皆さん、ゴールデンウイークはいかがお過ごしでしょうか。せっかくのGW、何かおもしろいゲームで遊びたいところですよね。
皆さんは『ペルソナ3 リロード』(以下、P3R)をもうプレイしましたか? 『P3R』はエキサイティングかつ、筆者をノスタルジックな気分にしてやまない作品です。とくに平成中期に学生時代を過ごした方にはあまねく遊んでほしいものとなっていますので紹介させてください。
リメイクされた平成の名作
冠にもなっている“ペルソナ”は、自分の中に眠る“もうひとりの自分”が伝承の神や悪魔、創作上の人物の姿をかたどって出現した、心の姿。インパクトのあるバトルや少年少女たちの成長を描くうえで非常に重要な役割を果たしています。
シリーズの中でも『3』は転換点。実際に日付が進行することで1年間を体験できるカレンダーシステムや人々との交流を描く“コミュ”、ボーカル入りのバトルBGMが印象的なサウンドなど、新機軸が打ち出されました。
これらは後続の作品に多く引き継がれ、弱点を突くことで有利に戦える1MOREシステム、仲間との交流・協力、スタイリッシュなUIなどなど、作品を重ねるごとにシリーズを象徴する要素たちがどんどん洗練されていっています。
そして、2006年に発売されたプレイステーション2用ソフトの『ペルソナ3』を現行ハード向けにリメイクしたのが、『P3R』です。2024年にアトラスの最新技術で蘇った本作は、オリジナル版のクールさはそのままに、遊びやすいようにシステムを調整。シリーズ初体験の人でも楽しめるうえに、“リンクエピソード”のようなファン歓喜の追加要素までも完備しています。
これは“平成中期の生活シミュレーション”だという話
というのも、本作はオリジナル版が発売された2006年からすると少し未来である2009年が描かれているのですが、現在から振り返るとすでに10年以上前の時代。当時を再現した本作をプレイしていると、まるで過去にタイムスリップしたかのような気分になるわけです。
前提として、本作の主人公(=プレイヤー自身)は、昼は高校生として学業や部活に励み、夜は“ペルソナ”の力を持つ仲間とともに戦いへと赴く生活を送ります。
ゲーム的には、プレイヤーは1年間という限られた日数を意識しながら、1日の行動を自分で決めることが可能です。街の施設を利用して自分磨きをしたり、アルバイトをしてお小遣いを稼いだり、友人や街の人々との絆を育んだりできます。
また、プレイを通じて出会う人々とかけがえのない友情を築いたり、ときには恋愛関係に発展したりと、“コミュ”における選択次第で人間関係が変化するのが特徴です。主人公には魅力、勇気、学力の3つの人間パラメータが存在し、相手に踏み込むためには人間的に成長する必要性があることも。こうした要素は、オリジナル版のころから“育成シミュレーション”的な楽しみ方ができる、ひとつの重要なコンテンツでした。
さて、ここで筆者が声を大にして言いたいのは、『P3R』における“平成中期”の描写はひたすら丁寧であるということです。“育成シミュレーション”としての楽しみ方は健在などころか、当時の生活感が大幅に補強されることで、友情・恋愛などすべてをひっくるめた体験が“平成中期の生活シミュレーション”と呼べるまでに昇華しているのです。
なんといっても、作中の登場人物がおもなコミュニケーションツールとして利用しているのは、懐かしさを感じるガラケー(フィーチャーフォン)のメール機能。ここから遠くない未来では、スマートフォンとメッセンジャーアプリに役割を取って代わられるものです。スマホに置き換えてもよさそうなものですが、あえてガラケーを残すあたり、クリエイターのこだわりを感じます。
ゲーム内では関わりのあるキャラクターから、「一緒に過ごさない?」的なメールが送られてくることがあります。キャラクターたちの性格が、メールの件名や本文からにじみ出ているからエモさを感じてしまう。
たとえば、運動部の仲間・宮本一志とのメールでは、件名が“RE:RE:RE:……”のようになっているので、延々と返信メールでやり取りしていることがわかります。絵文字を使わず感嘆符を多用する本文も、熱血体育会系な彼らしい。「無頓着な男同士のメールってたしかにこんな感じだったよなあ」と、思わず感慨にふけってしまいます。
一方で、真面目な性格の子は非常に丁寧な長文を送ってきたり、慣れていない先輩ががんばって絵文字を文に盛り込んでいたり、ハイカラなじいさんや小学生の女の子がしっかりメールを使いこなしていたりと、十人十色の個性を見せてくれるのが楽しいところ。なかには「(屮゜Д゜)屮カモーン」や「(^ヮ^)ノ」「( ̄^ ̄)ゞ」のように、涙が出るほど懐かしい顔文字を多用する人もいます。
現在はLINEなどのメッセンジャーアプリの台頭によって短文でのやりとりが主流になっていますが、件名と本文で構成されるメールはより書き手の個性が光るものだったなと、ガラケーで青春時代を過ごしてきた筆者はプレイ時にしみじみとしてしまいました。
ほかにも、一度訪れたお店のメルマガが配信されたり、チェーンメールが送られてきたり。果ては寮の共有パソコンを使って、アングラな学校裏サイトやマユツバの情報が書き込まれている街の匿名掲示板などをのぞけたり、購入したPCソフトで遊べたりします。
昨今では“平成レトロ”という概念がブームになり、ポケベルのような平成初期のものから多く取り沙汰されていますが、2000年代末・平成中期の文化がこれほど濃厚に味わえるゲームは、現時点で『P3R』以外それほどないと思います。
筆者の個人的な体験をひとつ述べますが、セガから出たPS4、PS3用の名作ソフト『龍が如く0 誓いの場所』(2015年発売)は、バブル景気に熱狂する時代を描いた作品でした。そのとき描かれたバブルの世界は、当時を生きていない自分としては新鮮である一方、ファンタジーや異世界のようにも感じられました。そしてゲームのおもしろさとは別に、年上ゲーマーたちが(程度の差はあれど)懐かしんでいる姿を見て、「うらやましい!」と思ったものです。
そしていま、そんな自分に過去を懐かしめるタイトルが現れたことに、ある種のうれしさを感じています。ついにゲームプレイを通じて過去に思いを馳せ、“懐かしむ”という楽しみ方が自分事としてできる時代が来たのかと。これは平成生まれのゲーマーにとっての朗報だと思うのです。
とりわけ『P3』は少年だった筆者に多大な影響を与えた思い入れ深い作品です。真田先輩のカッコよさに電撃を受けたあの日から10年以上が経ち、さらに『P3R』が過去を懐かしむことの真なる楽しさを教えてくれました。
それではあなたも、新着メールのセンター問い合わせで一喜一憂したり、ふたつ折り携帯電話のかっこいい開き方を模索して無駄な時間を過ごしたりした、あのころの青春時代にもう一度浸ってみませんか? 俺たちの平成が、そこにはあります。
『ペルソナ3リロード』商品情報
- 発売日:2024年2月2日(金)
- 対応機種:Xbox Game Pass / Xbox Series X|S / Xbox One / Windows /PlayStation5 / PlayStation4 / Steam(※Xbox Series X|S、Xbox One、Windows、SteamはDL版のみ)
- プレイ人数:1人
- ジャンル:RPG
- 税込価格:通常版(パッケージ/DL)¥9,680
- CERO :C(15歳以上対象)