『ストリートファイター』シリーズと人気コミックの共演
2013年12月28日(日)、東京吉祥寺のプラサカプコン吉祥寺店で、『ストリートファイターII』対戦イベント“一番強いのは俺だ!! トーナメント”が開催された。その様子をリポートする。
これは90年代のアーケードゲームシーンを舞台にした人気コミック『ハイスコアガール』(押切蓮介 作画/スクウェア・エニックス刊)の最新刊5巻発売を記念したイベント。劇中でふんだんに登場する対戦格闘ゲームの元祖的タイトル『ストリートファイターII』(以下『ストII』の対戦シーンにちなみ、現代のゲームセンターで同作のガチンコ対戦をするというものだ。
カプコンと『ハイスコアガール』公認のイベントとあって、当日は大会だけではなく、2014年4月に稼働を控える最新作『ウルトラストリートファイターIV』(以下『ウルIV』)の特別ロケテストや、当日限定のオリジナルピンバッチが手に入るプライズがあり、こちらも行列が絶え間なく続くという大盛況振りだった。
1991年の“あの熱気”が吉祥寺で再び!
メインイベントは『ストII』の32人トーナメント。俺より強いやつと会いにきた“(自称?)猛者”たちが開店前から行列を成して、あっという間にエントリー定員に達したとのこと。
1991年に稼働が始まった『ストII』は、同キャラ対戦が存在しなかったり、強キック一発で相手の体力が必要以上に減りすぎる(?)など、黎明期の格ゲーならではの“おおらかさ”があるのがミソ。大会は有名なバグ技である“真空投げ”やハメ技などもOKの“なんでもアリ”ルールで競われ、マンガ同様の90年代初頭の対戦シーンが時を越えて甦ったかのよう。
決勝戦は“セロテープさん”選手(ザンギエフ)と“ゆりっち”選手(ガイル)という、主人公ハルオとヒロイン大野晶の出会いとの対決をほうふつとさせる、このイベントらしい組み合わせに。
接近や跳び込みのタイミングにサマーソルトキックを狙うガイルの通称“待ちガイル”戦術や、しゃがみ弱キックや立ち弱キックで相手を封じて大ダメージの投げ技スクリューパイルドライバーを狙うザンギエフという、ある意味『ストII』の伝統芸がつまった見応えある一戦になった。激闘の末に勝ったのは“ゆりっち”選手! 優勝者を始めとした上位入賞者にはなんと押切蓮介先生の原画や描きおろしイラスト、オリジナルTシャツというスペシャルな商品が提供された。
その後は、来場者20人が主催側のプレイヤーに挑む組み手“『ストII』20番勝負”も開始。途中から、この日会場にいた『ハイスコアガール』の作者、押切蓮介先生も主催側のひとりとして急遽参戦! 対戦のたびにキャラクターを変えて、『ストII』愛溢れる“魅せるプレイ”を披露。対戦者にはラッキーな体験となった。最後には、最後はサービス精神たっぷりの押切先生の要望でエキシビジョンマッチも開催。大きく盛り上がった。
『ウルIV』×『ハイスコアガール』のコラボが発表!
そして、この日会場に集まったファンにうれしい出来事はこれだけではなかった。
イベントの幕間に、カプコンの綾野アシスタントプロデューサーが登場。『ウルIV』と『ハイスコアガール』のコラボレーションが決定というニュースが発表されたのだ!
コラボレーションの一環として、押切蓮介先生描き下ろしによるザンギエフと『ハイスコアガール』のヒロイン大野の『ウルIV』キャラクターアートを会場で初公開。このサプライズに会場は大きな拍手に包まれた。会場で、このコラボレーションについて押切先生と綾野氏に直接お話しをうかがう機会に恵まれた。本記事末のインタビューをぜひご一読していただきたい。
自身も対戦格闘ゲームの熱心なプレイヤーである押切蓮介先生も、終始笑顔を見せて楽しんでいたこのイベント。『ハイスコアガール』の世界そのままに、俺より強いやつと腕を競う格ゲーの“あの興奮”にすべての来場者が熱くなったひとときだった。
押切蓮介先生&綾野アシスタントプロデューサー 特別インタビュー
この日会場に駆け付けた『ハイスコアガール』の作者、押切蓮介先生と、カプコンの綾野智章アシスタントプロデューサーに直撃インタビュー! イベントの感想やコラボイラストの秘話をおうかがいした。
初のゲーセンイベントに感激!
