メサイヤブランドに懸ける並々ならぬ情熱

 2014年11月、エクストリームが日本コンピュータシステム“メサイヤ”の全ゲームソフトの著作権を獲得。“メサイヤゲームス”として、家庭用ゲーム機向けタイトルを開発中であることを明らかにした。今回その第1弾タイトルがニンテンドー3DS用『ラングリッサー(仮題)』となることが判明。そのいきさつなどを、エクストリームの代表取締役社長CEO 佐藤昌平氏とディレクター齋藤創志氏に聞いた。

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老舗ブランド・メサイヤが家庭用ゲーム機に復活! エクストリームのキーパーソンに聞く_05

エクストリーム 代表取締役社長 CEO
佐藤 昌平氏(写真・左)

エクストリーム チーフデザイナー/ディレクター
齋藤 創志氏(写真・右)

■メサイヤとは?
 日本コンピュータシステムが展開したゲームブランド。1980年代よりPCエンジンやスーパーファミコンなどの家庭用ゲーム向けに、『超兄貴』シリーズや『ラングリッサー』シリーズ、『重装機兵』シリーズなどの話題作を続々とリリースし、絶大なる人気を博した。なお、メサイヤというブランド名の由来は、当時日本コンピュータシステムの社長だった藤田雅也氏の名前である“雅也”( MASAYA)から取られている。

メサイヤはゲームファンのためのゲームを作るブランド

── エクストリームがメサイヤブランドを復活させるに至った経緯を教えてください。

老舗ブランド・メサイヤが家庭用ゲーム機に復活! エクストリームのキーパーソンに聞く_03

佐藤 ご存じの通り、メサイヤブランドを持つ日本コンピュータシステムは、ここ十数年ゲーム事業は展開していなかったんですね。ですが、10年前に私がエクストリームを立ち上げたときに、もともと日本コンピュータシステムに在籍していたという縁などもあって、メサイヤの営業権を預かることになったんです。それで、メサイヤブランドの名作をプレイステーションアーカイブスやWiiのバーチャルコンソールなどに移植したり…… といった事業を展開することにしました。

齋藤 その流れで、2014年4月にメサイヤの歴史を引き継ぐインディーゲームレーベルとして、“MASAYA GAMES”(メサイヤゲームス)を立ち上げました。これは、熱意を持ってゲームを作っているデベロッパーさんの後押しをしたい…… ということで実現したものですが、そもそも“メサイヤ”というブランドを復活させたいとも思っていました。僕自身、子どものころからメサイヤのゲームに親しんできましたし、印象的なタイトルも多かった。それが、現状メサイヤブランドは展開していないということで、とにかくもったいないと思ったんですね。「だったら、“メサイヤ”をやらせてください!」ということを、佐藤社長に直談判しました。

佐藤 そんな齋藤の熱意が、メサイヤブランドの復活を後押ししてくれましたね。昨年11月にメサイヤのすべての著作権をエクストリームに譲渡していただくことになり、「それならば……」ということで、“メサイヤゲームス”ブランドとして、家庭用ゲーム機に向けてタイトルを発売することにしたんです。

── 家庭用ゲーム機には思い入れが深い?

佐藤 そうですね。私自身、もともと開発者としてスーパーファミコン用ソフトなどに携わったことがあるので、家庭用ゲーム機に対する思い入れは深いですね。自分たちが作ったゲームが、実際に店頭に並んで手にとっていただける…… というのは、エクストリームを立ち上げたころからの夢としてありました。ここ数年、「パッケージ用ソフトは売れない」とも言われていますが、そういった意味ではあえての逆張りかもしれません(笑)。いまの時代スマートフォン向けアプリに勢いがありますが、選択肢はいくらでもあるはずです。『妖怪ウォッチ』の大ヒットをご覧いただけばわかる通り、ちゃんとお客様はいらっしゃるんです。当社もスマートフォン向けアプリは手掛けていますし、たくさんの方が端末を持っているという利点があるのはもちろん承知していますが、表現力に関して言えば、家庭用ゲーム機向けソフトに勝るものはないと思っています。いずれにせよ、エクストリームにも、かつてメサイヤに携わっていた者がおりますし、“メサイヤ”というブランドに賭ける情熱には並々ならぬものがあるんです。

齋藤 僕も、エクストリームに入社して、当時のメサイヤの話をたくさん聞いているうちに、すごく感化された部分はあります。1990年代と言えば、ゲームの黄金期といっても過言ではないと思うのですが、大きな盛り上がりを見せた当時の状況を聞いているだけで僕も相当興奮してしまって(笑)。メサイヤを復活させたいと思った背景には、そういったきっかけもかなり多くありました。

── その盛り上がりを再現したい?

