ゲームをノベライズした小説が好きだ。最近は『マジカミ』を題材にした『マジカミ イビルオブテイルコート』(以下、イビルオブテイルコート)を読んだらおもしろかった。

 おもしろいのも納得。作者が実力派なのである。その名もしめさば。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
『イビルオブテイルコート』表紙画像(左)と、“マジヤバいカミRPG”というキャッチコピーで売り出し中の『マジカミ』(右)。宣伝みたいな導入だが、広告記事ではない。

 しめさばさんと言えば、デビュー作『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』が、シリーズ累計で100万部突破の大ヒット。2021年4月からテレビアニメ化が予定されており、人気はうなぎ登りだと思う。

 2019年12月にアニメ化が、2020年7月に主要スタッフ等が発表。『イビルオブテイルコート』が発売されたのは2020年9月30日なので、わっしょいわっしょい大変な時期もかぶっていたのではないか。

アニメ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』PV 2021年 放送開始予定!

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 そんな人気作家が、どうして『マジカミ』のノベライズを手掛けることになったのか。『マジカミ』を開発・運営するStudio MGCM経由でしめさばさんに相談したところ、経緯を教えてもらえることになった。

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取材はビデオ通話で実施。僕(上段中央)が余計なことを聞かないようにお目付け役として『マジカミ』関係者も参加している。「原稿料はいくら?」とか。

 ちなみに、僕には作家を目指して専門学校に通っていた時期がある(すぐに編集者のほうが向いていると気づいて方針転換した)。

 “小説はどうやって書くのか”や“オリジナルとノベライズで執筆スタイルに違いはあるのか”など、『マジカミ』以外の話も聞かせてもらった。完全に趣味だが、興味深い内容だったのでこの記事に載せます。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
『マジカミ』はいわゆるソーシャルゲームで、DMM GAMESでPC版が配信され、iOS版とAndroid版も用意されている。小説家がゲームのシナリオを手掛ける事例も増えているみたいです。

ヘビーユーザーのひとりが、たまたま小説家だった

 そもそもノベライズの担当作家ってどういうふうに決まるのだろう。想像できる流れは3種類。

  • (1)作家本人が出版社やゲームメーカーに対して「書きたい」と手を挙げる
  • (2)出版社が選ぶ
  • (3)ゲームメーカーが選ぶ

 僕の予想は(2)か(3)。さあ、どうか。

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僕の場合はStudio MGCMさんから連絡がありました。たしか今年(2020年)の1月くらい。

 ここまでは正解。実力のある人に書いてもらいたいのは当然として、しめさばさんが選ばれた理由は何なのだろう。

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もともと『マジカミ』にハマってたんですよ。

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リリース前から広告バナーとか記事を見て知ってましたし、一時期はサバト(対人戦コンテンツ)で上位を狙うくらいにやり込んでました。環境もメタも研究してガチガチにパーティー組んで。いまもふつうに遊んでます。

 唐突な告白に笑うしかない。ノベライズの担当作家は実力と知名度を見込まれてオファーを受け、取材の一環でゲームを始めるのかなと思っていた。思い込みはよくない。

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サバトはほかのプレイヤーが組んだデッキと戦う非同期対人戦コンテンツ。
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しめさばさんのサバトデッキ一例がこれ。UR(最高レアリティ)をLv80まで育てるには同じものが5つ必要なのに、4人ともLv80。すごさがびしびし伝わってきますね。

 もともとゲーム好きなしめさばさん。『マジカミ』プレイヤーであることをアピールしないまでも(仕事のために遊んでいるわけじゃないから、アピールする必要がない)、厳密に隠していたわけではない。

 いつしかガチ勢の小説家がいるという噂が『マジカミ』チームに伝わることに。そして、ゲームのノベライズを多く出版するファミ通文庫にStudio MGCMから働き掛け、ノベライズ企画が進行していく。

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『マジカミ』ってユーザーといっしょに盛り上がっていく、みたいなやりかたで宣伝しているみたいなんですね。で、僕がたまたま小説家だったので。

 プレイヤーがたまたま小説家。デビュー作のアニメ化がたまたま進行中。『マジカミ』チームの引きが強すぎる。僕のガチャ引きにもその運を分けてほしい。おい! URが当たらねえぞ!

