風変わりでユーモアやギャグ満載の任天堂初のテキストアドベンチャー
いまから33年前の1987年(昭和62年)9月4日は、ファミコン ディスクシステム用ソフト『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』(前編)が発売された日(ちなみに後編は1987年9月30日発売)。
『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』は、任天堂から発売されたアドベンチャーゲーム。ゲームが前編と後編の2部構成で発売され、ディスクカード1枚で完結しないという試みは本作が初めて。後編は同年1987年の9月30日に発売となっている。後に同様の形式で『ふぁみこんむかし話 遊遊記』や『ファミコン探偵倶楽部』シリーズなども発売された。ちなみに、本作が任天堂初のテキストアドベンチャーゲームでもある。
物語はそのタイトルからもわかるとおり、日本の昔話がモチーフ。『桃太郎』をベースに、『かぐや姫』や『金太郎』など、誰もが知るような昔話を融合させたような世界設定になっていて、キャラクターもさまざまな昔話から多数の人物が登場している。筆者はこのごった煮のような世界設定が大好きで、「こんな話があるのか!」と幼いながらにひどく感銘を受けた記憶がある。例えるならそう『アベンジャーズ』を初めて知ったときのような感覚に近いはず(笑)。
アドベンチャーゲームの題材と言えば、『ポートピア連続殺人事件』や『オホーツクに消ゆ』、『探偵 神宮寺三郎』シリーズみたいなミステリーがド定番だったこともあり、風変わりでユーモアやギャグ満載の本作は、多くのプレイヤーにとってかなり目新しさを感じる作品だったのではないかな。画面レイアウトも独特で、昔話らしくテキストが縦に表示されていたのも珍しかった。
主人公は竹の中から生まれた女の子(ひかり)と、川に流れてきたお椀にお湯を注いだら生まれてきた男の子(どんべ)のふたり。特筆すべきは“ひとかえる”コマンドで主人公を切り替え、それぞれの視点で物語を進められる点。ふたりには得手不得手があるため、個性を活かす選択をして謎を解いていくのもおもしろかった。選択肢が豊富でおもしろおかしいテキストが読めることも多く、つい余計な選択をしてしまい、ゲームーオーバーになってしまったという経験も一度や二度ではないはずだ。中盤以降は、打ち出の小槌の力で成長したふたりの活躍も見ることが可能で、より冒険アドベンチャー感のアップした物語を楽しめた。
スーパーファミコンの時代には、本作の外伝的な作品『BS 新・鬼ヶ島』がサテラビューで配信されていた。衛星放送を使ったデータ放送だったので、これをプレイした剛の者はかなり少ないのではないだろうか。筆者はサテラビュー本体を持っていなかったため、泣く泣くゲームデータ配信前に放送していた番組だけを聞いていた記憶がある。この『BS 新・鬼ヶ島』は、後にスーパーファミコン用ソフト『平成 新・鬼ヶ島』としてリメイク。オトモである3匹の過去が掘り下げられた物語を堪能できる。
『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』をいま遊ぶなら、Wii Uやニンテンドー3DSのバーチャルコンソールがいいだろう。
※画面写真はWii Uバーチャルコンソール版のものです。