『DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア クロノスオルタネイト)』(以下、『ディスクロニア: CA』)は、MyDearestとイザナギゲームズが共同開発するVR捜査アドベンチャーゲーム。3つのエピソードの配信が予定されており、2022年9月23日には、Meta Quest 2版のエピソード1がリリースされた。また、Non-VRのNintendo Switch版も発売予定だ。
ストーリーの舞台となるのは海上都市“アストラム・クローズ”。この都市は、人類が一度文明を失ってから約200年後の未来の世界に築かれており、AIによって社会が管理されている。犯罪発生率はわずか0.001%で、あらゆる犯罪が予防されると言われてきたが、街の平穏は突如失われてしまう。
“起こるはずのない犯罪”である、殺人事件が発生したのだ。遺体となって発見されたのは、都市の創設者であるアルバート・ラムファード博士。誰がどのような理由で彼を手にかけたのか。プレイヤーは、被害者と縁がある特別監察官ハル・サイオンとなり、事件の捜査にあたる。
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今回は、Meta Quest 2版のエピソード1をプレイしたライターのジャイアント黒田によるプレイレビューをお届け。ストーリーや謎解きのネタバレなしで本作の魅力を語っているので、安心して読み進めてほしい。なお、エピソード1の詳細なあらすじは下記の先行レビューで触れている。まだご覧になっていない方は併せてチェックを!
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金田一耕助、明智小五郎、シャーロック・ホームズ、エルキュール・ポアロ……。古今東西の名探偵たちに憧れを抱いたことがある方は少なくないだろう。かくいう筆者もそのひとり。思春期に、見た目は子ども頭脳は大人の名探偵や、金田一耕助の孫が活躍するマンガにドハマリし、彼らのように難事件を解決したいと夢に見たのを覚えている。
残念ながら灰色の脳細胞を持っていなかったので、筆者は推理モノに触れてもトリックに驚かされるばかりだったが、名探偵の気分を手軽に味わえる推理アドベンチャーは好んでプレイしてきた。
そんな筆者にとって、VRで事件の調査が行える『ディスクロニア: CA』は、待望していたタイトルのひとつ。さっそくエピソード1をクリアーしてみたところ、想像以上に探偵気分を味わうことができた。
そのように感じた最大の理由は、3Dで表現された都市の中を自由に歩き、事件の捜査が行えたから。場所を選択して移動するのではなく、ハルを操作して自分の足で現場を歩き回ることで、ゲームへの没入感をいっそう高めてくれた。
現場を注意深く観察し、事件の手がかりを探す作業はまさに探偵そのもの(作中での役割は探偵ではなく特別監察官だが)。謎や仕掛けを解くにはプレイヤーの観察力が試されるが、苦戦しながらもクリアーできたときの達成感はひとしおだった。なお、ふだん推理アドベンチャーを遊ばない方もご安心を。右手に付けた腕輪に左手で触れると、捜査できるアイテムがスキャンされる便利な機能も搭載されており、誰でも気軽にプレイできるだろう。
事件現場となったアルバート博士のラボや応接室、寝室は、某製薬企業の洋館を彷彿とさせるぐらい仕掛けが満載なのもプレイヤーの探索意欲を刺激してくれる。一見すると難しそうな謎解きもあるが、ちゃんとヒントが用意されており、じっくり考えればおのずと答えが導き出される絶妙な難易度だと感じた。すべての仕掛けを解除したとき、明らかになる事実も衝撃的なので、ぜひ本作をプレイして体感してほしい。
アストラム・クローズは、現実世界のほかに“拡張夢”を探索できるのも、ストーリーを進めるスパイスに。拡張夢はアストラム・クローズ住民の夢を集めて統合した仮想世界。この世界で住民のメンタルケアを行うことによって、アストラム・クローズは犯罪発生率を抑えてきた。
拡張夢では、無数の魚が街全体を泳ぎ回るシーンがなんとも幻想的。MyDearestが手掛けた『東京クロノス』や『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』でも作り込まれた世界をVRで堪能できたが、美しさでは本作が群を抜いている。魚といっしょにクジラのような大きな個体も泳いでおり、ボーっと眺めているだけでも海の中にいるような感覚が味わえた。
