セガゲームスが手掛ける『初音ミク プロジェクト ディーヴァ』シリーズは、電子の歌姫・初音ミクの楽曲とともに、リズムゲームを楽しめる作品だ。同シリーズには、ゲームの開発チームはもちろん、作曲や作詞を手掛けたアーティストや、モジュール(コスチューム)をデザインしたイラストレーターなど、さまざまな人々が携わっている。
ミクたちの動きを担当するモーションアクターも、同シリーズを制作するうえで、欠かせない存在だ。曲に合わせて、ときに激しいダンスを踊り、ときに小さな動きで感情の変化を表現する……そんなモーションアクターの仕事ぶりが、各楽曲の魅力的なPVを支えている。
本記事では、シリーズ最新作『初音ミク プロジェクト ディーヴァ フューチャートーン DX』が発売されたことを記念し、シリーズ初期からモーションアクターを担当してきたタレント・声優の能登有沙さんのインタビューをお届け。初音ミクのいちファンでもあるという能登さんが、ミクを好きになったきっかけや、ミクを演じるうえで意識していることなどをうかがった。
事務所でミクの曲を歌ったことがきっかけで、モーションを担当するように
――初めに、能登さんが初音ミクを知ったきっかけを教えていただけますか?
能登通っていた学校が変わって、友だちができるまでのあいだ、ひとり遊びをするようになりまして、そこでニコニコ動画を見始めたんです。初音ミクさんと言う、人間でもアニメのキャラクターでもない存在に、みんなが注目しているというのが興味深くて、「いったい、なんなんだろう?」と気になったんですね。
――その“気になる”状態から、“好き”という状態になる、きっかけの曲はありましたか?
能登『メルト』ですね。歌詞がキュンとする内容で。それから『ハジメテノオト』などを聴いて、さらに好きになっていきました。『初音ミクの消失』のような早口の曲が流行ったときは、歌詞を書き起こして、歌えるように練習したりしましたね。
――あの曲を歌えるとは、さすがです! そんな能登さんが、『プロジェクト ディーヴァ』シリーズに、モーションアクターとして関わることになったきっかけは何だったのですか?
能登事務所で漫画を描きながら、ミクさんの曲を歌っていたら、それをスタッフさんに聞かれまして。「ミクが好きなの?」と聞かれて、「大好きなんです」と話をしていたら、ミクさんのゲームのモーションのお仕事があるよ、と……。
――好きなものを発信していたら、それがお仕事につながっていったと。
能登「やってみたい!」と答えて、最初に担当したのが、ルカさんの『Just Be Friends』でした。
――好きなキャラクターたちのモーションを担当して、当時はどのようなお気持ちでしたか?
能登皆さんが作詞をして、ミクさんにその歌詞を歌わせるのと、感覚的には近いと思います。プロデューサーのような気持ちというか。「この子にこういう動きをさせたい!」、「こういうポーズが見たいから、こういう動きを付けよう」と考えながら振りを考えて、作ったものは携帯電話とかビデオで撮って、チェックします。そのとき、「なんか、かわいくない」と思ったらボツにしたりして。
――プロデューサーやファンの視点を持ってチェックするんですね。
能登私もいちファンだからこそ、見たい動きもありますし、逆にミクさんにはやってほしくない動きもあります。
――先ほど、最初に演じたのは『Just Be Friends』だとおっしゃっていましたが、ミクさんの曲で最初に担当したものは何でしたか?
能登『あなたの歌姫』と、『金の聖夜霜雪に朽ちて』、『初音ミクの消失』です。
――歌えるほど練習したという『初音ミクの消失』も担当されたんですね!
