KEYROUTEのキーマンが『I -アイ-』を語る

 『牧場物語』シリーズなどを手掛けた小倉健氏と中野魅氏が代表取締役を務める新会社KEYROUTE(キールート)。同社が放つスマートフォン向けゲームアプリ第1弾となる『I -アイ-』が現在先行配信中だ。週刊ファミ通2016年2月11日号(2013年1月28日発売)では、本作に懸ける想いを、プロデューサーの小倉健氏、ディレクターの中野魅氏に語っていただいた。そのインタビュー完全版をお届けしよう。

新作スマホアプリ『I -アイ-』インタビュー完全版――『牧場物語』シリーズなどを手掛けたスタッフの新たな挑戦_05
■写真左
『I -アイ-』プロデューサー
KEYROUTE 代表取締役
小倉 健氏(文中では小倉)

■写真右
『I -アイ-』ディレクター
KEYROUTE 代表取締役
中野 魅氏(文中では中野)

家庭用ゲームで培ってきたノウハウをスマホゲームに

――まず、KEYROUTEはどのような経緯で設立された会社なのかを教えてください。

中野 設立は2014年3月になります。これまでマーベラスエンターテイメント(現マーベラス)や、PCオンライン・スマートフォンアプリメーカーなどでさまざまなタイトルを作ってきましたが、自分の中で作りたいゲームがありまして、かっこよく言うとそれを実現するために設立した会社です。

小倉 それぞれゲーム業界で生きてきて実績もあります。お互いの得意分野を組み合わせたらおもしろいゲームができるのではということで、僕が後から合流する形になりました。

――KEYROUTEの社風や特徴などを教えていただけますか?

中野 小倉とともに強く意識していることは、“プロフェッショナルを集める”ということです。現在、20名のスタッフが在籍しているのですが、自信を持って仕事をしてきた経験や実績があったり、成功体験と言いますか、自分なりの成功のプロセスを持っている人、確固としたスキルを持つ人を少しずつ集めていって、いまに至ります。

――そのプロフェッショナルの方たちが集まって『I -アイ-』を作られましたが、KEYROUTE立ち上げ時に中野さんが思い描いていたゲームのひとつが『I -アイ-』ということでしょうか?

中野 そうですね。スマホゲームの『ヘイ・デイ』が登場したときに、これまでの農場ゲームのシステムをガラリと変えた革新的なものだったので、牧場系のゲームを作っていた側からすると、してやられた感がありました。そういうことを小倉とよく話していて、その中で『I -アイ-』の原形が生まれました。

小倉 僕も中野もコンシューマー(家庭用)ゲーム業界で仕事をしてきて、これからのスマホゲームはコンシューマーゲームのノウハウが必須になるだろうと思っていたので、そのノウハウを活かしてスマホゲームを作れば、新しいものになるだろうという自信はありました。

――なるほど。 本作のテーマは“スローライフ×ミステリー”ですが、スローライフにミステリーの要素を加えられた意図とは?

小倉 農場経営という武器だけではいまのソーシャルゲーム業界で通用しないと思いまして、新しくてインパクトの強いものを模索した結果、ミステリーの要素を取り入れました。スローライフとミステリーは、水と油のように対極にある存在のようですが、今回うまく融合することができました。

中野 さまざまなキャラクターが登場したり、物語に謎を問いかける部分が、作品の深みにつながり、より印象に残るものになると思うので、いままでにないスマホゲームとして、より楽しんでもらえるきっかけになるかなと。

小倉 一見、斬新なゲームと思われるかもしれませんが、システム的にはすごく遊びやすくて、わかりやすくしています。これまで丁寧にゲームを作ってきた経験を活かして、遊びやすさには注力して開発しました。

――『I -アイ-』というタイトルには、どのような意味が込められているでしょうか?

小倉 ダジャレのように思われるかもしれませんが、漢字の“愛”、自分の“I”、イマジネーションやイメージ、アイデアの“I”など、“I”に引っかかるものをたくさんゲーム内に盛り込み、プレイヤーの遊びかた次第でゲームがいろいろ展開する、というところから名付けました。プロジェクトネームは“ミステリーアイランド”だったのですが、決め手に欠けると言いますか、大作感がなかったので潔くシンプルにしました(笑)。

中野 “ミステリーアイランド”は、タイトルに“ミステリー”という言葉が入っていて、よりシステム寄りの印象があったので、手触り感という部分では少し微妙でした。

小倉 舞台が無人島なので、アイランドの“I”でもあるんですけどね。余計なものをそぎ落としていったら“I”だけが残りました。

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誰でも手に取りやすく遊びやすいシステム

――本作は、願いが叶うという伝説の島が舞台となりますが、ここでの生活を具体的にご説明いただけますか?

