さまざまな珍物件を制作してきたこの連載も今回で最終回(→前回はこちら)。
最終回のニオイを嗅ぎ付けたのか、これまでに物件を作ってきた各地で異変が起きているとのニュースが飛び込んできたので、リポートしに行ってみたいと思う。
オレはようやく登りはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い(略
例の先生(詳しくは第3回を参照→こちら)が作られた地下迷宮の真上にあたる地上では、石のクリーパー像が発見された。頭部だけが地上に露出したのかと思いきや、周囲に大穴が空いており、遥か地下には足元まであるのが確認されている。
現地の住民によると「昨日は、こんなものなかった。何か悪いことの前兆では」とのこと。「多分それは最終回だからだよ」とだけ伝えると、そっとTNT火薬を渡して、その場を去った。
ペンション・シュプール(詳しくは第2回を参照→こちら)の真横には、雪のクリーパー像が姿を現していた。オーナーが明け方ごろに地鳴りを聞いており、チェックアウトしていく宿泊客に「以前、地蔵に笠をかぶせた客はいないか」と尋ねたところ、「TNT火薬をお供えしたことがある」という客がひとり、見つかった。
オーナーの奥さんは「不吉な予感がする」と怯えており、早く撤去作業に取り掛かりたがっていたが、オーナーによると今日は宿泊客が9人も来る予定で、その準備と応対で忙しいのだとか。「まあ、雪像だし、そのうち溶けてなくなりますよ」と話している間にも、さっそく今日の宿泊客が訪れ始めた。3人組のOLのようで、「外のアレ、何ですかー?」「キモカワイイー」といった声を聞くと、さほど不気味がられてはいないようだ。忙しくなってきたようなのでフロントを離れると、ペンションの玄関を出たところで、コートを着てマスクをした宿泊客と思しき男とすれ違った。私も寒さには弱いので、風邪には気をつけなくては……と、小走りでペンションを後にした。
トラップタワー(詳しくは第7回を参照→こちら)の横には、砂でできたクリーパー像が姿を現していた。近づくと頭の中に不思議な声が聞こえる……。「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足の生き物は何か。その理由も答えよ」とナゾナゾを出してきた。
「それは、私だ」と即答する。「ふむ……なぜだ?」と頭に響く声に、私は理由を述べた。
「低血圧なもので、朝はなかなか起き上がれない。四つん這いになって、ウーウーと唸りながら布団から離れようとするので4本足。昼は、なんとか起き上がって歩いているので2本足。夜は、諸事情により股間からもう一本生えてくるので3本足。」
自信のある答えだったが、頭に響く声はウンともスンとも言わなくなった。耳を澄ませると、像の中から何やらシューシューと音がし始めたので、私は急いでその場を離れることにした。
海中トンネル(詳しくは第5回を参照→こちら)や灯台を訪れた観光客が騒ぎ立てている方向を見てみると、海水が噴水のように盛り上がっていた。すでにマイクラスポーツ新聞の記者たちが「海坊主、発見」などという見出しで新聞の号外を売り始めていたが、とくに動き出すような様子もなく、海坊主説は苦しい。記事をよく見ると、「発見」の下に小さく「か?」と書かれていた。
近所の漁師によると、昨晩、夜釣りをしていた際、どこからともなく「ひしゃくを貸してください……」という声が聞こえてきたそうで、ひしゃくがなかったので、代わりにTNT火薬を渡したとのこと。その火薬が海中で爆発した結果、間欠泉でも噴き出したのではとの見方が強まっている。
シーサイドリゾート物件として売り出したが、あまり流行っていないとウワサのマンション(詳しくは第8回を参照→こちら)の横には真紅のクリーパー像が出現していた。
偶然、近くの砂浜でバーベキューをしていた建物リポーターのマイク=ラフトン氏によると、このマンションをリポートした晩、夢の中にこの像と同じ赤いクリーパーが現れ、「あなたが落としたのは赤いフェラーリですか? それとも、金のフェラーリですか?」と問いかけてきたという。なにぶん夢の中の出来事であり、意識がハッキリしていなかったこともあって「糸井重里」と答えてしまったらしいのだが、その翌朝、マンションの横にこれが現れたとのこと。
