世界中のアニメーション映画祭を熱狂させた、ラトビア人新進クリエイター、ギンツ・ジルバロディス(Gints Zilbalodis)氏が、製作・監督・編集・音楽などをこなし、3年半をかけてたったひとりで作り上げた長編デビュー作、映画『Away』が2020年12月11日(金)より、新宿武蔵野館ほかにて劇場公開される(全国順次公開)。

 本作は世界最高の権威と最大級の規模を誇るアニメーションの国際映画祭“アヌシー国際映画祭”において、2019年に新設された実験性・革新性のある長編作品を対象とする“コントルシャン”賞で、見事初代グランプリを受賞した作品。これを皮切りに、世界中の国際映画祭を席巻し、第92回アカデミー賞長編アニメーション部門の最終候補32作品に選ばれ、同年第47回アニー賞でも『アナと雪の女王2』や『トイ・ストーリー4』とともにベストミュージック部門にノミネートを果たした注目作だ。先日、ポーランドで行われた第13回ポズナン・アニメーター・フェスティバルでは、最優秀長編映画賞を受賞し、ついに世界の映画祭で“9冠”を達成。日本以外にもフランスやポルトガルでの公開も決定し、世界での評価がさらに高まっている。

Away 2019 Gints Zilbalodis 8

 世界中の映画祭でつぎつぎと賞を受賞する映画『Away』は、当時弱冠25歳のラトビアの新星、ギンツ・ジルバロディス監督によって生み出された長編アニメーション作品。

 本作を着想するにあたっては、さまざまな映画やゲーム、自身が足を運んだ旅行からヒントを得たと監督自身が明かしており、その中には、日本のコンテンツの影響もあるという。

「子どものころから日本のアニメのジブリやポケモンなど見ていましたが、欧米の作品とは違うなと感じていました。日本の作品は観客を信頼しています。細部まで、じっくり観察して、描きかたがおもしろいです。たとえば、食べ物を食べる描写にしても、実際の食べ物よりもおいしそうだったりして、当時強いインパクトを受けました」(ギンツ・ジルバロディス監督)

 また、監督のアニメーションの世界観に大きな影響をもたらした作品として、宮崎駿監督や高畑勲監督の名前を挙げている。

 「『未来少年コナン』(78)は宮崎駿監督が創り出した最高の作品のひとつで、私が憧れていた素晴らしい世界の建築物も登場しました。また、高畑勲監督の『母をたずねて三千里』(76)にもインスピレーションを受けました。高畑監督の描いた自然を見て、自分もそのように作ってみたいと思ったのです」(ギンツ・ジルバロディス監督)

 なお、アニメだけではなく、幼少期から両親の影響で映画に親しんでいたジルバロディス監督は、影響を受けた作品として黒澤明監督『七人の侍』の名前も口にしている。

Away 2019 Gints Zilbalodis 9

 さらに、多くのゲーム作品にも触れているジルバロディス監督は、影響を受けたクリエイターとして、上田文人氏の存在があるという。

 「インスピレーションを受けたのは、『ワンダと巨像』(05)、『人喰いの大鷲トリコ』(16)です。とくに『人喰いの大鷲トリコ』は、男の子と動物との関係が、驚異的にデザインされていると思います」

 どうやら、ジルバロディス監督が独特な没入感や演出法を生み出すきっかけのひとつとなったのは、上田文人氏の作品にあるようだ。合わせて、影響を受けた音楽家として、久石穣氏や『ワンダと巨像』の音楽を手掛ける大谷幸氏挙げている。

 いままでに触れたことのないような作風ながらも、どこか暖かく、親しみやすい作品であり、圧倒的な没入体験を楽しめる映画『Away』。日本のカルチャーにインスパイアを受け、監督のこだわりが詰まった本作は、12月11日(金)より新宿武蔵野館で上映されるのを皮切りに、全国順次公開。愛知・名古屋シネマテークでは2020年12月26日(土)から、大阪・テアトル梅田/出町座では2021年1月22日(金)から、それぞれ上映されることが決定している。

ギャラリー5

『Away』

【STORY】
飛行機事故でたった一人生きのびた少年は、森で地図を見つけ、オートバイで島を駆け抜ける。
黒い影から逃れて、小鳥とともに。

【受賞歴】

  • アヌシー国際アニメーション映画祭 コントルシャン賞
  • ストラスブール・ヨーロッパ・ファンタスティック映画祭 インターナショナル・アニメーション・コンペティション部門 作品賞
  • アニメスト 作品賞
  • 新千歳空港国際アニメーション映画祭 審査員特別賞
  • ラトビア国立映画祭 最優秀アニメ映画賞 国際映画批評家連盟賞
  • アニマ・ムンディ国際アニメーション映画祭 最優秀子供向け作品
  • ヴァルナ映画祭 スペシャル・メンション
  • シネシナ映画祭 特別芸術貢献賞
  • ポズナン・アニメーター・フェスティバル 最優秀長編映画賞

2019年/ラトビア/カラー/原題:Away/シネマスコープ/81分/5.1ch ※本作にはセリフがありません
後援:駐日ラトビア共和国大使館 配給:キングレコード 配給協力:エスピーオー