えーでるわいすが企画・開発し、マーベラスが販売するNintendo Switch、PS4、PC(Steam)向けアクションRPG『天穂のサクナヒメ』。同作は、鬼と戦う壮快なアクション要素と、リアルな米づくりを体験できるシミュレーション要素を巧みに融合させた意欲作だ。プレイヤーは豊穣神のサクナヒメとなり、人間たちと協力して鬼退治や米づくりに挑む。本稿では、お米に目がない記事担当ライター・ジャイアント黒田のプレイレビューを通して、作品の魅力を紹介していく。
サクナヒメ
声:大空直美(おおぞら なおみ)
武神タケリビと豊穣神トヨハナのあいだに生まれた女神。両親から双方の資質を受け継いでいるが、両親不在で育ったせいか責任感に乏しく、自堕落に生活してきた。画面右のタマ爺はサクナヒメの育ての親で、その正体はヤナト最強の神剣“星魂剣(ほしだまのつるぎ)”。悪神“大龍(オオミズチ)”との戦いで打ち折れてしまっており、剣としての役割は果たせなくなっている。
グータラ系主人公のサクナヒメにメロメロ!
長引く巣ごもり生活で、36歳にして新たな成長期を迎えているライターのジャイアント黒田です。家からほとんど出ず、食事をしては寝るか、ゲームをしている筆者。もちろんこうして仕事もしていますが、すっかり自堕落な生活が板についた筆者にとって、神界で自由気ままに暮らすサクナヒメは、親近感のわくグータラ系の主人公でした。しかし、夢のような生活は突如終わりを迎えます。
ある日、神界に迷い込んだ人間たちを都に侵入させてしまったうえに、主神カムヒツキへの献上物である、米の備蓄をすべて台無しにしてしまったのです。この失態の罰として、鬼が支配するヒノエ島の調査を命じられたサクナヒメは、人間たちと島で共同生活を送ることに……。
主神カムヒツキに叱られ、人目をはばからず泣きじゃくる姿は、かなりの“駄目神(だめがみ)”っぷり。女神の威厳なんてものは微塵も感じられません。でも、そこがいい! いつの間にか、喜怒哀楽の感情が豊かで、いろいろな表情を見せてくれるサクナヒメの虜になっていました。
この感情は、お調子者の娘をハラハラしながら見守る、父親の気持ちに近いのかも? トラブルメーカーのサクナヒメは、いろいろな意味で目が離せない存在です(笑)。
ふだんはグータラなサクナヒメですが、父親の武神タケリビから受け継いだ戦闘の才能は本物。横スクロールでくり広げられる鬼たちとの戦闘では、武器の農具からくり出される多彩な攻撃と、伸縮自在の羽衣による縦横無尽な移動を組み合わせた、爽快な戦闘が楽しめます。
簡単操作でコンボがつながる通常攻撃に加えて、技力を消費して放つ強力な武技や羽衣技を使用できるのもポイント。筆者がとくにお気に入りだったのが、武技などを使って敵をふっとばすアクションでした。敵に敵をぶつけることで大ダメージを与えられるうえ、敵の数が多い場面で重宝するのも好印象。うまく敵を吹き飛ばして一網打尽にできると気分壮快です。
アクションでは、アクロバティックな動きを可能にする、羽衣も使っていて非常に楽しい。羽衣でつかんだ敵の背後に一瞬で回り込んだり、引き寄せて投げ飛ばしたりできるので、操作に慣れると、かっこいいアクションが簡単にくり出せます。
テクニカルな要素は、羽衣を使ったアクションだけではありません。戦闘システムには、敵の弱点を突ける“攻撃属性”や、敵を一定時間、無防備にする“はじき”といった要素も存在。これらのシステムを使いこすことで、鬼退治を有利に進められるようになります。さらに、強敵に挑んで貴重な素材を入手できる上級者向けの“天返宮”も用意されており、横スクロールのアクションゲーム好きが満足できる内容になっています。
逆に、この手のゲームが苦手な方は、尻込みしてしまうかもしれませんが、どうかご安心を。武技や羽衣を使って戦闘の練習ができる初心者向けの“稽古場”が用意されているうえ、戦闘はメニュー画面からいつでも難易度を変更できる親切設計になっています。横スクロールのアクションゲームが好きな人はもちろん、ふだん遊ばない人も手を出しやすいと感じました。
超本格的な米づくりで農家デビュー!?
ご飯をおかずにご飯が食べられるほど、お米に目がない筆者ですが、さすがにお米づくりは未体験。知識も人並み程度ですが、それでも本作を通して、開発会社えーでるわいすさんのお米づくりにかける情熱を感じました。というのも、本作のお米づくりは、素人目に見ても作り込みが細かくてハンパない! 日本古来の伝統的な手法を取り入れ、ゲーム史上類を見ない深さで作り込まれた稲作パート、という触れ込みにも納得です。
そもそも本作の米づくりのパートは、田植期、育成期、収穫期の3つのパートにわかれています。各パートの目的や仕事内容は、以下の通り。
- 田植期
クワで田んぼを耕して苗を田に植える。高品質の種籾を選ぶ種籾選別と、種籾を苗になるまで育てる種籾の工程も行える。
- 育成期
水やりや草むしりを行いながら堆肥をまく。これらを正しく行うことで、稲がすくすくと育って品質が上がり、収穫量が増える。
- 収穫期
カマを使って稲を刈り取り、稲架掛けで適度に乾燥させる。その後、脱穀や籾摺りの工程を経て米づくりが終わる。
簡単にまとめましたが、いかに工程が多いかわかってもらえるはず。かつてお米はこうやって作られていたのかと、いろいろ勉強になりました。一連の作業を通して、自分のお米をつくれるのも、非常に感慨深いです。
やるからには、誰しもがいいお米をつくりたいと思うはず。ですが、実際の米づくり同様、天候が大きな障害に。事件は、収穫期の稲架掛けのときに起きました。日光を当てて適度に乾燥させる必要があるのに、空模様はあいにくの雨。しかも連日の雨で、お米がぜんぜん乾燥しません……。祈祷で天気を変えればよかったと気づいても後の祭り。この失敗が原因で、最初の米づくりは苦い体験で終わりました。
この失敗を糧に、つぎこそは高品質のお米をつくってやると、プレイのモチベーションになりました。収穫した米の品質・量に比例して、サクナヒメの能力が上昇していくのも、やる気を高めてくれる良システムです。能力の低い序盤こそ、戦闘で無茶はできませんが、サクナヒメが成長するにつれて戦略の幅も広がっていきます。
最後に大事なことをひとつだけ! 深夜にプレイするときは、夕餉のシーンに要注意! 高確率でお腹が減るので、夜食を用意して遊んでくださいね。お米が食べたくなると思うので、個人的にはおにぎりがオススメです(笑)。