過去の名作アニメの中からおすすめの作品をご紹介する【なつかしアニメレビュー】。

 今回ご紹介するのは、ゲームを原作としたテレビアニメの中でも屈指の名作と名高い『ガングレイヴ』です。テレビ東京系列で2003年から2004年にかけて放送されました。

 本作は現在、dアニメストアバンダイチャンネルFODといった動画配信サービスで見放題にて配信中。視聴環境がある方にはぜひおすすめしたい作品となっています。

アニメ『ガングレイヴ』(dアニメストア)

 原作となるゲーム版『ガングレイヴ』は、レッド・エンタテインメントと漫画家の内藤泰弘氏がタッグを組んで手掛けられた、2002年発売のプレイステーション2用ガンアクションゲーム。

 2017年、2018年にはプレイステーション VR用ソフト『GUNGRAVE VR』、『GUNGRAVE VR U.N』が発売され、2020年内にはプレイステーション4用のシリーズ最新作『GUNGRAVE GORE』の発売も予定されているなど、近年も活発に新作が展開されている人気シリーズです。

 主人公はネクロライズという技術により蘇った死者、ビヨンド・ザ・グレイヴことブランドン・ヒート。最愛の女性・マリアの残した娘のミカを守るため、生前所属していた犯罪組織・ミレニオンに戦いを挑むというストーリーが展開されます。

 アニメ版は、原作ゲームの1作目が発売された翌年、2003年10月から2004年3月にかけて放送。監督は『NARUTO』シリーズをはじめ、さまざまな作品で演出や作画を手掛ける都留稔幸氏。シリーズ構成は『スクライド』や、のちの『機動戦士ガンダム00』などを代表作に持つ黒田洋介氏が手掛けています。

 上記の作品と比べると、『ガングレイヴ』はインパクトの強い台詞まわしこそ少なめです。しかし、戦いへと身を投じる男たちの、絆や、不器用ながら魅力的な生き様などが垣間見える、グッとくる台詞が目白押しである点では共通しています。

 原作の設定をベースとしながらも、アニメ版にしかない魅力も多い本作。いちばんの注目ポイントは、なんといってもブランドンと、ミレニオンのボスであるハリー・マクドゥエル、ふたりの男の過去にスポットが当たる点です。

絆で結ばれたふたりの男は、なぜ道を違えたのか?

アニメ『ガングレイヴ』(Gungrave)レビュー。犯罪組織で成り上がるふたりの男は、やがて敵どうしに……ゲームを原作とする屈指の名作【なつかしアニメレビュー】_01
画像はdアニメストア作品紹介ページより

 犯罪が横行するスラム街で生まれ育った、若き日のブランドンとハリー。彼らはほかの数名の友人とグループをつくって、窃盗や喧嘩に明け暮れるチンピラとして暮らしていました。酷い目に会うことも多い、粗末な生活。けれど、気心の知れた仲間たちとの日々は、笑顔の絶えないものだったのです。

 しかしある日、とある組織の構成員の怒りを買ったことが切っ掛けで、ブランドンとハリー以外の仲間は殺されてしまいます。ブランドンの想い人であるマリアの育ての親も殺され、絶望に打ちひしがれるブランドンとハリー。

 その後、ふたりは自分たちの命を救ってくれた男、ベア・ウォーケンが所属するミレニオンの構成員になることを決意。行方知れずとなったマリアが、組織のボスであるビッグダディに引き取られたことも明らかになります。

 ブランドンは、マリアの幸せを守るため。ハリーは、より大きな権力を手に入れるため。ふたりはミレニオンの中でのし上がります。

アニメ『ガングレイヴ』(Gungrave)レビュー。犯罪組織で成り上がるふたりの男は、やがて敵どうしに……ゲームを原作とする屈指の名作【なつかしアニメレビュー】_02
画像はdアニメストア作品紹介ページより

 頭が切れるハリーと、スイーパー(殺し屋)としての才能を発揮し始めるブランドンは、協力して組織のための仕事をこなしていきます。彼らを慕う仲間も増え、順調に組織内で頭角を現していくふたり。

