今後の来場者特典情報も明らかに

 川原礫氏による小説を原作とした、公開中の劇場版アニメ『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』。本作の興行収入が24億円、観客動員数が160万人を突破したことを記念して、原作者にして本作の脚本を担当した川原礫氏、タレント・映画ソムリエとして活躍中の東紗友美による対談の模様が公開された。テーマは「『劇場版 ソードアート・オンライン』の隠れた魅力」。

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▲川原礫氏(写真右)、東紗友美(写真左)

 また、4月15日より配布される本作の来場者特典が決定。同日よりキャラクターデザイン・足立慎吾氏による描き下ろし色紙、また4月22日よりテレビシリーズの名シーンフィルムコマが配布予定(いずれもなくなり次第終了)。加えて、上映劇場追加記念特典として、5月6日からは描き下ろしイラストA4クリアファイル&川原礫氏書き下ろし特典小説『ソードアート・オンライン ホープフル・チャント』電子書籍プレゼントカードが配布される。

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▲足立慎吾氏描き下ろし色紙(4月15日より配布予定)

『SAO』はいっしょに観た人と聖地巡礼したくなるデートムービー?

東紗友美(以下、東) 私、『ソードアート・オンライン』(以下、『SAO』)は映画から入ったんですが、ここまでゲームが舞台であることを明確にしたアニメを初めて見ました。

川原礫(以下、川原) そうですね。ゲームっぽい設定の映画ならいっぱいありますけど、ここまでゲーム感を前面に押し出しているものは、なかなかないかもしれませんね。

 アニメや原作をよく知らなくても、とても楽しめる作品でした。

川原 ありがとうございます。既存のファンをケアしつつ、新規の方も楽しめる内容にするにはどうしたらいいか、何度も話し合いがありまして。そういっていただけるのは何よりです。

 映画を見終わった後、いっしょに映画館へ行った相手とデートしたくなるんですよ。劇中舞台の秋葉原UDX前や恵比寿ガーデンプレイスを聖地巡礼したくなっちゃいました。カップルでも楽しめる内容ですよね。どうしてここまで現実の風景描写にこだわったのですか?

川原 個人的に、ゲームなどで再現される実際の風景にすごく憧れがあって。今回、劇場版の話をもらったときにぜひ東京の町並みを正確に再現したいと思ったんです。

 お気に入りの場所はありますか?

川原 最初の戦いがくり広げられる恵比寿ガーデンプレイスは、見た目がすでにゲームステージのようで好きです。一段下がった空間があったり。そういう場所って都内に意外とないんですよね。

 じつはちょうど昨日、恵比寿付近で仕事がありまして。ガーデンプレイスを通ったんですけど、なんだかモンスターが出てきそうな気がしました(笑)。

川原 そう思っていただけるとうれしいです。でも、その舞台のなかでもキリトとアスナが天体観測で登る埼玉の堂平山はハードルが高い(笑)。カップルで行こうとしたら相当大変です。

 私、いろいろな映画の聖地巡礼が好きで、今度の休みに堂平山に行こうと思っていたんですけど……。

川原 あそこ、バス停から歩いて行こうと思ったら2時間くらいかかるんです。あの山は車で山頂まで行けるので、そちらをおすすめします。実際に映画を見てくださった皆さんがけっこう訪れているみたいですね。

 ネットで堂平山を検索すると『SAO』って出てきますから。

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▲堂平山で星を見ながら話すキリトとアスナ

川原 でも、デートムービー的な要素をうまく取り入れることができたのは伊藤(智彦)監督のおかげです。あの人、最近結婚して“リア充オーラ”がすごいから。独身時代の監督ならここまでラブラブ感を出せなかったと思います(笑)。完全にやっかみですけどね!

東:ひどい……(笑)。

ハーレム系主人公は海外ではウケない?

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 ヒロインであるアスナのモデルはいるのですか?

川原 『SAO』を書き始めたのは、まだ僕が20代の頃で。当時の僕が思いつける限りの“いい女”感を一生懸命書いたんですけど、とにかくいっぱいいっぱいでモデルさんを考える余裕がなかったですね。うーん……誰かと言われれば栗山千明さんの要素は少し入っていると思います。昔からすごく好きで。

 ちなみに、私がアスナをいいなって思うのは、守ってもらうヒロインじゃなくて強くて自分を持っているからです。

川原 なるほど。そういえば、アメリカでは“守られるだけのヒロイン”って許されないんです。テレビアニメシリーズ第1期の途中では、アスナが悪いやつに囚われの身になってキリトが助けに行く流れになりますが、アメリカの記者さんから「これは男性優位主義的だ」と指摘されました。なるほど、ポリティカリィ・コレクト(政治的に正しい)じゃなかったなと。

 そんなことが!

川原 それに、そういった意味ではキリトくんの“ハーレム感”が欧米ではキツいらしいです。

東:キツい? モテモテ主人公はダメってことですか?

川原 日本のラノベやアニメは、女性たちの気持ちが主人公ばかりに向いているケースが多いですよね。それは国際的に通用しない感覚なんです。世界に売り込むにあたって、その辺りは最大のハードルになっていくんじゃないかと。

 はっきりと言われたことも?

