2019年6月11日~13日(現地時間)の期間、アメリカ・ロサンゼルスで開催中のE3 2013。このイベントの任天堂ブースに2019年11月15日発売予定のNintendo Switchソフト『ポケットモンスター ソード・シールド』が出展されている。現地で同作の開発を手掛けるゲームフリークの増田順一氏、大森滋氏にインタビュー取材を行う機会を得たのでその模様をお届けする。
ちなみに、世界的人気を持つ『ポケットモンスター』シリーズの最新作『ポケットモンスター ソード・シールド』だが、E3 2019会期中に任天堂が配信しているWEB番組Nintendo Tree Houseにて、増田氏が「『Pokemon Home』と『ポケットモンスター ソード・シールド』を行き来できるポケモンを、ガラル図鑑に登場するポケモンに絞ることにしました」というメッセージを発信。現在、世界中のポケモンファンのあいだで大きな話題となっている。今回の取材では、作品の魅力のほか、上記のメッセージに関する増田氏や大森氏の想い、今後の方針などを改めて語っていただいた。
※2019年6月13日 10時10分 一部記事内容を修正致しました。
増田順一(ますだじゅんいち)
『ポケットモンスター 赤・緑』より『ポケットモンスター』シリーズの開発を続けている。『ポケットモンスター ソード・シールド』では、プロデューサーを務める。(写真左)
大森滋(おおもりしげる)
『ポケットモンスター ルビー・サファイア』より『ポケットモンスター』の開発に携わり、多くのタイトルを手掛けている。『ポケットモンスター ソード・シールド』では、ディレクターを務める。(写真右)
――先日の“Nintendo Tree House”にて、『Pokemon Home』と『ポケットモンスター ソード・シールド』を行き来できるポケモンについて、増田さんより言及がありました。開発サイドとしても非常に大きなご決断だとは思いますが、『ポケットモンスター ソード・シールド』に連れてこられるポケモンを絞ることにした経緯やお気持ちについて、改めて見解をお教えください。
増田 ハードがNintendo Switchに移行し、ポケモンたちをよりきれいなグラフィックで活き活きと描けるようになりましたが、その反面、これまでと比較して開発に多くの時間が掛かるようになりました。一方で、ポケモンの総数も、新たなポケモンや既存のポケモンのフォルムチェンジなどを含めると1000を越えるようになっています。これによって、グラフィックをハードの変化に適応したクオリティーにすることのほか、バトルの面でも、新たな個性を持ったポケモンを活躍させることや相性のバランス調整をすることが非常に困難になりました。今回の決断の理由にはそうした事情があり、これから先の作品ではすべてのポケモンを登場させるのは難しいという決断に至ったのです。
――確かに『ポケットモンスター ソード・シールド』のグラフィックのクオリティーを考えると、すべてのポケモンについてそれらを作り込むことは相当な時間が掛かりそうですね。
増田 今回の決断は個人的には寂しいし、悲しいことです。もちろん、できることならすべてのポケモンを連れてこられるようにしたかったのですが、いつかはせねばならない決断でもありました。最終的にはクオリティーを選択せざるを得なかったのです。
大森 今回のことは、増田とともに、かなり協議を重ねました。『ポケットモンスター サン・ムーン』の時点でも、(すべてのポケモンを連れてこられるようにすることは)実際はなかなか厳しい状況だったのですが、ハードがNintendo Switchになって、モデルを最初から作り直すことになり、何かしらの選択をしなければならないと。ただ、『ポケットモンスター ソード・シールド』を遊んでいただけるとわかるかと思うのですが(連れてこられるポケモンに制限があっても)ワイルドエリアやストーリーなど、その遊びの内容はかなりのボリュームになります。
――ガラル図鑑に登録されるポケモンは、どれくらいのボリュームになるのでしょうか。
増田 いまの段階では言えないのですが、公開されているPVに出てくるポケモンの進化形はすべて出ます。たとえば、チャンピオン・ダンデの後ろにはリザードンがいましたよね。となると、ヒトカゲも登場するという感じで。もちろん、現在(2019年6月12日現在)PVに登場していないポケモンの中にも、ガラル図鑑に出てくるポケモンたちはいます。
――(ソフトの発売段階で)ガラル図鑑に出てこないポケモンは、その後のアップデートで追加されることはあるのでしょうか。
増田 今後のアップデート等については未定です。ただ、『ポケットモンスター ソード・シールド』には登場させられなくとも、『Pokemon Home』を介して、今後のタイトルで活躍させようとは考えています。決して、ないがしろにはしないつもりです。
