錬金術士のライザを主人公に、“ひと夏の冒険”を通じて彼女の成長を追いかけてきたRPG“秘密”シリーズ。2023年3月23日発売予定の最新作『ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~』(以下、『ライザ3』)の物語は、謎の群島“カーク群島”の出現によって、彼女の故郷・クーケン島が危機的状況に陥り、その問題解決のためにライザたちが“カーク群島”を調査するところから始まる 。

※『ライザ3』Nintendo Switch、PS4、PS5版は2023年3月23日発売予定。PC(Steam)版は2023年3月24日配信予定

 『ライザ3』は、前作までと同じく“調合”、“バトル”、“採取”をこなしながらメインストーリーを進めるゲームサイクルを継承。もちろん、それぞれに“秘密”シリーズ最新作らしい味付けがなされており、そこに“鍵”と呼ばれるシステムを加えることで、ライザたちの物語のフィナーレにふさわしい遊びを提供している。本記事ではその進化ポイントを押さえつつ、シリーズをずっと追ってきたファン目線でのレビューをお届けする。

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総勢11人の大所帯となり、物語のにぎやかさはハンパない

 今回の冒険では、ライザを含めてパーティメンバーが11人と、大所帯に。前作・前々作で参戦していたレント、タオ、クラウディア、アンペル、リラ、パトリツィアに加え、新メンバーも登場する。

 なんといっても注目したいのは、これまで行動をともにしながらも参戦を果たせなかった、幼なじみのボオスが満を持して参戦する点だろう。

『ライザのアトリエ3』レビュー。ライザたちの物語の完結編だからこそ、トコトンていねいな設計。“鍵”がアクセントになり、既存のシステムも楽しさがアップ!

 ライザ、タオ、レント、ボオスは、クーケン島で長く過ごしてきた幼なじみ。誰かが輪の中心になっているような間柄ではなかったが、ボオスが冒険に同行することによって、まとまりのなかった彼女たちの空気が締まる印象だ。3作目にしてやっと、幼なじみたちの在りかたが完成したなと感慨もひとしお。

 また、とあるシーンでは、組織での仕事を経験してきたクラウディアとともに息のあった交渉術を披露するなど、人間としてひと回りもふた回りも成長した姿が見られる。1作目で彼がライザたちと反目しあっていたことを知っている身からすると喜ばしく、主人公を変えずに成長を描いてきたシリーズもののよさをあらためて感じた。

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 そして新たに登場するフェデリーカ、ディアン、カラの3人も、“ライザファミリー”の中にすぐ溶け込むようなキャラクター性で、見た目も性格も被ることなく、11人の大所帯でも埋もれることがない印象だった。“秘密”シリーズのキャラクターの作りかたは、相変わらずうまいと思う。

 なお、前作に登場したフィーの話題を始め、いたるところで過去作を思い出させる会話やイベントがあるなど、作品を追い続けてきたファンがグッとくるポイントをしっかり押さえている点も、ファンとしてはうれしい限り。ロミィやアガーテなど、人気のサブキャラクターがしっかり活躍するのもGOOD!

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1作目に登場したエリアのほとんどを含む超広大な世界を冒険

 これまで、シリーズを通してバリエーション溢れるエリアが描かれてきたが、『ライザ3』では過去作以上の広大な世界を冒険できる。しかも驚きなのが、1作目で冒険したクーケン島周辺のほとんどが 収録されている点。

 本作は完全なオープンワールドではないが、冒険の舞台となる4つの地方の、それぞれの地方の中はすべてシームレスにつながっている。クーケン島周辺内も、ロードを挟まず走り回ることができるので、1作目で見た場所でも印象はガラッと変わるはず。

『ライザのアトリエ3』レビュー。ライザたちの物語の完結編だからこそ、トコトンていねいな設計。“鍵”がアクセントになり、既存のシステムも楽しさがアップ!
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 単にエリアが広いだけというものではなく、しっかりと要所にランドマークが配置されており、起伏に富んだ構造は歩いているだけでとにかく楽しい。隅々まで歩きたくなることは間違いないだろう。プレイ中は「広すぎてヤバいヤバい」と、果てしない冒険の予感にずっとワクワクしっぱなしだったほど(笑)。

目まぐるしく展開するスピーディー&爽快なバトル

 バトルの基本はこれまで同様、フィールド上を徘徊する魔物に接触したり、スイングを当てたりするとスタート。スイングが当たると味方に有利な状況からスタートできる。

 バトル自体は、リアルタイム&ノンストップで敵味方が行動していく“リアルタイムタクティクスバトル”を採用。戦いには前衛3名と後衛2名が参加でき、前衛と後衛の入れ替えにペナルティはなく、戦闘中に自由に入れ替え可能だ。

 味方を適宜入れ替えながら戦い、通常攻撃でアクションポイント(AP)を溜め、各キャラクターのスキルを使って的確に相手の弱点を突くのが戦いのセオリーとなる。

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 また、スキルの使用で溜まるCC(コアチャージ)を利用することで、アイテムや“鍵”(詳細は後述)を使うことができる。いつ、どのようにラッシュをかけるかを判断する戦略性も、本シリーズでのバトルの醍醐味だ。

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 そんな本作のバトルだが、体感的には前作とほぼ変わらぬ感覚で遊ぶことができた。もともと前作の時点でバトルシステムは完成されていた感もあり、逆に大きく変えてまたイチから仕組みを覚え直すのも大変なので、これはこれでありかなと。

