サイゲームスのデジタルカードゲーム『シャドウバース』シリーズ(以下、『シャドバ』)。その最新作として、『シャドウバース ワールズビヨンド』(以下、『ワールズビヨンド』)が発表された。ハードはiOS、Android、PCを予定しており、配信時期は2024年夏にリリースを予定している。

 本記事では『ワールズビヨンド』のプロデューサーを務める、木村唯人氏へのインタビューをお届け。本作はどのような狙いを持っているのか、具体的なシステムはどんなものなのかなど、詳しい内容をお聞きした。

木村唯人氏(きむら ゆいと)

『シャドウバース』プロデューサーであり、『ワールズビヨンド』でもプロデューサーを務める。(文中は木村)

『シャドバ』はもう一度“進化”する

――現行のアプリ『シャドバ』の運営が続く中で、さらに『シャドウバース』シリーズの新作をリリースすると聞き、とても驚きました。どのような意図で配信することを決めたのでしょうか。

木村2016年にサービスを開始した『シャドバ』は、2023年で7周年を迎えました。そろそろ10周年も迫ってくる中で、さらに10年以上続くタイトルとなるために、いま一度ゲーム内容を見直して、『シャドバ』の“進化”を目指そうと考えたのが、『ワールズビヨンド』の始まりになります。

――『シャドバ』に関しては、「10年以上運営を続けることを目指している」と木村さんは当初から仰っていましたね。おそらくアップデートでの対応も考えられたのではないかと思いますが、なぜ新作としてのリリースにしたのでしょうか?

木村まず狙いとしては、長く運営してきたノウハウを活かして、カードバトル自体の純粋なおもしろさをさらに進化させること。そのうえで、これから初めて『シャドバ』に触れる人も楽しめるような新たな機能を加えることで、世界中でもっと多くのプレイヤーに遊んでほしい。それを達成するために、アップデートではなく新作として配信することにしました。

――新たなチャレンジをするために、新タイトルにしたわけですね。タイトルには副題として『ワールズビヨンド』とありますが、これには、どんな意図が?

木村『シャドバ』の世界を表現したかったのが、タイトルの由来です。そもそも『シャドウバース』という言葉自体が世界を意味していたり、ゲーム内でもその世界観を感じられるようになっているかと思いますが、それだけではなく、よりいまの時代に合った、新しい形での“世界”を感じてほしい。そして、ゲームだけでなくプレイヤーコミュニティなども含めた、現実の“『シャドバ』がある世界”も楽しんでほしい。そしてそれらをさらに超えていくといった思いで“ビヨンド”を加え、『ワールズビヨンド』と名付けました。

――なるほど。『ワールズビヨンド』のリリース後、現行のアプリ『シャドバ』はどうなってしまうのでしょうか?

木村『シャドバ』の運営も続けながら、『ワールズビヨンド』を運営していきます。『ワールズビヨンド』では新しい遊びやカードバトルが楽しめますが、慣れ親しんだカードでこれまで通りのバトルが現行アプリ『シャドバ』でも楽しめるように、運営一同努力していきます。

 ただ、公式大会については、種目を『シャドバ』から『ワールズビヨンド』に切り換える予定です。切り換えタイミングについては、今後の発表をお待ちください。

 また、安心していただきたいのは引き継ぎ要素もあり、『シャドバ』のプレイ状況に応じてゲーム内アイテムが入手可能になります。『シャドバ』で所持していた各Grand Masterのスリーブや、リーダースキンに応じたゲーム内アイテムも『ワールズビヨンド』で入手できる予定です。これらはあくまでも一例で、そのほかにも、引き継げる要素や、連携することで獲得できる報酬を準備していますので、こちらも続報をお待ちいただければ。

『シャドウバース ワールズビヨンド』インタビュー。『シャドバ』を長期間続けるための新たな“進化”。ルールのリファイン、麻雀や釣りもできる大型ロビー機能も搭載

――ルールはこれまでの『シャドバ』と少しだけ違うようですが、似たカードゲームが2種類ある中で、ユーザーの分散などが予想されます。その点については、どのようにお考えなのでしょうか。

