伝説のメンバーがTGSで同窓会!

 2013年9月19日より開催されている、東京ゲームショウ2013。一般公開日初日である、2013年9月21日にスクウェア・エニックスブースの特設ステージで行われたトークイベント、“スクウェア・エニックス ミュージック コンポーザー スペシャルトークショウ”の模様をお届けしよう。

 週刊ファミ通の編集者、世界三大三代川が司会を務めたこのイベントでは、元スクウェア・エニックスの人気コンポーザー(作曲家)伊藤賢治氏、光田康典氏、下村陽子氏を迎えて、スクウェア時代の思い出からお互いの思い出に残る楽曲など、アツいトークがくり広げられた。イベントの最後には、3人ともゆかりのある大物クリエイターからのビデオメッセージも!

元スクエニのコンポーザー3人がぶっちゃけトーク!【TGS2013】_01
▲こうして3人が揃って集まるのは、どういうわけかこれまでほとんどなかったとのこと。思わぬ形で同窓会が実現したことになる。

 最初のテーマは、入社当時の印象やエピソードについて。1990年にスクウェア(当時)に入社した伊藤氏は、初日はスーツでビシッと決めていったら、周囲はスーツどころか迷彩服で出社しているような人もいて、驚いたという。その2年後には光田氏が入社。当時の面接官は植松伸夫氏らが務めていたらしい。さらにその翌年には、下村氏が転職という形で入社する。当時はサウンドチーム初の女性ということで、「開発陣が全員見に来ていましたね」(光田氏)というほどの大騒ぎになったらしい。また、3人がいた当時(1995年)の秘蔵写真も公開され、若き日の伊藤氏のイケメン振りに会場もどよめいていた。

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▲旅行で撮った1枚だとか。このとき、光田氏は雪が降るかもしれないと“3分で装着できるチェーン”を買っていったが、なぜか“30分かけて、手を血まみれにして”ようやく装着できたらしい。
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▲気心知れた仲でもあり、終始笑顔が絶えないトークとなった。

 その当時の印象を聞かれ、光田氏は「イトケンさん(伊藤氏のこと)は、当時はすごくまじめだったんですよね」と答え、すかさず伊藤氏が「当時は……って、いまは違うってことか!」と憤慨し、会場は爆笑。伊藤氏によると、フリーになって他人との壁を作らないようにしたら、こうなってしまったのだとのこと。そんなふたりに、下村氏は「年齢は私がいちばん上なんですが、転職したてで緊張していた私に、ふたりともよく気を遣ってくれていたと思います」とフォローするなど、初のトリオ出演とは思えないような息の合ったチームプレーを見せていた。

 さらに、上司だった植松伸夫氏との思い出話や、それぞれを代表することとなった作品とどのようにして巡り合ったのかなど、つぎつぎと話題が展開。伊藤氏は、本当は『ロマンシング・サガ2』ではなく『聖剣伝説2』を希望していたこと、光田氏が『ロマンシング・サガ2』で伊藤氏と共同作業をする中で、伝説の“ひらめき”の効果音を生み出したこと、そして入社当時の下村氏が作った効果音は光田さんに「センスないね」と言われてしまっていたことなど、いまだから言えるぶっちゃけトークに会場は笑いが途切れることはなかった。

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▲多数のファンがステージに集結し、3人のトークを楽しんだ。
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▲遠慮仮借ない暴露を続ける田中弘道氏。現在はガンホーに所属しており、その立場を活かした営業トークで会場を沸かせた。

 さらに、サプライズ企画として、現ガンホー・オンライン・エンターテイメントの田中弘道氏(『ファイナルファンタジーXI』などを手掛けた)からのVTRコメントが到着。クラシックを愛する伊藤氏が当初、プログレッシブ系の音楽が好きな植松氏、菊田裕樹氏(『聖剣伝説2』などを手掛けた)らに挟まれて音楽的にイジメられていた話や、光田氏が根を詰め過ぎて救急車で運ばれた話、下村氏とはあまり面識はないが“ゲムラー”と呼んでいた話など、思わぬ暴露トークの連発に3人もタジタジだった。さらに、3人へのメッセージを求められ、光田氏へ「今度飲みに行きましょう。折り入って話があります」と、含みのある(!?)言葉を残すなど、最後まで皆を笑わせていた。

 続いては、3人がお互いの好きな曲を披露。

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 伊藤氏の曲では『聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~』『Rising Sun』を挙げた下村氏。悲しい曲なのに心が洗われる、美しいメロディーに感動したと言う下村氏は、「(伊藤氏は)じつは心のキレイな人なんじゃないかと思いました」と見直していた。「じつは……?」と、多少引っ掛かっていた伊藤氏は、下村氏の曲では『パラサイト・イブ』の『Primal Eyes』をチョイス。それまで、力強く男らしい曲を書いてきた下村氏が、繊細で美しい楽曲も生み出せることを高く評価していた。ちなみに、伊藤氏は『聖剣伝説』での思い出として、「(当時の)石井浩一プロデューサーが、楽曲を聴いてホロっとしているのをみて感動したことがいい思い出」というエピソードを紹介してくれた。また、光田氏は、みずからの曲では『ゼノギアス』の『最先と最後』をお気に入りに挙げ、「いろいろな人と作り、いろいろな力を与えてもらった思い入れのありすぎる曲」とその理由を語っていた。

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 さらに、お互いを評価する(ホメ合う)イベントへの感想を聞かれると、「当時は心の中で思っていても、そういう話はしなかった」(光田氏)「当時は感想を聞いたら負けだと思っていた」(下村氏)といった答えが聞かれ、プロとしてのプライドを垣間見られることができた。

 今後の活動予定を告知するコーナーでは、伊藤氏が“Re:Birth”の再演を2014年1月に開催予定であることを発表。下村氏も「野望として」コンサートをやりたい、と語っていた。来年の再会を希望していた3人だが、とくに下村氏は「つぎはビールかシャンパンを用意して置いていただけるとうれしいです」と、力強いメッセージを残し、楽しいイベントを締めくくっていた。

(取材・文:ライター/ギャルソン屋城)