こんにちは、ファミ通.comのミス・ユースケです。今度オープンするゲーミングシェアハウスにやってきました。
シェアハウスとは、リビングやキッチン、お風呂などを複数の入居者で共用する賃貸物件のこと。全体的に家賃が安い傾向にある。冒頭で“皆さんご存じの”くらいのテンションで書いたが、ゲーミングシェアハウスとはそのゲーマー版だ。
テレビ番組等でシェアハウスが紹介される場合、
- いつも賑やかで楽しい
- リビングを通るときに自然と会話するから仲よくなれる
- 料理上手な人がいるからご飯が楽しみ
- 誕生日にサプライズパーティーを開いてくれた
みたいなエピソードが住人たちの笑顔とともに語られる。へぇー。
もちろん賑やかな雰囲気が好きな人がいるのもわかる。でも、そういうのが苦手な人だってシェアハウスに住んで家賃を節約したいのだ。わかってくれ。
そこでゲーミングシェアハウスである。その名の通りゲーマーが住みやすい工夫が凝らされていて、住人同士の交流は意識しないでいいらしい。
それならシャイな人でも安心できそう。どういうものか、大家さんに説明してもらった。
TOKYO ゲーミングシェアハウスを運営するニチカレ株式会社の社長・小林泰平さんである。
ニチカレは日本最大級のLANパーティー“C4 LAN”の運営元。2004年頃に“CyAC(サイアック)”というゲーム大会プラットフォームを開発するなど、eスポーツがいまのように盛り上がる前から長くゲーマーに寄り添ってきた。

シェアハウスってうさんくさくないですか? あ、うっかり。ゲームを快適に遊べてほかの住人とは干渉せずに過ごせるのは本当ですか?

前半の失言は聞かなかったことにして、後半のやつはだいたい本当です。

シェアハウスって陽キャの巣窟ですよね。夜な夜なウェイウェイやってるんでしょ?

いろいろな方面から怒られますよ。

ここはエリート壱号館と言って、2023年にオープンする5棟目。ほかの4棟はみんな仲よしこよしってわけでもないですね。挨拶くらいはするでしょうけど、気楽にソロ活動してますよ。
コミュニケーションを強制する空気はないらしく、最初からそれを明言してくれるのはありがたい。僕みたいに“ひとりが好きだけど仲間外れは嫌”という人にとって朗報だ。
入居者同士は家族や友だちほど近いわけではなく、完全な他人でもない。言わばMMORPGでたまたま同じマップにいるプレイヤーだ。それでいて、もし急な体調不良などがあったら頼ることもできる。
最高じゃん。
各部屋を順にチェック
僕の偏見を打ち砕いてもらったところで、さっそく中を見せてもらうことにした。
このエリート壱号館は3人(男性のみ)の入居を想定した3階建ての一戸建て。何と新築である。
【基本スペック】
- 住所:東京都江東区南砂町(東京メトロ東西線 南砂町駅より徒歩9分)
- 1階:1部屋+1階居住者用PC、トイレ
- 2階:共有キッチン、バスルーム、3階居住者用PC
- 3階:2部屋、トイレ
- 家賃
- 101(5.3帖)+ゲーミングルーム:8万5000円
- 301(6.9帖):7万5000円
- 302(5.1帖):7万円
- 共益費:1万5000円
1階:1部屋+専用ゲーム部屋

うちではゲーミングPCをひとりに1台用意しているんですよ。使っても使わなくてもいい。この部屋は101号室の人専用スペースです。
101号室は家賃が高めだと思ったら、実質的に1.5部屋分ということか。ネットカフェの個室より集中してゲームできそう。
備品PCのスペックは棟によってまちまちだが、“エリート館”はかなりハイスペック。VRゲームをごりごり遊べるレベルだ。PCの調子が悪くなったらニチカレに相談すればオーケー。
【PCの基本スペック】
- メーカー:サイコム
- ベース:G-Master Spear Z690/D4
- CPU:Intel Core i7-12700K
- VGA:NVIDIA GeForce RTX 3080 Ti
- メモリ:32GB

こういう環境があるんだったら共益費1万5000円は高くないかもなー。

1万5000円の共益費は電気ガス水道などの公共料金とネット回線の使用料込み。共有部は定期的に清掃が入ります。

ひとり暮らしだと電気代4000円、ガス代3000円、水道代2000円くらい? PCがあると電気代はもう少し高いかな。ネット回線が5000円として……。安っ!