 怒りはさておき、『マジカミ』をやろうと思ったきっかけは何だろう。やはりゲーム性に惹かれたのだろうか。

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エロかったからですね(※)。

※『マジカミ』はFANZA GAMESでR18版もサービスされている。

 正直者だ。

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たしか、ここあ(百波瀬ここあ。ヒロインのひとり)のアニメーションが先に公開されていたと思うんですけど、それを見て、「ふむ、これはエロいな」と。

 自分の心情を噛んで含めるように「これはエロいな」と言った。この人は信頼できる。

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あ、お話がおもしろそうだったというのもあります。

 作家としての意地を見せてきた。『マジカミ』は12人の女の子が登場し、それぞれに物語が用意されている。物語作りのプロとして、いちばん気に入ったキャラは誰だろう。

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大鳥丹(おおとりあか)です。

 間違いなくエロ目当てであった。

 美少女ゲームにはいろいろなキャラ属性の女の子が出てくるのが定番。その中でも、大鳥丹はセクシーなお姉さんキャラだ。おっぱいが大きくて未亡人みたいな色気があるので、僕は“色欲の化身”だと思っている。

 じつは何となく大鳥丹好きなんじゃないかなーとあたりを付けていた。妙になまめかしいシーンが『イビルオブテイルコート』の作中に出てくるので(ファミ通文庫は健全なレーベルです)。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
左が私服で、右が魔法少女に変身した際の衣装のひとつ。こんなニットワンピースを着こなすなんて、色欲の化身しかありえないだろ。

ゲームをそのまま文字にする必要はないので、オリジナルキャラを投入

 『マジカミ』には都立有羽、私立武良穂、私立聖チャールズという3つの学校が登場し、それぞれに4人ずつヒロインの女の子が通っている。『イビルオブテイルコート』の舞台は都立有羽の学園祭だ。

 しめさばさんが好きな大鳥丹は私立武良穂の3年生。好きなキャラを書くときは筆が乗るらしいが、さすがに別の学校の生徒メインにはしにくいはず。プロット(構成)は誰が考えたのだろう。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

プロットはシナリオ担当の方と相談して、僕が考えました。小説って2巻3巻と出し続けられるとは限らないので、1巻で終わっても違和感がないように。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

(メインキャラを)絞らないと話が散らかっちゃうので、最初は都立有羽の4人で。つぎも書かせてもらえるんだったら私立武良穂、私立聖チャールズという感じにできたらいいなと。

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 大きな構想を作って最後まで書き切るのが理想だが、基本的には一発勝負。締めで次巻への引きを大げさにすると、続刊できなくなった際に読者が消化不良を感じてしまう。それはよくない。

 だからだろうか、物語の中心にはゲームには登場しない“エンビ”という悪魔(敵キャラ)がいる。オリジナルキャラクターを中心に展開すれば、1話完結にしやすい。端的に言えば、えこひいきと後腐れが発生しない。

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オリジナルの敵キャラクター“エンビ”。

 エンビの登場もしめさばさんの発案。『マジカミ』のシナリオ担当さんによると、話を聞いたときは大盛り上がりだったらしい。理由は「しめさばさんが考えた敵はいままでの悪魔とは違う攻めかたをする。だったらオリジナルの敵を出すのが手っ取り早い」。

 ゲームとは違う見せかたができるのが小説のいいところだ。だから、自分たちが作ってきた『マジカミ』像に固執する必要はなく、ゲーム内容をそのまま文字にすることもない。なるほどなー。

 “オリジナルキャラならボコボコにしても原作ファンから怒られない”なんて安易な理由ではないのである。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
『マジカミ』では魔法少女たちが着用する“ドレス”を集めて強化していく。着せ替えも可能。
人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
『イビルオブテイルコート』にはエンビをモチーフにしたドレスが特典として付属している。

