発売早々、農林水産省のサイトがどの攻略サイトより役立つと話題に。そして、農林水産省の公式Facebookページに開発スタッフのインタビューが掲載。
おもしろさに加えて、お米との向き合いかたが話題になったゲームがある。説明するまでもないだろう。和風アクションRPG『天穂(てんすい)のサクナヒメ』だ。
『天穂のサクナヒメ』と言えばお米。その米で作るものと言えば何か。
そう、日本酒だ。
『天穂のサクナヒメ』の日本酒が発表。本日予約が始まった。鳥取県の中川酒造とコラボした純米大吟醸である。その名も『天穂(あまほほ) はぐくみ~強き力を~』(以下、天穂 はぐくみ)という。
※お酒は20歳になってから。飲み過ぎには注意して適量で。
※【2022年4月7日 19時24分追記】発表後、すぐに完売となっていましたが、4月8日13時の予約再開が発表されました。また、4月19日には通常販売もスタートします。
※【2022年5月11日 17時50分追記】5月12日(木)12時より数量限定の再販が発表されました。
【お知らせ】ご好評につき売り切れ状態となっておりました #天穂のサクナヒメ コラボ日本酒「#天穂 ( #あまほほ ) はぐくみ~強き力を~」の販売を明日「5 /12(木)12:00」より再開致します。
数に限りが御座いますこと、あ… https://t.co/1zUQdXn1ny
— 酒繋PJ@コラボ日本酒予約受付中! (@saketsunagi)
2022-05-11 17:22:22
『天穂 はぐくみ』はNexusが手掛ける“酒繋プロジェクト”の一環で誕生した。日本発の良質なコンテンツをかけ合わせて新たな商品を開発するというもので、『天穂のサクナヒメ』とコラボしたのは鳥取県の中川酒造。
鳥取県には天穂日命(アメノホヒノミコト)をまつる神社がある。農業や稲作を司る神様だ。『天穂のサクナヒメ』の“天穂”はここから取られたのでは、とも言われている。
コラボ相手としては完璧である。遠いところでつながる伏線回収のような関係に弱いので経緯を伺ったら、米作りゲームと酒造りの間にある運命的なつながりが見えてきた。
ありていに言ってしまえば、エモかった。
サクナヒメとどこか似ている、“強力”という酒米
「サクナヒメ、大好きなんですよ」
取材はこんなひと言から始まった。ご対応いただいたのは、200年近い歴史を誇る中川酒造の中川雄翔さん。
『天穂のサクナヒメ』は今回の話が来る前にクリアーしてました。契約農家様とも「米を作るゲームがあるんですよ」なんて話をしながら、実際の稲作ってどうなんだろうと興味を持つくらい遊びましたね。で、コラボの提案をいただいたら、すぐに「やらせてください」と。
農業の神様が出てくるゲームと農業の神様をまつる神社にほど近い酒造がコラボ。できすぎた話だなーと思っていたら、それどころではない。さらにひとつ要素が加わった。そんなうまい話あるのかよ。
だが、まだ気を抜いてはいけない。ここからとんとん拍子が200BPMで迫ってくるのである。
弊社のお酒と親和性が高いと思ったんです。何か似てるなあと。『天穂のサクナヒメ』はゲームの中でお米や田んぼを復活させていきますよね。
中川酒造もお米を復活させているんですよ。“強力(ごうりき)”と言いまして、昔は鳥取の奨励品種。県から「たくさん作りましょう」と言われるほど優良なお米だったのですが、一度生産が途絶えてしまったんですね。それを35年ぶりに弊社が復活させたんです。
中川さんがサクナヒメに親近感を持つのもわかる。ご家族が似たような偉業を成し遂げているのだから。そして強力という名前がこれ以上ないほどかっこいい。「強力を復活させた」。声に出して言いたい日本語である。
お米にはコシヒカリやササニシキといったいろいろな種類があり、中でもお酒作りに向いたお米は“酒造好適米(通称、酒米)”と呼ばれる。
酒米もたくさん種類があります。いちばん作られているのは山田錦。酒米の王様なんて呼ばれるほど人気があって、それの祖先が岡山の雄町。歴史を辿ると、雄町村(現岡山市中区雄町)の農家様が、鳥取の山から稲を2本持って帰って増やしたのが雄町と言われています。
