本日(2022年9月29日)に発売されたプレイステーション4、Nintendo Switchソフト『残月の鎖宮-Labyrinth of Zangetsu-』(※)。本作は、墨絵風のモノクロなビジュアルで描かれた純和風の本格3DダンジョンRPGです。6人構成のパーティでダンジョン(鎖宮)に潜り、敵を倒して宝箱を解錠。強い装備に切り替えながら、迷宮の奥地を目指す一人称視点のオーソドックスなタイプで、古きよき3DダンジョンRPGと和風の世界観が合わさった作品になっています。
日本では、80年代にサーテックから発売された『Wizardry(ウィザードリィ)』シリーズの大ヒットでジャンルとして深く根付き、その後もアトラスの『世界樹の迷宮』シリーズやエクスペリエンスの『黄泉ヲ裂ク華』など、現代まで絶えずに固定ファンが存在している3DダンジョンRPG。本作は、そうした3DダンジョンRPGの系譜を受け継ぎつつ、和風の世界観をベースにした独自の作品です。
本稿では実際に製品版をプレイしてわかった情報と、3DダンジョンRPG好きとして気になったポイント。序盤で役立つ豆知識などを交えつつ、本作の魅力をお届けします。
※PC(Steam)版の発売日は明らかにされていない。
6つの人種と9つの職業から好きなパーティを組み、“滅びの墨”を浄化せよ!
本作の舞台は、世界を漆黒に塗り潰す“滅びの墨”に侵された世界。プレイヤーは、世界が漆黒に染まるなか唯一抵抗を続けていた“刻国(トキノクニ)”の街・異土に集まった生存者のひとりとなり、優れた力を持つ・墨滅者として危険な鎖宮(ダンジョン)へと足を踏み入れることになります。
しかし、危険な鎖宮を探索しようとしてもひとりでは無謀。墨によって凶悪な魔物と化したものを倒すには、仲間との協力が不可欠です。
本作では6つの人種と9つの職道(職業)、キャラクターイラストを組み合わせて墨滅者を作成し、最大6人のパーティを組んで冒険に出かけられます。なお、街に戻ればいつでもパーティを再編成できますが、試煉(チュートリアル)が終わるまでは再編成できないので、よく考えて組みましょう。
選べる人種は以下の6種類。人種によって向いている職道、不向きな職道はありますが、初期ボーナスの振りかた次第である程度補えるので好きに選ぶのもひとつの手です。
楽しみかたは千差万別。基本的にはバランスよく人種や職道を分けたほうが良いとは思いますが、同じ人種、職道で固めるのも自由です。
6つの人種
常人(ツネビト)Human
いわゆる一般的な人間。前衛・後衛どちらでもこなすことができるので、どの人種で遊ぶか悩んでしまう人は、とりあえず常人を選ぶと無難。初期ステータスも魅力が少し高いです。
達磨夫(ダルマフ)Dwarf
そのまんまドワーフっぽい人種。耐久や筋力に優れており、回復や補助に必要な精神力も高めです。打たれ強くて前衛向きなので、闘兵として前衛で戦うことや法術士にも向いています。
霊巫(エルフ)Elf
いわゆるエルフ。そのイメージ通り、知性にあふれており魔法が得意です。知力と精神力が高く、後衛向き。法術士か魔術士につかせると活躍します。
窟法人(クツホウビト)Cavegram
地中に住む小人族で、敏捷と精神に優れた幸運な種族。後衛で斥夫につかせて宝箱の解呪や鑑定を行うのがオススメですが、法術士もこなせる人種です。
四智猫(シチネコ)Felpurr
猫の化身。敏捷にも知力にも優れ、筋力も初期からそこそこあるので前衛・後衛のどちらもこなせます。侍や斥夫、魔術士が適正で、とくに侍が向いています。
金剛人(コンゴウビト)HalfOrk
鬼族の血を引いた、巨体で怪力な種族。筋力と耐久に優れており、状態異常になりにくいので前衛で盾役をこなせます。闘兵でも門狗でも活躍してくれるはず。
6つの種族から好きな人種を選び、初期ボーナスのロールを決定したら善、中立、悪の3つのなかから性格を設定。ここもかなり『ウィザードリィ』リスペクトを感じますね。善と悪ではパーティが組めないものいっしょ。