 さて、これだけはお願いしておこうと思っていた。続刊が決まったら、ぜひ書いてほしいエピソードがあるのだ。槍水りりと丘田マリアンヌの関係である。

 ふたりはそれぞれギャルとおたくで幼なじみ。面倒見のいい性格のりりはおたくに偏見を持たず、マリアンヌのおたく活動を手伝うこともしばしば。全おたくの憧れと言ってもいい存在である。

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たしかに、あのふたりの関係はいいですよね。

 ネットでは昔から“おたくに優しいギャルがいる”という噂が都市伝説的に語られている。真相は不明だし、うすうす現実に気づいてはいるが、夢を見させてほしい。

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槍水りり。こういうギャルが現実にいたら、世界は平和に包まれると思う。
人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
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丘田マリアンヌ。美人でスタイルのいいおたく女子はたまにいる。

ヘビーユーザーが小説を書くメリット

 つぎに聞きたいのは物語の作りかたについて。小説や漫画などを書く場合、だいたい下記の2パターンに当てはまると思う。

  • プロットを考えたうえで必要な登場人物を配置する。
  • 登場人物を考えたうえで物語の構成を決める。

 物語版の“卵が先か鶏が先か”。ちなみに、僕は先にプロットを考えたほうがいいと習った。ムダなキャラがいないほうが物語がすっきりするから。

 書きたいシーンが浮かんだら、そこに向かって盛り上がりを計算しながら書き進める作家さんもいると聞いたことがある。しめさばさんはどうか。

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僕は“セリフ”ですね。最初は物語もキャラもなくて、「いいセリフだなー」って思いついたらそれを言いそうなキャラを考えて、その人にどういう人が絡んだらおもしろいか考えて……って感じです。

 小説を読んでいて、心に残りやすいのはキャラクターのセリフだと思う。そこを中心に肉付けしていくのが、しめさばさんの作風。さっき例に挙げた“書きたいシーンを先に考える”タイプに似ている。

 その方法はノベライズ作品にも通用するのだろうか。中心となるキャラクターはすでにいる。いいセリフがあったところで、キャラクターに合わなかったらどうしようもないと思うのだが。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
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キャラを完全に理解しないといけないので(原作があるコンテンツのノベライズは)難しいですね。自分の中に取り込むレベルまで落とし込まないと、反射的に何をしゃべるのか想定できないんですよ。

 キャラクターを借りている以上、イメージと違うセリフをしゃべらせるわけにはいかない。極論を言うと、いい作品を書くためには登場人物の美少女と一体化する必要すらある。

 美少女ゲームはメインとなるキャラクターがたくさんいるのでたいへんそうだ。と思ったら、

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あ、でも『マジカミ』はその辺けっこうスムーズでした。ヘビーユーザーなので。

 そうでもなかったらしい。ゲームのシナリオを書くような仕事だとキャラクター像の読み込みに時間をかける必要があるが、『マジカミ』ならその作業をスキップできる。すでにあらゆるパターンを読み込んでいるからだ。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
キャラが身に着ける“ドレス”にはそれぞれにストーリーが設定されている。メインシナリオとは別の“if”の物語を楽しめる。

 それでも、開発用の資料を読んだらキャラの性格がしめさばさんの受け取りかたとは違うこともあったそうだ。だが、プレイしていて感じたのだから、それも事実には違いないはず。設定に引っ張られすぎるのもよくない。

 ちなみに、設定資料と自分の中のキャラクター像がいちばん違ったのは遊部いろはとのこと。

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12人の中で主人公と最初に出会う元気娘・遊部いろは。魔法少女に憧れており、いつもテンションが高い。
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前向きなパワーで引っ張るわんぱく娘だと思っていたんですけど、(設定資料では)それが悪い面として書かれてることが多かったんですよ。最初はトラブルメーカーみたいな設定だったんじゃないかな。

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その性格がいい面にも悪い面にも働くほうがいい。いろはの直情的なところが(事件の)トリガーになると読んでる側はイラッとするだろうから、その役割は花織に担ってもらったり。そんな感じでした。