――イベントは大盛況ですね!
綾野智章氏(以下、綾野) ご多忙の身にもかかわらず会場まで駆け付けてくださって、押切先生には本当に感謝ですよ。
押切蓮介先生(以下、押切) いえいえ。漫画家って普段は仕事場にこもって絵を描いてばかりの日々ですからね。ゲームセンターでこのようなイベントを開催してくださったことは、漫画家として本当に光栄なことです!
――このイベントのために描かれた会場案内マンガ(→こちら)からも、押切先生の並々ならぬ思いが伝わりましたよ。
綾野 まさかの衝撃的なオチでしたが(笑)
押切 僕のキャラクターがちょっといけ好かない感じなんですよね。ちょっと調子に乗ってしまいましたという気も(笑)。
――今日は開店前から参加者の列ができていたそうですね。
押切 僕は以前から会場の店舗にはよく来ていて、メダルゲームや格ゲーをプレイしていました。ですから、今日ここで自分の作品のイベントが開催されるのは本当に感慨深いですね。始まるまでは、イベントが場にそぐわず、閑散としていたらどうしよう?……とちょっと不安でしたよ。
――単行本最新刊が発売(12月25日発売)されたばかりでもありますね。
押切 ええ。とてもいいタイミングでイベントを開くことができました。昨日もニコニコ生放送で初めてプロゲーマーのウメハラさんとお会いしてお話をさせていただきましたが、格ゲー界ではまだ下っ端なので、緊張して何も話すことはできませんでした(笑)
――いえいえ! マンガで格ゲー界を応援してくれる非常に頼もしい存在ですよ。
綾野 じつは押切先生は『ヴァンパイア セイバー』のガチプレイヤーなんですよ。
押切 『ヴァンパイア リザレクション』(PS3/Xbox 360)でそれこそ毎日ネット対戦しています。たとえ1戦でもランクマッチをやらないと1日が終えられないというくらいに(笑)。
――今後ももっと格ゲー界を盛り上げてくださいよ!
押切 僕もそのつもりでがんばりますよ。いつもちょっとカッコつけて言っている言葉ではあるのですが、格闘ゲームの制作者が感動する作品を作っていきたいですね!
ザンギエフ×大野のコラボレーションイラストについて
――今日発表された『ウルIV』と『ハイスコアガール』のコラボレーションはどのような経緯で始まったのでしょう。
綾野氏 『ストリートファイターII』を取り上げてもらっているマンガということで、以前から執筆段階からゲームに関する部分で協力をしていました。やがて、この物語の世界に引き込まれていったのです。
――綾野さんは監修を担当されているのですね。
綾野氏 ええ。劇中のガイルが「ファネッフー」と叫んでいて最初は「何だろう?」と思っていたのですが、ボイスの「ソニックブーム」が空耳でそう聴こえているのだと気付くのに時間が掛かりましたよ! 今ではこの「ファネッフー」がファンにおなじみのフレーズですからね。あのとき修正を依頼しないで本当によかったな、と(笑)。
押切氏 僕としてはゲーム部分だけでなく、マンガの恋愛要素の監修もしていただいても構わないと思っていますが(笑)。
綾野氏 それは無理です(笑)。
――今回のコラボはそのようなマンガ制作時の協力関係をきっかけにして始まったということなのですね。
綾野氏 そういうことです。2014年4月に稼働開始予定の『ウルトラストリートファイターIV』を盛り上げていくために、先生にコラボレーションのイラストを依頼させていただきました。今回はビジュアルの発表だけですが、このイラストをどのような形で皆さまへお届けするかについては、後日発表させていただきます。
――楽しみですね! イラストの秘話があったら教えてください。
綾野氏 気付かれた方もいらっしゃるかと思いますが、背景はザンギエフの公式イラストのものです。先生から頂戴したイラストはキャラクターのみだったのですが、ザンギエフのポーズが公式イラストとそっくりだったので、試しに背景を置いてみたらバッチリ決まったのです。
押切氏 ザンギエフと、劇中で屈指のザンギエフ使いとして活躍する大野晶を一緒に描くとしたら、こういう構図しかないのかな、と(笑)。ですから、大野が腕に乗っています。ちょっと上から眺めた雰囲気で描いてみました。
――今後の展開に期待します! 今日はお忙しい中ありがとうございました。