中立はデメリットがありませんが、善や悪専用の特技が使えず、ボーナスもありません。善の場合は回復呪文の回復量が上がり、復活の確率も上昇。悪の場合は攻撃呪文のダメージが上がり、復活の確率が下がるという特徴があるので、ロールプレイではなく性能で選ぶならどちらかに特化させるほうがいいでしょう。
それらを決定したら、職道を選択。全部で9種類あるのですが、白騎士(パラディン)、忍者(ニンジャ)、賢者(ビショップ)の3職は上位職となっており、初期状態で選べるのは6種類です。
ここでは上位職の説明については割愛しますが、3DダンジョンRPGが好きな人なら職業名を見ただけでなんとなく性能の想像がつくかもしれませんね。
6つの初期職道
闘兵(ツワモノ)Fighter
いわゆる戦士です。攻撃力や防御力が高い重めの武器防具を装備できて、前衛で戦えます。宝箱の破壊が成功しやすくなる“こじあけ”といった、変わった技能を覚えることも。
斥夫(シーフ)Rogue
宝箱の鍵や罠の解除ができたり、危険を回避できる技能を習得できるシーフはパーティに必須。飛び道具を装備すれば後列から攻撃できるので、戦力にもなります。
法術士(ホウジュツシ)Cleric
回復役を担うクレリック系。癒しや防御力上昇などの効果を持つ法術の使い手で、攻撃呪文も持っています。前衛&後衛を兼ねた武器も装備できて、意外と前線でも戦える職業です。
魔術士(マジュツシ) Wizard
攻撃呪文を使いこなす魔術士系。耐久やHPの関係で後衛に置かないと危険ですが、複数の敵を巻き込む魔法が使えるので通常戦闘からボス戦まで活躍してくれるでしょう。
侍(サムライ) Samurai
刻国に古来から伝わる上位の戦人で、ツワモノとは違った強さがある前衛職です。盾は装備できませんが素早く相手を切り倒すことに長けており、炎剣などの侍道技能も優秀。
門狗(モンク) Monk
武器を装備せず、肉弾戦で戦う前衛職。忍び足中に敵から見つかりにくくなる“気配消し”などを覚えるので、探索の面でもパーティに入れておくと役立つ職業です。
上記の6種類の人種、職道、性格、そして自分の好きなイラストを組み合わせたらキャラクターが完成。イラストの種類は豊富で、渋めの色使いも世界観にあっています。
職業や人種に関係なく選べますし、イラストは脳内で補完するからいらない、という人は“闘”や“斥”といった漢字も選択可能。プレイヤーの想像に任せたパーティを組めるのも3Dダンジョンの醍醐味ですね。こうしたキャラを制作するのが苦手な人は、最初から用意された6人の名前や顔を変更するだけでもいいですし、そのまま使ってもすぐに楽しめます。
怪しい場所を調べて発見。シンボルエンカウントで強敵と戦う王道の3DダンジョンRPG
チュートリアルの簡単なダンジョンを終えると、いよいよ鎖宮での冒険へ。水墨画風の地上や巨大遺跡を自力で切り開いていく探索の始まりです。ここからは、自分の判断で探索を続けるか、戻って補給するかを考えながら進まなくてはなりません。経験値が手に入っても、レベルアップできるのは拠点のみ。死亡してしまうと復活にかかる費用がかなり痛いので、無理をせずに切り上げるのも墨滅者には必須です。
鎖宮は、1マスごとに進んでいく昔懐かしの3Dダンジョン。画面右上には自分が探索した周囲の地形が表示され、野営(メニュー)画面を開くとオートマッピングで全体の地図が表示されます。イベントやトラップなどがあるのはもちろん、怪しい場所を調べることで隠された道やアイテムが見つかることも。また、暗闇で周囲が見えずオートマッピングが消えてしまう場所もあります。そうした場面では“松明”を使用して明るくしないと危険です。
1歩ずつ探索をくり返し、立ち上る煙(墨の気)が見えたら敵がいる証。しゃがみながら移動する“忍び足”を使ってやり過ごすか、煙に突撃して戦うのかを決めなければいけません。
ただし、忍び足は必ず成功するとは限らないのがネック。とくに、赤い煙は強敵なのでやり過ごすほうが無難ですが、戦って勝てればいいアイテムが手に入るかも……?
