新生スタジオ開発のスピンオフ作品、その完成度は……?

 Xbox 360を代表するレーシングシミュレーター『Forza Motorsport』シリーズ。1作目は初代Xboxにて登場し、以降Xbox 360にてナンバリングタイトルが3作品発売された人気作品だ。
 2012年10月25日発売予定の『Forza Horizon』は、シリーズ直系の最新作ではなく、言うなれば外伝的なスピンオフ作品。また開発を手がけるのも、これまでのTurn 10スタジオではなく、イギリスの若い開発会社、Playground Gamesだ。どのようなゲームに仕上がっているのか、詳しく見ていこう。

行こうぜ、地平線の彼方まで! 『Forza Horizon』先行プレイインプレッション_01
行こうぜ、地平線の彼方まで! 『Forza Horizon』先行プレイインプレッション_02
▲広義的にはレーシングゲームというジャンルに分類される本作。ただし、レース以外の魅力もたっぷり存在する。
▲イベントムービーも多数収録されている。このあたりはナンバリングシリーズと大きく異なるポイントだ。

広大なコロラドを思うままに走り抜けろ!

 本作の舞台は、アメリカのコロラドをモチーフとした土地。ここでクルマと音楽の祭典“Horizon フェスティバル”が開催され、主人公はレースを重ねてトップドライバーを目指すのが大きな目標だ。
 本作最大の特徴は、舞台が広大なマップであることだ。これまでの『Forza』シリーズは、プレイしたいレースを選択してコースを走るというスタイル。だが本作は、広大なフェスの会場を自由に走り、各地で開催されているレースに参加していく。
 気になるマップは、筆者がマップ左下から右上を目指して試しに走ってみたところ、8分ほどで到達できる広さ。道路の大半はガードレールや柵が設置されており、マップ内を自由に走れるわけではないため、探索の自由度はあまり高くはない。その代わり、マップ内で楽しめる要素の密度が非常に高いのだ。

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▲荒野から建物が建ち並ぶ都市部まで、場所によってガラッと変わる景色を楽しめるのも本作の魅力のひとつ。昼夜の概念もある。
▲こちらがマップ画面。全体的な広さは、この2.5倍ほどの面積だ。

 会場のいたる場所に看板があり、これを破壊すると、ひとつにつきアップグレードの費用が1%割り引かれる。また、“掘り出し物”が眠っている小屋もいくつか存在する。この“掘り出し物”とはレアなクルマのことで、見事小屋を発見できれば、エンジニアがレストアしてくれて、クルマをゲットできる仕組み。オープンワールドタイプの作品でよくある、アイテム収集に近い楽しさを味わえるというわけだ。

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▲マップのあちこちにある看板(ディスカウントサイン)。クルマでこれを壊すと、アップグレード費用が安くなるのだ。
▲過去の名車“掘り出し物”を発見できることも。マップには大まかなヒントしか記載されないため、実際にその周囲を探索して見つけ出す必要がある。

 さらに、各地には“アウトポスト”と呼ばれる施設が存在する。一度発見したアウトポストは、有料だが瞬時に移動できるファストトラベル機能も用意されている。アウトポストにはイベントがいくつか用意されており、クリアーするたびにファストトラベルの費用が安くなるうれしい要素も。
 フェスの会場は自分以外の参加者も走行しており、なかにはチャンピオンシップへ出場するライバルも走っている。イベントを行っていない状態、いわゆるフリー走行中にライバルを発見すると、その場でレースを申し込むことも可能だ。

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▲ライバルカー(コンピューター)はクルマの上に名称が吹き出しで表示される。ライバルカーの後ろに張り付いてXボタンを押すと、タイマンのバトルがスタート!

 このように、『Forza Horizon』のマップには明確な目的が多数存在しており、密度の濃いものに仕上がっている。コロラドの美しい景色を楽しみつつ、看板や施設を探して隅々まで調べる探索要素が楽しめるわけだ。
 似たゲームシステムを採用している作品として『テストドライブ アンリミテッド』(以下、TDU)シリーズが真っ先に思い浮かぶが、『TDU』は実在の島をまるごと再現し、ドライブを楽しむというコンセプト。探索も楽しめるが、隠しアイテムを発見するというよりは、実在の建物や美しい景色を探しだす、というゲームスタイルだ。本作とはコンセプトが大きく異なるため、そこの誤解だけは注意したい。どちらかといえば、『バーンアウト パラダイス』のほうが近いかもしれない。

なんと飛行機ともレース!? 個性あふれるさまざまなレース

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▲現在の人気はメニューの“スポンサー チャレンジ”から確認可能。