あと、ゲーミングライスもつきます。

日本人の魂がゲーミングに?

お米を炊いて提供してるんですよ。家賃さえ払ってくれれば餓死はさせません。

不動産物件を見に来て生きるか死ぬかの話をするとは思わなかったな。
最寄り駅は東京メトロ東西線の南砂町駅。東京駅まで20分くらいと交通の便が良好なこともあり、家賃相場はそれなりだ。
ざっと調べたところ、この一帯の新築1Kは共益費込みで10万~11万円くらい。その中で、公共料金とネット回線込みとライス付きで最大10万円とは、かなり安いと思う。
肝心のネット回線はどうだろう。インターネット無料をうたう物件もあるが、回線スピードに不安があることも少なくない。

IPv6(DS-Lite)の回線を引いていまして、快適にゲームを遊べると思います。ただ、環境によって多少変わることもあると思うので、ケアはしっかりしたいですね。

安心しました。ネット無料をうたっておいて回線がやばかったらひと暴れするところでした。
エリート壱号館のネット回線が速かったことで、大暴れの末にミス・ユースケが警察に確保される未来は回避できた。ありがとう、ゲーミングシェアハウス。
この調子でさくさく行こう。PC部屋を出た左手奥が101号室だ。広さは約5.3帖。

収納、広っ!
入った瞬間に声が出た。同行したカメラマンも「うわ、すげ」と言ってた。
シェアハウスって荷物の少ないミニマリストが住むものだと思っていたが、そんなことはなかった。ふつうの1ルームマンション並みかそれ以上に収納が広い。
そして、階段下のデッドスペースもしっかり活用しているのがすばらしい。

ベッドフレームは設置してあるので、布団かマットレスだけ持ち込んでいただければ。自分のPCやゲーム機も使えるように、回線も各部屋に引いてます。

僕、「みなさん自分は荷物が多いって仰るんですよ~」って笑う引っ越し業者が真顔になるくらい荷物が多いんですけど、ここなら大丈夫そうです。よし、決めました!

内見じゃないですからね。
つい引っ越す気でガチ見してしまった。続いて2階へ。
2階:共有スペース。広いキッチンは食洗器付き
2階はおもに共有スペース。3階居住者用のPC2台とキッチン、バスルームがある。なかなか広くて清潔というのが第一印象。

さあさあ、VRでも試してみてくださいよ!

新手の接待か?

手足を伸ばせるスペースがあるのはいいですね。狭いところが苦手なので、1階のPC小部屋よりこっち派かもしれない。やっぱりこっちにします。

このくだり、まだ続けます?
このPC2台は3階の居住者用で、ネットカフェのオープンスペースみたいな感覚で使用可能。1階のPCと同じくVR機器(Valve Index VRキット)がそれぞれに付属している。
その隣りには広々としたキッチン。僕はよくお酒の肴を作るので、これはほんとにうらやましい。

魚焼きグリルを活用するためにはグリさらパンが便利です。要はアルミ製のスキレット。食材を並べてグリルに放り込むだけで、グリルを汚さずにおいしい料理が作れます。

何の宣伝?
食洗器までついてる!
蛇口はセンサー式。手をかざすだけでON/OFFや水温の調整を行える。

料理好きな人が入居しなかったら完全にオーバースペック。

ゲーミングライス用の炊飯器、5~6万円くらいするやつじゃん! いいなー。これで炊いたご飯を食べたい。

お米は滋賀県の近江米。農家さんから取り寄せています。

ゲーミングライスにかける熱意がすごいな。
キッチンシンクの向かい側の扉を開けると、そこはバスルーム。
お風呂は十分広い!
洗面台もきれい。右側には立派な洗濯乾燥機。こういった共有部を使う順番などは、入居者同士で話し合って決めていく。
個人的に、共有スペースに大型テレビやゲーム機などを置いていないのがいい。そもそもみんなで集まってゲームをする構造ではないのだと思う。
3階:コンパクト&広々な2部屋
2階を堪能したところで3階へ。ここには2部屋ある。

