アートワークの解説、開発秘話などが明かされる
2015年5月23日、紀伊國屋書店新宿本店にて、書籍『アート オブ グラスホッパー・マニファクチュア』発売を記念した、須田剛一氏とイシイジロウ氏のトークショー&須田剛一氏サイン会が開催された。その模様をお届けしよう。
『アート オブ グラスホッパー・マニファクチュア』は、グラスホッパー・マニファクチュアが手がけてきたゲームアートを、須田剛一氏のコメントで解説しつつ見せる、設定資料・コンテ・イメージボード・パッケージアートなど、グラスホッパーのすべてが詰まったファン必見の1冊。
今回その発売を記念し、須田剛一氏と、『428 ~封鎖された渋谷で~』などのサウンドノベルで知られるゲームクリエイター、イシイジロウ氏とのトークイベント、そして須田剛一氏によるサイン会が紀伊國屋書店新宿本店イベントスペースにて開催された。
まず始めにアート本制作時の思い出は? との問いに須田氏は、「沢山ありますが、この本には載せられなかったお蔵入りのモノもあって……それが一番思い出深いですね」と語った。
またイシイ氏と須田氏の関係については、新宿でゲームクリエイターを集めた飲み会があり、そこでたまたま席が隣になったのがきっかけとのこと。
「おたがいコミュ障でなかなか喋れなかったのですが、『宇宙戦艦ヤマト』の話で盛り上がって、そこから距離が縮まった感じですね」とイシイ氏。須田氏は「オタク友達みたいな感じ。イシイさんは僕のひとつ年上なんで、いろんなことをいっぱい知ってる学校の先輩みたいですね」と語った。
会場では、『シルバー事件』や『キラー7』など、過去歴代のグラスホッパー作品を集約したPVが公開。中には発売されなかった作品の蔵出し映像もあり、観客を沸かせていた。
映像を見てイシイ氏は、「『シルバー事件』を見たとき、これを作ってる人はゲームクリエイターではないと思った」とコメント。
須田氏は、「僕はヒューマン出身で、野良犬集団みたいな会社だったのですが、そんなヒューマンから独立して、「野良犬から独立は無謀だ」って言われるんですよ。だから頑張らなきゃいけないなと。」と当時を振り返った。また、以前所属していたヒューマンに対し、「昔社長が脱税してね(笑)。そこからヒューマンの株はどん底までさがってしまって(笑)。そんなこともありましたね。」と話し、会場を沸かせていた。
話はアートに移り、『シルバー事件』から『キラー7』までと、『ノーモアヒーローズ』には違いが見られるとイシイ氏。
須田氏は、「歴代で絵を引っ張ってくれる人が変わってきてます。宮本崇(イラストレーター)さんに2作品(『シルバー事件』、『花と太陽と雨と』)を担当してもらって、『キラー7』も少し手伝ってもらいましたが、そこからまた違う人が担当していますね。」とコメント。
また『キラー7』に関して須田氏は、「三上さん(三上真司氏。元カプコン所属、現在Tango Gameworks代表)がいなかったら実現していなかった。いわゆる業界のなかで三上さんは企画の先輩。だいたい仕事で会うときは、5分くらい仕事の話して、残りは三上さんの趣味の話になるんです(笑)。それが面白いんですよね、趣味の話がモノ作りにつながるんですよ」と語った。
またイシイ氏は、「企画職は親分肌が多いですよね。雑音(クリエイト以外のこと)からクリエイターを守ってくれますよね」とコメントしていた。
会場ではさらに、『ノーモアヒーローズ』、『ロリポップチェーンソー』などを集約した映像が公開。
イシイ氏は、「『ノーモアヒーローズ』が出たときは、やられた感がすごくて、これやれる人いるんだ!ってびっくりしましたね」とコメント。「ビーム刀のアイデアとか、僕らが好きなものを入れてくる感じがある。キャラクターのアイデアとかを出すと、殆ど『ノーモアヒーローズ』でやれてしまってるので、本当、タイムマシンがあったらなかったことにしたい!」と語った。
また、『ノーモアヒーローズ』に関して須田氏は、「適当なインプットで作りました。僕は『ジャッカス』(アメリカのテレビ番組)が好きなのでそういうのを作りたいと思って、馬鹿な殺し屋が暴れるみたいな話になりました」とコメント。
それを受けてイシイ氏は、「『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』は気合いを入れて、『428 〜封鎖された渋谷で〜』は力が抜けていますね。良い人たちが集まっているから、その人たちの力を引き出そうと思いました。ひとりでこだわっているよりも、広いものができる」と語った。
話題はエレクトロニック・アーツとグラスホッパー・マニファクチュアの共同開発による『シャドウ オブ ザ ダムド』に。須田氏は、「無茶なことしたなあ(笑)」とコメント。もともと銃を使う企画ではなかったが、プロット段階で「銃を出せ」と要望が出てたのだとか。
「このゲームはシナリオを5パターン書き直しました。構成要素を変えるとなると、全部変えなくてはいけないくて。脚本がここまで変わるのはこれまでなかったのでびっくり。すごいパワーも使いましたし、へろへろになりました」と語った。
また、本書には残念ながらボツになってしまった伊藤暢達氏のクリーチャーデザインが収録されており、須田氏は許諾を取ろうと連絡を取ったところ、伊藤氏は仕事をしたことを忘れていたというエピソードも語られた。
そんな苦労のあとに発売された『ロリポップチェーンソー』は、ミリオン達成を記録。須田氏いわく、「正直こんなに当たると思わなかった」とのこと。
「ヒロインは海外にも日本にもウケるキャラですね。B級ホラーみたいな感じで作った」とコメント。また、海外でのパブリッシャーの重役を対象とした会議において、「PVの中で、チェーンソーで跳ねたゾンビの首がバスケットのゴールに入って点数を逆転する、という場面がウケまして。それでこれは売れるかなって思いました」と語った。
さらに、『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』については、登場キャラクターにセクシーな女性が多いことから、海外メディアからの批判があったことが明かされた。
トークショーでは質問タイムが実施。ファンからの、「『シルバー事件 25区』は完成していてリメイクで出したいとのことですが、現在進行しているんですか?」との質問に対し、「進行はしていないです。あと10年以内には出したいと思っています。スマートフォンとか次のデバイスかもしれないですね。」と回答していた。
イベントの最後にイシイ氏は、「まだ出てない画像やお蔵入りのモノもあるので、そろそろグラスホッパー・マニファクチュアも20周年になるので“裏バージョン”を出してもらいたい。日本のトップクラスのアートで引っ張るゲームメーカーだと思っていますし、期待させて頂きたいと思います」とコメント。
須田氏は、「懐かしいだけじゃなくて、アートという側面だけでもこれだけのことをやってきたんだなと、改めて実感しました。また皆さんが興奮するようなアートを出したいですし、「何よりも先にこのゲームを遊びたい」と思ってもらえるような作品を提供できるように、精進していきたいと思っております」とコメントし、イベントを締めくくった。
【アート オブ グラスホッパー・マニファクチュア 詳細】
書名: アート オブ グラスホッパー・マニファクチュア
著者:須田剛一
定価:本体2800円[税抜]
ページ数:224 ページ(カラー192ページ)
装幀:ソフトカバー