久しぶりの国際試合に胸が高鳴る

 ゲームオンが運営するPC用オンラインFPS『Alliance of Valiant Arms』(以下、『AVA』)。2008年12月に正式サービスが開始され、2018年12月には10周年を迎えた長寿タイトルだ。

 『AVA』の魅力は何といっても戦略性の高さだろう。撃ち合いが強ければ勝てるというわけではない。何よりも重要なのは味方との連携。オンラインFPSとしては王道の本作は、日本に“esports”という言葉が根付く前から多くのプレイヤーを魅了してきた。

 競技性の高い『AVA』は、これまでに多数の大会を開催。手に汗握る名試合がいくつも誕生し、その度に多くのプレイヤーが熱くなった。国内の大会だけでなく、海外の強豪チームと競い合う国際試合や各地域の代表チームが激突する世界大会も、幾度となく開催されてきたほどだ。

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国際大会“AWC2015”の様子。
“AVAれ祭2016‐横浜の陣‐”の様子。

 しかし、2016年に開催されたオフラインイベント“AVAれ祭2016 ‐横浜の陣‐”で行われた試合を最後に、近年は海外チームとの国際試合が行われなくなっていた。運営チームからはこれといった発表はなく、それでも国内大会は開催される。そんな状況が続いていた。

 そんな『AVA』に、新しい動きが見られた。2019年2月24日に“日韓親善試合”が、突如として開催された。前触れもなく開催が発表された本イベントに「急になぜ?」と思ったプレイヤーも少なくないだろう。

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 本記事では、日韓親善試合のリポートに加え、日本運営プロデューサー・大濱学士氏を直撃したメールインタビューを掲載。今回のイベントを企画した意図や『AVA』のこれからについて語ってもらった。

 10年続いたオンラインFPSタイトルがつぎに向かう先とは? 興味深い内容となっているので、ぜひともチェックしてみてほしい。

日韓の強豪クランが熱い戦いをくり広げた親善試合

 親善試合には日韓の強豪4クランが出場した。。日本代表はAVA RCT2018後期オフライン決定戦の優勝クラン“iXyNeD”と準優勝クラン“Kresty”。

 韓国代表は、これまでに数々の世界大会を制してきた強豪クラン“clanHeat White”と、韓国で行われた代表決定戦を勝ち抜いた“Feminism”だ。

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 1stマッチではKrestyとFeminism、2ndマッチではiXyNeDとclanHeat Whiteが対戦。

 ルールは、7ラウンド先取の大会ルールが採用され、2マップ先取で勝利となる形式だ。マップは事前に行われたバン&ピックによって決定した。

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 なお、試合前に『AVA』日本運営プロデューサーの大濱学士氏から、試合はオンラインで行われ、日本サーバーに接続しての対戦となる旨が伝えられた。

 韓国クランは通信環境の不利な状況で対戦することになる。大濱氏は「勝敗でなく、対戦の内容や今後に行われる親善試合の可能性に注目してほしい」とコメントした。

1stマッチ:Kresty vs Feminism

 1stマッチの第1マップはINDIAで、Krestyの攻めからスタート。1ラウンド目は制限時間をじっくりと使い、丁寧な攻めを見せたKrestyが先取。その後も緩急を使いわけるようにFeminismの守りをうまく崩し、Krestyが4-2で先行する形で前半戦を終えた。

 攻守が切り替わった直後、Feminismが勢いのある攻めを見せる。4-4と盛り返すも、その後のラウンドをKrestyが連取。最終的に7-4というスコアで第1マップをKrestyが勝利した。

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 第2マップはCANNON。FeminismがPingの不利を感じさせない撃ち合いの強さを見せつけ、2ラウンドを連取した。

 負けじとKrestyも猛反撃を見せるが、2-4とFeminismが有利な状況で攻守が切り替わる。後半戦でもFeminismがラウンドを先取し、勢いは止まらないかと思われたが、ここでKrestyが意地を見せた。のりしお.選手の狙撃が冴え渡り、Krestyが4ラウンドを連取して逆に勝利に王手をかける展開に。