3部屋の中ではいちばんコンパクト。東京23区内のシェアハウスと考えるとこれくらいが妥当な気がするな―。

301号室と隣り合っているので騒音が気になるかもしれませんけど、その辺も対策してます。壁は防音材入り。

外への騒音も気になると思うので、窓はペアガラス(2重の厚いガラス)の2重サッシになっています。これも全部屋共通。

ペアガラスの2重サッシってシンプルに値段が高いですよね(少し前に自宅の窓を修繕したので相場がわかる)。断熱とか遮音とか、高性能なので仕方ないとはいえ。

僕、ゲームやってると叫んじゃうんですよ。なるべく声を気にせずにゲームしたいじゃないですか。

もはや自分用に作ってますね。
順番が前後してしまったが、ラストは6.9帖の301号室。

あ!

広い!
気づいたら横になった後に収納に入っていました。それほどの広さ。
興奮しながら301号室を出たところ、さらに上階に行く階段が気になった。このシェアハウス、3階建てじゃなかったっけ?

あ!
屋上あるじゃん!

洗濯ものを干すスペースですね。眺めは悪くないので気分転換にでもなればと思って。

でも、屋上があるとBBQでウェイウェイするやつらが集まってくるのでは……。

いろいろな方面から怒られますよ。
専門学校の関係者との世間話から急に事業スタート
満喫したところで、小林さんから詳細をお聞きするターンに入る。

そもそもニチカレってゲーム会社じゃないんですよね。どういう会社なんですか?

本社は滋賀県にあって、おもに製造、業務請負、物流などを手掛けています。Webシステムを開発する部門もあって、そこで2004年頃に作ったのが(ゲーム大会プラットフォームの)“CyAC”ですね。
冒頭では“LANパーティーを運営”、“eスポーツが盛り上がる前からゲーム大会を開催”などと書いたが、それは業務全体からするとほんの一部だ。ニチカレは創業50年以上の歴史を誇り、スタッフ数はおよそ400人。けっこうな規模の会社だったのである。
今回紹介したTOKYO ゲーミングシェアハウスは、ちゃんとした会社が運営する、安心できるシェアハウスと言えると思う。

いつからゲーミングシェアハウスをやろうと思ったんですか?

そんなに昔じゃないですよ。2016年です。(物件を)買おうとしていたのがそれより少し前。この6~7年で劇的なことが起きてるんですよ。

と言いますと?

いまはC4 LANを軸にゲーム事業を進めてますけど、7年前はC4 LAN自体がないんですよ。

正直に言うとCyACが行き詰まってやばかったんです。

思った以上に正直に言い出したな。
CyACブランドで『コール オブ デューティ』などの大会を運営していたため、当時を知る人はCyAC=eスポーツの大会名という認識だったかもしれない。
だが、実際はシステムの名称だ。システム利用時に課金してもらうのが本来の目的なのだが、そう簡単にいくものでもない。

それはつまり、当時はeスポーツがいまほど話題になっていなかったからなのでは……?

早すぎました!

反省の色が見えない。
なかなかマネタイズできないので、体制を変えて東京に出ることに。スポンサーや協力各社は関東圏に集中しているので、営業を強化する意図もあったのだと思う。

その頃、eスポーツの未来を考える会(後のJPeF)の会合に出席する機会がありまして。そこに、新設されるeスポーツ専門学校の方がいらしたんです。
※JPeF:JeSU(日本eスポーツ連合)の前身となる組織のひとつ。

そのときお話しした方のご実家が、たまたま前に滋賀のオフィスがあったところの近所だったんですよ。ほんとに歩いてすぐのところ。

何だかうれしくていろいろ話していたら、いますごい勢いで入学希望者が増えているんです、とんでもない人数だからうちの寮いっぱいになっちゃうよって話になって、「シェアハウスでもやったら?」と言われたんです。何の気なしに。

きっかけは世間話ってことですか?

