半キャラずらし35周年! アクションRPGの先駆者
いまから35年前の1987年(昭和62年)6月21日は、日本ファルコムからPC-88向けにアクションRPG『イース Ancient Ys Vanished Omen』(以下、『イースI』)が発売された日。
同作品に始まる『イース』シリーズは、日本におけるアクションRPGの先駆者的存在のひとつ。赤毛の冒険家アドル・クリスティンが、世界各地の古代文明の謎に挑む物語が描かれていく。数作品ごとにシステム面で大幅に変更を施しながらも、爽快なアクションが追求され続けているのが特徴だ。
ハードの性能に合わせてリメイクを交えながら進化を続けており、最新作の『イースIX -Monstrum NOX-』は2019年9月26日に発売されている。また、音楽面でもスタッフを変えながらずっと高い評価を維持しており、ファルコム作品の楽曲を演奏する、プロミュージシャンによる“ファルコムjdkバンド”でのライブでも、人気ナンバーの多くに『イース』シリーズの楽曲が並ぶ。
その第1作である『イースI』は、見下ろし型の“トップビュー”方式のフィールドを移動しながら、敵を倒したりダンジョンを攻略していくシンプルなシステムが特徴。敵への攻撃は体当たりで行い、“半キャラ”ぶんずらしてぶつかることでノーダメージで攻撃できる、通称“半キャラずらし”と呼ばれるテクニックで有名だ。
しかし、ゲームも後半になると敵の動きも素早くなり、ぶつかる寸前に“半キャラずらし戻し”で正面衝突状態にされることもある。そうなるとまさに悲劇。ものすごい勢いでこちらのHPを削られてしまうのだ。アドルは急に止まれない!
ダンジョンの最奥など、随所に登場する大型ボスとの戦闘も名物のひとつ。ボスによってさまざまなパターンが設定されていて、何度もやり直ししながらそれを記憶し、攻略法を見つけるのだ。ランダム性がほとんどないぶん、何度も何度もくり返していけばいつかはクリアーできるので、キャラクターではなくプレイヤー自身の成長が実感できる、いいシステムだったと思う。このボス戦の形式は、最新作でも受け継がれている。
これまで、何度にもわたって移植、リメイクが行われており、その回数はPCやモバイルを含めるとなんと10を超える。そのたびにビジュアル面や音質などが改良されてきたが、基本的なシステムやストーリー展開はほぼ同じである。
また、『イース』シリーズではすっかり名物として定着しているのが、オープニングでのアドルのトラブルシーン。『イースI』でも、嵐の結界により行き来が不可能と言われていた地方エステリアになんと小舟で向かい、当然の如く嵐に巻き込まれ舟から放り出されるも、エステリアの浜辺への漂着に成功している。
その後も記憶を失ったり、兵士に連行されてしまったり、またしても漂着したり、逮捕されたり……。毎回のようにトラブルに巻き込まれ(みずから飛び込んでいるという疑いも)、何事もなく冒険が始まった作品のほうが珍しいというありさまなのである。
シリーズ作品は、主人公の冒険家アドルが記した冒険日誌を翻訳、小説化したものとなっており、『イースI』はその最初の冒険譚となっている。本作とその続編である『イースII』が“失われし古代王国”というひとつの物語であり、『イースI・II』として発売されているソフトでは、2作品でデータのコンバートができるようになっているものもある。
最初の『イースI・II』がアドル17歳の冒険で、最新作の『イースIX』でもまだ24歳。働き盛り、冒険盛りである。今後も続編でさらなる活躍が期待できそうだ。
※画面写真はPCエンジン mini版『イースI・II』のものです。