能登やりましたー! 踊るというよりは、演技に近い感じでしたね。当時は指のモーションは収録していなくて、スタッフの方が手付けでいろいろと調整してくださったそうです。
――『あなたの歌姫』は、ミクさんが手話をするシーンが印象的です。
能登この曲は、「消えたくない」、「もっと歌いたい」という気持ちがすごく出ている曲だったので、それをダンスで見せるというより、バストアップの状態で表情豊かに伝えられる方法はないかと考えたとき、ふと、手話が思い浮かびました。実は小学生のときに、手話クラブに入っていたんです。収録では、手だけじゃなくて表情も大事にしながら演じました。この曲は、全体を収録した後、手だけをアップで撮っていただいた記憶があります。
――ひとつひとつの曲の世界観を考えながら、動きを考えているんですね。
能登どの曲にも物語があるので、なるべくそれをミクさんの動きで表現したいなと。1曲でひとつの作品になるように、というのは、すごく意識して作ってきましたね。
キャラクターごとに、モーションの特徴も変えていく
――ミクやルカなど、これまで複数のキャラクターのモーションを担当されてきたとのことですが、キャラクターごとに、動きかたをどのように変えているのですか?
能登具体的に言うと、リンちゃんは本当に“キュート”に寄せています。極限までキュートに寄せて、レンくんといっしょに踊ったときに、うまく差が出るようにしています。ルカさんの場合は、デフォルトだとスカートの左足側にスリットが入っているので、なるべく左足を前にして踊ります。それから、ルカさんはちょっと大人な感じですが、かわいい曲も歌うので、大人っぽいかわいさを求めていったりとか。MEIKOさんは姉御みたいな立ち位置ですね。プロポーションを意識して、胸を張るポーズをしてみたりと、私も「見たい」と思うポーズを作っています。
――能登さんは数多く振付も担当されていますが、振付を作るときは、まずは曲を聴き込むところから始めるのですか?
能登そうですね。だいたい私は、サビから作り始めることが多いです。ピンときたときは、すぐに思いついたものをメモしますね。
――自分が演じたモーションを見ながら、リズムゲームをプレイするというのは、どのようなお気持ちなのでしょうか。
能登動きを見たいんだけど、プレイもしなくちゃいけないしで、忙しい感じもあり……それと、ちょっと照れくさい感じもしますね(笑)。見ていると、収録時の思い出が蘇ってきたり。モノを壊す動きが多かったことがあったなあ、とか。『ローリンガール』で石膏像を壊したりとか……。
――ハードが移り変わっていく中で、ミクさんたちの動きも多様化しましたよね。
能登そうですね。最初のころは、ツインテールとの兼ね合いもあって、動きに制限も多かったんです。身体の前側だけでパフォーマンスすることが多くて。最近は、スタッフのみなさんの技術のお陰で自由にかっこよくターンをしたりもできるようになりました。
PVを見ていると、モーション収録の変遷もわかる
――『フューチャートーン DX』は、衣装が396着もあるんですが、その中で気に入っているもの、気になるものを教えていただけますか?
能登私、KAITOはだいたい、海パンにしちゃいます(笑)。ミクさんは……これ、すごくゴージャス! カッコいいですね。
――『フューチャートーン DX』で追加された、“セレブレーション”ですね。
能登それから、ミクさんの衣装は、ポニーテールのものもじつは好きです。リンちゃんは、キツネのしっぽが生えている“天袖”が好きです。あと、『スイートマジック』の衣装(マジックシェフ)が大好きで。これの振りも私なんですよ! 頭にいろいろ乗せすぎだよ、みたいな(笑)。
――『スイートマジック』はめちゃくちゃかわいいですよね! このときの振りも、キュートに寄せたんですか?
能登寄せまくりましたね。泡立て器を手に持って。もともとこれは『初音ミク Project mirai 2』に収録されていた曲で、ねんどろいどモデルの頭が大きいので、ちょっと手首を曲げて、頭に泡立て器が刺さらないように動きました。
――ゲームの仕様のことを細かく考えながら、曲の世界観を意識して演じてこられたんですね。モーションに注目しながら、『フューチャートーン DX』のPVを見るだけでも、たっぷり楽しめそうです。
能登ミクさんの10年の歴史が、この作品に詰まっていると言っても過言ではないほど、いろいろな曲が見れるのは魅力ですよね。ぜひ、全部の曲のPVを見てほしいです。PVを見ていくと、「これは初期のほうのPVかな?」と、わかってくると思うんですよね。振付も、「もしかしたら、これは能登さんかな?」とわかるようになっちゃうかも! ミクさんの歴史と、その当時の自分の10年前も思い出しながら、ぜひプレイしてもらいたいと思います。
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