木村自由に遊んでもらいたいな、と思っています。もちろん『ワールズビヨンド』を遊んでいただきたい気持ちはありますが、現行の『シャドバ』のほうがやっぱり好き、となった人はそのまま『シャドバ』を遊んでいただければと思いますし、気に入っていただければ『ワールズビヨンド』に移行したり、またはここから初めて触れる人もいるでしょう。

 また、あくまで対戦がメインのカードゲームですから、両方遊び続けることも可能かと思います。そこは自由に選んでいただきたいです。

――逆に現行のほうの『シャドバ』へ興味を持つ人もいるかもしれませんね。『シャドバ』は新カードパックを重ねに重ね、フォーマット(ゲーム内のルール)の違いはあれど、初期より難しいゲームになっているかと思います。『ワールズビヨンド』はどのような地点からスタートするのでしょうか?

木村カードプールは少ないところから始まります。『ワールズビヨンド』は、『シャドバ』の初期よりはテクニカルになってはいますが、わりとシンプルな状態からスタートする予定です。そこから後々、要素を追加していき、戦略性は『シャドバ』のように高まっていくかと思います。

――“超進化”やクラスに関する変更といった新要素があるそうですが、それ以外の基本ルールは『シャドバ』と同一のものでしょうか?

木村はい。デッキ構築やカードの種類は『シャドバ』を踏襲しつつ、『ワールズビヨンド』ならではの新要素が加わり、新たな戦略が楽しめます。

 たとえば新キーワード“アクト”は、一部のアミュレット(場に出すと、場に残り続けるカード)が持つ能力で、自分のターン中、任意のタイミングで能力を発動できます。たとえば“アクト”を発動すると、フォロワー(ユニットカード)の、攻撃力を上げるカードがあります。難関突破やトドメの一撃などに使える、重要な選択肢のひとつになるでしょう。

――目玉のひとつである“超進化”は、なぜ導入しようと考えたのでしょうか?

木村戦略の幅を広げて、より熱いバトルが楽しめるように考案しました。『シャドバ』の象徴的なシステムが“進化”ですので、さらにその先を行くようなシステムはできないか、と考えていったところ、“超進化”になりました。

 ちなみに“超進化”は、すべてのフォロワーが持っているのではなく、“超進化時能力を持つフォロワー”のみが使える能力です。後攻は6ターン目、先攻は7ターン目から使える能力です。

 “進化”は通常通り、EP(進化ポイント)を消費して発動しますが、発動可能ターンになると所持EPの最大2個がSEP(超進化ポイント)に変化します。ですので、バトル後半に残しておけば“超進化”発動のチャンスが増えるわけです。序盤にEPを使って攻め切るのか、後半のSEPに取っておくのかなど、序盤~終盤までの戦略の指針になるでしょう。

『シャドウバース ワールズビヨンド』インタビュー。『シャドバ』を長期間続けるための新たな“進化”。ルールのリファイン、麻雀や釣りもできる大型ロビー機能も搭載

――まさに切り札になりそうですね。

木村“超進化時能力”がものすごく強いからデッキに入れるようなカードもあるでしょうね。

――クラスは、ニュートラルを除くこれまでの8種ではなく、ヴァンパイアとネクロマンサーが合体した“ナイトメア”が登場し、7種となりました。なぜクラスを減らそうと考えたのでしょうか?

木村『シャドバ』は当初7種のクラスで、その後新クラス“ネメシス”を追加し、8種になりましたよね。長く運営を続けていく中で見えてきたのは、クラスバランスの問題でした。ゲーム環境を整えるうえで、クラス使用率の格差をなるべく少なくすることは、つねに目指しています。ただ、8クラスよりも7クラスのほうが、バランスを取るうえで適切な数だなと感じたんですね。ですので、『ワールズビヨンド』では7クラスとしています。

――“ナイトメア”クラスは、アナログカードゲーム『シャドウバース エボルヴ』と同じ要素ですよね。踏襲する形になったのは、なぜでしょうか?