その頃の鳥取では盛んに強力が作られていた。強力も雄町も歴史の古いお米で、ルーツの近い兄弟や親子くらいの関係らしい。
強力が人気品種に連なるいいお米であることはわかったが、なぜ作られなくなったのだろう。その疑問に、中川さんはこう答えてくれた。
「原因は戦後の食糧難にあります」
社会の教科書みたいなワードが出てきた。戦後の食糧難。
最近のお米は品種改良で背丈を短くするなどして作りやすくなっています。でも、強力はだいぶ長いんですね。米粒は大きくて重い。風にあおられて倒れやすいので、農家様としてはとても作りづらいと。
食料が足りないから、国は「作りやすいお米をたくさん作りましょう」という指令を出す。シンプルな話だ。そんな時代背景にもまれて強力は姿を消してしまった。
平成が近づいてきた頃、弊社の代表は地元のお米で地酒を醸したいと考えるようになりました。そこで、鳥取独自の酒米・強力の種もみ(稲の種)を探したんですが、なかなか見つからない。食糧難の混乱もあって確保することが難しかったんだと思います。
強力の種もみは県にも国にも保存されていなかった。だが、あるとき光明が差した。鳥取大学に試験栽培用のお米がひと握りだけ残っていたのだ。
蔵元の思いに共感した大学教授から提供を受け、強力を増やすために奮闘。そこから2年かけて、ようやくタンクひとつぶんだけ日本酒を作れるようになった。ドラマティックが過ぎる。天穂日命が縁をつないでくれたのかもしれない。
名前に負けないくらいインパクトのある味わいのお酒です。お米を栽培して強い力を身に着ける『天穂のサクナヒメ』と強力。どこか似てますよね。
もはやひとつの食料史である。戦後の食糧難に端を発する苦難を乗り越えた地元食材の復活劇。ドキュメンタリー番組を作ってほしい。
大きくて酒造りに向いている酒米・強力
ところで、僕の実家は新潟県の稲作農家。五百万石や越淡麗といった酒米を作っていることもあり、がぜん強力に興味が湧いてきた。お米としてはどんな特徴があるのだろう。
強力は農薬の有無に関わらず(稲も粒も)大きくなる傾向があります。弊社が使う強力は鳥取県谷津郡の農家様の100%契約栽培。低窒素肥料で低タンパク質な米質を目指してもらっています。ふつうは窒素肥料をあげると米粒が大きくなってたくさん収穫できるんですけど。
この辺の仕組みはたしか週刊少年ジャンプの『Dr.STONE』で読んだ。農家の次男に生まれながら、漫画で農業の基礎を学び、父とは別の専門家からさらなる知識を得る。そういう人生もある。
収量が増える代わりに、タンパク質が出てきちゃうんですよ。タンパク質はお酒の雑味のもと。お酒を作るときはお米を削るんですけど、それは外側にあるタンパク質を取り除くためなんですね。
低窒素肥料にこだわるのは、削らなくてもタンパク質含有量が減った状態にしたいから。雑味の少ないきれいな味わいになっています。
米粒を削る(磨くとも言う)割合は“精米歩合”という割合で表される。純米大吟醸『天穂 はぐくみ』は精米歩合40%で、これは内側40%分を残しているという意味。一般的には精米歩合の数値が小さいほどすっきりした味になりやすい。
お米は削りすぎると割れたり使えるところがなくなったりしてしまう。その点、米粒が大きい強力はたくさん削っても大丈夫(※)。雑味のない内側の部分を使いやすく、日本酒造りに向いている。
※米粒自体が精米しやすい構造になっているなど、ほかにもいくつか理由はある。
とはいえ、雑味がすべて悪というわけではない。複雑な味を活かしたり、あえて磨き過ぎず米っぽさを前面に出すお酒もある。むしろ強力の味を感じてもらうなら、磨きを控えめにする手もあったと思う。
強力を復活させた当時、最初に作ったお酒が純米大吟醸なんですよ。いちばんきれいな味を農家さんに楽しんでもらいたかったようですね。同じような気持ちで、ゲーム好きな皆さんに楽しんでもらいたいと思いまして。
強力の歴史が再び動き出したときと同じものを飲んでもらいたい。なるほど、心憎い演出である。
フルーティー過ぎず、料理に合わせやすい香り