――今後の展望をお聞きしたいのですが、たとえば、『ポケットモンスター ソード・シールド』でグラフィックを作ったポケモンは、そのデータを活かしてつぎのタイトルでも出てくることはあるのでしょうか。
増田 それを含め、現在検討中ではあります。ただ、メガシンカやダイマックスのような(すべてのポケモンに関わるような)新たな仕様を入れるとなると、そこに対する別のグラフィックの制作やバトルの調整が生じますので厳しいところではあります。
――現ハードの水準に達したグラフィックのポケモンをシリーズの展開に合わせて随時増やしていくのではなくて、あくまでも、そのタイトルに合ったポケモンを『Pokemon Home』から連れてこられるようにするというわけですね。
増田 そうですね。『Pokemon Home』に皆さんのポケモンを連れてきていただいて、そこからいろいろなタイトルにお出かけしていく感覚になると思います。ポケモンの気持ち的に言いますと、「この地方は寒いから、お留守番しているね」という感じですね。また、『Pokemon Home』に関しては、何かしらの遊びを用意したいとも考えています。
――たとえば、『ポケットモンスター』シリーズ以外の派生タイトルにも連れて行けるようになるのでしょうか。
増田 構想はありますので、将来的には考えていきたいと思っています。
――なるほど。家(Pokemon Home)が中心としてあり、各タイトルにはお出かけ、というスタンスに変わっていくのだと。そんな新たな改革が入った『ポケットモンスター ソード・シールド』ですが、同じハードのNintendo Switchで発売した『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』と比較したときに、どんな作品になると考えればいいでしょうか。
増田 『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』は、『ポケットモンスター ピカチュウ』をベースとしていますし、一方の『ポケットモンスター ソード・シールド』は新たな舞台になりますので、根本的なゲームの作りかたや遊びの性質が異なっています。ただ、ライブラリやベースとなる部分で開発したものは活かしています。
大森 万人の皆様に遊んで満足していただけるようにしています。お子さんが遊んで理解してもらえることも重要視していますね。もちろん、より深いポケモンの育成やバトルの遊びを望んでいらっしゃる方にも楽しんでいただけるかと思います。いろいろな遊びかたに対応しています。
――“ダイマックス”や“ワイルドエリア”など、すでにたくさんの新要素が発表されていますが、おふたりがいちばん注力している部分はどこなのでしょうか。
増田 僕はマックスレイドバトルですね。4人での遊びはぜひ皆さんに体験してみてほしいですね。4人で遊ぶと「ダイマックスしていい?」、「キミがダイマックスするなら、オレはこの技を選ぶよ」みたいなやり取りが生まれるので、そうした会話を楽しんでほしいです。
大森 今回初めて挑戦した“ワイルドエリア”はとてもおもしろい要素になっています。インターネットを介して世界中の人とワイルドエリアで会うことができ、何をしているのかがステッカー(アイコンのようなもの)で表示されます。たとえば、誰かがポケモンを捕まえたときに「○○を捕まえました」というステッカーが出たり。それが欲しいポケモンだった場合、交換を申し込んでみるなど、コミュニケーションツールとして楽しめると思います。
――なるほど。通信要素では、対戦の部分が気になるのですが、従来の『ポケットモンスター』シリーズのような本格的なものが実装されるのでしょうか。
増田 『ポケットモンスター X・Y』、『ポケットモンスター サン・ムーン』に続くもとのとして考えていただいてよいと思います。レーティングバトルに似た通信対戦機能もお楽しみいただける予定です。詳細については、今後発表していきます。
――それでは最後に、本作を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
大森 ストーリーやそれに関連して登場するキャラクターたちも、非常に魅力的になっています。そのあたりを含めて、発売を楽しみにしていただければと。
増田 『ポケットモンスター』シリーズの完全新作ということで、とても遊び応えがある内容になっています。ぜひ期待していただきたいです。最初に選ぶ3匹のポケモン、サルノリ、ヒバニー、メッソンがそれぞれどんな進化を遂げるのか、楽しみにしていただければと。また、全世界同時発売ですので、世界中のみんなでいっしょに楽しんでほしいです。2019年7月12日予約開始ですので、よろしくお願いします!
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