中野 願いが叶うという伝説がある島に、主人公のジェイクを始めとしたキャラクターたちが引き寄せられ、島で暮らし始めます。その住人たちといっしょに、島で起こるさまざまな困難を解決したり、島に隠された謎を解き明かすというのがおもな目的です。生きるために作物を育てたり、魚釣りなどをしながらクエストをこなすと、島に新たなキャラクターがやって来て、その子たちと親交を深めたり力を合わせて、別のクエストに挑んでいくというのが大まかな流れになります。

小倉 基本的には、求められたものを納品することで対価が得られるという、すごくシンプルなシステムです。

――作物を育てたり、魚を釣ったり、プレイヤーのペースで自由にスローライフを楽しみながら、クエストにも挑むというわけですね。

中野 そうですね。ただ、自由度を広げすぎても、どうしていいのかわからなくなってしまうので、ある程度やるべきことは明確化しています。直近のお題がつねに出ていて、これまでのプレイで行ってきた範囲内で解決できるので、戸惑うことなく進められると思います。いろいろな方に触ってほしいと思っているので、いきなり放り出されることがないように気を付けて作りました。

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――ゲームの画面やキャラクターの雰囲気から女性向けなのかなと感じましたが、本作のターゲット層は?

小倉 メインターゲットは女性ですが、もちろん男性も楽しんでいただけます。どなたでも安心してすんなり遊べるようなゲームになるように、意識して開発しました。

中野 性別、年齢問わず、いろいろな人が遊べるものというのは意識しています。興味を持ってくれた方がずっと遊んでもらえるように心がけて作りました。

――動物がモチーフのキャラクターも、女性を意識されてのことなのでしょうか?

中野 人間にするとイメージが固まってしまうと言いますか、好き嫌いが分かれやすいと感じていたので、手に取ってもらいやすいものを考えたときに、自然と動物がモチーフのキャラクターに行き着きました。

――今回、まつやまいぐささんがキャラクターデザインを担当されていますが、まつやまさんを起用したきっかけを教えてください。

中野 もともと僕自身が、まつやまさんが描く、人に幸せを与えるような暖かみのあるキャラクターが好きだったので、今回オファーさせていただきました。じつはいまのデザインに決まるまでに4回ぐらい変わっていて、設定と世界観と僕らのイメージをすり合わせて、いまのデザインに落ち着きました。

――印象に残っているキャラクターはいますか?

小倉 僕はマットですね。寡黙な謎の青少年という扱いなのですが、ゲームのプロモーションムービー上でも意味深なセリフをしゃべっていて、物語のキーキャラクターになります。

中野 僕は釣りが大好きなトミーですね。こう見えて二十歳過ぎという設定なのですが、何も考えてない感じがすごく好きなんです。腹減った! 釣りたい! エサない! 寝る! みたいな(笑)。

――(笑)。プロモーションムービーでは、手嶌葵さんが歌う本作の主題歌が流れますが、手嶌葵さんにはどのような経緯でオファーされたのでしょうか?

小倉 僕も中野もビクターインタラクティブの出身なんですけど、現在もビクターエンタテインメントに所属する当時の先輩に相談したところ、手嶌さんを紹介していただいたのが経緯です。手嶌さんサイドには資料だけではなく、実際に動いているゲームもお見せし、そこからイメージして作曲していただきました。本当に素敵な曲になったと思います。

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海外ドラマのような続きが気になる仕掛けも

――KEYROUTEの第1弾タイトルとして開発にはかなり力を入れられたと思いますが、苦労されたところはありますか?

小倉 まだ新しい会社なので、開発スタッフを始め、たくさんの人たちの力を借りないとここまで作り上げられなかったので、多くの協力者たちと連携を取るのがたいへんでした。

中野 去年はスタッフの数も少なくて皆苦労しましたね。ゲームを組み上げてみたら、「想定とだいぶ違う」ということもありました。

――スマホゲームは、家庭用ゲームと作りかたは大きく異なるのでしょうか?

中野 1本の大きい幹があって、その幹に近付いて大きくしながら枝葉を伸ばすという作りかた自体は、スマホゲームも家庭用ゲームも同じだと思います。ただ、開発の実務となると、両者はだいぶ違いますね。

小倉 スマホゲームは通信頻度が多いので、サーバー設計などが圧倒的に違いますね。そこが苦戦した部分でもあるし、完全にオンラインゲームだと思っています。

中野 そうなんですよね。ダウンロードに時間がかかるので、コンテンツ量が多ければいいというわけでもなくて。見た目のグラフィックは変えずに容量を落とす工夫したりと、かなり苦労しました。

――本編のリリース前にプロローグアプリが配信されたことも新しい試みだと思いますが、プロローグアプリは本編と同時進行で作られていたのでしょうか?

小倉 はい。おもしろい仕掛けができたのではないかなと思っています。『I -アイ-』本編よりも手間がかからないというわけではありませんが、労力は少なく作れました。

――その苦労の結晶が本作なのですね。では、最後に読者へメッセージをお願いします。

小倉 僕も中野も海外ドラマが大好きなのですが、先がすごく気になって止まらなくなる海外ドラマのような仕掛けをアイデアとしてゲームに取り入れています。そういうちょっとした仕掛けに注目してもらえると、どっぷりハマっていただけると思います。

中野 僕はキャラクターにすごく思い入れがあるので、キャラクターの様子を楽しんで“愛(I -アイ-)”してもらえたらうれしいです。