中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール』に見るVRテクノロジー最前線
2017-02-10 14:00:00
グローバルIP『ソードアートオンライン』シリーズの劇場映画公開に先駆けて特別イベントが開催
前回、拙稿で「今年はグローバルIPが重要な1年となる」といったことを述べた。早速、2月5日、それに関わるようなイベントが京都の立命館大学映像学部の関連施設である、立命館松竹スタジオで行われた。
全世界シリーズ累計1900万部発行の小説『ソードアート・オンライン』(以下『SAO』)シリーズ最新作となる、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(以下、『劇場版 SAO』)に関するスペシャルイベントが行われたのだ。同作は国内のみならず、北米、欧州、豪、そして中国やアジアなど世界中で受け入れられた、グローバルIP。そんな同作の劇場版公開を記念してトークショーが行われたのだ。
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(C)2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project |
登壇者は、テレビ版の第1シーズンから一貫して監督を務めたきた伊藤智彦氏と、VR/MR研究で知られ、自身のチームが開発したVR作品を国際的な学術的展示会、SIGGRAPHなどに出展経験もある立命館大学映像学部副学部長、大島登志一教授お2人。なお、冒頭では、透過スクリーンに3Dモデルのモンスターを投影し、それと対じしてMMORPGのようにバトルをするといったインスタレーションが余興として行われ、会場も盛り上がりを見せた。
まず、冒頭で語られたのが、『SAO』シリーズで登場する各種デバイスの実現可能性について。
テレビアニメでの主要アイテムとなるナーブギアに関し、大島教授はヘッドセット型VRデバイスは1989年以降、全く形状が変わっていないと解説した上で、ナーブギアもその例外ではないとした。
一方、『劇場版 SAO』で重要な役割を果たすオーグマーに関しては、まず、伊藤監督が、簡単にその機能を説明した。これまでの作品で主要な役割を果たしてきたナーブギアが、外界との感覚を遮断して行われるゲームなのに対し、「オーディナル・スケール」は体を使って行うゲームであると説明。
ただその映像化については、科学未来館主催のイベントで取材をしてヒントを得たと伊藤監督。これを踏まえつつ、喫茶店にいった際、関連情報が現実に重ね合わせて表示されるといった劇中での表現は、メガネ型ディスプレイというして実在する技術で実現可能であるとした。
一方、オーグマーの先端に超小型カメラを搭載しそこから映像を投射すると言う設定にも違和感はないとしつつも、オーグマーの現行のデザインは、レーザーを直接網膜に照射するタイプだと推測。ただレーザーを網膜に直接照射するにはデバイスと網膜との距離が近すぎる形状であることから、ホログラム型コンタクトレンズが装着されていればと補足した。
これらを踏まえつつ、大島教授は、『SAO』シリーズが、VRから進化した先にあるMR(Mixed Reality:複合現実)とウェアブルコンピュータの進化の先にあるAR(Augment Reality:拡張現実)を統合している点が興味深いと評価した。
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最も注目したいのは、ラストのアクションシーン。未来のARゲームの様相も示していることに期待
一方、質疑応答の時間も設けられたがかなり濃密な時間となった。
まず、『SAO』シリーズを通して監督として気をつけてい点は」という質問に対し、伊藤監督は「現実世界よりもゲーム世界の方が一見良さげに魅せるようにした」とのべ。「アインクラッドについては、現実世界での描写をどんよりと示したのと対比するように、からっと晴れ晴れした世界に入るように示したりすることで、良さげな雰囲気を引き立て、GGOについても、自分が強ければ目的を達成できるという点を前面に押し出した」とのこと。
また、『SAO』シリーズでもゲーム中の事故が取り扱われており、現実世界でもARゲームなどで事故が起きているが、実際、こういったゲームをどう思うかという質問に対しては、「さすがに4000人規模の事故となるのは問題」としながらも、事故が起きるのは当たり前と伊藤監督。
一方、実用段階で、『SAO』シリーズのような事故が起きるのはあまり考えられないにものの、実際、ARを実験している際も足をぶつけたりということはあると大島教授。これを受けて、伊藤監督は実際に「ARゲームのセッション中に、けがをしている人はいると思うが、楽しいから黙っているのでは」と推測した。
シリーズの中で一番好きなシーンはとの質問に対し、加藤監督は回答に窮しながらも、「やはり、最初に自分の名前が監督としてクレジットされたとき」として笑いを誘いつつ、それ以外では、『SAO』の場合、第1話でクラインがキリトと話しながら「すげえよな。マジ、この時代に生まれてよかった~」と感動して叫んでいるところとした。また、ALOの場合は、空が飛べるところ、GGOはその世界観が殺伐としていることから、酒場と答えた。
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この他、アニメータ志望者からの質問として、『SAO』を作り上げる上でアニメータが意識している点があげられ、それについては、線が多いとアニメータから言われいるとし、それについてはごめんなさいと頭を下げた。
質問は大島先生にも投げかけられた。「嗅覚や味覚もVR・ARでもいずれ再現されるのか?」というもので、それに対し、視覚には3原色はあるが、嗅覚、味覚においてもいろいろなものを再現できる要素についての研究が進んでいるとのこと。とりわけ味覚はバーチャルリアリティというよりは医学系で研究が進んでおり、嗅覚については、限定的なシチュエーションではできていると答えた。
最後に『劇場版 SAO』の見どころについて聞かれた伊藤監督は「ラストのアクションバトル」並びに「これまでのVR世界で最強の立場を貫いてきたキリトが、ARという世界が舞台では、そこまで強くないことを明らかにし、そこから劇中でどう成長するかに注目して」と観客の期待を膨らませた。
『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール』は2月18日から全国各劇場にてロードショウ。同作品が描き出す未来のARゲームの様子に期待だ。
関連URL
『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール』公式ホームページ
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立命館大学映像学部