プレイステーション5(PS5)にて、ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売予定の『ラチェット&クランク:リフトアパート(仮称)』。本作は『ラチェット&クランク』シリーズの最新作で、PS5の詳細発表と同時に発表され、とくに次元を一瞬で移動する演出などが話題を集めた注目作だ。発売日は未定だが、PS5のローンチ時期を目指すことが明かされている。

 2020年8月28日に配信された“gamescom Opening Night Live”では、本作の新たなプレイ映像が公開。ファミ通.comでは、それに合わせて開発スタッフへのインタビューの機会を得た。

 本記事では最新プレイ映像からわかる点をベースに、PS5の性能を活かした演出や、PS5の新コントローラー“DualSense(デュアルセンス)”の機能を駆使した遊びが生み出す楽しさや没入感など、新世代の『ラチェット&クランク』について、開発を手掛けるインソムニアック・ゲームズのマーカス・スミス氏(クリエイティブディレクター)、マイク・デイリー氏(ディレクター)にお話をうかがった。

PS5『ラチェット&クランク:リフトアパート(仮称)』開発者インタビュー。ロード画面は一切ナシ! コントローラーの新機能で武器ごとに異なる感触を味わえる_01

マーカス・スミス氏

クリエイティブディレクター。15年以上インソムニアッ・ゲームズに務め、『RESISTANCE 3 (レジスタンス 3)』や『Sunset Overdrive(サンセット オーバードライブ)』のディレクターも務めた。

マイク・デイリー氏

ディレクター。開発ツールやゲームエンジンのプログラマーとして活躍し、『ラチェット&クランク』シリーズに長く関わる。本作ではディレクターに抜擢された。

石立大介氏(いしだて だいすけ)

SIE ローカライズプロデューサー。今回のインタビューの通訳を担当していただいた。

武器ごとに伝わってくる感触が変わる!?

――今回公開されたプレイ映像はタイトル画面から始まっていますね。これは本編でも同じように始まるのでしょうか。

マイクいえ、今回お見せしたプレイ映像は、ゲームを開始してから少し経ったものです。本当はもうちょっと前の物語から始まるのですが、今回はアクションをすぐに披露したいということで、その場面は省略しています。

――なるほど。今回のインタビューでお聞きしたいのは、PS5ならではの機能を使った部分です。とくにハプティックフィードバック(※1)とアダプティブトリガー(※2)を活用した部分が気になります。PlayStation.Blogで公開されていますが、“武器ガラメカ”(ラチェットの使う武器)のひとつ、エンフォーサーはR2トリガーを半分くらいまで押した状態と、そこからさらに押し込んだ状態の2段階の攻撃ができるとのことですが、本作ではあらゆる武器にアダプティブトリガーを軽く押したときと、さらに押し込んだときなど、複数の操作・攻撃方法があるということでしょうか?

※1 ハプティックフィードバック……従来の振動技術よりも微細な振動でコントローラーから感触が伝わる、DualSense(デュアルセンス)の機能のひとつ。

※2 アダプティブトリガー……アクションに合わせてL2・R2のトリガーボタンの感触・抵抗力が変わる、DualSense(デュアルセンス)の機能のひとつ。

マイクその通りです。ほかにもバーストピストル(仮称)という武器がありまして、バーストピストルでは動きはゆっくりですが正確に狙い撃ちできる射撃と、正確さを犠牲にして連射力を高める2種類の撃ちかたができます。また、アダプティブトリガーによって、自分がいまどのモードで攻撃しているのかハッキリとわかるようになっています。

――プレイ映像ではボムを遠くに投げる、近くに投げるという2種類の投げかたがあったように見えましたが、それもアダプティブトリガーを活用したものですか?

マイクいえ、ボムにはアダプティブトリガーを使っていません。もちろん導入を考えてテストしたのですが、基本的には通常のFPSやTPSなどで採用されている、ボムの投げかたのほうが遊びやすかったんです。事前に投げる準備をして、狙いを付けて投げるというプレイ感覚も同じです。むしろボムに関しては、ハプティックフィードバックの感触が強く味わえます。たとえばボムを投げたときに、自分からボムが遠ざかっていく感覚ですとか、ボムが爆発したときの感触も独特のものになっています。言葉では伝わりにくいとは思いますが、プレイしていただければきっと違いを感じてもらえるはずです。

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――やはり開発者の方でも、ハプティックフィードバックの感触は言葉では伝えにくいものなのでしょうか。

マイクそうですね(苦笑)。伝えるいちばんの方法は、皆さんに遊んでいただくことですし、僕たちもその瞬間が待ちきれません。ただひとつ言えるのは、全武器ガラメカごとに感触が違って、それがハッキリと認識できるということです。ハプティックフィードバックは、それくらい繊細です。攻撃方法の違いだけでなく、これまで以上に武器ガラメカの個性がより強く感じられるでしょう。

――武器ガラメカごとにアダプティブトリガーの感触も変わりますか?

マイクはい。武器ガラメカは改造ができるのですが、改造するたびにアダプティブトリガーの感触が変わったりしますし、特別な武器はやはり特別な感触が味わえます。ハプティックフィードバックも、アダプティブトリガーも、すべて武器ごとに調節しています。

――それは楽しみですね。では、ロード回りのお話についてお聞きします。本作の特徴でもある、一瞬で世界観の違う次元を行き来できる演出は、PS5搭載の高速SSDによる高速ロードのおかげで実現できたということですが、もしこの演出をPS4で実現するとなると、そのたびにロードが入ってしまうものなのでしょうか?