後付けに近いんですけど、もともと不動産業をやりたい気持ちはあったんです。だからシェアハウスの話を振られたときに、おもしろそうと思ったのは間違いないですね。
“不動産業をやりたい”だけではなく、“ゲーム事業を強くしよう”だけでもない。いろいろな考えがポンっとひとつになり、物件探しが始まった。まずは先ほど話に挙がった専門学校の近辺で。
「物件を探すだけならタダだし、営業のついでに探しておくかー」と、小林さん。いい物件があったらラッキーくらいのテンションだったので、まさかCyAC事業の主力になるなんて思いもしなかったという。

藁をもつかむ思いであったことは間違いないです。あの頃は必死でした。何とか利益を上げたい。事業として安定収入がほしい。

とにかく金がほしかったわけですね。

言いかた。
たまたま世間話をした方に感謝しながら事業を続け、開始から7年ほどで5棟目に。一見、順風満帆だ。

最初は苦戦しまし……

しました!

食い気味。

1年間で入居者はひとりでしたからね。せっかくの新築なのに。

笑う。

(世間話でアイデアをくれた)先ほどの方も新築物件を買うとは思っていなかったみたいで。「適当に言ったことを本気でやり出したの?」って驚いてました。
いきなりアクセルべた踏みである。
地方から出てきた生徒さんは寮に入るかひとり暮らしをすることが多く、シェアハウスは選択肢に入らなかったのだろう。最初に入居された方は1Kくらいの家賃で東京23区内の一戸建てを借りたことになる。贅沢。

軌道に乗り始めたきっかけは何ですか?

いちばん大きかったのは物件情報系のサイトで紹介されたことですね。シェアハウスの専門サイトがあるんです。自社でもシェアハウスとかシェアオフィスを手掛けている会社さんが運営されていて。

ゲーマー用のシェアハウスがあると広まった感じですか。

逆なんですよ。やっぱりeスポーツがじわじわ伸びたことがポイントだと思います。

その流れがある中で、ちゃんとしたシェアハウス紹介サイトで紹介された。自社サイトで自画自賛してるんじゃなくて、専門の会社さんに「ここはいいですよ」とクオリティを担保してもらう形になりました。

そういうことか。正直よくわかんないですもんね。シェアハウスだ何だと言われても。

自社だけでやってると、どうしてもうさんくさくなるんですよ。
よくわからないところが運営してるシェアハウスは嫌だと感じる人は絶対いる(少なくとも僕はそういうタイプ)。その点、ニチカレは歴史の長い会社だ。社員寮の運営経験もある。「しっかりした会社がやってるんだ」と安心できるのは大きい。
不動産には漠然と怖いイメージがあると思う。それを押しのけるほどの安心は大切である。

安心で言うと、あれも大きいかも。当時の担当者が(その紹介記事で)顔出ししたんですよ。ふだんは絶対前に出ないタイプなんですけどね。「オーナーさんの写真が必要なので」と言われて撮ったと聞きました。
その担当さんの写真を見せてもらったら、若くて誠実そうな人だった。人柄や印象も大切である。
ちなみに、「何で写真が出てるの!?」と仲間内で盛り上がって、そこら中のDiscordでその写真が晒されているらしい。それはちょっとかわいそう。
親御さんから相談されるほどの安心感
その担当さんは番組や大会配信でスイッチャーをやっているような人。彼も含めて、ベテラン不動産業社としての立ち振る舞いが板についてきたそうだ。

最近はゲーマーの子を持つお父さんお母さんの悩みを聞くことが増えました。
不動産業社としての立ち振る舞いについて書いたばかりだというのに、どういうことだ。

入居希望者は専門学校の生徒さんが多くて、ご両親といっしょに内見に来られるんですね。親としてはほかの入居者に迷惑をかけないか心配なわけです。「イスのキャスターのコロコロ音がうるさくないですか?」とか。

そういった点に気を付けて運営しているので、「みなさんゲーマーなので気にならないと思いますよ」と安心できるように説明しています。僕も人の親ですし、親に似たような心配をかけたスタッフも多いので、気持ちがわかるのかもしれませんね。

田舎から子どもを東京に送り出すんだったら信頼できるところに預けたいだろうしなー。そういう意味でゲーミングライスの存在も大きいんじゃないですか。少なくともご飯は食べてくれる。

清潔感とゲーミングライスを気に入ってくださる親御さんは多いですね。とくにお母さんかな。「少し高いけど、東京に行きたいならここにしなさい」って背中を押していただけることはすごくあって。

