2021年9月16日(木)、カリプソメディアジャパンから発売となる『スペースベース スタートピア』。
こちらの新作は“宇宙ステーション経営シミュレーション”と銘打たれている。宇宙ステーションを舞台に、リアルタイムで進行していく経営シミュレーションゲームだ。本作はNintendo Switchとプレイステーション5、プレイステーション4、さらにPC(SteamならびにEpic Games)と、さまざまなプラットフォームで発売される。
本作では、プレイヤーは宇宙ステーションの経営者となって、さまざまなエイリアンのお客に対するニーズを満たす娯楽施設を作り上げていく。宇宙規模ということで、壮大なイメージを持つ人も多いだろう。
宇宙のお話ではあるが、宇宙ステーションの中は案外狭い。置けるだけ施設やオブジェクトを置きたいところだが、そのためのスペースの確保にものすごく頭を使う。
さらに本作は宇宙規模ではあるが、わりと細かい。むしろ細かな問題を見逃すと、すぐに宇宙ステーション経営の危機に発展してしまったりする。
だが、細かくて大変だからこそ、その各問題やニーズに完璧に応えられる施設を作り出せたときの達成感はかなりのもの。今回の記事では、プレイステーション4版をひと足お先にプレイさせてもらって感じた本作の魅力についてお届けしていく。
まずはお客からエネルギーを搾り取る!
本作の基本は、“エネルギー”の確保から始まる。宇宙ステーションの各フロアに最初からある“エネルギーコア”は、自動で一定量のエネルギーを発生させてくれるが、その量はあまりに心もとない。
本作の施設はすべて、建設、ならびに稼働維持のために大量のエネルギーを消費する。その一方で、エイリアンのお客が各施設を利用すると、そこにエネルギーを落としていってくれる。
つまり、本作ではより多くのお客を宇宙から招けば招くほどエネルギーが確保できる。そしてそのエネルギーを使えば、さらに高度で多くのエネルギーを搾り取れる娯楽施設も作れるようになっていくわけだ。
より多くのエイリアンが訪れてくれるようにするには、施設を多彩に用意しなくてはならない。エイリアンは種族ごとに、おもなニーズが異なる。それらを幅広く満たした宇宙ステーションにするには、とにかくいろいろな施設を用意するしかないのだ。
また、エイリアンはお客であるとともに、特定種族のエイリアンを雇わないと稼動しない施設があるため、重要なリソースにもなる。雇うためにも、まずはステーションに来てもらわないといけない。
序盤からより多くのお客を招きたいなら、施設を作る順番や、それにかかる時間を見極めることも大事だ。
本作の進行はターン制ではなく、すべてのエイリアンや施設がリアルタイムで同時に動いていく、リアルタイムストラテジー方式となっている。各施設も建設を指示したらすぐにできるわけではないし、作っているあいだにもお客は訪れ続け、不平やニーズも集まり続けるのだ。
本作では“ファジィ”というステーション内を管理するロボットユニットがさまざまな仕事をしてくれるのだが、その移動速度はとても遅いし、一定時間働くと充電時間が必要になる。すばやくニーズを満たしていくには、彼らの運用にも気を遣わないといけない。
このようにリアルタイムで進行する本作では、施設の位置を工夫することで時間効率を高めることも大事だ。たとえば、主要な人気施設はエイリアンたちが訪れる入り口からすぐにアクセスできる位置にあれば、それだけ回転効率が上がる。
そうした位置関係も考えていくと、エネルギー回収効率は十分なものになる。さらに“研究所”などが作れるようになれば各施設はさらに高性能化。運営はそのまま軌道に乗って、放置してもウッハウハの左うちわ状態になる……と思いたいところなのだが……。
宇宙ステーションには制限も多い!