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人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
朝永花織は魔法少女たちの中でもいちばん“ふつう”の感性の持ち主。

 小説では魔法少女たちがどんどん行方不明になっていく。きっかけは花織のコンプレックス。誰もが持ち得る不安要素だけに、読んでいて違和感がない。

 『マジカミ』のシナリオ担当さんによると、しめさばさんのキャラ理解度は申し分なかったそうだ。

 シナリオ制作には複数のライターが関わっているので、セリフの言い回しや行動原理のバラつきはある程度は仕方ない。最終的にメインの担当者が調整するのだが、しめさばさんの原稿にはほとんど手を入れなかったとのこと。

 さすがヘビーユーザー。「○○はそんなこと言わない」が発生しないのはすばらしい。

時間をかけて丁寧にセリフを吟味

 作家がどういう風に生きているのか、仕事をしているのか、興味がある。どれくらいでプロットができて、執筆にはどれくらい時間がかかるのか、全体的なスケジュール感を知りたい。

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『マジカミ』はすごく時間がかかっちゃったんですよ。そもそも僕の予定管理能力の低さが問題なんですけど。

 これぞ作家! と興奮する回答だ。勝手な希望だが、作家には締切にルーズであってほしい。締切ぎりぎりになって編集者から「先生、まだですか」と催促されてほしい

 いや、僕も編集者なので締切を破られると吐き気がするほどつらいのは知っているが、それでもそうであってほしい。「アイドルはトイレに行かない」みたいな話である。

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2020年の1月にお話をいただいて、2月に(ファミ通文庫の)編集部と顔合わせをして……。ちょうど自分の本とか、ほかのゲームのシナリオ仕事が重なっている時期だったんですよ。1本に集中できなくて、ほんとに各所に申し訳なかったです。『マジカミ』もプロットの時点で遅れちゃって。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

 取っ掛かりの段階で遅れてしまった『マジカミ』執筆作業。ところで、こちらとしては小説1冊分のプロットがどれくらいで仕上がるのか基準がわからない。1週間? 2週間?

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1日くらいです。

 めちゃくちゃ早くないか。

 手のひら返しがすごいなと思ったが、これはあくまで理想的な例。方向性がピンと来ているときは関係者との打ち合わせ時点で構想が浮かんでいることも。うまくいけば1~2日の実作業でプロットは完成する。

 アイデアがまとまっていない状態で無理に作らないといけないこともあり、そうなると1週間2週間と時間が経過するのは当たり前。ほかの作業も重なると、じっくり考える時間がないため、もっと延びてしまうそうだ。

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ほかの作業と予定がかぶってたので連絡が遅くなったのは申し訳なかったですけど、考える段階で詰まるのはほぼなかったかな。そういう意味で、『マジカミ』は苦戦しなかったほうかも。

 プロットを『マジカミ』チームに確認してもらったら執筆作業に入る。プロットの時点では好調だったが、ここからが難しかったらしい。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

頭の中に完全な形でキャラがいる状態じゃないので、セリフをひとつひとつ吟味しないといけないんですよ。自分のキャラは勝手にしゃべってくれるので、セリフで止まることは少ないんですけど。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

『マジカミ』の場合、スムーズに書けたとしても「こういうこと言うかな?」って疑問が出ちゃうんです。で、資料を読んで調べるうちに、少しずつ遅れていった気がします。

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 セリフをもとに構成を考える作風だから、セリフにはどうしても神経質になってしまうのだと思う。「キャラクターコンテンツでは、セリフはかなり重要じゃないですか。だから時間をかけて丁寧にやりたい気持ちはありました」と、しめさばさん。

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セリフもそうだし、キャラの行動原理も汲まないといけない。「その娘、ここではそうは動かなくね?」っていうのはユーザーからするとストレスですしね。

 ヘビーユーザーのしめさばさんですら、開発資料と自分の認知に若干のズレがあった。ほかのユーザーも違和感を覚える可能性があるわけで、そのズレを最小限に抑えないとノベライズって成立しないのだろうな。