お気づきかと思うが、僕は日本酒好きだ。作りかたにも興味があるので興奮している。読者の皆さんは「ファミ通.comにはゲーム情報が載るはずでは?」という疑問に負けずについてきてほしい。飛ばすぜ。
ちなみに、取材に同席している酒繋プロジェクトの担当者は、
ユースケ「酵母は何ですか?」
中川さん「おもに使っているのは9号酵母です」
ユースケ「9号ですか!」
というやり取りを見て笑っていた。気持ちはわかる。9号酵母に食いつくゲームメディア編集者は見たことないだろうから。
さて、日本酒には味のほかにも重要な要素がある。香りだ。『天穂 はぐくみ』が分類される“純米大吟醸”は香りが華やかな傾向があり、その香りは発酵に使われる酵母によっても左右される。
多くはフルーティーで飲みやすく日本酒ビギナーにも人気の純米大吟醸だが、香りが強すぎると料理の香りとケンカする可能性もゼロではない。
9号酵母は香りがフルーティーになると言われていますね。ですけど、『天穂 はぐくみ』は穏やかに感じられるようにしています。お米本来の香りと味を活かせるように。
祝福のファンファーレが聞こえた。適度な米っぽさがあって香りが穏やかなら料理に合わせやすい。この記事は『天穂のサクナヒメ』がきっかけで日本酒に興味を持った人に向けたいので、尖ったお酒だったら前提が崩れてしまうところだった。ホッとした。
強い味のつまみにも負けない。難しいことを考えなくてOK
さて、そろそろ皆さんが知りたい話題に移ろう。つまみが難しい問題である。
日本酒は種類が多い。味の個性もバラバラ。適当なつまみを合わせたら通から怒られるんじゃないか。そんな不安もあると思う。
だが、ここでも中川さんの回答は心強かった。
「日本酒ほど懐の深いお酒はないと思いますよ。だってお米ですから」
『天穂 はぐくみ』に合わせるなら、日本海の魚介類なんてどうですか? お刺身だったら赤身(マグロなど)とか。あとは……あー、シロイカのお造りなんていいですねえ。
淡白な白身魚のお刺身は鉄板だが、マグロの旨味にも負けないらしい。シロイカはケンサキイカの鳥取での呼び名で、濃厚な甘味が特徴。ということは、味のしっかりした料理にも合いそうだ。
“あごのやき”もいいですよ。トビウオのちくわみたいな鳥取の郷土料理です。子持ちカレイの煮つけなんかも合いますね。
どちらかと言うと濃い味つけよりあっさり目が無難かなーと思っていたが、それは単なる先入観だった。醤油味は全般的に相性がよく、何なら肉料理もありらしい。
原材料がお米なのだから醤油が合わないはずがない。米と醤油。それはまさに日本人の魂である。
元力士の力を借りて、『天穂 はぐくみ』に合う簡単レシピを研究
ここまでのインタビューで1本の記事として十二分のボリュームがあるのだが、気分が高まったのでまだ続ける。『天穂 はぐくみ』のうまさをつまみで引き出そうと思う。
まずは味見だ。すっきりとした口当たりの中に感じるお米の風味。りんごのような品のいい香り。果実感はあるものの甘ったるさはなく、後味がすっきり切れていく。これはいい酒だわい。
最初は「焼き野菜に醤油をかけたら合いそう」と考えた。人気ストリーマーSPYGEA氏の実家はアスパラガス農家なので相談したところ、まだ旬の時期ではないそうだ。残念。
SPYGEA氏とは長い付き合いなのだが、最近は連絡を取っていなかった。久しぶりの連絡が「取材したい」でも「番組に出演してほしい」でもなく「アスパラ売ってくれ」だったことは申し訳なく思う。
※SPYGEA氏の実家で通販サービスを行っているわけではなく、あくまで知人として個人的に相談しました。
いきなり暗礁に乗り上げてしまったが心配無用。プロに頼ることにしたから。
友だちの料理人ドンくん(上写真の左側)だ。何と元力士である。これ以上“強力”の名にふさわしい助っ人はいない。
「あっさり系から味濃い目まで3つくらいお願い。ふだん料理しない人でも真似しやすいやつ」と頼んだところ、店のレシピも駆使して考えてきてくれた。おい、それ大丈夫なのか。偉い人から怒られないのか。
おれはふつうに料理すればいいのね?
