なぜローカライズが必要なのか?
世界中のゲーム開発者が集い、最新技術やゲーム制作の過程などを解説、紹介する国際会議“GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2013”が、現地時間の3月25日~3月29日の期間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催された。この記事では、ゲームにおけるローカライズの必然性をテーマにした講演をリポートする。講演を行ったのは、ゲームのローカライズを始め、テストやマーケティング、PR、音楽など、ゲームに関するサービスを幅広く手掛けるU-TRAX社の社長、リチャード・ファン・デル・ギーセン氏。
この講演は、ゲームが英語で作られることを前提に、ローカライズの必然性を科学や数字、常識などの見地から解いていく、というものだ。
まずは、興味深い数字の話から。そもそも、英語が話せる人は、世界にどのくらいいるのだろう? 英語ネイティブスピーカーの数は、言語のランキングで言うと、中国語、スペイン語に次ぐ3位だが、全人口で見れば5%に過ぎないらしい。欧州で見れば、人口7億3900万人中、6000万人だけになる。さらに、第2言語として習得している人が、全人口の5%。外国語として習得している人が、全人口の10%。
つまり、人類のうち80%は英語を話さない(話せない)とリチャード氏は言うのである。
続いて、なぜ人類は英語を理解できないのか、という話題になる。言語系としては、英語とオランダは姉妹のような関係で、スカンジナビア語とは従兄弟のようなものなのだそうだが、ではオランダ人とスカンジナビア人が英語が分かるかというと、答えはNOになるという。ちなみに、赤ん坊は、13ヵ月あれば母国語に対して“耐性”がつき、発音に多少の違いがあっても、理解できるようになるらしい。しかし、これは母国語であれば、という条件つきで、母国語以外の言葉は、少しでも発音が違うと、まったく新しい単語に聞こえるのだという。
リチャード氏は、より具体的な数字を提示する。ゲームのローカライズ版の売上というものは、全体の売上の33%~70%にもなるという。これだけでも相当驚くが、GDC2009でのEAの講演では、ロシアに対して英語版しか提供していなかったところにローカライズ版を用意したところ、150%~900%の売上増加が見られたいう報告もあったのだそうだ。
いまや、あらゆるものがローカライズされる時代。ゲームは老若男女が遊ぶものとなり、ビジネス的な成功を考えるのであれば、ローカライズを避けては通れない。5年前とは違い、「ゲームの音声は、英語が超クール」みたいな時代は終わったと、リチャード氏は言う。しかし、ここでひとつ問題がある。それは、ローカライズの品質だ。ワールドワイドでゲームを展開し、かつ成果を上げるには、“良質”なローカライズが必要になるということは、間違いないだろう。