親御さんから「うちの子のこういうとこダメなんですけど大丈夫でしょうか」って相談されたこともあります。

その信頼はもう貸し主のレベルを超えてるでしょ。

最初は「うちの子と連絡が取れない」って心配されていたので、ノックしておきますねー、大丈夫でしたよって返事をしたんです。そしたら「夜に騒いで迷惑かけていませんか?」みたいな。「ゲーマーだったら大きな声を出すこともあると思います。返信がないのはたまたまゲームに集中していて気付かなかったのかもですねー」とか。

ふつうのシェアハウス管理人にはできないケアだ。

あとは宣材写真の撮りかたを聞かれたこともあります。

ん? プロゲーマーみたいな写真ですか?

そうそう。けっこうガチにプレイしている子だったんですよ。大きめの大会に出ることになって、運営元から写真の提出を求められたと。「子どもから写真の撮りかたがわからないって連絡がありまして……」と、こっちに相談が。

おもしろすぎる。ふつうに生きてたら宣材写真なんて撮らないもんなー。

うちはゲーム大会の運営もやってるから、どういうものを提出すればいいかだいたいわかるんですよ。大会によっては資料が英語。いきなり英語資料を見たら、そりゃ不安になりますよね。

不安の解消は大事。ゲームのことも聞かれます。ほかの入居者のことも。「ゲームをやられる方はどういう人が多いんですか?」ですとか。

親御さんには「少しくらい騒いでも平気ですよ。ほかの方も似たような感じなので」と説明して、息子さんには「きみは何のゲームやってるの?」って。いまだったら『VALORANT』なんて多そうですよね。『CoD』をやってる子だったら「うちの大会に出たことある?」って。

やさしいゲーム好きおじさんだ。

昔の『CoD』の選手のサインを見て喜んでくれる子もいますね。部屋に飾ってあるんですよ。イベントで撮ったチェキなんかも貼ってあったり。いまでは名だたる面々がずらーって。

最近だとあれですね。StanSmith(※)の抱き枕。どこかのグッズを置いてるんじゃなくて、関係者の悪ノリで作ったやつ。ゲーム好きな業界関係者が運営しているシェアハウスだったら住みやすいと思うんですよ。
※StanSmith(スタンスミス):ゲームキャスター 岸大河氏のかつての活動名。付き合いの長い人はスタンスミスやスミスと呼ぶことも多い。

そういうことを話していると、親御さんも「息子のことを気にかけてくれて、大会も運営しているしっかりしたところなんだ」と理解してくれるんじゃないかな。

ゲーム好きであることを受け止めてくれる場所。安心感あるなー。
自分が住みたいシェアハウスを作ったらこうなった
TOKYO ゲーミングシェアハウスはとにかく“ゲーマーにとっての居心地のよさ”を重視している。
ゲームをやっていて怒られるのはいちばんのストレス。だったら怒られない環境を用意したい。シンプルな話だ。

最初は手探りでした。イベントをやったり配信室でeスポーツ大会を運営したり、賑やかなところに住むのがおもしろいだろうと思っていた時期もありました。CyACの大会なので、有名な人を呼んだらうれしいだろうと。

僕がイメージするシェアハウス像に近い。ちょっと苦手だなー。

そういうので価値が上がると思ってましたけど、違うんだと気付きました。2年目くらいから。

家は落ち着く場所だけど、イベントがあったら落ち着けない。本末転倒ですよ。

ですよねー。やっぱりしんどいですよ。静かなのがいいんです、結局ね。
僕が世間一般のシェアハウスに苦手意識を持っているのは、そういった“イベント的な楽しさがある”という面が目に留まりやすいからだと思う。
実際は静かに生活している人も多いのだろうけど、シェアハウスの特徴を挙げようとすると、賑やか方面に傾きがち。キャッチーでわかりやすいからだ。
その点、TOKYO ゲーミングシェアは静かに生活できることを重要視。だからドアや壁の防音性能を高めて、生活音が気にならないようにしている。

そうしないと、ゲーミングシェアハウスとしてあまり意味がないんだと思います。最近、気付いたんですよ。僕が住みたいシェアハウスってこれなんだなと。もっと若かったら、こういうところに住んでみたい。

