あの夏の体験は、すべてが宝物
2000年(平成12年)6月22日は、プレイステーション用ソフト『ぼくのなつやすみ』が発売された日。
『ぼくのなつやすみ』は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)から発売されたアドベンチャーゲーム。都会で生まれ育った小学3年生の“ボク”くんが、母親が臨月を迎えたことを機に、夏休みの1ヵ月間を田舎の親戚の家で過ごすという内容だ。昆虫採集や魚釣り、人々との触れ合いなど、童心に返るようなワクワク感に満ちた作品で、発売から22年経ったいまもなお、その魅力は色褪せていない。
まず目を引くのは、イラストレーターの上田三根子さんが描くキャラクター。モデリングも丸みがあって、とてもかわいらしい。一見、ノスタルジックな風景とのコントラストが激しい感じがするが、これが意外とお互いを引き立て合っている。
ボクくんが預けられることになるのは、北関東の自然溢れる田舎町にある、父親の妹の家。おじちゃんとおばちゃん、そして中学3年生の長女・萌と小学2年生の次女・詩という家族構成だが、物語の中で3年前に亡くなったという長男の話も出てくる。この家の一室で、ボクくんは8月1日から31日までを過ごすことに。
1日の始まりはラジオ体操から。家族みんなで朝ご飯を食べたら、晩ご飯までのあいだどのように過ごすかはプレイヤー次第。朝顔に水をやったり、野山を走り回って虫を追いかけたり、川で魚釣りをしたり、凧揚げをしたり。ボクくんと年齢の近いガキ大将のガッツ、密かに萌に思いを寄せているファット、年下のメガネと仲よくなって、虫相撲で対決することもできる。陶芸家のおじさんの工房に行って世間話をするのもいい。
朝と同様にみんなで晩ご飯を食べたあと、寝るまでの時間も過ごしかたは自由。居間でテレビにかじりついている詩とお喋りをしたり、萌のクラリネットが上達するのを見守るのも大事な役目。家を抜け出して蛍が飛び交うのを見にいくのもいいだろう。気の向くままに好きなことを好きなだけ体験したら、あとは絵日記を書いて1日が終了。その日ボクくんが体験した出来事が、ちゃんと絵日記に反映される。
入道雲が立ち上る真っ青な夏空、森の小径、虫の鳴き声。美しい風景の中にたくさんのエピソードが散りばめられていて、知らないことに出会う高揚感、そして切なさを体験していくボクくん。そんなボクくんを通して、プレイヤーは大いに感情を動かされるのだ。
忘れてはならないのが、タレントのダンカンがしっとりとした口調で語るナレーション。大人になったボクくんの視点から「あれは、とてもとても暑い、夏の日のことだった」と回想するとともに物語が始まり、エンディングで話を結ぶ。この演出がとても心に響く。ちなみに、エンディングは25年後となっており、どんな夏を過ごしたかによって多様に変化する。
2006年6月29日には、イベントや登場人物を追加したリメイク版『ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!』がプレイステーション・ポータブルで発売。発売から20年経った2020年6月22日、本作の制作を手掛けたミレニアムキッチンの綾部和氏がツイッターで当時の思い出を振り返ったことも記憶に新しい。
いいねが1.4万!
ぼくなつ20周年ありがとうございます
ぼくなつ1の時の思い出ベスト3
1)発売日お店に行ったら無くてがっかり。不人気ではなく大好評売り切れだと気づくまで数時間
2)NHK以外の全てのキー局のニュースで取り上げ… https://t.co/9xQSX0EWoz
— 綾部和@ミレニアムキッチン (@ayabekaz)
2020-06-22 16:50:51
現在、新作か移植かまでは不明だが、何かしらの作品がアプリ版でリリースされるという情報がある。詳細はまだわかっていないので、気長に続報を待とう。
※画面には一部PSP版が含まれています。