川原 はい。Twitterなどで「キリトは早くその問題を解決すべきだ」と言われました(笑)

東 ふふふ。問題、って扱いなんですね。

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「神田さんの歌声には心底震えました」

 この劇場作品をどんな人に見てもらいたいですか?

川原 客層を絞ることはやめようというコンセプトがありました。なるべく多くの方に見ていただけるものが作りたかった。どうやら、お客さんの中にはご年配の方もいるらしくて。とてもうれしいですね。

 今回、声優として神田沙也加さんや井上芳雄さん、鹿賀丈史さんが参加されていますよね。最近では女優や俳優が声優を務めることも多いですが、どのように感じますか?

川原 確かにこれまでのアニメ声優さんの演技とは違うところがありますよね。僕も最初はそれを違和感と捉えていたんですけど、実際にアフレコを拝見して考えをあらためました。とにかく存在感がすごい。声優さんは自分の存在を消してキャラになりきる感じですが、俳優さんの場合は逆に存在感が増していくんです。

 なるほど!

川原 そうか、これは違和感じゃなくて、“生きている人間らしさ”なんだ、と。終盤、井上芳雄さんが演じたゲストキャラのエイジが、「『SAO』なんてクソゲーの記憶、もらったっていいじゃないか!!」と叫ぶシーンがあるんです。その咆哮の生々しさは、ふつうにはなかなか出せないんじゃないかと思います。

 エイジくんの叫びや鹿賀さん演じる重村の娘への思いなど、たくさん心を動かされました。

川原 それに、キーとなるAIキャラのユナを演じた神田さんの歌声には心底震えました。人工知能の悲哀みたいなものがありありと伝わってくる演技もすごかった。

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▲神田沙也加が演じる、≪オーディナル・スケール≫内の歌姫・ユナ

“彗星が落ちる大ヒット作”は「特殊な現象」

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 興行収入が20億円を突破しているようですが、これってものすごいことですよね」

川原 『SAO』は一般に受け入れられない作品だと僕は思っていたんです。深夜アニメ発にしてはすごい結果ですよね。でも、こんなことを言うと怒られるかもしれないが、無理に“一般への壁”を超えなくてもいいのかなという気もするんです。そこにこだわりすぎると本当のコアなファンを切り捨てる危険性が出てくる。僕はそれだけは絶対にしたくないんですよ。

 原点を大事にしたいと。

川原 まだ本格的にデビューする前のWeb時代から、僕のホームページで『SAO』を読んでくださっている人もいるわけで。その人たちは絶対に裏切りたくないんです。

 そんな制約がありつつも多くの人に受け入れられたんですね。

川原 本当に監督や役者さん、スタッフさんの力です。感謝しかないです。

 最近アニメが一般層に浸透してきたことも関係があるのでしょうか?

川原 昨年はとんでもないヒット作品がひとつありましたよね。でもあれは、それこそ“彗星が落ちてくる”ような確率の特殊な現象なので……。

東:(笑)

映画大ヒットの理由を分析

川原 話が逸れましたが、『劇場版SAO』のヒット理由として、作画と音の力はとても大きいと思います。もの作りって終わりがないんですよ。やればやるだけ先がある。制作側がギリギリまで諦めなかったことが心から伝わってきます。僕、あんなに動く戦闘シーン見たことないですよ。

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▲劇中の戦闘シーン

 まさに、瞬きができないほどの密度でした!

川原:音もすごい。ユナが歌うなかで戦闘するシーンはぜひ劇場で見直してほしいです。歌をBGMに使うのはすごく難しいと思うんです。ふつうに使うと歌とキャラのセリフが混じってしまいますから。ゆったりとした曲調から勇ましい感じに変わる瞬間なんか、秒単位でピタッとハメなきゃいけない。実際にやろうと思ったらとんでもなく大変な作業です。

 確かに、 言われてみればかなり大変ですよね……。

川原 クライマックスに駐車場でキリトとエイジが対峙する一方で、ステージではユナのライブが始まります。ユナの歌をバックに交互に物語が展開する疾走感がものすごい。あそこまで1カット1カットを曲にぴったりはめ込んでいくのは並みの努力じゃないですよ。あのこだわりや粘りがあったからここまでヒットもしたし、よい作品になったんだと思います。

 なんだか、もう一度見たくなってきました(笑)。

作品概要

◆作品名:劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-
◆公開日:公開中
◆配給:アニプレックス
◆上映時間:119分
◆原作:川原礫(「電撃文庫」刊)
◆原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec
◆監督:伊藤智彦
◆脚本:川原礫・伊藤智彦
◆キャラクターデザイン・総作画監督:足立慎吾
◆音楽:梶浦由記
◆制作:A-1 Pictures
◆製作:SAO MOVIE Project
◆キャスト
キリト(桐ヶ谷和人):松岡禎丞/アスナ(結城明日奈):戸松遥/ユイ:伊藤かな恵/リーファ(桐ヶ谷直葉):竹達彩奈/シリカ(綾野珪子):日高里菜/リズベット(篠崎里香):高垣彩陽/シノン(朝田詩乃):沢城みゆき/クライン(壷井遼太郎):平田広明/エギル(アンドリュー・ギルバート・ミルズ):安元洋貴/茅場晶彦:山寺宏一
ユナ:神田沙也加/エイジ:井上芳雄/重村:鹿賀丈史