改善すべき点は多いのだが、それよりも体験が新しすぎる!
E3期間中に出会える掘り出し物は、何もE3会場の中だけにあるとは限らない。というわけで会場周辺のホテルにて、ある意味究極のVRゲーミングデバイス“Omni”を体験してきた!
Omniは、ゲーム世界の中を“歩く”ためのデバイス。Omni用のシューズを履いて土台の上に乗って歩くと、Kinectでそれを検出して、ゲーム世界内の移動として検出してくれるのだ。
今はクラウドファンディングサイトKickStarterで出資募集中。日本時間の7月23日午前11時まで募集している。
滑りやすい床でムーンウォークの真似をしたことが誰でもあると思うけど、Omniはアレをすり鉢状の土台でずっとやっているようなもの。360度歩いたり走ったりできるが、ズッコケたりしないように、腰にサポーターをしなければならない。
というのもOmniは、Oculus社のVRヘッドセット“Rift”と一緒に使うのが基本なので、視界が遮られちゃってるから、高速にガシガシ足を動かすとふとした瞬間に転倒しそうになったりもする。だから姿勢が崩れても大丈夫なように、サポーターを腰部のリングにひっかけて遊ぶのだ。
そんなわけで結構いろいろ用意しなきゃいけないもの、装着しなきゃいけないものが多いんだけど、Omni+Riftでのゲーム体験(ゲーム本体はPC版)にはそれだけの価値がある。頭の動きに視界が追従し(Rift)、足の動きに応じてちゃんと世界の中を移動できる(Omni)という、全身で没入する究極のVRゲーム体験ができるのだ。
結構疲れる……けど楽しいぜ!
こういった機器はシミュレーターなどの実験的なプロジェクトでは存在したが、一般に買えるような値段ですべてを揃えられるというのがOmni+Riftの新しい点。
では実際乗ってみてどうだったのかというと、やっぱり世界に全身で飛び込めるというのは、ただゲームをやるのとはまったく違う感じで、ゲームだったら目標優先でダッシュ&ダッシュで急いだりするけど、例えばデモで遊んだ『ハーフライフ2』なら、あの“City 17”をゆっくり歩いて探索したいという気分になってくる。FPSではやることが忙しい感じになっちゃうので、いっそ一人称視点の戦闘なしのアドベンチャーゲーム、中でも景色が印象的な『Dear Esther』あたりを遊んでみたいところ。
とはいえ、Omniはまだまだプロトタイプなので、いろいろと改善すべき点がある。以下に気になった部分とともにまとめてお伝えしよう。
■慣れが必要
ビデオではガシガシ走っているし、実際Goetgeluk氏がそうプレイしているところも見たのだが、あの動き方をマスターするにはちょっと時間がかかる。歩きはまだしも、特に走りは腰の位置をあまり変えずに走るというテクが必要で、ちゃんと止まるのも意識してやらないと、止まってるつもりなのに足が微妙に斜面からずり落ちてしまっていて“動いている”判定になってしまったりする。
というわけで現状では、「これをアミューズメント施設などに置けば一攫千金……」というわけにはなかなかいかない……15分のレクチャータイムを設けるならまだしも。
もっとも、こういった問題のいくつかはKinectの進化や、それ以外に使えるセンサーを増やすといったOmni側の対応によって改善する可能性がある。
■まだまだプロトタイプである
例えば現場にあった腰のベルトはGoetgeluk氏に合わせたものになっており、記者の身長にはちょっと合わず、まっすぐ立てばベルトが宙ぶらりん、サポート部分に合わせようとするとしゃがみ歩きみたいな無理な姿勢になってしまう(「ベルトを使わないでプレイする?」と言われたぐらい)。
要するに、Omniの土台そのものも、ベルトも、シューズのソールも、まだ製品としてのバージョン1ですらないので、今後の改善や製品化による強化に期待するしかない部分は多々ある。検出が甘い部分があるのは、Goetgeluk氏としても改善して行きたい部分とのこと。
■Rift固有の問題
OmniはRiftと組み合わせることで最大の効果を発揮する。しかしRiftに起因する問題もあって、例えばプレイヤーがOmniの上で回転をずっとしていると、Riftのケーブルが体に巻き付いていってしまう。これは上から垂らせばある程度解決するが、そのほかにも現状のRift+VRを想定していないゲームでは、まだまだVR酔いしがちであるといった部分も、今後の課題と言えるだろう。
■それなりに疲れる
Omniを紹介した際に「痩せそう」というコメントを見たが、実際結構カロリーを消費する感じ。それだけなら「痩せていいじゃないか」って話だけど、問題はゲームのテンポやマップのサイズはそんなにゲーマーの運動能力を意図して作ってないってことだ。
「走っても走っても全然キリのいいところにたどり着かない」といったことはフラストレーションにもなるし、体験としてはよくてもゲームとしていいことなのか判断が難しい。
かといってチャチなVR用世界じゃない、ものすごい予算がかかったゲームの世界に飛び込めるのがOmni+Riftのいいところなので、VRを想定したゲームの登場を想定するのもまた微妙。
……と、ぐちぐち言ってる感じになっちゃったが、基本的には体験としての面白さはかなり斬新で、ビデオゲームとはちょっとベクトルの違う楽しさが体感できることは保証できる。もしかするとOmniはゲーム世界を歩くVRの実現方法として最適解ではないのかもしれないが、(でかいけど)自宅で実現可能な選択肢が登場してきたことそのものに期待したい。
ちなみに日本で買えるのか問題については「中国で生産するのでいい発送オプションがないか検討中」とのこと。