うん。調理器具はスタジオのものを使っていいから。頼まれた食材も買ってきたよ。
調味料は大袋のままだと扱いにくいから小分けにしておいた。
粉を小袋に入れるんじゃないよ。
ナスとミョウガの塩昆布和え
【材料(1~2人前)】
- ナス:1本
- ミョウガ:1個
- 塩:少々
- 梅昆布茶:少々
- 塩昆布:7g
- 大葉:2枚
【作りかた】
- ナスとミョウガを縦半分にしてから斜めに薄切り。大葉は千切りに。
- ナスを軽く塩を振って揉み込み、水洗い。水気をよく絞る。
- ナスに梅昆布茶で下味をつけてミョウガと混ぜ、塩昆布を和える。
- 皿に盛り付けて大葉を乗せる。
これでいいの? と不安になるほどの簡単レシピ。調理時間は3~4分ほどで、火も使わない。
コツらしいコツもなかった。塩もみ後のナスを水洗いしたら水気をギュっと絞るとか、野菜を薄く(細かく)切ったほうが食感が柔らかくなるとか、それくらいだ。
目からウロコだったのは梅昆布茶である。僕は料理の下味に使う発想がなかった。家にあるものをささっと使うのは「プロ!」という感じがする。
梅昆布茶は下味をつけるのに便利なんよ。昆布だしと塩と梅の風味があるから。手間をかけて味を調えるのもええんやけど、さっと作るならこれで十分。
すぐにでも食べたいが、まずは調理を優先。この調子でどんどんいこう。
エリンギとちくわのきんぴら
【材料(1~2人前)】
- にんじん:80g(1/2本ほど)
- エリンギ:1/2パック~1パック
- ちくわ:3本
- ピーマン:1個
- ごま油:適量
- 砂糖:15g
- 醤油:20g
- 豆板醤:少々
- バター(マーガリンでも可):5g
- 白ごま:少々
【作りかた】
- 材料を切る。にんじんとエリンギは5mm幅、ちくわも同サイズで縦スライス、ピーマンも縦スライス。
- フライパンでごま油を熱し、中火でにんじん、エリンギ、ちくわの順に炒める。
- ある程度火が通ったら火を弱め、砂糖、醤油、豆板醤を入れ、汁気が少なくなるまで火にかける。
- バターとピーマンを入れてさっと炒め、皿に盛りつけて白ごまを振る。
2品目は和食の定番きんぴらをアレンジした料理。ドンくんとしては日本酒には魚介類のイメージがあるらしく、ここで白身の練りもの(ちくわ)を持ってきた。
にんじんは火が通りにくいのでじっくり炒め、逆にピーマンは半生くらいで食感を残すのがポイントだという。
最初はしっかり辛くしようと思ったんやけど、辛いの苦手な人もおるやん。豆板醤やったら甘辛い味噌みたいなもんやしスーパーでも買える。きんぴらって唐辛子入れたり味噌味にする人もいるからな。ちょうどええやろ。
コンビーフとシャキシャキ野菜でエンドレス白米
【材料(2人前)】
- 玉ねぎ:1/2個
- ニンニク:3片
- キャベツ:1/8個
- ニューコンミート:1缶
- 塩:少々
- コショウ:少々
- 粉チーズ:適量(なくてもOK)
- サラダ油:適量
【作りかた】
- 野菜を切る。玉ねぎを粗みじん切り、ニンニクはスライス、キャベツは厚めの千切りに。
- フライパンにサラダ油を熱し、玉ねぎとニンニクを炒める。
- 火が通ったらキャベツとコンビーフを投入。塩コショウで味付け。
- 火からおろして粉チーズを振る。
3品目はご飯に合うおかずを用意してもらった。ふだんは手順3と4の間で卵を加え、ご飯に乗せて提供しているそうだ。そんなの絶対うまいじゃん。かっ込みたい。
キャベツの千切りが細かいと火が通りすぎるから、ざくざく切るくらいにして食感を残したい。今回はニューコンミート(半分馬肉で脂質控えめのコンビーフ)を使ったけど、肉のパンチがほしかったらふつうのコンビーフにするのもええね。
