“MODEL2 COLLECTION”発売に伴い、16年前を振り返る
『ソニック・ザ・ファイターズ』は、1996年5月にアーケードでリリースされたタイトルで、“ソニック”シリーズの21年という長い歴史の中でも唯一の3D対戦格闘ゲームだ。当時セガサターンへの移植が予定されていたが、残念ながら実現しなかった本作が、“MODEL 2 COLLECTION”の作品のひとつとして、プレイステーションネットワークとXbox LIVE アーケードで配信された。
1996年というと、対戦格闘ゲームブーム後半、よく言えば群雄割拠、ぶっちゃけていうと玉石混合な時代だった記憶がある。とはいえ、各社から毎月のように新作タイトルがリリースされていて、ゲームセンターに非常に活気のあった時代だ。3D格闘ゲームは、『バーチャファイター2(ver.2.1)』の人気が圧倒的で、それに対抗すべく各社からさまざまな3D格闘が投入されていた。ナムコ(現バンダイナムコゲームズ)の『鉄拳』シリーズのように、いまでは3D格闘を代表するにまでなったタイトルから、『スターグラディエイター』(カプコン)、『闘神伝』(アーケード版『2』はカプコンからリリース、開発はタムソフト)のように、残念ながら格ゲーブームの衰退とともに表舞台から姿を消したタイトルも。当時は、いまのようにインターネットも発達しておらず、娯楽があふれ返っているという状況でもなかったので、大量の格闘ゲームが登場しても、それぞれにそれなりに時間を割いて楽しむことができていた、ゲームにとってはけっこういい時代。
そんな中リリースされた『ソニック・ザ・ファイターズ』だが、当時は『VF2』のリリースから2年経ち、『3』への期待が高まっていたということもあり、残念ながらそれほど話題には上らなかった。そのためか筆者の通っていたゲームセンターでは、わりとすぐに姿を消してしまったので、ほとんど対戦することができなかったことを記憶している。今回はオンライン対戦に対応しているので、16年の時を経て、ついに気軽に対戦することができるようになった。
初心者向けのシンプルな3D対戦格闘ゲーム
本作は『VF』シリーズを開発しているAM2研が制作していることもあり、基本的なシステムは『VF』を、判定や動きの雰囲気は本作の前年にリリースされた『ファイティングバイパーズ』を踏襲しているといっていい。パンチ(P)、キック(K)の攻撃ボタンとガードに相当するバリア(B)ボタンの3ボタンで対戦を行い、それぞれの入力順や組み合わせでコンボや技が発生する、いまとなってはおなじみのシステムだ。
攻撃を出すとキャラの手足が大きくなったり、ダメージを受けてダウンするとぺちゃんこになってソニックシリーズのダメージ表現でおなじみのリングが飛び散るなど、ディフォルメされた演出が随所に見られ、リアルに重きを置いていた当時の3D対戦格闘と比べると派手な見た目となっている。また、3D格闘で一般的な上・中・下段の読み合いが必要なく、シンプルな対戦が行える。基本は打撃とバリア、投げの3すくみで、そこにP+K+B同時押しで出せる回避が絡んでくる。ある意味『VF3』に先駆けて三次元的な移動が全キャラで可能になったタイトルとも言えるかもしれない。ちなみに回避は、相手の近くで攻撃に合わせて出すと演出付きで後ろに回り込んでくれるのだが、そのあと逆に反撃を受けてしまったりして、筆者の腕ではうまくコンボに組み込んだりすることはできなかった。ファングの銃やビーンの爆弾を回避しつつ反撃するのには重要な行動だし、多分キャラごとに確定反撃技などを見つければいいのだろうが、そこはいまさらながらやりこみ勢に期待したい。このようにそれほど複雑なシステムではないことに加え、ボタンを適当に連打するだけでも状況に応じてコンボを出してくれる“オートマチック”モードも用意されているので、まさに“3D格闘初心者向け”を意識して作られたタイトルだといえるだろう。
本作で特徴的な点にバリアの存在が挙げられる。それぞれのキャラクターは対戦開始時に5つのバリアを持っていて、特定の攻撃をガードすると破壊され、すべてなくなると攻撃を一切ガードできなくなってしまう。バリアを破壊できる攻撃は、総じて隙が大きいので反撃は比較的容易なのだが、バリアの残り数はラウンド持ち越しなので、後半ラウンドで逆転されることも。また、一定時間技の硬直が短くなる“ハイパーモード”を発動するのにもバリアを1個消費するので、ラウンドごとではなく3本先取の全体の流れを考えながら闘う必要があるのだ。上・中・下段を廃していることに対するフォローの意味合いもあるのだと思うが、このシステムがスパイスとなっていて、意外と(失礼!)幅広いレベルのプレイヤーが楽しめるのではないだろうか。