 Feminismもラウンドを取り返し、スコアを6-6と同点に戻すが、最終ラウンドをKrestyが勝利。2マップを連取したKrestyが1stマッチの勝者となった。

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2ndマッチ:iXyNeD vs clanHeat White

 2ndマッチの第1マップはBLACK SCENT。先攻のclanHeat Whiteが一点突破を狙って攻めるが、iXyNeDはうまくいなして誰ひとり倒されることなくラウンドを先取。

 しかし、続く第2ラウンドでは、前ラウンドに続いて勢いのある攻めを見せたclanHeat Whiteが押し切り、ラウンドを取り返した。その後は、互いにラウンドを取り合うシーソーゲーム展開へ突入。4-3とiXyNeDが一歩リードするも、ほぼ互角な状況で前半戦が終了した。

 後半戦では、clanHeat Whiteがラウンドを先取したが、その後のラウンドではiXyNeDがじっくりと時間をかけた攻めでラウンドを連取。この作戦が功を奏したのか、そのまま7-4というスコアでiXyNeDが第1マップを制した。

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 第2マップはDUAL SIGHT。先攻となるiXyNeDが、第1マップの勢いそのままに先取。その後、clanHeat Whiteが堅い守りを見せ、第4ラウンドまで互いにラウンドを取り合う展開で試合が進行した。しかし、ここでもiXyNeDが要所で撃ち合いに勝利して、4-2とiXyNeD優勢で攻守が切り替わる。

 後半戦では、iXyNeDの勢いがさらに加速。clanHeat White相手に一歩も引かない立ち回りでラウンドを連取していく。試合終了までiXyNeDが試合の流れをつかみ続け、7-3という圧倒的なスコアで第2マップも勝ち取り、2ndマッチを勝利した。

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 結果だけ見れば日本代表チームの勝利となったが、大濱氏が試合開始前にコメントしたとおり、韓国クランが日本サーバーに接続しての対戦で、公平な条件での結果ではない。

 通信回線にハンデがあったにも関わらず、撃ち合いの強さを見せた韓国クラン。同じ条件下で対戦を行えば、結果はどうなるのか……非常に気になるところだ。

これから『AVA』はどうなっていくのか?

 いち観客として、筆者も親善試合を楽しませていただいた。楽しかったがゆえに、やはり冒頭にも書いた“なぜいま国際親善試合なのか”が気になってしまう。

 そこで、日本運営プロデューサーの大濱氏にメールインタビューを実施。親善試合の感想や『AVA』の今後の展開などや予定している施策など、気になる疑問をぶつけてみた。

大濱学士

『Alliance of Valiant Arms』日本運営プロデューサー。

――今回の日韓親善試合を開催するまでの経緯を教えてください。

大濱プレイヤーの方々に、ゲームを遊ぶうえでの継続的な目標、活躍の舞台を提供することは、ゲームサービスを運営する企業として外せないミッションだと考えています。その具体的な施策として、これまでに運営チームでは、サービス開始後から一貫して大会による盛り上げをテーマに掲げて活動してきました。

 私たちが大会にこだわる理由は、プレイヤーとして参加して楽しいのはもちろんですが、観戦しても楽しめる、いわばFPSというジャンルが持つ独自のインタラクティブ性を活かした体験を提供できる点が最大の魅力と考えるからです。

 今回の日韓親善試合を企画した意図としては、諸事情により折り合いがつかず、2016年12月26日に開催された“AVAれ祭2016 ‐横浜の陣‐”を最後に海外プレイヤーと対戦する機会がなかったという点があります。大部分のプレイヤーの記憶から薄れてしまっている高度な戦術や技術を競う国際大会の興奮や盛り上がりを、もう一度リマインドしたいという意図がありました。

 “AVAれ祭”のように、大きな会場を借りて大会を行うのが理想ですが、その前に、まずは海外プレイヤーとの対戦を体験してもらうことを優先して、今回はオンラインにて実施しました。

 オンライン上での海外親善試合は初の試みとなるため、PingやIP制限等のさまざまな問題も懸念されたのですが、関連企業であるNEOWIZの協力を得て、最大限解消することができました。