本作の宇宙ステーションには3つの“デッキ”があり、以下のように分かれている。
・一般デッキ:生命維持や生産に関する施設が置けるデッキ
・娯楽デッキ:さまざまな娯楽施設が置けるデッキ
・バイオデッキ:食料や酸素、鉱物など、さまざまな資源を生産するデッキ
それぞれのデッキに置ける施設は決まっているため、たとえばディスコやカフェなどの娯楽施設は娯楽デッキには置けても、一般デッキに置くことはできない。そして各デッキの広さは当然ながら限られている。
各デッキの端にある隔壁をエネルギーを消費して解放すれば、デッキを1ブロック分拡大することができる。こうしてスペースを確保していけばさらに多くの施設を置けるようにはなるのだが、実際にプレイを進めてみると、慣れるまでは拡大してもスペースがぜんぜん足りなく感じるはずだ。
また、癒し効果がある照明や、映像が流れるモニターなどといったリラクゼーション用施設も次第に重要になってくる。確率でお客が不満を持ってしまったり、施設の待ち時間が長くて怒り出したりといった問題が、お客が増えれば増えるほど起こりやすくなるからだ。
この施設も当然、わずかながら設置スペースを食ううえに、その施設のごく近くを通ったお客にしか効果がない。空気清浄施設や給電施設なども、効果範囲に限りがある。これらの施設を大きな施設のあいだを縫うように置かなくてはならないため、スペースの問題がさらに浮き彫りになっていく。
お客の不平や健康状態をこうした施設でケアしないと、リアルタイムで問題は進行していく。ちょっと目を離したスキに病人があふれたり、激怒したお客たちがエネルギーコアを殴りに来たりと、とんでもない事件に発展してしまうのだ。
このように、スペースの問題は宇宙ステーション崩壊の危機にまでつながってしまう大問題だ。これを解決するには、限られたスペースをどう使うか、リアルタイムで進む状況のなかでしっかり考えていかないといけない。
ステーションのもっとも基本的な娯楽施設となる“キャビン”や、医療の要となる“医療ステーション”といった基本的な施設は、用意された正方形のプリセット配置のほかに、プレイヤーみずからが手動で設置範囲を決めて、その中にどんな装置を何個置くかも決めることができる。手間はかかるが、この自由配置を活用すればスペースの問題はかなり改善できる。
いちいち時間がかかる作業に見えるが、一度プレイヤーが作った施設のパターンはそのまま新たなプリセットとして登録できるので、つぎからは素早く配置できるようになる。何度もプレイしてその結果をプリセットに登録していけば、リアルタイム進行にも十分についていけるようになるはずだ。
スペースが限られているということは、ある程度の黄金パターンも限られてくるということ。プレイヤーごとの経営戦略に従って、最適解を探っていくのが本作のおもしろさになっているのだ。
生産、警備とやることはまだまだある!
一般デッキと娯楽デッキに、確保したエネルギーを使ってエイリアンのお客を集める施設をどんどん設置していく。これが本作の基本となるが、ゲームを進めていくとそれだけでは解決しない問題が発生したり、特定の資源が必要になったりもしてくる。
これらの問題に備えるためにも、序盤のうちから“バイオデッキ”での生産も充実させておきたい。従業員を雇えば自動でオブジェクト(植物など)から資源を収穫してくれるのだが、特定の資源がより多くほしい場合は、その資源が取れるオブジェクトが生えてくるようにテラフォーミングをする必要がある。
バイオデッキなどで回収した資源は、“工場”で別のアイテムに加工できる。こうして手に入れた別アイテムは、高度な施設の運用などに消費するのはもちろん、なんと“戦闘メカ”の材料になったりもする。
宇宙は広い。つまり、宇宙海賊や未知の宇宙怪獣なども当然存在する。宇宙ステーションが娯楽で盛況になったり、バイオデッキが豊かになったりすることで、こうした外敵も襲ってくるようになってしまうのだ。
そうした外敵を撃退するために、戦闘メカが必要になる。この戦闘メカもファジィ同様に結構な鈍足で、しかも専用の装置を設置しないと他のデッキへ移動できない。スペースの問題が、ここでもまた出てくるわけだ。
外敵との戦闘では、攻撃目標をプレイヤーが指定することができる。このように本作ではプレイヤーが干渉できる要素も多く、ゴミや資源の回収もファジィや従業員に任せきりではなく、プレイヤー自身の手でも行なえる。
とくにゴミ回収については、序盤はファジィの手がまったく足りないため、プレイヤーが代わりにやったほうが効率アップにつながる場合もある。操作の忙しさはとんでもないことになるが、究極の経営を目指すならこの苦労も必要なのかも知れない。
基礎の勉強から対戦・協力まで、楽しみかたもさまざま!