「ほかの像と違い、頭上に何か浮かんでいるね」と尋ねると、マイクは「返答次第では渡すはずだったものを持てあましてるんじゃないかな……」と興味なさそうに答えた後、焼けたばかりの豚肉を頬張った。
そんな感じで異変が起こっている各地だったが、せっかくなので、連載中では語られなかったボツ物件を少し紹介しよう。
ボツ物件1:倉庫
元々、記事で紹介すること前提で作られた物件ではなく、他の物件を作るための資材倉庫として作ったもの。各物件の制作時は、毎回近くに新しいチェストを設置しているのだが、制作が終わると放置になってしまいがちで、「あれ? ガラス、もうなかったっけ」「それなら○○のチェストにいくつか入ってた気がする」というようなことが多かった。そのたびに各地に確認しに行くのも面倒だったので、「物件制作がひとつ終わるごとに、ここに資材を戻そう」ということにした。この倉庫の存在は、その強い意志のあらわれだが、いまでも各地のチェストにはいろんなものが眠っているという……。
中身が一目でわかるよう、チェストの手前に中身のブロックを配置し、さらにその手前を半ブロックにすることで、入り口からでも何がどこにあるかをすぐ判別できるようにしている。
ベッドが並んでいるのは、フレンドとの共同作業用。
夜間は暗すぎて作業が進まないことがあるので、そういうときはベッドで寝てすぐ朝にしてしまうのだが、3人いるときは3人全員がベッドで眠らなければならない。基本的にはベッドを持ち歩くようにしているが、持っていないときに「とりあえずここに来れば、すぐ眠れるよ」という安心感をご提供。
最初は2階建てだったのだが、必要に応じて増築していった経緯があり、最終的に4階建てになった。3階へのぼると……。
ここは屋上だったのだが、さらに上に階ができたので、なんと呼べばいいかわからない場所になっている。バージョンアップで葉っぱをブロックとして置けるようになったので、植え込みを作成。倉庫の作業員がサボッてタバコを吸いに来るような休憩所の雰囲気を出したかったのだが、予想以上に品の良いものになってしまった。
このころ、第4回(→こちら)の空中庭園で虹を作成していたフレンドがしょっちゅう上から落ちて死亡していたため、「この上にプール作れば安全なんじゃね?」と、屋上からさらに増設開始。
そして、できたのが、このさらに上の4階に位置する……。
屋上プール。
最初、水深は1マスだったのだが、2マス以上ないと落下死を防げないことがわかり、水を増量。結果的に、よりプールっぽくなった。
じつはこの建物、ペンション・シュプールの横に建っており、この近距離で隣は雪、こっちはプールという、季節感の欠如した風景を楽しめる。
このプール、以前はウォータースライダーもあったのだが、距離が短くて爽快感が薄かったことと、「どうせなら、上にある虹のあたりからスライダー作ったほうがおもしろいんじゃないの」ということで、取り壊し。改めて作り直す予定だったが、いつの間にか忘れ去られていくのであった……。
ボツ物件2:プチ世界樹
高さ128までしかブロックを置けないことから、断念したもの。木を植え、その上にさらに種をまいて注ぎ木をしていく要領で、どんどん上に伸ばしていった。微妙に曲がっているところに味がある。
元々は木々に囲まれた海上レストランを作る予定だったのだが、第7回(→こちら)のトラップタワー制作に時間をとられ、工事の途中で頓挫。いまでは海上に浮かぶ不気味な樹木要塞と化しているが、一応、一番上まではちゃんと上れるようになっているので、展望台を作るのもアリかなあと思いつつ、今日に至る。
閑話休題
さて、全10回に渡ってお届けしてきた珍物件たちは、いかがだったろうか。
マイクラ超人たちの手による、PC版で作られた凄まじい物件の数々を見慣れたベテランクラフターにとっては、微笑ましい程度のものだったかもしれない。また、同じXbox 360版ユーザーであっても「なんだ、こんなもの。俺のほうが上手く作れるぜ! ブロックを大量に集めるのがメンドイからやってないけど」と鼻息を荒くする人もいたかもしれない。