最後の1週間前でぽんぽんぽんと上がった感じ

 話を聞いているうちに、しめさばという作家は何者なんだろうという疑問が大きくなってきた。ふだんの生活から教えてくださいとお願いしてみた。

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『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』しかやってなかった頃は暇でした。最初は仕事をしながら執筆していて、忙しくなってきたので思い切って専業で(作家を)やることにしたんですね。

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その頃はずっとゲームやってました。でも、会社員を辞めちゃったので、物書きの仕事はあったほうがいい。僕じゃなくてもいいような仕事以外はお受けするようにしていて、5個6個と受けているうちに忙しくなってきて。

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最近はゲームの時間がだいぶ減ってきてます。それだけ忙しいってことなので、いいことではあるんですけど。みんながガーって(新作を)遊んでるときに、同じタイミングでやれないのは少し寂しいかなあ。

 新作ゲームがリリースされると、周囲の人がこぞって遊び始める。誰に言うでもなくTwitterなどで進行状況をつぶやき、独特のグルーヴが生まれる。

 みんなが盛り上がっているときに、波に乗らずにいるためには、強い気持ちが必要である。そんな中で、1日何時間を執筆に費やすのだろうか。

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状況によりますね。納期に余裕があるときは、「今日は乗らないなー」って思ったらすぐにやめることが多いです。乗ってるときに書きたいので。

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そうこうしているうちに余裕がなくなると、1日に6時間以上は作業するように。6時間座ってても6時間分の進捗を生み出せているかというと、そういうわけではないんですけど。

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知っている人がシナリオを担当しているゲームは気になるらしい。『マジカミ』は試しにやったらゲーム性にドはまり。

 ふつうの会社員をしていても、そういうときはある。「ですよねー」と同調すると、

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そういうときが8割ですね。進むときのほうが少ない。

 と、勇気をもらえるひと言が出てきた。己の腕だけで食っている人でもそうなのだから、僕らの仕事が遅れるのも仕方のないことなのだ。みんな、前を向いて生きていこう。多めに休憩を挟みつつ。

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進む日は2~3万文字書けるときもあるんですけど、6時間座ってても5000字~1万文字くらいしか書けないことは多いです。

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乗るときとそうじゃないときの波をコントロールしたいって思いながら2年くらい経っちゃったので、無理なのかもしれないなあ。

 そんな感じで作業を続けて、『マジカミ』のノベライズはざっくり2ヵ月ほどで完了。それも平坦な道ではなかった。

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ずっと書けない書けないって言いながら、締め切りが本当にやばくなったときに火が付いたんですよ。2ヵ月くらい引っ張って、最後の1週間前くらいにぽんぽんぽんぽんぽんと上がった感じでした、はい。

 やっぱり、僕がイメージする作家像だ。だが、現代の作家はもっとロジカルにスケジュールを管理する人が多いらしい。

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長くやってる作家さんは淡々と進める人が多いと思います。書けないときはどうするか。書けなくてもとりあえず何か書くんだよって。それは本当にすごいことなんですよ。

人生を変えた母のひと言

 シンプルな質問をぶつけてみた。

 しめさばさんは昔から作家になりたかったんですか?

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そんなことはないですね。

 何で作家やってるんですか?

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わかりません。

 この掛け合いはスピード感があっておもしろかった。「わかりません」にかける自信を感じたので、ほんとにわからないのだと思う。それでもきっかけはあるという。

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ゲーム好きだって言ってますけど、小学生くらいのときからゲーム音楽が好きなんですよ。で、ゲームの音楽を作る人になりたくて専門学校に行ったんですね。作曲の勉強をして気づいたことが。

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僕の音楽を作る情熱は趣味寄りなんだなって。仕事にするとなると、この気持ちだけではやっていけない。