 ここからはレースについて紹介しよう。レースで入賞するとポイントが得られ、一定まで溜まるとレベルアップし、新しいイベントが解禁されていく仕組み。レベルはリストバンドの色で表される。なお主人公の能力などは存在しないため、レベルが上がってもクルマが速くなったりするわけではない。単にゲームの進行具合を表すものだ。
 主人公にはもうひとつ、人気というパラメーターが存在する。これはチャンピオンシップに参加している250人中、どれだけ人気があるかを表すものだ。ドリフトやパス(ライバルを追い抜くこと)など、格好いい走行を行えばポイントが得られ、一定まで溜まると人気順位が上昇する。ニアミスやドラフティングはチャレンジという扱いで、規定の回数を成功させるとランクアップ。その際、人気が上昇するのみならず、スポンサーから報酬がもらえるという仕組みだ。もっとも人気あるレーサーになることも、本作の目標のひとつだ。

 実際のレースイベントは、とてもバラエティーに富んでいて驚いた。指定されたコースを走って順位を競うオーソドックスなものはもちろん、なかには飛行機や気球など、クルマ以外の乗り物との対戦イベントもある。またゴールを一定以上の速度で走り抜けるもの、指定された場所までできるだけクラッシュせずに行って写真を撮影するものなど、一風変わった走行を楽しめるのだ。このあたりは過去の『Forza』シリーズでは味わえなかった、新しい魅力といえるだろう。

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▲こちらが飛行機とレースするイベント。クルマのMUSTANGと飛行機のMUSTANG、どちらが速いか白黒つけるのだ! ちなみに勝利するとクルマをゲットできる。
▲これは指定された場所へ行き、特定の風景を背景にクルマの写真を撮影するイベント。ちなみに写真撮影自体はフリー走行中にも行うことが可能だ。

 筆者が本作でいちばん魅力的に感じたポイントは、やはりこのレースシーン。『Forza』シリーズといえば、リアルなクルマの挙動を再現することが大きなコンセプトで、本作でもその魅力は引き継がれている。スピンオフ作品といえど、やっぱりクルマを走らせることがいちばん楽しいのだ。
 たとえばカーブを曲がるとき。直前で大きく減速するのはもちろん、カーブを曲がりつつどこまでアクセルをふかせるか、その限界を探るのが非常におもしろい。ふかしすぎるとグリップ力が失われて大きく外側へ膨らんでしまうし、最悪スピンしてしまう。かといって慎重にしすぎると速くは走れない。またコーナーに入るギリギリのポイントで減速しても、グリップ力を失ったままコーナーに突入してしまうので、結果的に早く曲がれないことになる。もちろんクルマが変われば挙動も変わるため、異なるバランスが必要となる。上手に走るためにはとてもシビアな操作が必要となるが、そのぶんうまくコーナーを曲がり切れたときの快感は非常に大きいのだ。このクルマの性能ギリギリを探りつつ運転する楽しさは、筆者が『Forza Motorsport 2』で衝撃を受けたときから少しも色あせてはいない。個人的にはシリーズ最大の魅力だと思う。

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▲いちばんの魅力は、やっぱりクルマを走らせること。本作ではオフロードでのレースも存在する。

愛車をとことんカスタマイズする魅力も健在!

 これ以外にも本作の魅力はたっぷりある。まずはシリーズ最高ともいえるグラフィックの美しさだ。クルマのモデリングはもちろん、コロラドの景色もすばらしい。時間とともに昼夜が変化するため、同じ場所であっても表情を大きく変える。さまざまな角度からコロラドの魅力を楽しめるのだ。ただし、フレームレートがこれまでのシリーズの秒間60フレームから、30フレームに下がったことは少し残念。ただし30フレームといっても、言われなければなかなか気づかないレベルの滑らかさで、さらに描画も安定している。気になる操作感は前述のようにシリーズ譲りのため、ここに違和感を感じることはなかった。

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▲Lamborghini Reventon Roadsterのアップ。タイヤの溝にも立体感があるほど、こだわりの作り込み。