でも、できれば、どちらもやったことない初心者にこそ、触れてみてもらいたい。記事で見るのと実際にやってみるのとでは、魅力が全然違う。かくいう私もXbox 360版が出るまでは、PC版の動画などを見ていたが、どういうゲームかの概要をつかむと、「ああ、なるほど、こういうゲームね」と、わかったつもりになっていた。私はXbox 360の実績大好き人間なので「実績プラス、ついでにあの『マイクラ』が遊べるなら、いい機会だし、やってみるか……」という程度の興味で始めたのだが、これまでの10回の記事を見るとわかるように、実績コンプリートした後も、それはまあ、ものの見事にハマッてしまった。やってみて初めてわかる魅力というものが、確かにある。
今後のバージョンアップでは、"クリエイティブモード"の追加が予定されている。これは、すべてのブロックを無制限に使えるもので、いろんな建造物を作りたい人にとっては待ち焦がれたモード。PC版では、すでに導入されている。通常モードだと数的にどうしても不可能な金・ダイヤのブロックを大量に投入した建造物制作や、「作りたいものはあるんだけど、必要なブロックの数が多すぎて、ブロック集めの段階でやる気が……」という人の後押しにもなる。
この連載では、建造物の素材となるブロックは、すべて掘って手に入れた。土や石を集めるために切り崩した山はひとつやふたつではないし、初期状態から比べると地形もかなり変化したが、この変化こそ、『マインクラフト』の醍醐味でもある。
全ブロックが無限に使える状況で、誰が危険を冒して地下空洞の探検に向かうだろうか。あの、恐怖と期待が入り混じったワクワク感。掘り当てた鉱石類を持ってホクホク顔で地上を目指して天井を掘っているときに水が溢れ出してきたときのアタフタ感。せっかく採れたダイヤが10個以上溶岩に消えたりするとマジでヘコむが、それもいつかは、いい思い出になる。変なふうに欠けている山を見るたびに、「ああ、ブロック欲しさに随分と削り取ったな、あそこは」と、思い出がよみがえるのである。クリエイティブモードもいいが、サバイバルモードにも良さがある。
もし、この連載を読んで『マインクラフト』を始めたという人がいたら、このゲームの魅力を少しでも伝えられたということで、こんなにうれしいことはない。白い紙に絵を描くように、何もないキレイな青空に、自由に物件を作ってみてほしい。私も、『マインクラフト』が思い出させてくれたモノ作りの楽しさを忘れないよう、心に留めていきたいと思う。
ふと見上げた空に、そう誓うのだった……。
☆ひみつ道具クイズの答え☆
最後に前回(→こちら)で出題したひみつ道具クイズの答えをお届けするよ!
これはカンタン、タケコプター。
決して外国式の黄色い墓碑じゃないよ。
これもカンタン、地球破壊爆弾。
この写真は撮影角度が秀逸で、画面右側の根元部分が斜めに見えるようになっているため、ミサイルっぽい形を再現できている。縮小したサムネイルで見るとわかりやすいぞ。
これは色にあまり見覚えがない人が多いかもしれないけれど、もしもボックス。
ちなみに、微妙にカラーリングが違うものが多く、場合によって赤だったりオレンジだったりも。
なんとなく見たことあるけど、名前が出てこない……という人も多いかもしれない断層ビジョン。
多分、再現度は今回の中で随一だけど、道具としてマニアックすぎる。元々は地層を調べるための道具なのに、しずかちゃんのお風呂を表示させるという離れ業で読者の心を鷲づかみしたアレ。
今回の中では、おそらく最高難度。エスパーぼうしと見せかけて夢たしかめ機。下部のキャタピラっぽさがヒントになるだろうか……。
数あるひみつ道具の中でも役立たず度が群を抜いているこの品。ほっぺたをつねるための機械なのに、キャタピラ付きで地面を走るのが最高にどうかしてて大好き。次点で、秘密書類やきすて銃のツブシのきかなさも捨てがたい。
さあ、君は何問正解したかなっ!?(学習雑誌調)
とくに景品とか何もないから、舌打ちしながらブラウザを閉じてね! バハハーイ!
■著者紹介 夢崎
ファミ通Xbox 360で実績システムについて書いたり、二次元ドリームマガジン(キルタイムコミュニケーション刊)で変なゲームの記事を書いたりしているフリーライター。何かモノを作るってのは、おもしろカッコイイぜ!