死んだ男からのメールで始まるハッカー稼業。

 「やぁ。僕の名前はBit。キミが今これを読んでいるということは、僕がすでに死んでいることを意味する。だがHacknet OSをこのままリリースさせるわけにはいかない。キミの助けが必要なんだ。」

 Surprise Attack GamesがSteamで配信しているPCゲーム『Hacknet』は、そんな謎めいたメッセージから始まるハッキングゲームだ。価格は980円で、現在10月23日までのセールで25%オフの735円で配信中。東京ゲームショウのインディーゲームコーナーにも出展されていたので、ご存知の人も多いかもしれない(ただし対応言語は英語のみ)。

 本作でプレイヤーは、消息不明のハッカーBitが残した指示に従いながらハッカーコミュニティに入り、ツールを駆使して、ライバル企業への侵入、記録の改ざん、暗号解読、秘密の内部調査、盗まれたデータの破壊などさまざまな依頼に対応していく。そうやって力をつけていき、Bitの最期の願いである、謎のセキュリティ企業が密かに進めるHacknetプロジェクトのデータを破壊するのが最終目標だ。

母ちゃん、今日から俺もスーパーハカーだぜ。コンソールコマンドを駆使してサーバーに侵入し、情報を奪いまくるハッキングゲーム『Hacknet』_03
▲終盤に出てくる上位のハッカーコミュニティ“CSEC”。小さなコミュニティからスタートし、依頼をこなしてランクを上げていくと、上位のコミュニティからのヘッドハントがかかる。

俺のツールを喰らえ! キーボードが唸りをあげる

 というわけで、ゲームの流れは、まずハッカーコミュニティで仕事を受けて、依頼者から与えられるサーバーに侵入し、関連情報を収集。それを手掛かりにして目標となる記録を収めたサーバーへと迫っていくという形。
 ハッキング自体は、マウスじゃなくてキーボードで入力するコンソール(ターミナル)コマンドと、ハッカーコミュニティに流通しているツールを使って行う。ツール自体の起動もコンソールコマンドで行うので、プレイ中は「カチャカチャ……ターンッ!」と、キーボードを打ちまくり。ちなみに現実のコンソールのようにTabキーでの入力補完が可能だ(制限時間がかかることの多い後半では駆使しまくり)。

 ただし、IPやポートがどんなものかわかる程度の基本的なネットワーク知識があればプレイ可能で、さすがにコンソールコマンドは徐々に慣れながら覚えていく必要はあるが、現実のセキュリティ知識やデータの読み方などを覚える必要はない。適切な物を適切なタイミングで起動しさえすれば、処理自体は勝手にやってくれるという寸法。
 まぁ現実では他人の作ったツールを使って侵入・破壊するだけの人は「スクリプトキディ」という蔑称で呼ばれるだけだと思うが、この際難しいことは考えず、「あと20秒! クソっ!」とか言いつつ思う存分キーボードをカチャカチャしてスーパーハ(ッ)カー気分を味わおう。

母ちゃん、今日から俺もスーパーハカーだぜ。コンソールコマンドを駆使してサーバーに侵入し、情報を奪いまくるハッキングゲーム『Hacknet』_02
▲ハカースキルで無防備なマシンの管理者権限を奪ってやったぜ。

 侵入までの基本的な手順は以下のような流れ。中盤以降になるとハッキング開始とともにトレースされて制限時間内にクリアーしなければいけなくなったり、相手のハッカーからの攻撃を食らったりもするが(恐らく過去のアルファ版にあったマルチプレイモードのためのチュートリアルの名残)、一度覚えてしまえば楽勝だ。

1-a.ファイアウォールがある場合は、解除キーを探す(analyzeコマンドを繰り返し打てばキー以外の文字列が0に置き換えられていくのでやがてわかる。正解をsolveコマンドで入れると解除される)
1-b.プロキシーが設定されている場合は、管理下に置いた別のコンピューターをShellコマンドで従え、Overloadコマンドで攻撃してダウンさせる(複数のコンピューターからOverloadを仕掛けることで攻略速度を上げられる)
2.各ポートに対応したツールを走らせて攻撃し、ポートを開ける。
3.必要な数のポートが開いたら夢のツールPortHackで管理者権限を奪える

 基本はこの繰り返しなのでそこまで深くないのだが、たまに通常の手順では攻略できなかったり、管理者権限を奪ってもそのサーバーには目標となる記録が置かれてなかったりするのがミソ。そういう時はサーバーに紐付けられている別のマシンや機器がないか調べたり、一見不要に見える文書から手掛かりを発見するソーシャルハック的な手法が必要となる。各攻撃対象には攻略とは無関係な文書ファイルなどがあちらこちらに埋め込まれており、正直ハッキング手順に一度慣れてしまうと、ハッキングそのものよりも、調査の過程で発見されるしょうもないハッカーギャグやバカ文書などを覗き見る方が楽しい。

母ちゃん、今日から俺もスーパーハカーだぜ。コンソールコマンドを駆使してサーバーに侵入し、情報を奪いまくるハッキングゲーム『Hacknet』_01
▲ストーリーの途中で攻略対象として出てくるWebゲーム『Point Clicker』のサーバー。クリックすることでポイントを増やしていくだけの内容だが、実際にプレイすることもできる。

 サイドクエストなどもそこそこ楽しみつつ、クリアーまでは4-6時間といったところ。ハッキング中にタイムアウトになるなどしくじると強制リブート画面(もちろんゲーム内のみのフェイク)に突入するなどの面白い表現もあって、個人的には価格分は十分楽しめると思う。
 しいて言えば、過去に予定されていたマルチプレイが実装される気配がなくなってきていたり、明らかに一回作っただけでその後活用しきれていない要素があったりするのがやや残念。バグ潰し以外のアップデートやMac/Linux版のリリースなども予定しているそうなので、可能であればプレイ要素の追加などを期待したい。