“自分が住みたいシェアハウス”っていいですね。

住んでいてわいわい楽しいかどうかなんてゲーマーには関係ないですよ。ゲームやったほうが楽しいんだから。

オフラインのゲームに集中するのもいいし、オンラインゲームならネットにつなげば友だちがいるでしょうし。隣りの部屋の人と無理に仲よくする必要はないというのが僕の考え。もちろん仲よくしてくれたら、それはそれでうれしいですけどね。
この辺の空気はC4 LAN(LANパーティー)にも共通するものがある。LANパーティーとは、好きなゲームをハードごと持ち込んで遊ぶイベント形式。周囲にはゲーマーが大勢いて、話しかけてもいいし、とくに気にせずマイペースにゲームしてもいい。
周りに仲間(ゲーマー)がいるというのは、存外に心地いいものである。

居住者の中にはそれほどコアなゲーマーじゃない方もいますね。どうせ都内に住むんだったら変わった部屋に住みたかったみたいで。

コミュニケーションを取らなくていいと最初からわかっていると、ゲーマーじゃなくても気楽で安心できるのかも。
安心・安全に住めるシェアハウスを目指して、基本的なルール作りも徹底している。たとえば、居住者の友だちの宿泊は、ひとりまでなら事前に許諾があればOK。ただし、短期間のみ。
また、これまでに運営している5棟はすべて男性用だが、女性用ゲーミングシェアハウスを熱望する声もあるので検討中とのこと。
沈みゆく中でつかんだゲーミングシェアハウスとLANパーティー
ゲーミングシェアハウスの根底にある「安心してゲームを遊べる空間を作りたい」は、C4 LANとも共通する感覚だ。きっと小林さんの本心だろう。
一方で、「事業として安定収入がほしい」も間違いなく本心だ。あまり取材で口に出すことではないが、その正直さもまた魅力だと思う。

ニチカレってメインの業務で利益を上げているわけですよね。ゲーミングシェアハウスにしてもC4 LANにしても、どうしてゲーム事業を続けているんですか?

うーん、その場その場の行き当たりばったりなのかもしれません。もともとCyACという事業があって、ゲームが好きで入ってくれたスタッフも多い。この人たちがゲームに関する仕事で食っていけるようにしたい。

ええかっこしいでスタッフにはいろいろしゃべるわけですよ。で、それを信じて来てくれた人たちがいる。ゲーム事業をやめてもニチカレは残ります。みんなに「今日からトラックを運転してください」と言うこともできて、それはそれで社長としての責任を果たしていると思いますけど、やっぱり彼らはゲームの仕事がしたいわけですから。だったらゲームの仕事を任せたい。

なぜ続けるのかと聞かれて、答えは何だろうな、「よく続けてるなあ」って感じです。ずっと空中ブランコやってる気分。つぎが来たらジャーンプ! そろそろ着地する予定なのに地面がない。あたふたしてたらつぎのブランコが来て、また飛び移るっていう。

ゲーム業界の事業のインタビューで、そんな現実的なこと言う人はなかなかいませんよ。

必死でやっていたらゲーミングシェアハウスが固まってきた。C4 LANという代表的な売りもの(コンテンツ)もできた。最初はまさかLANパーティーをやるなんて思ってもいなかったんですけど。
ゲーミングシェアハウスの話題からずいぶん反れたが、ニチカレとしてゲーム事業を続ける理由が興味深かったのでカットせずに載せてみた。会社で新しい事業を作って続けていくって、きっとこういうことなんだろうなと思う。
ゲーマーにとって快適な空間を作りたいという理想と、事業として利益を上げたいという現実のせめぎ合いの中で、ゲーミングシェアハウスは運営できている。
「これからはeスポーツの時代です」とか「大規模なイベントを仕掛けましょう」とか、景気のいい言葉を並べるより、こういう会社のほうが信頼できるんじゃないかなーと思う。
ちなみに、小林さんもけっこうなゲーマーだ。これまでにはまったゲームは『Team Fortress 2』や『機動戦士ガンダムオンライン』など。そういう人が中心となって運営するシェアハウスは、ゲーマーにとって居心地がいいに違いない。