 ただし、完全にそのままというわけではなく、たとえばアクションオーダー(“物理ダメージを与えて”といった、仲間からのリクエスト。条件を満たすと追撃してくれる)を設定できるようになり、ランダム性が強かった部分を戦略に組み込めるようになっていたりと、プレイしやすさは向上している。

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 なお、バトルはシームレスで始まり、バトル終了後のリザルト表示からの待機時間もほぼない。イベントバトルだったならば、終了後そのまま会話が始まるなど、プレイの没入感の妨げにならない仕様になっているのも好印象だった。

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マテリアル環を使った直感的な調合は工夫し甲斐がアップ

 調合についてもバトル同様、遊びかたのルールに大きな変更点はない。レシピを選択すると表示されるマテリアル環(マス)に、対応した材料を投入していくという、視覚的にわかりやすいシステムを採用している。多くのマスを埋めて強力なアイテムを調合できたときの爽快感はバツグンだ。

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 そんな調合システムには、“超特性”と呼ばれる特性を新たに採用。超特性は一度しか引き継げないが通常とは異なる強力な特性だ。利用することで、非常に強力なアイテムを生み出せる。

 また、“リンクコール”も新システムのひとつで、発動条件こそあるが、通常では付与できない効果をアイテムに付けられるようになる。これによって、想定以上に便利なアイテムを生み出せることもあるのだ。こういった、プレイヤーがより工夫し甲斐のあるシステムの採用で、前作以上に調合の奥深さが増していると言っても過言ではない。

フィールドは広大だが移動や採取は快適でストレスなし

 すでに紹介したように、『ライザ3』のフィールドはシームレスで移動できる点が特徴。ただし、クーケン島周辺(1作目の冒険の舞台を含む)とクレリア地方(本作で新登場)のように、地方と地方のあいだを行き来する場合はロードが生じる。とはいえ、ひとつのフィールドはものすごく広大な作りで、すべてを徒歩で制覇するのは難しいほど。

 だが、フィールドにはランドマークが用意されており、そこをファストトラベルポイントとして利用できるため、移動に関してのストレスはまったく感じなかった。また、街中もシームレスなフィールドの中に組み込まれているのもいい。前作までは、「街のこの出口は、どこにつながっているんだ?」と迷いがちだったが、それがなくなったのがうれしい。

 なお、未踏の土地では地図が隠されており、ランドマークを見つけることで周囲の地図情報が開示される仕組みで、探索していく感もバッチリ味わえる。

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 また、フィールドアクションも豊富。特定の箇所を光のラインで結び、そのあいだを高速で移動する“ジップライン”や、水中や滝を登るといったアクションなどを活用して、フィールドをダイナミックに移動できるのも気持ちよかった。もちろん、前作にあったライド(霊獣を呼んで乗る)や、水晶を利用して大ジャンプするエメラルドバンドなども完備されている。

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 ちなみに、地味にうれしい機能が、マップを拡大すると魔物のシンボルが表示される点。クエストや素材集めで目的の魔物がどこにいるのか探しやすくなった。シンボルから直接図鑑に飛べたりもして、とにかく使いやすいのがGOOD。

『ライザのアトリエ3』レビュー。ライザたちの物語の完結編だからこそ、トコトンていねいな設計。“鍵”がアクセントになり、既存のシステムも楽しさがアップ!

 なお、本作からの新要素として、街やフィールドではランダムでクエストが発生するようになったが、けっこうな頻度でバンバン発生するので探索中も気が抜けなかった。報酬としてアイテムやスキルの習得に使うSPがもらえるため、思わず寄り道してしまいがちに。もちろん、やるやらないはプレイヤーの自由だ。

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新要素の“鍵”が調合、バトル、探索の楽しさをアップさせる

 最後に語るのは、調合、バトル、探索にかかわる“鍵”と呼ばれる新システム。カーク群島の遺跡の奥で巨大な扉を発見したことをきっかけに、ライザは不思議な鍵を生成できるようになる。この鍵はランドマークや敵から生成可能で、その効果はさまざまだ。

『ライザのアトリエ3』レビュー。ライザたちの物語の完結編だからこそ、トコトンていねいな設計。“鍵”がアクセントになり、既存のシステムも楽しさがアップ!
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 たとえば調合で鍵を使うと、レシピのレベルアップによるさまざまな恩恵を得られ、品質上昇、作成個数の増加などの効果が得られることがある。また、バトルに使う鍵には、APブースト効果を得られたり、HP継続効果を得られたりするなどの効果がある。調合で利用すればいいアイテムが作れるし、バトルで使えばテンポ感が格段に加速するなど、確実に楽しさがアップ!

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 また、装備するとステータスをアップさせる鍵や、使用すると採取時の品質をアップさせる効果を持つ鍵なども登場する。このように鍵の効果はどれも強力であるため、いい効果の鍵は、使い惜しみたくなる気持ちが出るのも正直なところ(いわゆるエリクサー症候群)。だが、鍵の入手自体は難しくなく、むしろガンガン使うのを推奨するゲームデザインになっている点は好感触だった。

総評

 ここまでに紹介した以外にも、高所から飛び降りることが可能だったり、マップのカーソル速度を切り替えられたりと、とにかくカユい所に手が届く親切設計が満載で、ライザの“最後の夏の冒険”をていねいにファンに届けようと作り込まれているという印象を受けた『ライザ3』。語彙力に欠けますが「とにかくヤバい!」としか言いようのないボリューム感で、時間泥棒であること間違いなしなので、プレイするときは覚悟してほしい(笑)。