「ユービーアイソフト史上最大のゲームのひとつ」
致死性ウイルスのパンデミックにより崩壊、テロリストやギャングたちが徘徊する危険地域となったニューヨークをオープンワールドで描く、注目のTPS『ディビジョン』。プレイヤーは大統領直属の組織“The Division”のメンバーとなり、ニューヨークを取り戻すために戦うことになる。2013年のE3で、ユービーアイソフトのサプライズタイトルとして披露された本作だが、2014年にはゲームプレイムービーの公開に留まる。そして、E3 2015でついにハンズオンデモが出展、海外での発売日(2016年3月8日)が発表され、日本でも注目のタイトルであると言える。
今回、先日開催された“UBIDAY2015”での『ディビジョン』トークショーに登壇した、アソシエイト・クリエイティブ・ディレクターであるJulian Gerighty氏にお話しを伺う機会を得た。2016年3月8日に決定したというニュース以外は、あまり表立った動きのなかった同作、開発者に話をうかがうという機会はなかなか貴重だ。
Julian Gerighty氏
――昨日のトークショウで、本作のキーワードとして、“オープンワールド”、“RPG”、そして“オンライン”の3つを挙げていましたが、あらためて本作の真髄を説明していただけますでしょうか?
Julian 本作は基本的にソロプレイで攻略はできますが、オンラインが大きな軸となるので、ひとりで攻略できるものはすべてCo-op(協力)プレイで遊べるということが特徴的です。Co-opプレイは皆さんで楽しめる以外にも、戦術面でも幅が広がります。現状はカバーシューティングの情報のみ公開していますが、いろいろなガジェットも登場しますし、戦術を駆使して敵を倒すことも可能です。RPGの要素としては、成長要素とプレイヤーはさまざまな面で選択を迫られます。現段階ではすべての要素をお見せできませんが、来年初頭にあるクローズドβテストをプレイすれば楽しさが分かるはずです。
――基本は“オンライン”にフォーカスしているということでしょうか?
Julian オンライン、オープンワールド、RPGがそろったゲームはいままでに出ていないので、この3つが支柱となります。
――つまり、いままでにないゲームを作ろうと思い、このプロジェクトが始まったということですね?
Julian そうですね。Massive Entertainmentでは、意欲的でクリエイティブなタイトルを作ろうと心掛けていましたが、今回の『ディビジョン』では『トム・クランシー』シリーズにも新たな風を吹かせようと思いました。『トム・クランシー』シリーズはオープンワールド系もRPG系もまだ制作していいないので、Co-opを重視してなおかつRPG要素を取り入れることにしました。またユービーアイソフト自体、新しいタイトルをつくって、ユーザーの皆様に新しい想像力を掻き立てていこう狙いがあります。例えば『ウォッチドックス』や『アサシン クリ―ド』、『ザ クルー ワイルドラン』が発売されたときもそうですし、どんどん新しいものを作っていこうという思いが、ユービーアイソフト全体にありますね。
――ユービーアイソフトの方針やスタンスを象徴するタイトルともいえるんですね。
Julian まさにその通りです。
――ちなみに、ジュリアンさんが『ディビジョン』の開発チームに合流されたときは、開発はどこまで進んでいたのでしょうか?
Julian いまから約1年3ヵ月前に開発チームに加わったのですが、そのときにはすでにニューヨークの街並みなどは出来上っていたので、私はその中にミッションやストーリーなどを肉付けする作業をしました。
――初めて開発チームに合流し『ディビジョン』を目の当たりにして、驚いたことはありますか?
Julian 私は以前『ザ クルー ワイルドラン』のクリエイティブ・ディレクターを務めさせていただいたと言うこともあり沢山のいろいろなゲームを見てきたのですが、本作のワールドの大きさ、グラフィックの美麗さ、オンラインシステムはかなり高い水準になっていると思います。本作ではとくにオンラインのシステム面に関しては、世界随一のシステムではないかなと驚きました。ただ、チームに参加したときは本当に忙しくて、驚いている暇はありませんでしたね(笑)。
――Julianさんが『ディビジョン』の開発に加わってから、具体的に改善した点などはありますか?
Julian 棚に並ぶまでがゲームの開発なので、600人のチームスタッフで小さな問題からコツコツと改善しています。私が開発チームに入ったときはすでにコアの部分は出来上っていましたが、そこから少しずつ修正していますね。
――では、Julianさんなりの視点で改善した点はありますか?
Julian ミッションやストーリーにおいて、どのようにプレイヤーに没入させていくか、RPGの要素がストーリーのなかで自然にプレイヤーに馴染むよう、いろんな要素を自然に組み立てていくことを重視しました。
――通常のオンライン専用のゲームだとストーリー性はあまり重視されませんが、本作ではRPG要素を取り入れて没入感を意識するなど、ほかの作品よりも注力しているというとですね。ではストーリーはまだ概要の部分しか公開されていませんが、各キャラクターごとにバックボーンやストーリーが展開されて行くのですか?
