすい代わりに『Castle of Heart』では、すべての敵が回復ジェムを落とし、チェックポイント通過で体力が全快する仕様になっている。お互いに体力を削りあう戦闘は、“石にされた騎士”らしい無骨さを感じられて好印象だった。
2Dアクションの古典へのリスペクト
先ほど本作はいわゆる“ソウルライク”ではないと述べたが、どちらかと言えば『Castle of Heart』はファミコン・スーファミ時代の2Dアクションにリスペクトを捧げているように感じた。実際、ファミ通ドットコムで掲載した開発者へのメールインタビューでも90年代の横スクロールゲームに触発されたという発言が確認できる。興味がある方は、下の記事を読んでみてほしい。
たとえば、道中で武器が拾えたり、ある程度の被ダメージが許される戦闘システムは、探索型になる前の『悪魔城ドラキュラ』とどことなく近いものがある。
また、本作には動く足場やターザンロープのような“プラットフォームアクション(※)”としての側面も存在する。ハードな戦闘と軽快なジャンプアクションの切り替えは、ゲーム全体にメリハリを生んでいる。
※プラットフォームアクション…『スーパーマリオブラザーズ』のように、ジャンプで障害物を飛び越えながらゴールを目指すタイプのアクションゲーム。
荷台に乗って坂道を下りながら障害物をジャンプで避けていく場面では、『スーパードンキーコング』のトロッコステージを思い出してしまった。まさかトロッコからトロッコへ飛び移るときの爽快感と不安の混ざった複雑な感情をもう1度体験できるとは。
総評:大味さも含めて古典的な2Dゲームらしさを感じられる良作
この原稿を書いている現在、私は長時間のプレイによる頭痛と目のかすみに苛まれているが、それは『Castle of Heart』に中毒性があったからだ。ラスボス戦は決して派手な戦闘ではないもののミスの許されないシビアな戦いで、クリアまで合計2時間近くゲームオーバーとリトライを繰り返すことになった。気がついたらもう外は明るくなっていたが、達成感はすさまじかった。
とはいえ本作も完璧なゲームではない。ゲーム終盤には敵の攻撃力が高すぎたり、着地点も見えないままジャンプさせられるようなアンフェアな場面が多く、かなりのストレスになった。
全体を通して大味な部分はあるが、その大味さも含めて『Castle of Heart』はレトロな2Dゲームの雰囲気を醸し出している。3DCGで横スクロールという珍しいグラフィックは、ダークファンタジーのムードを演出するだけでなく、ピクセルアートに飽きつつあるゲーマーの目にも新しく映るだろう。
横スクロールのエッセンスを存分に凝縮した『Castle of Heart』は手に取りやすい1800円[税込]で発売中。“愛と勇気”の物語を体験しよう。
■脳間 寺院(のうま・じいん)京都生まれポケモン育ち、ボンクラオタクはだいたい友達。「ゲームをもっと面白く」をモットーに記事を書くゲームライター。Twitterにてゲームにまつわる情報を発信中。
Twitter:@noomagame