映画本編には岩谷徹氏が出演

映画『ピクセル』のパックマンは悪役じゃない!? 岩谷徹氏が生みの親としての心境を語ったミニ会見をリポート_01

 2015年9月19日(土)より日本で公開される映画『ピクセル』について、『パックマン』の生みの親として知られるゲームクリエイターであり、現・東京工芸大学教授の岩谷徹氏のミニ会見が行われた。

 映画『ピクセル』は、パックマン、ドンキーコング、ギャラガ、スペースインベーダーなど、懐かしの80年代のビデオゲームキャラが一斉に地球を侵略しにやってくるというSFエンタテインメント大作。敵たちは触れたものを“ピクセル”化させるという能力を持っているため、世界がどんどんピコピコと崩壊してしまうというディサスター(災害)ムービーでもあるという。この人類の危機に立ち向かうのは、1982年当時のゲームチャンピオン(見た目は残念なオヤジ)。彼らが持ち前のゲーム知識を駆使して活躍するという、レトロゲームファンにはたまらない魅力が詰まった作品になっているようだ。

■映画本編ではパックマンをまさかの「ビッチ」呼ばわり!?

 プレス向けのフッテージ上映(8分弱の本編映像)では、夜空に激しく動き回る“センチピード”を撃墜するアクションや、『ギャラガ』の敵がグアムの空軍基地を襲う様子を観ることができた。

 さらに、本編映像にはパックマンの生みの親として、プロフェッサーイワタニというキャラクターが登場(演じるのは日系俳優のデニス・アキヤマ)。プロフェッサーイワタニは、巨大なパックマンを説得できると信じ、「息子」と呼びかけていたのだが、あっけなくパックマンに手をピクセル化されてしまったため「誰かあのビッチを殺してくれ!」と叫ぶというコメディ(?)シーンもあった。
※このシーンは、以下の海外版トレーラーでも観ることができる。なお、岩谷氏自身もゲームセンターの修理工としてカメオ出演しているとのことだ。

Pixels - Official Trailer (HD) - Summer 2015

 『パックマン』のプレイヤーにとってたまらないのは、パックマンと、敵キャラのゴーストの設定が展開に生かされていることだろう。映画では、車に乗った人類がゴーストの立場になって、街を破壊しながら動き回るパックマンを体当たりで倒そうとするカーアクションがある。このパックマンが街の中にある“パワークッキー”を食べると、10秒間だけパックマンとゴーストの立場が逆転して、人類(ゴースト)側がピンチになってしまうのだ。

■監督への要望は「残虐じゃなかったらいいよ」

 ここからは、岩谷徹氏による『パックマン』誕生の経緯や、映画の裏話をお届けしよう。

映画『ピクセル』のパックマンは悪役じゃない!? 岩谷徹氏が生みの親としての心境を語ったミニ会見をリポート_03
▲本編の“プロフェッサーイワタニの手がピクセル化する”シーンを再現する岩谷徹氏。

――本編映像をご覧になった感想はいかがでしたでしょうか。
 
 まず、パックマンはビッチじゃありません(笑)。でも、アメリカではビッチはそれほど悪い意味じゃなくても使うことがあるそうなので、あれでいいのかな。もちろん、パックマンは悪役でもありませんよ。
 『パックマン』をプレイされたことのない方はご存じないでしょうが、ゲームでパックマンは4ヵ所にある“パワークッキー”を食べると、いままで逃げ続けた敵のゴーストを反対に食べちゃうことができるんです。これは追いかけられるだけだとストレスがたまっちゃうから、たまには立場を逆転させてスカッとさせたいという発想から取り入れた設定で、じつはアニメの『ポパイ』がホウレンソウを食べて強くなるというのがヒントになっています。映画でこの設定が出てきたのはうれしかったですね。
 また、映画にはパックマンだけでなく、ギャラガ、センチピード、ドンキーコングなどの80年代のゲームキャラがたくさん出てくるので、当時を知る人は感動して涙をこぼしてしまうのではないでしょうか。いまの若い人にとっても、80年代のゲームの“個性”に触れるいい機会であると思いますので、ぜひご覧になってほしいです。

――今回の映画では、パックマンは敵として登場しています。岩谷さんから、パックマンというキャラについて何か要望を現場に伝えることなどはあったのでしょうか。

 私は作品のクリエイティブな部分には介入しないように考えていたので、クリス・コロンバス監督には「残虐じゃなかったらいいよ」とだけ言っていました。パックマンというキャラの性格については、メールでやりとりして撮影現場に伝えていましたね。
 映画の設定は、地球から30年前に送った友好を示すメッセージが、宇宙人に挑戦状として勘違いされてしまい、ゲームキャラに扮した宇宙人が侵略にやってくるというものです。じつは、その間違って伝わってしまったのは、『パックマン』のような誰かを傷つけることのないゲームではなく、80年代のゲームセンターにあったような、凶暴なエイリアンと戦うようなゲームなのです。これが映画ではあまり強く描かれてはいなかったので、どこかでアピールしておきたいですね。
 ちなみに、アメリカではパックマンは正義の味方であると強く思われているんです。たとえば、その昔にカジノのマシンにパックマンを使わせてくれと許諾を求められたことがあるのですが、アメリカのある州から「パックマンは子どものものであり、子どもの仲間として定着させてほしい」という訴えがあり、取りやめになったことがあるんです。そのため、今回の映画でも“パックマンは人間は食べない、破壊をするのはあくまで街や建物”という決まりで制作されていたようです。

――パックマンというキャラが、こうして映画で3D化されるというのは予想されていましたでしょうか。

 1ミリたりとも想像しておりません(笑)。今後ゲームが3D化されるかもしれないという期待は持っていましたが、まさかパックマンが3Dになって映画に登場するとは思いもしなかったです。実際に映画を観ると、80年代では2Dだった平たいキャラが、3Dになったということには、心の中のキャラと、映し出されたキャラが一体になったような感動がありました。
 また、私はまだ観てはいないのですが、聞いた話によるとどうやらIMAX 3Dの迫力がものすごいことになっているそうです。ぜひ、IMAX 3Dでご覧ください。