 また多彩な車種が登場するのもポイント。フェラーリやランボルギーニをはじめ、現時点で登場することが判明しているのは120車種以上(http://www.xbox.com/ja-JP/Marketplace/Product/forza-horizon/carlineup)。Ferrari 458 SpiderやPagani Huayraといった最新車種はもちろん、Lamborghini Miura P400などの往年の名車も登場する。おもしろいのは、フラグシップカーだけでなく、Volkswagen Beetleといった大衆車も収録されていることだ。さすがに本編に比べると車種は少ないが、ひとまず満足できるレベルである。
 またシリーズおなじみの、クルマのチューンアップも行える。エアロやタイヤ、ホイール、エンジンから、スタビライザー、ミッション、デフなど、マニアックなパーツも換装可能だ。ただし、パーツ個別のチューニング、たとえばデファレンシャルやキャンバー角の設定などはカットされた模様。クルマをゴリゴリに独自仕様にしたい、という人はナンバリングの本編を遊んでね、ということなのだろう。
 ある意味、『Forza』シリーズでもっとも有名な、クルマのペイント機能もバッチリ搭載されている。本シリーズではクルマに○や△などのステッカーを貼って、車体をドレスアップすることができる。基本的な図形の組み合わせとは信じられないクオリティの絵柄を作り出すことも可能で、一時期ネットで大きな話題を呼んだのは記憶に新しい。本作では『Forza Motorsport 4』からペイントをインポートすることも可能だ。

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▲アップグレードは“ダクのガレージ”という施設で行える。ただし、やみくもに性能を上げるとクルマのPI(速さを表す指標の数値)が跳ね上がり、PIに指定があるイベントに出場できなくなることも。レギュレーションを意識したアップグレードが大切だ。
▲『Forza』シリーズの大きな魅力である、ペイント機能ももちろん搭載。思う存分デコレーションするのだ!

シリーズのファンはもちろん、初心者にも楽しめる仕上がり

 本作はこれまでの『Forza』シリーズから開発スタジオが変わったこともあり、筆者は期待半分、不安半分だったのだが、その期待を大きく上回る完成度だった。ナンバリングシリーズからオミットされている機能もあるが、その代わりに広大な土地を走り回れる、クルマ以外とのレースなど変わったバトルも楽しめるという具合に、ナンバリングシリーズとの明確な差別化を打ち出し、成功している。そして、『Forza』シリーズのキモとなるクルマを操る楽しさは、シリーズ譲り。そんな作品に仕上がっていると感じた。
 また、シリーズ中もっとも初心者向けであることも特筆したい。『Forza』シリーズはリアルなクルマの挙動を再現しているという、一見初心者お断りなコンセプトで制作されているにもかかわらず、じつにさまざまなアシスト機能が用意されている。ABSやTCSなど車体を制御するものから、理想的なコースラインと車体速度を表すマーカー、レースを一定時間巻き戻せるリワインドなど、シリーズとともに機能が追加され、ユーザーの間口を広げてきた。それに加え、本作ではクラッシュに関するペナルティーが大幅に減少している。ナンバリングシリーズではクラッシュすると車体にダメージを受け、クルマの性能が低下していった(設定でOFFにすることも可能)。だが本作では外装が壊れるぐらいで、性能の低下は発生しない。また一般道を走っているようなゲームスタイルではあるが、交通法規は存在せず、事故を起こして警察に追われる、なんてこともない。レース中はもちろん、フリー走行中もクラッシュを気にせずにドライブを楽しめるのだ。前述のパーツのチューニングが削除されたことも、初心者にとってはわかりやすくなったというメリットがあると考えられる。

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▲『Forza Motorsport 3』より登場した巻き戻し機能“リワインド”も搭載。コーナーでクラッシュしても、その手前に巻き戻してクラッシュ直前から再チャレンジ、なんてことが可能。ちなみにリプレイ機能も搭載している。

 今回は発売前のプレイだったため、オンライン機能は触れられなかったが、それ以外にも紹介できなかった要素がたくさんある。ボリュームに関しては十分満足できるレベルといえるだろう。もし本シリーズに興味を抱いたならば、本作をプレイしてクルマをドラテクでねじ伏せる快感を味わってほしい。さらにディープなレースを楽しみたくなったら、ぜひともナンバリングシリーズにもチャレンジしていただきたい。現在、Xbox LIVE マーケットプレースでは、本作の体験版が配信されているので、Xbox 360を持っている人はぜひとも試してみるといいだろう。レビュー中で述べた飛行機との対戦イベントも楽しめる。

■著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360では、海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当していたフリーライター。スポーツゲームはまったく遊ばないが、モータースポーツは別。『Forza』シリーズも(上手くはないが)もちろん大好き!


Forza Horizon
メーカー 日本マイクロソフト
対応機種 X360Xbox 360
発売日 2012年10月25日発売予定
価格 7140円[税込]/リミテッド コレクターズ エディション 8295円[税込]
ジャンル オープンロード アクションレーシング