 けれど月日が流れ、いつからか芽生えたふたりの考えかたの違いは、徐々に、けれど確実に大きくなっていったのです。

 ブランドンはビッグダディを心から尊敬し、彼のため、よりよい組織のために働いていきたいと考えるようになります。一方のハリーは、より高い地位を手にするためなら何でもする非情の男に。やがては、組織の対立者を罠にはめ陥れるような卑劣な手段を用いることも……。盟友のブランドンにも打ち明けることなく、より深い悪に手を染めるようになっていきます。

 そして、決別のときが訪れます。それはあまりに悲しく、強い絆で結ばれていた若き日のふたりのことを思うと、切なさが込み上げてきます。

 そんな、原作の前日譚と言えるエピソードが、アニメ版『ガングレイヴ』では全26話中の16話という話数を掛けて、情感たっぷりに描かれるのです。

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画像はdアニメストア作品紹介ページより

丁寧な描写がドラマを盛り上げる

 秀逸なのは、ブランドンとハリー、ふたりの人間性の丁寧な描写により、決定的な決裂を迎えるまでの変化が説得力を持って描かれていく点。

 ブランドンは、無口で一見何を考えているか分かりづらい男です。けれど、出世してからもかつて所属していた組織の末端の事務所に酒を持って顔を出すなど、不器用だけど義理堅く、心やさしい人物であることが分かります。

 一方、かつては仲間想いだったものの、人を手に掛けることに慣れてしまった後は、野心に囚われ暴走してしまうハリー。彼は自身の行いの非道さを顧みず、ビッグダディを守りたいと考えるブランドンに“裏切られた”と感じるようになってしまうのです。

 作品を貫く退廃的なムードも、大人のアニメファンの鑑賞にも耐えうる魅力的なものとなっています。途中から、“ネクロライズ”や“オーグマン”といった原作準拠のSF設定が登場しますが、そこまでの世界観は、まるで往年の犯罪映画の雰囲気を忠実にアニメ化したかのような渋い味わい。

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画像はdアニメストア作品紹介ページより

 回を追うごとにゲーム原作らしい要素が増えていく点も、本作ならではの面白味と感じることもできるでしょう。

 はじめてネクロライズ化された不死の軍団がブランドンたちを襲う第10話『CONFLICT』は、何度撃たれても倒れない彼らのおぞましさも相まって強く印象に残るエピソード。続く第11話『HEAT』とあわせて、窮地に立たされるブランドンたちの決死の銃撃戦もあり、見どころ満載です。

 第14話『DIE』は物語の転換点。ブランドンとハリーのひとつひとつの表情が、ふたりの感情の揺らぎを見事に表現し、終盤、エレベーターのシーンでの鬼気迫る演出には、息をするのも忘れるほどの緊迫感を味わえます。

 アニメ後半では、原作ゲームをなぞらえた物語が展開。地獄から蘇ったグレイヴことブランドンが、ハリーや、“ミレニオン四天王”と呼ばれる大幹部となったかつての仲間たちと死闘を繰り広げます。こちらも手に汗握る戦いと、物悲しいドラマが目白押し。

 アニメ版ならではの魅力である、ふたりの男の絆が切なくも失われ、やがて対立する切っ掛けとなった過去のエピソードを経たうえで味わう物語は、より深い味わいを見せてくれます。

 そして、そんなふたりの男が迎える結末を描く第26話『破壊者たちの黄昏』は、きっとあなたの心に焼き付き、決して消えないものになるでしょう。

作品情報

タイトル:『ガングレイヴ』(Gungrave)
全26話(2003年~2004年放送)
配信サイト:dアニメストアバンダイチャンネルFOD

スタッフ

  • 原作:内藤泰弘、レッド・エンタテインメント
  • シリーズ構成:黒田洋介
  • キャラクター原案:内藤泰弘
  • アニメーションキャラクターデザイン:筱雅律
  • 音楽:今堀恒雄
  • 監督:都留稔幸
  • 制作:マッドハウス
  • 製作:PROJECT GUNGRAVE

キャスト

  • ビヨンド・ザ・グレイヴ/ブランドン・ヒート:関智一
  • ハリー・マクドゥエル:磯部勉(青年期:浜田賢二)
  • 浅葱ミカ:佐久間紅美
  • ボブ・パウンドマックス:茶風林
  • バラッドバード・リー:子安武人
  • ベア・ウォーケン:大友龍三郎
  • 九頭文治:立木文彦
  • マリア:井上喜久子