マーカスはい。PS4では不可能だったと思います。高速ロードがあるからこそ作った演出で、世界がビュンビュンと切り換わる中でもプレイヤーに操作していただけるくらいの短いロード時間だからこそ、実現できたことです。試していないのでわかりませんが、おそらくPS4だったら長いロード画面が入るでしょう。

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――PS5によって、単純に描画能力も高くなったと思います。プレイ映像では、多数の住人がワチャワチャと混乱していたり、スクラップが無数に散らばるなど、前作よりも画面がにぎやかなったと感じました。

マーカスPS4の前作『ラチェット&クランク THE GAME』は、我々としても誇りを持ってお届けできるすばらしい作品に仕上がりました。そのため、本作をどう前作よりも強化するのか、というのが本作の課題でした。より空間を感じていただくことや、PS5の性能を活かしたたくさんのアクションを発生させることで、よりその世界のいきいきした雰囲気を表現しています。また、より濃密にグラフィックを描けるようになったので、ライティングなどでより美しく世界を構築できました。

――ライティングと言えば、レイトレーシング(※3)によって、映像の中ではクランクが前作よりもさらにキラキラしているように見えました。

※3 レイトレーシング……“光線(レイ)を追跡(トレース)する”という名の、現実的な物理法則に乗っ取ったリアルなライティング、シャドウ、エフェクトを実現する技術。

マーカスそうですね。技術の進化を本作にも反映していますので、そのひとつが物体へのレイトレーシングになります。ご指摘のようにクランクの反射などにも活用していますし、それ以外の背景やオブジェクトも光が反射して見えるようになっています。ただ、クランクだけでなく、ラチェットの毛のフサフサ具合にもぜひ注目してください。ラチェットは、アクションに合わせて毛がなびくようになりました。

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――たしかにフサフサ感もアップしているように感じました! ボス戦なども、これまで以上にハチャメチャなバトルが待っていそうですね。

マーカスもちろん我々としても、従来と同じものを作りたくありません。すべての面を進化させ、さまざまな部分に変化を加えています。ただ、『ラチェット&クランク』シリーズの持つ楽しさは変えていませんのでご期待ください。

マイクプレイ映像にもあるように、次元を超えて世界を高速で行き来したりしますので、これまで以上にハチャメチャで楽しいバトルが待っていますよ。

――プレイ映像では、空間を引き寄せるかのように移動しているシーンがありましたが、あれはどのようなアクションなのでしょうか。

マイクプレイ映像の中では、2種類の次元の移動が見られましたよね。ひとつは、次元の裂け目の入り口を引き寄せて、ラチェットが距離を詰めるように移動するものです。これはプレイヤーが任意で操作できます。もうひとつが、先ほどからアピールしている、次元を高速で行き来する演出です。これはステージ進行とともに、強制的に次元を移動させられるもので、自分から発動できるものではありません。ちなみに、この次元を超えるギミックは、プレイ映像でこれまでに公開した2種類だけではなく、ほかにもまだありますので、楽しみにしていてください。

――ああいった演出がロード画面なしで体験できるのはすごいですね。ちなみに、本作にはいわゆるロード画面の“Now Loading”の文字が表示される場面はあるのでしょうか?

マーカスひとつも出ません。完全に新世界を体験できるでしょう。

――それはすごい! あと、映像の最後に登場する女性のロンバックス族が気になります。プレイアブルキャラクターということですが……?

マイク皆さんが気にしていただいていると思いますし、僕らも早くお伝えしたいのですが、新たなロンバックスの詳細については今後公開していきますので、続報をお待ちください。

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――わかりました。また、対応しているフレームレートや解像度についても教えてください。

マイク映像の美しさを高めるとフレームレートが落ちるというのは、どのゲームでもバランスが悩ましいところです。本作はアクションの快適さと美しいグラフィックのバランスを重視しつつ、プレイヤーが解像度とフレームレートを2種類から選べる仕組みにしています。ひとつは“4K解像度で30FPS”で、もうひとつが“60FPSでより低い解像度”。このどちらかを選択できるようになる予定です。

石立私から補足させていただくと、PS3後半からの『ラチェット&クランク』は、PS2時代の60FPSを捨てて30FPSにすることでグラフィックを美しくする選択をしてきまして、実際にゲームプレイも30FPS前提で作られてきました。それが今回は、PS2時代の60FPS路線か、それともPS3以降の高解像度&30FPS路線かをプレイヤーが選んでいただけるというものになっています。

――では最後に、新型コロナウイルスの影響もあり大変かとは思いますが、現在の開発状況はいかがでしょうか。

マーカスチーム全体で、自宅からのテレワークに移行していて、内部としては順調です。移行もスムーズにいき、そこそこうまくいったと思います。ただ難しいのは外部スタッフです。たとえば、音声収録やBGMの演奏については、遅延があったり、もしくはこれまでとは違ったアプローチが必要でした。

マイクそうですね。そういったパンデミックの影響はありましたが、だからこそよりいいゲームを作らなければと、チーム全体で努力しています。

マーカス日本のファンの皆様にも、ぜひいち早く遊んでいただきたいです。そして、新型コロナウイルスが終息したら、日本へ遊びに行ったりしたいですね。

――本作が遊べるときと、マーカスさんたちが日本に来ていただけるときを楽しみにしています! ありがとうございました。