試食タイムでダークホースが登場
あっさり、和食、濃いおかずとバランスよく3品が出揃ったところで試食タイム。まずはナスとミョウガの塩昆布和えから。
うまい。
たっぷり間を使うな。
口に入れた瞬間、プロの実力を思い知った。お店で食べる味がする。ナスの食感とミョウガ&大葉の爽やかさがいい。素人の適当つまみと全然違う。
そして『天穂 はぐくみ』にもめちゃくちゃ合う。香りの強い食材がないからお酒の香りを邪魔しない。昆布、塩、梅と味の種類が多いのに、口の中でひとつに。こいつら全員野球をやってやがる。
幸先がいい。続いてエリンギとちくわのきんぴら。1品目の梅昆布茶にも驚いたが、今度は豆板醤&バターである。さてどんな味か。
にやにやしてしまった。飲み屋の小鉢として出てきたら完全に当たりである。
何というか、味に奥行きがある。豆板醤の味噌感とバター、砂糖がこれでもかとコクを出してくるのだ。すっきり系のお酒と合わせるのも悪くはないが、それだと少し物足りない気も。強力由来の米っぽさがちょうどいい。
3品目は対ご飯を想定したコンビーフとシャキシャキ野菜でエンドレス白米。
これは『天穂 はぐくみ』の“飲みやすさ”がいい働きをした。
玉ねぎ、キャベツ、肉が入っていて栄養満点なのに味はジャンク。脳をバグらせる味に真正面からお酒の味がぶつかり合うわけではなく、するりといなす感じ。あやうくエンドレス日本酒になるところであった。
満を持して登場する最終兵器・ゲーミング煮豚
3品と『天穂 はぐくみ』の相性がいいことはわかった。最後にもう1品試してみたい。
いきなりえろい画像を出して申し訳ない。お子さんの目をふさいで!
これはプロゲーミングチーム・DETONATOR代表 江尻氏の実家で販売されている尾張煮豚だ。一部界隈では”ゲーミング煮豚”という呼び名で愛されている。
『天穂 はぐくみ』は香り穏やかで米の味を感じられる日本酒。中川さんは醤油系のやや濃い味や肉と合わせるのも悪くないと言っていた。それなら煮豚だろう。
すごかった。理屈は置いておいて「いちばんうまい!」と声に出してしまった。
肉の味という名の剛速球をずばんと受けた後、それを増幅させるかのようにお酒の風味が追いかける。これはあれだ。にくとめしだ。肉を食べると米で追いかけたくなるあの現象はお酒でも起こることが判明した。
“香りが強すぎるもの(カレーとか)は合わせにくい”のような基本的な考えかたはあるものの、日本酒が合わない料理はあまりない。『天穂 はぐくみ』のようにバランスのいいお酒ならなおさらだ。
頭でっかちに考えず、いろいろ試してみるのがおもしろい。ゲームも自分なりの遊びかたを考えるのがおもしろい。感覚的にはほぼ同じである。
米は力だ。酒も力だ。
中川さんから聞いた鳥取県の酒米・強力復活のエピソードは興味深かった。
単純な特性面だけを見るなら、もっとお酒を造りやすいお米もあると思う。ただ、中川酒造が求める味わいは別の酒米では表現できないのだろうし、「地元の食材を活かしたい」という気持ちも理解できる。
おいしいから。売れるから。地元の食の歴史を途絶えさせてはいけないから。そういった欲求や使命とは別次元に存在する何かを、お米は刺激する。それはきっと作り手の本能のようなものだ。
米は日本人の魂なんてよく言われる。多くの日本人はお米に漠然とした愛着を抱いていて、その感情は『天穂のサクナヒメ』の大ヒットとも無関係ではないはず。
『天穂 はぐくみ』で作り手のお米への愛を感じよう。米は力だ。酒も力だ。