 これは作り手を目指す人が一度はぶつかる壁だと思う。「それは作家でも同じなんですけど」と、しめさばさんは続ける。

 「作家も書きたいものを書けばいいわけじゃなくて、お仕事をいただいて、予算と時間の制約がある中で作んなきゃいけないこともある。商業ってそういうもの」。自分の書きたいものとオーダーされたもの、どちらも作り続ける作家の言葉には重みがあった。

 ちなみに、「『マジカミ』の音楽はどうですか?」と聞いたところ、しめさばさんとしては好印象とのこと。「もし自分が作るとしたらハードなほうにいっちゃいそうですけど、ポップにまとめていて。長時間聞くんだったらこれですよね」。

『マジカミ』OP -2020-

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それをできる気がしなくて音楽の道に行くのをやめて、フリーターになりました。サンドイッチを作って帰ってきてはネットゲームっていう生活をしていたら、母親から「時間はあるんだし、新しいことでもやってみたら?」と言われて。それで、趣味だった小説でもネットで書いてみるかなって。

 ゲーム、音楽に続いて、文章書きという第3の趣味が出てきた。

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昔から本を読むのも好きで、中高と文芸部で文章を書いてたんです。小説家になろうなんて思ってなくて、趣味レベルですけど。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

ネットで発表したと言っても、プロになれるとも思ってなくて、ただ楽しくて書いてました。そこに載せた作品が、当時はタイトルが違ったんですけど、『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』として世に出るという流れでした。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

だから、突然のことなんですよ。とんとーんって作家になっちゃった。「あれ、何か作家やってるぞ」って、2年経ったいまでもたまに、ふと思います。

 お母さんの何気ないひと言は、いまのしめさばさんを形成する重要な1ピースとなった。やっぱり親は子どものことをよく見ている。

目標は“すごい1冊”

 ゲームとゲーム音楽と本が好きという基礎に、お母さんからのひと言が加わって作家・しめさばが誕生。そこから『マジカミ』小説版が生まれることになる。

 そんなしめさばさんは作家として何を目指すのだろうか。夢・野望・目標を教えてもらうと、答えはシンプルだった。大きな賞を獲りたいでも、多額の印税をもらいたいでもなく、すごい1冊を出したい

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

ほかの作家さんの本を読んでると、すごいなーって思うことが多いんですよ。おもしろいのは当然で、それよりも“すごい”。みんな自分にしか書けないものがあるんですけど、それを差し引いても僕には書けない文章を書く人が多い。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

何て言うんだろうな、作家の人にそう思ってもらえるような本を1冊出したいという目標はあります。

 同業者に認められたい。プロならそういう欲求はあると思う。フジテレビ系のスポーツ番組“S-PARK”の“プロ野球100人分の1位”を見ていてそう感じる。

 突然テレビ番組を例に挙げて恐縮だが、これは“パワーヒッター”や“変化球”、“守備”などの部門ごとに、プロ野球選手が自分以外の優れた選手に投票する企画だ。

 プロ野球にはゴールデングラブ賞やベストナインといった公式の賞もあるが、これらはプロ野球記者の投票によって決定される。現役プロ野球選手と記者、どちらに認められたほうがうれしいか、言わずもがな(だと思う)。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」
ごりごりのゲーマーということで、『マジカミ』プレイヤーからは十分な支持を得られていると思う。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

いまところ、(自分は)時代の需要に刺さったものを書けただけの作家だなと思っています。実力が認められたのとは少し違う。だから、ものすごい1冊を出したい。自他ともに認めるような。それがどんなものかはまだわかんないですけど。

 デビュー作がアニメ化されるほどなのだから、多少は調子に乗っても怒られないと思う。それでもしめさばさんは謙虚だった。

 彼の“すごい1冊”とはどんな物語になるのだろうか。オリジナル作品かもしれないし、もしかしたら何かのノベライズかもしれない。

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それもそうですし、ジャンルもわからないですね。読んでいてものすげえなって感じるのはだいたいミステリー。展開でびっくりして、メッセージとしても伝わってくるものがある。

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ぎっしり詰まった本を書きたい気持ちはあるんですけど、まだまだ文章力が甘いので時間はかかりそうですね。勉強も仕事も両方やっていかないと。