木村エボルヴ』で前例があるので、いちばん納得感があるだろう、と考えたのが理由のひとつです。なお、『シャドウバース エボルヴ』には“ネメシス”は登場しませんが、“ネメシス”はデジタルカードゲームならではのギミックを持ったクラスですから、『ワールズビヨンド』に“ネメシス”は残そうと決めていました。

 ちなみに『シャドウバース エボルヴ』ではクラスが6種となっているのも基本的には同じ理由で、クラスが多すぎるので減らしました。7種ではなく6種なのは、“ネメシス”がアナログで再現が困難なこともありますが、アナログカードゲームであること自体が大きな理由です。アナログカードはデジタルよりもカードを気軽に入手できないので、カード集めがたいへんです。カードパックから目的のクラスのカードを入手する必要がある中で、7種もクラスがあると、よりデッキ構築自体が難しくなってしまいますから。

――また、ストーリーも新たに展開されるとお聞きしています。新主人公“ドライツェーン”と“ラヴサイン”も公開されましたが、どのようなストーリー展開を見せていくのでしょうか?

『シャドウバース ワールズビヨンド』インタビュー。『シャドバ』を長期間続けるための新たな“進化”。ルールのリファイン、麻雀や釣りもできる大型ロビー機能も搭載
『シャドウバース ワールズビヨンド』インタビュー。『シャドバ』を長期間続けるための新たな“進化”。ルールのリファイン、麻雀や釣りもできる大型ロビー機能も搭載
新主人公のドライツェーン(左)とラヴサイン(右)。

木村内容についてはお話しできませんが、これまで描いていたような同時進行の群像劇を描くのではなく、章ごとの主人公たちにフォーカスを当て、それぞれ独立した物語を展開する形を採用しています。

――ドライツェーンは“ネメシス”クラスだったりと、全体的にネメシスをフィーチャーしているように感じました。何か狙いがあるのでしょうか。

木村そこは秘密です。今後の発表で、きっとその意味がわかるかもしれませんね。

――では対戦モードについては、基本的には『シャドバ』を踏襲していますか?

木村はい。いままでのようにランクマッチなど、基本の対戦モードが用意されていますが、少し仕組みを変える予定です。詳細はまた後日お知らせさせてください。

『シャドウバース ワールズビヨンド』インタビュー。『シャドバ』を長期間続けるための新たな“進化”。ルールのリファイン、麻雀や釣りもできる大型ロビー機能も搭載

メタ“シャドウ”バース到来!

――本作では、新たにロビー機能が追加されるとお聞きしこちらも驚きました。要はオンラインRPGのような昨今で言うところの“メタバース”的なものかと思いますが、なぜ導入しようと思ったのでしょうか。

木村『シャドバ』はプレイヤーコミュニティをとくに大事にしていて、コミュニティの輪もできていると感じています。そこからさらに輪を広げていきたい、より多くのプレイヤーの皆さんどうしで、より身近に触れあってほしいと考えたときに、ゲーム内でより交流ができる機能を追加しようと決めました。

 カードゲームを通じて絆を深めた仲間たちとより親密になったり、カードゲームにそれほどなじみがない人でもコミュニケーションが取りやすいような場にできないものか、と検討していった結果、ワールド機能を採用しました。

 メッセージ機能や、ボイスチャット機能もありますし、たとえばロビーには特定のグループが集まれるような、いわゆるギルドに近いようなシステムもあります。仲間内だけで大会を開催できたりするので、さまざまな遊びかたができると思います。

――さらに、自分の部屋をカスタマイズする要素もあるんですよね。

木村はい。自分自身で自由にレイアウトを編集して友人を招待できるような、『シャドバ』世界における自分の部屋を作れます。まさに“ワールド”として、この世界全体をいろいろと楽しめるようになっています。

――部屋のカスタマイズのほか、プレイヤーキャラクターは、アバターを制作して自分の分身を操作するのでしょうか?

木村そうです。アバターはさまざまなパターンがあり、自分らしく編集することが可能です。さらに、人気キャラクターの衣装や髪型に扮することができる“なりきりセット”も用意する予定です。

――ティザーPVにも、アリサなど『シャドバ』のキャラクターが映っていましたね! 期待しています! オンラインロビー内は、コミュニケーションとカードゲームの対戦のほか、ゲーム内イベントなども開催されるのでしょうか?