本作にはシングルプレイに加え、マルチプレイのモードも用意されている。まずはシングルプレイで遊べる“チュートリアル”と“キャンペーン”をプレイすれば、各施設の機能や経営のコツなど、さまざまな要素が自然と学べるようになっている。
こうして経営の基礎を学んだら、シングルプレイの“フリープレイ”に挑んでみよう。こちらでは対戦相手となるCPUキャラを用意し、同じ宇宙ステーション内で経営の手腕を競い合える。このモードでは難易度のほか、勝利条件もいくつか自由に設定できる。
このフリープレイの対戦には、他プレイヤーが隔壁を解放して手に入れたデッキエリアを買収したり、警備ステーションから妨害工作を試みることができたりと、娯楽経営とはまた別の対戦ストラテジー要素が盛り込まれている。
とくに熱いのが、デッキ買収の攻防だ。デッキを奪われればそこにあった施設も当然失うことになるので、たとえば医療ステーションを奪われてパンデミックに陥ったりと、一瞬でピンチに陥ることもある。奪い、奪われることを考えていく必要が出てくることで、さらに施設の設置場所や経営について考える要素が増え、おもしろくなる。
本作はリアルタイムストラテジーとしては“詰み”状態も起こりうるために、難易度がやや高めに見えるかも知れない。しかし、範囲内の病人を問答無用で治療するなど、各種問題を一気に解決する強力なアイテム“HED”各種が工場で生産できたり、一定時間ごとに商品ラインアップが変わる“VALショップ”で購入できたりするので、困った状況も案外なんとかなる。
むしろ筆者としてはファジィなどが鈍足な分、リアルタイムストラテジーとしてはゆったりと遊べたので、リアルタイムストラテジーが苦手な人でも問題なく遊べるかと思う。戦闘もそこまで高頻度で起こるわけではないので、むしろじっくり、ゆっくりと考え抜き、経営を極めていくのがおもしろいタイトルに感じた。
本作ではシミュレーションゲームの経験や腕前よりも、わがままなエイリアンのお客たちの声をつねに確認し、問題が発生したらすぐ対応するのが大事。現実の運営、経営でもとても重要、かつ当然の要素が最重要なのだ。
経営は大変ではあるが、操作やUIについては複雑なところはなく、建設や従業員へのケアなどもさくさくと進められる。このためリアルタイムストラテジーであっても操作にストレスをあまり感じないだけでなく、簡単な操作で遊べるということで、シミュレーションゲームが苦手な人にも気軽に楽しんでもらえること請け合いだ。
スペースをいかに有効利用していくかを突き詰めるだけでなく、お気に入りの施設を並べる箱庭づくりのような楽しみかたももちろんおもしろい。効率を求めるか、美しさを突き詰めるか、経営方針はプレイヤー次第でさまざまになるだろう。
単純明快ながらやること、やれることが多く、リアルタイムストラテジーとしても初心者から上級者まで幅広い層に楽しんでもらえそうな本作。ミッションの幕間にエイリアンどうしならではの皮肉の効いたジョークが挟まってきたりと、世界観もなかなかにぶっ飛んでいておもしろいタイトルだ。密かに現実の経営における大事なところまで学べたりするので、ぜひプレイしてみてほしい。