いまの自分はライトノベル作家

 最後に、大きな話を聞いてみることにした。作家として何を書きたいのか。

 デビュー作『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』はラブコメだ。いわゆるライトノベルとして角川スニーカー文庫から出版されており、おもに中高生に向けられた作品だと思う。

 このまま作家を続けていくと、大人に向けた作品を書くことになるかもしれない。たとえば、ライト文芸作家になる可能性はないだろうか。

 ライト文芸は新しい小説区分。明確な基準はないものの、“一般文芸とライトノベルの中間に位置する小説”とされている(Wikipediaより)。ライトノベルより詳細な描写が重視され、萌え要素は控えめな傾向がある。

 しめさばさんによると、いずれはライト文芸レーベルで活動したいと考えるライトノベル作家は少なくないそうだ。そういう作家はたしかに“そっち寄り”の文章を書いているという。

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僕の場合はどこで書きたいっていうよりは、そのときに自分がおもしろいと思った話を書きたいかなあ。ライトノベル作家として活動する以上、それ(自分がおもしろいと思った話)をライトノベルに落とし込まないといけないですから。

 しめさばさんは“いまの自分はライトノベル作家である”という誇りを持っているのかもしれない。いろいろなテーマを、ときには難しいメッセージを親しみやすい文体で表現していく。

 ライトノベルは若者が日本語文章に触れるきっかけとしても機能している。僕も文章を書いて食べている身なので、この考えかたはすごくありがたい。どんどん若者を日本語好きの道に引きずり込んでほしい。

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ライトノベルではない媒体で仕事をする機会があったら、そこに合わせて書くのもおもしろいかもしれないですね。でも、いまのところは何を書くにしてもライトノベルにしたい。ライトノベル作家なので。

 そのときに書きたいものを、相性がいい場所(レーベル)で書けるのがいちばん楽しいと、しめさばさん。レーベルに合わせて文章の構成とか言葉選びも変わるのだろうか。

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言葉選びは意識したことはないですかね。でも、展開とかキャラの作りはけっこう変わると思います。僕、えぐい話が好きなんですよ。だから『マジカミ』とも相性がいいんでしょうけど。

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魔法少女RPGというきらきらしたジャンルを標榜する『マジカミ』ではあるが、ストーリーは全体的にえぐめ。

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プライベートで摂取してるのは残酷だったり辛かったりするお話が多いんです。書くものもそっちに寄りがちなんですけど、“ライトノベル”という場所だと、ひたすら辛いお話はおもしろくないというか、ウケるものではないんですね。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

キャラの見せかたもそうですね。ミステリアスに寄せすぎると心情がわからなくて、読者がついてこれないので。ミステリアスな性格でも感情が見え隠れするシーンでは極端に表現したほうがいいとか、読者層に対しての配慮はけっこうあります。

 ライトノベルとして書くためのテクニックである。「自分の書きたいものだけ書いても売れないですからねー」と、しめさばさん。

 誰だって好きなものを追求したいが、売れなかったら食べていけない。どんな業界でも言える話だ。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

作家が個人で出発するぶんには勝手にすればいいですけど、編集さん(出版社)と組んで仕事してる以上は、やっぱり売れるものを作るのは命題です。

人気ラノベ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』作者が『マジカミ』小説を書いた理由はシンプルだった。「たまたまヘビーユーザーだったので」

 今後、もしかしたら純文学みたいな芸術寄り作品を書く可能性もゼロじゃないと思う。そのときもペンネームはしめさばなのだろうか。

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だと思います。あ、でも、アダルト作品にも挑戦したくて、そのときは変えるかも。いまは高校生くらいの読者が多いので、変えたほうがいいのかなーと。年齢を気にする必要がないコンテンツでは変えないですね。

 自分のファンになってくれた子が間違って大人向けの作品を読んでしまわないようにと、青少年への配慮だ。

 個人的には、ハードカバーの重厚な本に、太いフォントで“しめさば”と明記される未来が訪れてほしいと思っている。めちゃくちゃおもしろい。

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