Julian もちろんプレイヤーキャラクター自身にもストーリーはあります。大まかな部分は基本的に一直線のストーリーではなく、街の中にあるミッションを好きなとき好きなものをプレイできるようになっています。例えるなら、ミッションがパズルのピースのようになっていて、最後につなぎ合わせて解明されていくという感じです。例えば20時間で遊びきれるるひとつのストーリーではなく、ふたつの20時間分のストーリーがあり、両方のパズルを解いていき、エンディングに辿りつけるような仕組みになっています。
――先ほどRPG部分の説明のときに選択肢があると仰っていましたが、ストーリーの分岐点やマルチエンディングを採用しているのでしょうか?
Julian 選択肢によってエンディングが変化することはありません。選択肢というのは、どのような武器やどのような戦術をもって敵に立ち向かっていくかということです。さまざまな選択肢によって、自分自身のストーリーを作ってください。
――昨日行われたUBIDAY 2015のトークショウでも質問がありましたが、開発するうえで大変だったエピソードはありますでしょうか?
Julian すべてのゲームにおいて制作は大変ですが、とくに大変だと感じたのは、600人の開発スタッフとコミュニケーションをとってひとつの作品に仕上げることですね。Massive EntertainmentだけではなくRed Stormやテストをしているブカレストのチームなど多くのスタジオが関わっていますので、コミュニケーションをとって士気を上げて、ひとつの作品を作り上げるのが大変です。
――では現段階で一番苦労している点はどこですか?
Julian 3~4年前はグラフィックの向上、オンラインシステムの構築のための予算を集めるのが大変でした(笑)。いまはRPGの要素とオンライン要素をうまく繋げることに注力しています。
――新しいRPGを目指していると仰っていましたが、具体的にどんな取り組みをしているのでしょうか?
Julian キャラクターのカスタマイズはもちろん、スキルもありますし、武器の種類と武器のカスタマイズも豊富です。武器は6つのピースがあり、それぞれをプレイヤーの好みにカスタマイズすることができます。各プレイヤーでロードアウトを選択し、ほかのプレイヤーたちとどのような戦略をもって攻略をしていくのかが、大切なところです。そのほかにも“タレント”といわれるものがあり、例えばヘッドショットをするとボーナスが付くシステムも考えています。おもしろいゲームほどカスタマイズなど複雑になってしまいますが、任天堂のように複雑でもプレイすると一瞬でシステムを理解することができるようなゲームを作るのはすごく大変です。だから、任天堂は僕たちのヒーローです。
――カスタマイズ面は、マスターアップのギリギリまで試行錯誤したり調整したりするのですか?
Julian はい。調整は発売後もしっかり行います。
――マルチプレイについてですが、現在ダークゾーン(PVP)とCo-opが発表されていますが、そのほかにもなにか用意しているのでしょうか?
Julian 本作では基本的にすべてのプレイがオンラインにつながっています。例えばミッションを遂行するときはだれかがすぐに加わることができますし、すべてがオンラインといえます。PVPに関しては、最大4人でチームを組んでDark Zoneに挑むことができます。Dark ZoneはPVPとなっていますが、必ずしも戦う必要はなく、Aチーム、Bチーム、Cチームそれぞれが衝突することも、AチームとBチームが協力体制を組んでCと敵対することもできますし、AとBが戦っている隙をついて、Cが漁夫の利を得ることも可能です。そのように自由な戦いができるのがDark Zoneとなっています。単純なPVPではなく、その中にいるプレイヤーたちどうしで駆け引きができるのも特徴となっています。
――ちなみに、来年実施されるクローズドβテストでは何が遊べるのでしょうか?
Julian クローズドβテストではすべての要素を遊べるようになっています。例えばオープンワールドでフレンドとCo-opプレイをしたり、Dark Zoneを遊んだりできます。
――本作の舞台はニューヨークとなっていますが、どのくらいの広さになっているのでしょうか?
Julian 街の作りこみと言うのは、『ザ クルー』や『ウォッチドックス』よりも詳細に作られています。『ザ クルー』や『ウォッチドックス』には乗り物がありますが、本作は乗り物がありません。基本的に徒歩と走りでの移動となるので、街の広さはほかのタイトルよりも広いことを実感できると思います。
――それだけの膨大な描写を可能にしているのが、Snowdrop Engine”ということでしょうか?
Julian そうですね。とくにディティールに関して言えばスノードロップエンジンのおかげでアート担当の方々の思い通りの描写になりました。
――ここまでのお話で『ディビジョン』がいかに作りこまれたゲームであるかが分かりましたが、日本のユーザーにむけて『ディビジョン』について一発でわかるキャッチーな言葉で例えてもらってもいいでしょうか?
Julian 難しいですね(笑)。例えるなら“ユービーアイソフト史上最大のゲームのひとつ”、だと思います。本作はRPG、ストーリー、オンラインとひとつひとつの大切な要素に関して沢山の人々が関わっています。ゲーム作りは非常に大変ですが、大好きです。
――それでは最後に日本での発売を心待ちにしているファンに向けて、メッセージをお願いいたします。
Julian 『ディビジョン』の中で大きな要素となっているのがリアルなニューヨークの街並みです。日本の方々はなかなかニューヨークは遠くて訪れることが少ないと思いますが、本作でニューヨークの街並みを楽しんでいただけたらと思います。
海外では2016年3月8日に発売となるが、日本での発売時期はクローズドβテストを行い、それから発表になるとのこと。いずれにせよ、クローズドβテストで明らかになるシステムなどの情報が多そうである。
少しずつ全貌が見え始めてきた『ディビジョン』の続報を楽しみにしたい。