齋藤 はい! と断言するのは少し気恥ずかしいのですが(笑)、僕に限らずメサイヤの作品に対して思い入れを持ってくださっているデベロッパーさんがすごく多いんですよ。その方たちの力を借りて、メサイヤブランドを盛り上げていきたいです。

── ちなみに、メサイヤを復活するにあたって心掛けていることは?

佐藤 そもそもメサイヤというのは、ゲームファンのためのゲームを作るブランドだったと思っているんです。音楽好きに愛されるミュージシャンと同じような意味で、メサイヤというのは、ゲームファンに喜んでいただけるようなゲームをお届けしないといけない。そのためには、本当にこだわったものをちゃんとお届けしていかなければいけないブランドだと認識しています。

オリジナルを尊重しつつ新しい要素も盛り込んでいく

── 今後発売されるメサイヤ復活第1弾は『ラングリッサー(仮題)』になるのだとか?

老舗ブランド・メサイヤが家庭用ゲーム機に復活! エクストリームのキーパーソンに聞く_04

齋藤 はい。当初は僕自身『超兄貴』や『改造町人シュビビンマン』など、いろいろな企画を出したのですが、やはり『ラングリッサー』しかないだろう……ということになりました。

佐藤 メサイヤを象徴する作品の1本が『ラングリッサー』だろうという思いはありました。「ちゃんといいものを作ってお届けしたい」という思いがいちばん強かったのが、『ラングリッサー』でもあります。後世に残る形で、シリーズを展開していかないといけない。そういった意味では、“どこまで新しい要素を盛り込んでいったらいいのか?”という点で、大きな葛藤がありました。当時とまったく同じことをしても旧態依然としてしまって意味がないですが、一方で、変え過ぎたらかつてのファンに受け入れていただけなくなるという不安もありましたし。

齋藤 象徴的なのはキャラクターデザインかもしれません。今回の最新作に関しては、当初はこれまでと同じく、うるし原智志先生にお願いすることも検討したのですが、「『ラングリッサー』は、もっと新しいものを生み出していかなければダメだ」ということで、新しい方でいくことにしたんです。絵に関してはトレンドも変わっていきますし。そこで今回はカイエダヒロシ先生にお願いしました。

── カイエダ先生を起用した理由は?

齋藤 当時、うるし原先生のお描きになるイラストは、露出度が高くて“ビキニアーマー”とも言われていたのですが(笑)、いまの時代にうるし原先生に負けないくらいの色気のあるイラストを描ける人を…… ということで、すぐに思い浮かんだのが、カイエダ先生だったんですね。僕自身がファンだったこともあり、熱烈アプローチをして実現にこぎつけました。一方で、システムの部分は当時のゲームデザインを踏襲しようと思っていました。『ラングリッサー』シリーズがリリースから十数年経っても好きでいてもらえるのは、古びないゲームシステムを評価していただいているところが大きかったので。ここは変えるべきではないと判断したんです。

老舗ブランド・メサイヤが家庭用ゲーム機に復活! エクストリームのキーパーソンに聞く_01
老舗ブランド・メサイヤが家庭用ゲーム機に復活! エクストリームのキーパーソンに聞く_02

── 今後のメサイヤゲームスブランドで提供するタイトルに関しても、いいところは引き継ぎつつ、変えるべきところは変えていく?

佐藤 そうですね。ひとつお伝えしておきたいのは、いずれにせよ私たちは、往年の作品に対してリスペクトを持って作っているということです。往年の名作を継承して、いまの時代にさらなるファンの方に支持していただきたい。引いてはそれがつぎの作品につながる…… といった流れを考えています。

── 今後のメサイヤゲームスの展開は?

佐藤 メサイヤは100を超えるタイトルを産み出しているので、計画的にリリースしていきたいです。理想を言えば年間数タイトルを展開していくことですね。もちろん家庭用ゲーム機だけではなく、PCなど幅広い展開を考えています。ゆくゆくはオリジナルタイトルも手掛けてみたいですね。

齋藤 また、メサイヤゲームスは皆さんに参加していただけるようなゲームブランドにしたいと思っています。最初にメサイヤゲームスを立ち上げたときに、“インディーゲームレーベル”という表現を使ったんですね。“レーベル”というのは、音楽のインディーバンドのように、熱い想いを持ってゲームを作っている人たちに集まってきてほしいという気持ちから使ったのですが、それこそ我々は“レーベル”として、熱い想いを汲み取れるようなブランドにしたいです。

佐藤 そのいい例が、ドラキューさんが開発しているプレイステーション4用ソフト『重装機兵レイノス』ですよね。ドラキューの開発陣は本当に熱い想いをもって開発に取り組んでいて、「これならばいいものができる」と私も期待しています。メサイヤのゲームを好きでいてくださって、「こんなアイデアがあるんだけどどう?」みたいな方がいらっしゃったら、遠慮なくどんどんご提案ください! 皆さんといっしょになってメサイヤゲームスを作り上げていきたいです。