――親善試合を終えての感想を教えてください。

大濱まずは、日韓親善試合実現までご協力いただいた韓国選手、日本選手の皆様には本当に感謝しています。試合を無事終えられることができたことに安堵しています。

 今回の日韓親善試合は、日本『AVA』運営主導で起案し、韓国側と技術的な部分を含め協議した結果、韓国代表選手には日本サーバーに接続して試合を行っていただく形となりました。

 親善試合の結果としては、1stマッチ、2ndマッチともに日本代表クランである“Kresty”、“iXyNeD”の勝利という喜ばしい結果で終わることができましたが、Ping差がある状況の中でも韓国代表“Feminism”、“clanHeat White”の両クランはベストを尽くして戦ってくれました。拮抗した実力があってこそ生まれる白熱した試合が多く、観戦している僕も昔の日韓対決を思い出し、胸が高鳴りました。

 今回の親善試合を開催できたことで、通信環境を含めたさまざまな課題も見えてきましたので、今後はそれを対策した上で国際親善試合を実施できるよう、各国の『AVA』運営企業や開発もとを含めて調整を行っていきたいです。

 そして、世界レベルの高度なプレイや、すばらしい選手がいることを、ふだんから『AVA』を遊んでいただいているプレイヤーの皆様に伝えていくことが、とても重要な仕事のひとつだと、改めて確信しました。

 今後も多くのゲームがある中で『AVA』を選んで楽しんでいけるよう、より一層がんばらなくてはいけないと、鼓舞してくれた日韓親善試合となりました。重ねてにはなりますが、日韓選手のみなさん、そして今回熱い声援を送り続けてくれた 『AVA』ユーザーの皆さん、本当にありがとうございました!

――今後はどういった施策を検討していますか?

大濱冒頭で述べたように、運営チームでは“大会”をひとつの大きな軸としてさまざまな施策を組んでいきたいと考えていますので、10周年を迎えた今後もオンライン、オフライン問わず大会は積極的に開催していきます。

 今回開催された日韓親善試合を機に、日本、韓国だけではなく、他国とも親善試合を行う機会を作っていきたいと考えています。そのために、今回の親善試合の改善点や視聴いただいた皆さまの意見を検討して、今後の大会企画に活かしていきたいと考えています。

 また、サービス開始から10年が経過しても、なお毎月たくさんの新規のお客様が『AVA』をプレイしてくださっており、感謝の念に堪えません。多数の声をいただいてはおりますが、度重なるアップデートにより複雑化したゲーム内の導線や、膨大化した情報量をいかに整理してわかりやすく提供できるかが今後の飛躍のカギになると考えております。

 情報の整理はもちろんのこと、ガイドの整備や、サポート体制の強化など可能な支援は今後強化していきたいと考えております。

――競技性ゲームとして、『AVA』は今後どのように進化していくのでしょうか?

大濱『AVA』は、2008年12月に正式サービスを開始してから今年で10周年を迎え、現時点でサービスが続いているオンラインFPSの中でも古参といえるタイトルになっております。

 しかしながら、これまで行われた多数のアップデートにより、マップやゲームモードはもとより、銃器アイテムの数は膨大な点数にのぼり、一部バランスの調整がうまくいっていない問題があります。いわば、基本プレイ無料のオンラインゲームとして、セールスと競技性の両立という二律背反にぶち当たっているのが現状です。

 純粋に競技として楽しみたいというプレイヤーの方には満足していただけていないことは十分に理解しております。

 そのうえで、打開策としてクラシックモード(使用できるアイテムを制限したモード)を考えており、すでにその試金石として2018年12月に試験的に公開しました。アンケート等の反響としては、2012年段階の銃器バランスを希望する声が大きかったように思います。また、“アイテム装備のしづらさ”や“銃器のラインナップ”などさまざまなご意見をいただき、開発元(REDDUCK)にフィードバックを行いました。

 2019年度は「競技性を取り戻す」を合言葉に、2012年頃の『AVA』を再現したクラシックモードを提供することで、『AVA』本来の対戦のおもしろさを思い出していただき、そのうえで、さらなる競技性の追求を目指す方向で進化していければと考えております。