メモリーダイブと審問のシステムが生み出す独自の操作方法
本作独自のシステム“メモリーダイブ”と、事件の真相を解明する“審問”も探偵気分を存分に高めてくれた。前者はハルが使える特別な能力で、左手で特定の物に触れると過去にアクセスでき、記憶の中を行動できる。さらに行動次第では、過去の改変が行えるという能力だ。
推理アドベンチャーにおいて、過去を書き換えられるような能力があると好き勝手できてしまうじゃないか、と白けてしまうかもしれないが、きちんと制限が考えられている。メモリーダイブで得た情報だけでは証拠能力がないので、仮に能力を使って犯人がわかったとしても、過去の記憶を裏付ける“客観的な証拠”が必要になるのだ。
メモリーダイブで明らかになった過去の記憶が、事実であったことをいかにして裏付けるか。そこがプレイヤーの腕の見せどころ。過去の記憶をもとに事件を推理したり、仕掛けを解いて証拠を集めたりする必要があるのだが、操作方法にSF要素を取り入れることでほかの作品とは一線を画す近未来の推理アドベンチャーが楽しめた。
また、 “審問”は証拠を集めることで行われるパート。審問では、現在の証拠をもとに容疑者が推定されるが、その容疑者が黒幕とは限らない。プレイヤーは証拠を整理し、都市を管理するAI“ユースティス”に対して、事件の真相を説明しなければならない。
この審問も、本作が近未来の推理アドベンチャーだと感じさせてくれる重要なポイント。というのも、証拠を集めて新たな推理をユースティスに提案すると、その推理が実行可能かどうか、事件現場でエミュレート(※事件現場を模倣)できるのだ。ハルが犯人となって、どのようにして犯行を行ったのか解明していく姿は、これまでの再現シーンとは異なり、リアリティーが感じられた。VRによる没入感の高さも、リアリティーの向上に拍車をかけている。
メモリーダイブや審問でのエミュレートは、VRの推理アドベンチャーである本作でしか体験できない要素。推理モノが好きな方はもちろん、VRゲームが好きな方も、近未来の捜査方法を駆使して、自分の手で事件を解決する喜びが堪能できるだろう。
相棒のリリィを筆頭に構成豊かな登場人物や謎が謎を呼ぶ物語の虜に!
シャーロック・ホームズのジョン・H・ワトスンや金田一耕助の等々力警部のように、名探偵には相棒がつきもの。本作にもハルをサポートしてくれる相棒として、ナビゲーターロボットのリリィが登場する。
リリィに対するプレイする前の印象は、「かわいいな」ぐらいだったのだが、実際にプレイしてみてすっかり彼女の虜に! 語尾に「~なの」と付くセリフがとにかくかわいいし、何より動きのパターンが豊富で見ていて飽きない。つい彼女とコミュニケーションが取りたくて、何度も話しかけてしまったほど。
とくに、「リリィの頭 なでなでしていいのよ?」と言われたときは、リビングでプレイしているにも関わらず、顔が自然とほころんでしまった。後日、妻や息子に冷たい目で見られた気がしたが、気のせいだったと思うことにしよう。
リリィのほかの登場人物たちも個性豊か。過去の実験で記憶喪失のハル、予知夢の力を持ちながら実験の影響で眠り続ける少女マイア、ラムフォード博士を憎む少年ノエル、正体不明のヒューマノイド・システリアと、ひと癖もふた癖もあるキャラクターが続々と登場し、プレイヤーを本作の世界に惹き込んでくれる。
続きが気になるストーリー展開も見事。ネタバレになるので詳細は語らないが、最初の事件には推理モノが好きな要素が詰まっているし、ハルが謎の人物に命を狙われるドキドキハラハラの展開も非常に刺激的だった。
エピソード1で事件は一応解決するものの、多くの謎が残されている。これらの謎がエピソード2や3でどのように解明されていくのか。いまから非常に楽しみだ。この気持ちを少しでも多くの人が体験してくれることを願っている。
DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア クロノスオルタネイト) エピソード1
発売日:2022年9月23日発売予定
価格:2208円[税込]
機種:Meta Quest 2
※エピソード2、エピソード3は発売日未定、価格未定。
※Nintendo Switch版(Non-VR)はフルエピソード収録。発売日未定、価格未定。