全員知っている人は“ソニック”マニア(?)な登場キャラクター
使用できるキャラは全部で8人。ソニックはもちろん、テイルスやナックルズ、エミーといった現在の『ソニック』シリーズでおなじみのキャラから、ファングやエスピオ、ビーン、バークといった、ちょっとマニアックなキャラも登場する。またファングはゲームギアの『ソニック&テイルス2』に、エスピオは『カオティクス』(スーパー32X)での初登場以降、『マリオ&ソニック』シリーズ(Wii/NDS)、『ソニックジェネレーションズ 白の時空』(PS3/Xbox 360)など、さまざまなタイトルで見ることができる。 ビーンとバークは、『ソニック』シリーズでは本作にしか登場していないオリジナルキャラで、アメコミ版“ソニック”にはたびたび出演している、ある意味レアなキャラクターだ(ちなみにビーンは、1988年にアーケードでリリースされた横スクロールアクション『ダイナマイトダックス』のキャラクターが元になっていたりする)。全キャラを詳しく知っている人は相当の“ソニック”マニアではないだろうか。
またメインの8人に加えて、PSN/XBLA版ではアーケード版にはなかった隠しキャラ“ハニー・ザ・キャット”がいる。“ハニー・ザ・キャット”はアーケード版のデータ内に存在していたボツキャラクター。その存在自体はファンのあいだでは知られていたものの、実際にプレイすることはできなかったので、今回PSN/XBLA版で初めて日の目を見ることとなった。その見た目からわかるように、『ファイティングバイパーズ』の“ハニー”がベースになっている。同じく隠しキャラとしてボスのメタルソニックとDr.エッグマンも使用可能だが、3キャラともランクマッチでは使用することができないのが残念なところだ(プレイヤーマッチやオフライン対戦では使用可能)。とくにメタルソニックとDr.エッグマンは敵として登場するそのままの性能で、ちょっと強すぎるため当然かもしれないが、性能を調整するなどしてランクマッチでも使用できるとうれしかったところだ。
懐かしさを噛みしめながらプレイするべし
『VF』、『鉄拳』によって3D格闘が脚光を浴びてはいたものの、それまでスタンダードだった2D格闘の考えかたが通用しないこともあり、二の足を踏んでいたプレイヤーがいたことは事実。そういう人たちにも門戸を開くという意味では、『ソニック・ザ・ファイターズ』と本作の直前にリリースされた『バーチャファイター キッズ』がかなりがんばっていたのではないかと、久しぶりにプレイしていると当時のことがぼんやりと思い起こされてきた。そういう意味では、1996年当時ゲーセンでプレイしていた人や、気になっていたけど近所のゲーセンに入荷せずに遊べなかった人などにおすすめ。本作そのものの思い出だけでなく、当時のことを思い起こすトリガーとして利用してみるのはいかがだろうか。
なにぶん古いうえ、正直対戦格闘ゲームとしてはマイナーな部類に入るので、オンラインでの対戦相手はそれほど多くはない。しかし、MODEL 2 COLLECTIONの移植チームが中心となって、対戦イベントなどの開催を考えているそうなので、年末に向けて盛り上がりに期待したい。
なお実績/トロフィーはオフラインのみで達成可能で、達成難度も低い。同時にリリースされた『VF2』や『ファイティングバイパーズ』と比べても、CPUの難易度が低めなぶん、3D格ゲーに慣れていない人でもすぐに解除できるだろう。実績/トロフィーマニアの方にもオススメの逸品だ。
■著者紹介:黒鉄タカスエ
業界の隅っこで細々と活動しているライター兼編集・デザイン屋。当時は『OMG(電脳戦機バーチャロン)』、『ミスタラ(ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ)』あたりをやっていた記憶が。16年でゲームもずいぶん変わったものです。
ソニック・ザ・ファイターズ
メーカー | セガ |
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対応機種 | PS3プレイステーション3 / X360Xbox 360 |
発売日 | 2012年11月28日(ダウンロード配信) |
価格 | PSN版:800円[税込]/XBLA版:400MSP |
ジャンル | 対戦格闘 |