戦闘はオーソドックスなターン性のコマンドバトル。最初は敵の姿がシルエットになっていて、戦うことで姿が見えます。あくまでも体感ですが、シルエット状態だと攻撃も当たりにくいような印象です。6人ぶんのコマンドを入力したらバトルが始まりますが、後衛は2マス届く後衛武器がないと直接攻撃できないので要注意。
ただし、法術士や魔術士なら魔法でも攻撃できます。魔法は全部で10レベルまであり、ひとつのレベルにつき3種類の魔法が使用可能。MPなどはなく、使える回数はレベルごとに決まっていて、初期は3回や4回くらいしか使えないので乱用は厳禁です。前衛系の攻撃スキルはHP消費で攻撃を行うので、ボス戦でここぞというときに使うものですね。
戦闘に勝てればお楽しみの宝箱タイム。プレイした限りでは、敵を倒すと宝箱が比較的出やすいので戦って損はありません。宝箱はシーフに解錠してもらって罠をはずすか、破壊して無理矢理開錠すればアイテムが手に入ります。
ただし、手に入るアイテムはすべて未鑑定の状態です。未鑑定のアイテムは宝の知識があるシーフなどが鑑定できるので、野営画面で調べてもらいましょう。もしかしたら、店売りのアイテムよりいいものが手に入るかも? 傷薬などが手に入ってもうれしいですね。
そんな感じで地道に冒険し、レベルアップに必要な経験値が溜まったら異土城へ帰還する。再び準備を整えて冒険へ……というのが本作の基本的なサイクルです。
なお、道中ではレベルアップが行われず、異土城へ戻った時点で自動的にレベルアップします。死亡してしまうと寺院に運ばれてしまって意味がないので、経験値を溜めたら生きている状態で帰還しましょう。
ちなみに、体力が0になっても、受けたダメージが低ければ踏みとどまるという仕様も存在。すぐに回復すれば死亡しないので、よほど無理をしなければ意外と立て直すチャンスはあります。
街には、キャラクターメイキングや修正ができる“墨滅隊総本部”。アイテムの売り買いができる“交易所”。そして、墨の浄化や死者の復活を行う“寺院”があります。
墨の浄化という聞きなれない言葉がありますが、本作には恐怖(宝箱の解錠に失敗すると起きる)などの状態異常とは別に、敵が墨を投げつけてくることがあるのです。この墨を受けてしまうと、穢れてしまって最大HPが低下するデメリットが発生します。
これが、結構しゃれにならない状態異常なんですよ。世界観的にもっともやっかいな状態異常であり、敵の墨攻撃でどんどん蓄積していきます。寺院まで戻らないと浄化できないので、墨を使ってくるボス戦で蓄積すると焦るかもしれません。物語としても、ゲームとしても、墨がいちばん恐ろしい世界です。
もちろん、死亡はもっとやっかい。レベル6くらいでも3000銀取られます。その時点でいちばん高い防具が1000銀と言えば、どれくらい高価なのかわかるでしょう。ボス戦で軒並み壊滅し、蘇生費用のために第2パーティで冒険することもあると思うので、キャラメイクで仲間を余分に作っておくのもアリかもしれません。
ダンジョンRPGとしては感覚的に往年の『ウィザードリィ』に近く、全体的に懐かしい感じの探索です。墨による状態異常や、特徴的なグラフィックが目を引きますが、ダンジョンRPGを遊んだことがある人ならスッと入っていけると思います。
難易度も“通常”を選べば鎖宮内の要所でセーブしてくれますし、全滅時に直前からやり直すことも可能です。3Dダンジョン好きで腕に覚えがある人は、自動セーブされずに死体も鎖宮内に取り残される“上級”難易度で遊ぶのもいいでしょう。
強制されるストーリーや仲間との掛け合いではなく、自分のペースで探索しながら脳内で作り上げたパーティ設定で冒険を楽しむ。与えられた場を自分の好きなように探索しながら、強いアイテムが出るまで宝箱を漁る。そうした3DダンジョンRPGのなかでも、和風な世界観の本作はかなり珍しいタイプです。
一風変わった世界で冒険してみたい人や、3DダンジョンRPGが好きな人など、この手のゲームが好きな人には懐かしくも新鮮に映ると思います。オーソドックスな3Dダンジョンものとして、気軽に遊んでみてください。
製品情報
- タイトル:残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu-
- ジャンル:3DダンジョンRPG
- プラットフォーム:プレイステーション4、Nintendo Switch
- 発売予定日:2022年9月29日(木)
- 価格
- パッケージ版:3520円[税込]
- DL版:3520円[税込]
- CERO:B(12 歳以上対象)
- 開発:カエルパンダ
- 販売:アクワイア