世界のゲームファンに衝撃を与えたアドベンチャーゲーム『Life is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』の待望の続編『ライフ イズ ストレンジ 2』。そのソフト発売後、ネタバレを含む『ライフ イズ ストレンジ 2』情報第3弾は、開発を手掛けたDONTNOD Entertainmentからリード・コンセプトアーティストのエドワード・キャプラン(Edouard Caplain)氏のインタビューをお届け。
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リード・コンセプトアーティスト
エドワード・キャプラン氏(文中はエドワード)
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膨大な量になったコンセプトアート†
――『ライフ イズ ストレンジ 2』では、コンセプトアートは何点ほど描かれたのですか?
エドワード 数え切れないほど描きました(笑)。たとえばショーンの部屋、シアトルの郊外など、ゲーム内に登場するロケーションごとに1枚ずつくらい描いていたので、さまざまな場所を旅していく本作では、場所だけでもけっこうな数を描いています。
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シアトルのショーンとダニエルの自宅。傾斜に建てられた家のレイアウトがよくわかる
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――ロケーションは、実際にある場所を参考にデザインを?
エドワード そうですね。『ライフ イズ ストレンジ』では、湾を見下ろせる崖の上にベンチと灯台がある場所が出てきますが、同じように小さい町に三日月型の湾がある場所があって。灯台だけはなかったんですけどね。
――『ライフ イズ ストレンジ 2』ではキャラクターも多いのでデザインもたいへんだったのでは?
エドワード はい。本作では選択によって服装や髪型、顔つきが変化していくので、すべてのバリエーションを含めて描いた結果、すごい枚数になりました。
――エドワードさんは、デザイン全般をひとりで手掛けているのですか?
エドワード いまは数人のチームで描いていますが、『ライフ イズ ストレンジ』の開発初期は大部分を私ひとりで描きました。私はもともとロケーションなどのアートを描くのが専門でした。規模の大きな開発会社だと、ロケーション担当だったり、特定のキャラクターのデザインだったりと、アーティストも分業ですが、『ライフ イズ ストレンジ』ではロケーション以外にも担当することができて、苦労もありましたが、おもしろかったですね。
マックスとクロエ、ショーンとダニエルのデザインコンセプト†
――クロエとマックスのキャラクターデザインについて、コンセプトをお聞きしたいのですが、モデルなどはいたのでしょうか?
エドワード 彼女たちの顔については、いろいろな女優さんの顔のパーツを、これはマックスに合う、これはクロエかな、みたいな感じでモンタージュし、キャラクター性に合うような顔にデザインしていきました。それでもしっくりこないときは、街に出ることもあります。『ライフ イズ ストレンジ』はコンセプトとしてリアルな問題を扱っているので、キャラクターもできるだけリアルにしたいと思っているんです。マックスは5人くらいのコンセプトアートを並べて、ここをこう変えたらイメージ通りになる、みたいなことをみんなで議論して、いまのものに近づけていきました。また、マックスは、どちらかというと閉じていて、シャイなタイプなので、色や服装も地味になっています。なぜ彼女がパーカーを着ているかというと、フードを被ってしまえば、誰とも視線を合わさずに済む、と考えるような性格だと思うからです。マックスのデザインができた後に、対照的なキャラクターとしてクロエをデザインしました。クロエの服装についてはマックスと反対で、オープンな感じにしました。上着も着ていないし、薄着。白いTシャツにいろいろなインクでペイントがしてありますが、あれは白と濃い色のコントラストによって、パンクというか、彼女の激しさを表しています。コントラストという意味では、クロエの青い髪の色もそういった一面を表現しています。
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――ダニエルとショーンのデザインコンセプトについても教えてください。
エドワード ダニエルは、無邪気さ、いたずら好きなところがあり、また、メキシコの血が入っているところもあるので、そういった部分を意識しました。ショーンは、マックスほど引きこもり体質ではないのですが、彼もあまり自分を表現しないタイプの性格です。とくにゲーム序盤は顕著ですね。ですが、メキシコまでの旅でさまざまな出来事に遭遇して、否応にでも変わらざるを得ない、というのがデザインコンセプトとしてありました。エピソード1では森でキャンプをしてどんどんタフになっていき、エピソード3ではキャンプをしているほかの人たちと関わって、髪が伸びたり、ジーンズが痛んできたり、触れ合う人に寄った外見になっていきます。エピソード3の最後に起きる出来事のせいで、エピソード4でさらに大きな変化があって……。ショーンは成長も感じられる変化になるよう、意識してデザインしました。
――エピソード3の最後は非常に衝撃的でした。
エドワード あの出来事は開発当初から決まっていて、彼が着ているパーカーの絵柄に伏線を仕込んでいたりするので、そのあたりも注目してみてください。
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狼のイラストの眼が……
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ホットドッグマン誕生秘話†
――『ライフイズ ストレンジ』の世界で人気キャラクターとして描かれているホットドッグマンですが、あれはどういった経緯でデザインされたのでしょうか?
エドワード 最初にクロエか誰かの部屋をデザインしたとき、部屋の片隅にある棚の上に、適当にグチャグチャっとキャラクターを描いたんです。コンセプトアートとしては部屋の様子がわかればいいので、「ここにキャラクターを置きます」という程度のラフなものだったんですが、その後、モデリング担当から、「ディテイルを詰めたいからどんなキャラクターか教えてほしい」と言われたので、改めてキャラクターを考えたときに、なぜかソーセージが頭の中にパッと浮かんだんです(笑)。
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右はケイトが落書きしたホットドッグマン
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エドワード もしかしたら、私が子どものときに父親が買ってくれた自転車が細長くて赤かったので、それがホットドッグマンのイメージのもとになっているのかもしれませんが、とにかくホットドッグマンができあがって、私としても好きなデザインになりました。そこから、別の場所に貼るポスターとか、「ケイトが落書きをするノートに彼女が描きそうな絵を描いてくれ」とか言われたときに、ホットドッグマンを描いたりして、随所に出していった結果、『ライフ イズストレンジ』の世界の人気キャラクターといった感じになりました。ちなみに、ゲーム内に出てくるマンガやアニメも全部私が作っています(笑)。
――いまや『ライフ イズ ストレンジ』のマスコットキャラとも言える存在にもなりました。
エドワード “ホットドッグマンスーツ”(着ぐるみ)がイギリス、アメリカ、そして日本にもあると聞いています(笑)。
――そのほか、アート面で注目してほしいポイントがあれば教えてください。
エドワード エピソード3でキャンプが出てくるのですが、キャンプをデザインする際、生活感を意識し、調理場や寝る場所、トイレがどこにあって、どういった仕組みなのか、という部分まで議論しました。そういった生活感みたいなものがアートに反映され、そのアートが実際のゲームに反映されているので、ぜひ注目してほしいですね。
――プレイヤーからのファンアートはどう見ていますか?
エドワード ファンアートを見るのは本当に楽しみです。『ライフ イズ ストレンジ』では日本のプレイヤーの方々もさまざまなファンアートを描いてくださったので、『ライフ イズ ストレンジ 2』でもTwitterなどに、アートを載せてくれることを楽しみにしています。