木村そういったこともやっていきたいです。ロビー内で皆さんが楽しめるようなイベントがあるといいですよね。

――なるほど。オンラインロビーではカードゲーム自体は、どのように対戦するのでしょうか?

木村ロビー内でランクマッチのマッチングを開始したり、あとは対戦台的な場所があって、そこで特定の人と対戦できますし、いろいろな対戦方法があります。

――聞いていると、もはやカードゲーム以外の部分でも、一日中遊んで楽しめちゃうように感じますね。

木村『シャドバ』の世界観を表現したロビーですから、もちろんそこからカードゲームに興味を持ってもらえるとうれしいです。ただ、カードゲーム以外のコンテンツだけでも十分に楽しんでもらえると思います。

――とくに驚いたのが、麻雀が遊べることでした。これはもう、オンライン麻雀が遊べる機能なんですよね?

木村皆さんに驚いてもらいたくて用意した要素です。『シャドバ』も麻雀も、だいたいいっしょのゲームですからね(笑)。ロビーを構築していくうちに、やはりカードゲーム以外の仲間内で遊べる要素が欲しいとなりまして。『シャドバ』プレイヤーは麻雀好きが多いこともあって、相性がすごくいいんですよ。だったら、もうオンライン麻雀を遊べるようにしたらいいじゃないかと。

――つまり、麻雀アプリとして使うこともできちゃうわけですよね?

木村はい、麻雀だけ楽しんでもらってもかまいません。

――麻雀などのコンテンツをやり込むことで、カードゲーム部分に役立つ報酬がもらえたりしますか?

木村詳しくは調整中なのですが、カードバトルで使えるアイテムや報酬がもらえる仕組みを考えています。ただ、麻雀をやり込まないともらえないカードはない予定です。あくまでオマケ的な報酬のイメージですね。ただ、麻雀をやり込んだ称号などは考えています。

――マッチングしたら「この人麻雀強いんだな」とわかりそうですね(笑)。さすがにないとは思いますが、『シャドバ』のシステムが麻雀に関わることはないですよね?

木村牌の見た目など、ビジュアル面で『シャドバ』の世界観が関わることはありますが、さすがに牌が“進化”とかはないです(笑)。

――さらに、ティザーPVでは“釣り”やボスバトル戦のようなコンテンツの様子もありましたが、こちらはどんな内容に……?

木村詳しくはお話しできませんが、そういった感じのものが楽しめると考えていただければと。詳細はこちらも続報をお待ちください。

『シャドウバース ワールズビヨンド』インタビュー。『シャドバ』を長期間続けるための新たな“進化”。ルールのリファイン、麻雀や釣りもできる大型ロビー機能も搭載

引き続き『シャドバ』を文化にするために

――制作スタッフ陣は、現行アプリの『シャドバ』のスタッフの皆さんが関わっているのでしょうか?

木村基本は長く『シャドバ』に関わってきたスタッフがコアメンバーとなり、『ワールズビヨンド』を開発しています。

 ただ、もちろん新しいスタッフもいますし、いろいろとスタッフが混ざっていたり、仕事を両タイトルで掛け持ちしたりもしています。一応チームは分かれていますけれども、『シャドバ』も『ワールズビヨンド』も、だいたい同じスタッフが開発しているイメージでいいかと思います。

――わかりました。まだリリースもしていないので気が早いですが、木村さんは『ワールズビヨンド』が今後どのように発展していってほしいと考えていますか?

木村当初から『シャドバ』を文化にすることを掲げて、これまでも運営を続けてきました。ゲーム、アニメ、リアルトレーディングカードゲームなど、さまざまな施策をやってきましたが、『ワールズビヨンド』も変わらずに“文化にすること”を目標に努力していきます。

 『シャドウバース ワールズビヨンド』は2024年夏の配信を予定していますが、それまでに現行のアプリ『シャドバ』でも多彩な仕掛けを用意しています。

 まず2024年の夏までに、メインストーリーの最終章を順番に配信していきます。カードバトル部分でも、新たなフォーマットの配信を予定しているので、引き続き多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、運営一同取り組んでいきます。

 『シャドバ』を遊び続けながらも、『シャドウバース ワールズビヨンド』の続報をお待ちください。

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